プロローグ
『おい、こんなところに鳥がいるぜ~』
『マジ~?ホントだ~、小さくね?なんかの雛だぜ』
『おい、コイツひょっとしてカラスじゃねぇの?』
『マジ???』
『そうだよ、これ、カラスの雛だぜ~』
『うっわぁ~、最低じゃん!家の母ちゃん昨日も怒りまくってたぜ、ゴミ置き場荒らされたって!』
『コイツ、そのカラスの雛じゃねぇ?最近しょっちゅうゴミ置き場漁ってるよな?』
『おい、ならちょっと痛い目見せてやろうぜ!』
『えっ、ヤバくね?親が気づいて飛んで来たら襲われるぜ!カラスって滅茶苦茶頭いいって言わね?顔覚えていつまでも復讐してくるって聞いたぜ!』
『アホかよ、そんな事あるわけねぇだろ?』
『みんなでやれば平気じゃね?万が一ホントでも、さすがに何人も覚えたり出来ねぇんじゃねぇの?』
『そうだよ、そうだよ』
『じゃあ、やっちまおうぜ!』
『『『わぁー!!!』』』
『やめてー!何するの?まだ赤ちゃんじゃない!』
『なんだよ、おめぇ、邪魔してんじゃねぇよ!』
『そうだそうだぁ、俺達はみんなの為にやってやってるんだぞ!コイツら悪さばっかしてるじゃねぇか!』
『何言ってるのよ!この子まだ赤ちゃんじゃない!悪さなんて出来るわけないでしょう?』
『今はな!でもちょっとすりゃあ絶対ぇゴミ漁るに決まってらぁ。だから今のうちに退治しておくのがいいに決まってんだろ?大人になっちまったら誰も退治なんて出来ねぇんだから。それともお前出来るのかよ!』
『そうだそうだ、みんな超迷惑被ってるんだぜ!』
『うちの父ちゃんがこの間箒で追い払おうとしたら向かって来たって怒ってたぜ!』
『うちの母ちゃんも後ろからつつかれたって喚いてたぜ、スゲェ怖かったって!』
『誰かケガでもしたらお前責任取れるのかよ?』
『『そうだそうだ!』』
『だったら!だったら私がこの子育てて、そんな事しない立派なカラスにしてみせるもん!』
『はぁ?お前頭おかしいんじゃねぇの?育てるって、育てるってまさか、このカラス飼う気かよ!ギャハハハ、おめぇら聞いたかよ?コイツこのカラス育てるんだってよ!ヒィ~、そんな事出来るわけねぇじゃねぇか、なぁ?ギャハハハ』
『そんなのやってみなきゃ分からないでしょう?絶対立派なカラスに育てるもん。そしたらいつかこの町からイタズラするカラスをこの子がいなくしてくれるかもしれないし!』
『はぁ?本気で言っているのかよ?やっぱお前頭おかしいわ!そんな事出来るわけねぇじゃねぇか!アホか!』
『じゃあその目でよぉく見てればいいでしょう!万が一この子がこれから悪さしたら、後始末は全部私がやるわ!それでいいでしょう?文句ないわよね?じゃあこの子は私が連れて帰るから!』
『忘れるなよ!なんかあったら、おめぇが全部責任取るんだからな!』
『ほらっ、どいてどいて!』
◇◇◇◇
『お母さん、カラスの赤ちゃん、男の子達に虐められてたの!お母さんもカラスは悪い子だって思う?』
『あらまあ、なんて可愛らしい雛なの!あらあら、巣から落ちたのかしら?だいぶ弱ってるわね~』
『お母さん!私、男の子達に約束したの。この子を絶対立派なカラスに育ててこの町からイタズラするカラスをなくすって!』
『フーン、そう。で?出来る自信あるの?そんな大見得切って』
『ある!絶対いい子にする!だから飼っていいでしょ?』
『そう……、分かったわ。なら、やってみなさい』
『お母さん!』
『薔薇!お前はまたそんな簡単に!カラス飼うなんてどうなるか判らないぞ!』
『……』
『確かにそうね、ならいいわ。じゃあ一つだけ、一つだけ向日葵に誕生日プレゼントあげる。明日お誕生日でしょう?』
『『『えっ?』』』
『これっきりよ。樅人、向日葵よく見てなさい』
『我が魔力の源よ!今この時より我が魔力の媒体をこのカラスに移す!我が命の炎尽きる時迄、この契約は続くものなり!』
『薔薇!』
『『お母さん?』』
『これでいいわ~、後はあんたがしっかり育てるのよ~、分かった?いいわね!』
その日からそのカラスは立花家の家族の一員になったの。
そして私はその子に“蒼”と名付けて、大切に大切に育てたのです……。