入学式①
桜が春の風になびく頃、僕は校庭の水道の横にたたずんでいた。
多くの新入生が校門をくぐっている。期待に胸を躍らせる生徒もいれば、緊張な面持ちの
生徒もいる。彼ら、彼女らは、これからどんな人生を送るのだろうか。いや、僕が気にすることでは
ないか。僕もその生徒の一人なのだから。まず自分の心配をしよう。
僕はあえて、家から離れた高校を選んだ。近隣の高校もあって、自分の学力に見合っていて、
僕が通っていた中学校からその高校に入学する奴もけっこうな数だ。
僕は知り合いが少ないこの高校を選んだ。なんとなく新しいスタートを切りたかったのだ。
だから偏差値を下げてでもこの高校にした。
僕は校舎の壁に貼られている新入生のクラスの振り分けを覗いていた。
「3組か...」
そうつぶやいた時だった。
「おう!翔も3組なのか?」
後ろから肩を叩かれながら、男は声を発した。
僕は振り返ったら、その男の顔に多いに見覚えがある。
こいつの名前は宗一郎。同じ中学出身で、一番仲良かった奴だ。
さすがに、誰も知り合いのいない高校に行くのは、近隣にはなく、通勤時間とか
考えて現実的に無理だった。むしろこいつが、いたからこの学校を選んだまである。
休み時間になるたびに、机に伏せて寝たふりをする学校生活じゃ送りたくなかったからな。
いっとくけど、ホモでは断じてない。
「3組...らしい」
「らしいってなんだよ(笑)」
「されより宗一郎も3組なのか」
「ああ、一年間よろしくな!」
俺はこいつが3組で少し安堵の表情を浮かべた。