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プロローグ

 

 荒れ狂う気候の中、一隻の飛空船が暗闇とその中で走る一筋の光に向かって飛んでいる。暗闇はまるで飛空船を待っているかのように、不気味に光を伴っている。飛空船がそこに突っ込むや否や、光が船底に直撃した。次々に光が飛空船を襲う。そしてとうとう船は制御を失い、燃え盛る火と共に、暗い海面へと落ちていった。しかし突然、赤い光が輝いたと思うと、空中で落下が止まった。だがすぐに光は消え、船は海へと飲み込まれた。


 



 昨夜の嵐で村は朝早くから、大人子供関係なく仕事に追われた。このメリピート村と近くの賢者の森といわれている場所を通るルートの飛空船が次々と墜落しのだ。海にはその残骸、乗客、積み荷と、運び出さなければいけないものがたくさんあった。いつもなら例え嵐が来てもものともしないのだが、今回はほぼ全ての飛空船がやられていた。それほどに異常な規模の嵐だった。


 ここらの海を領内にしているレハイル帝国の兵と賢者の森から貸し出されたエルフたちと村は総出で励んだ。一週間ちょっとかけて、あらかた救出、回収された。乗客は重傷者軽傷者ともに多く、死者も多数でた。重傷者の中にはまだ意識の目覚めない者もいる。


 リラン・アッシェーテはその中の一人である青年を見ていた。リランは漁師の娘で、明るく、綺麗な赤毛をポニーテールにしている。そんなリランの父親が運んで来た青年を手当てした。しかし、周りの人は二、三日以内に死んでしまうか意識を取り戻すかが多数なのだが、残念ながら青年は少数派だった。いまだにこの青年は目覚めない。


 リランは不安だった。しかし、漁師の娘に出来ることといったら医者にみせ、絶対安静の中見舞いに来て祈るだけだ。リランは救出から九日目の今日も仕事――四日目からは女たちは食事や毛布の洗濯、指示された看病をした――を終えたあと、一人彼の所へ来た。


 彼の整った、それでいてとらえどころのない顔を見る度、彼のこれまでの人生、声、瞳の色、性格、どういう人間かを想像する。いったいどういう声なのか、意外と低く渋い声なのか、高いのか。瞳の色は青いのか、黒いのか。優しい性格なのか、怒りっぽいのか。何が好きで、何が嫌いなのか。夢はあるのか。リランは青年の何もかもを知らない。だが不運だったとだけで、自分と同じような年の男の子が死ぬところは見たくなかった。だからリランは祈った。彼の声を、性格を、夢を、瞳の色を、知る機会が訪れますように。



 最初に知ったのは瞳の色だった。



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