表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1章 おっとりお嬢様、異世界へゆく

「外にいきたい……」


私は畳にし、自室で一人テレビを見ていた。


青い空を自由に飛ぶ飛行船、怪物を倒す勇者、王座を勝ち取るべく争う戦士達。

私も自由に外を動き回りたいと思った。



――――私は旧華族の雷鳴我門家にうまれた。

外出は車、歩くときには付きそい人がいる。

一人でここではないどこかに、行きたい。


「お嬢様。お茶が入りました」

襖の向こうから、メイドさんの声がした。


「ありがとう。どうぞ入ってください」

そろそろお気に入りの推理小説を読みながら一服を入れることにしよう。

私はテレビを消して、お茶を受け取った。


湯飲みの前方を左手支え、右手に底を乗せた。

――茶色、ほうじ茶だろうか、一先ずお茶を啜る。


「これは、ほうじ茶ですか?」

「いいえ、番茶です」


「そうですか」

「あの…」

メイドさんにお茶菓子は何がいいか、たずねられた。


ジャガイモを油で揚げたあれを頼むと、メイドさんはペコリと軽く頭を下げて部屋を後にした。



ほんの一分ほどでポテトチップスがやってきた。

サワークリームオニオン味と書いてある。


美味しい。けど、欠片がポロリポロリと床に落ちている。

小説を読みながらでは食べられない。


お菓子を食べ終えて、二度本を取ろうとした。



「よう」

右耳の近くから、声がした。


その瞬間、ゾクりと背筋が粟立った。


相手から距離を取るため、私は左側へ移動した。


護身術は幼い頃に習っていたので、反射的に体が動いたのだ。



「どちら様でしょうか?」

帯の背に隠しておいた短刀を右手に、襖の短刀のエに鞘をさしこみ左手に持つ。


「随分ブッソーなの持ってんなお嬢様」

「貴方は…ただのお客様ではありませんね」

その間、時が止まった。


ぐにゃり、空間が歪む。

瞳を閉じ、心を落ち着かせてから開く。


すると、私はここではない、どこか別の世界にいた。



「……ここはどこでしょう」




あたりを見渡す限り、テレビでお馴染みの洋風の建物がある。


これが世に云うバトルフィールドなるものなのだろうか。



ひとまずはこのあたりを探索し、身の振り方を考えなければ。


通りへ出ると、ガラスが鏡になって、衣服が洋服、肩に着物をかけるものに変わっていたのに気がつく。


所持する武器が増えていた。重量が普段の倍増えたのだ。


鞘から剣を引き抜く。


「これは……」


美しいく白銀の輝きを放つ、よく斬ることができそうな両刃の刀身。

所謂レアメタルで出来ているのか、見た目ほど重くはない。


私は試し切りをしたい。



どこかにいいものはないだろうか―――――――――


「よう嬢ちゃん、いい武器モン持ってんな~」


ちょうどいい、彼を試し切りにしよう。


金銭目当て絡んで来た相手に善人などいない。


●最強の殺戮者は試し斬りがしたい。


「私、初めて扱う武器なので試し斬りをしたいと思っていたところなのです」


なんて私は幸運なのでしょう。


「へっ?」


武骨な男はまのぬけた声を出した。



「丁度あなたに声をかけられたので、試し斬りをさせていただきますね」


刀身を縦にふるうか、横にふるうか、それとも斜めにふるうか迷う―――――



「下から上に突き上げることにしました」


ザクリ、切っ先が肉を軽くとらえる。


切れ味は良好、ただし刀身が汚れやすいのが難点だ。


「ありがとうございました」



●シャケは美味である


「あら、シャケが……」


まだ生きているシャケの目がこちらを見ている。

シャケでありながら私を威嚇しているのでしょうか。

相応の対応をせねばなりません。


シャケの目へ視線を集中させた。



―――――シャケは私に食べよと、逝った。



「お美味しいです」



もう一つ、シャケがある。


私はそれに意識を集中させ、自分の精神をそれにうつした。



「私はシャケ、シャケである

跳ねる白身魚である」



―――さて、遊びは終わり。

本斬りを始めなければなりません。



●転生を回避せよ



それにしても、なぜ私はこの世界に連れてこられたのか。

あの殿方はまったく姿を見せない。


「大変だああ」

なにやら騒ぎが起きている。


「事件ですか?」

野次馬がぞろぞろ集まっている。

遺体らしきものがころがっている。


「ついさっきそこで殺しがあったらしいんだ」

「では、私が事件を解決いたしましょう」


そう言って遺体をみると

若い女性、私のやったこととは関係ない。

――――


「やあ久しぶり」

「貴方は……なぜ私をこの世界へ?」


「神がそう導いたからさ。

今は詳しい話はできないが、君は半分この世界に融合しつつある」


「なるほど、つまり私はそれを回避せねば、この世界の住民と成る。

そういうことでしょうか?」

「うん。まあ、成るようになるとしか言えないけど……」


「わかりました」

「えっそんな冷静でいいの? 普通の小娘なら『お家に返して~』って嘆く場面だよ?」


「屋敷にいるよりは、幾分マシです」

―――――――――――


「というわけで、私は剣士兼探偵をやりながら、元の世界へ帰る道を探します」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ