IV お風呂っていいですよね
皆さんお風呂好きですか?自分は大好きです。
お風呂っていいですよね
応客室で話し終えた俺たちはしばらく雑談をしていた。
そうして暫く話していると部屋の扉がノックされた。メイド長が入室し
「レイヴ様、ご食事の準備が整いました」
一礼し、食事の用意を知らせる。
「うん、ありがとう、それじゃ、いこうか」
俺とレイナは席を立ち、メイド長と共に食堂に向かう。
「そういえばそちらのお客様の名前はなんとおっしゃるのですか?」
メイド長はレイナに声をかけた。これから呼ぶときなどに知らないと不便だからだろう。
「あ、私はレイナといいます。これからレイヴさんと行動を共にさせていただきます」
レイナぺこりとメイド長に頭を下げて自己紹介をした。
「かしこまりました、よろしくおねがいします、レイナ様」
メイド長との自己紹介をしながら進んでいると食堂に到着した。
「ここが食堂だよ。ゆっくりくつろいでいいからね」
俺はレイナを中へと促した。
「はい、ありがとうございます」
そう言ってレイナは中へと入る。
「うわぁ、すごいですねぇ……」
レイナは並ぶ料理を見て感嘆の息を漏らした。
「でしょ、うちのメイドの料理は俺も自慢なんだ」
そう言って俺たちは席に着いた。
「ところでレイヴさん」
「ん?どうしたの?何か苦手なものでもあった?」
レイナに声をかけられて思わず問い返してしまった。
「いえ、苦手なものはないのですが、少し素朴な疑問がありまして」
レイナは少しずつ料理を味わいながら俺に問いかける。
「レイヴさんはアルディーンの街以降の予定は何かあるのですか?」
「あぁ、うーん、ないね、考えてもなかった」
俺は苦笑しながらもそう答えた。
一瞬呆気に取られたレイナは
「なるほど、では取り敢えずアルディーンについたら宿を取ってそこで今後の予定を決めましょう」
「うん、わかった。じゃあ先にギルドに行ってそのあとに宿探しをしようか」
「はい、了解しました」
そういった話しをしながら俺たちは食事を終えた。
「さて、食事も終えたし、お風呂の準備も終わってるから取り敢えずレイナの部屋に案内するね」
俺達は食堂を出て、レイナの部屋に移動する。
「はい、ここがレイナの部屋だよ。緊張する必要もないからゆっくりしてね」
俺はレイナを中に入れる。
「うわぁ、すごい部屋ですね。ベッドもフカフカですし」
レイナは部屋に入って感動していた。一応客室の中で一番いい部屋用意したから満足そうでよかった。
「じゃあ、俺は部屋に行くね、俺の部屋はそこ曲がってすぐのところだから、何かあったら声かけて、鍵も開けておくから」
俺はレイナにそう言って部屋に戻った。
そうして部屋に戻った俺は迷わずベッドにダイブした。
なんだかんだで結構疲労が溜まってたのかも知れない。風呂にも入ってないから寝たい気持ちを抑える。
「取り敢えず明日朝起きたら準備して直ぐにアルディーンに向かうか……」
俺はそんなことを一人でつぶやきながら明日の予定を考える。
そうして考えて数十分が経った頃に、扉がノックされ
「レイヴ様、ご入浴の準備が整いました」
メイドが風呂の準備を教えてくれた。
「うん、ありがとうすぐに向かうよ」
俺はそう言って部屋を出て風呂場に向かおうとしたが
「そういえばレイナは風呂の場所知らないな……」
そう思ってレイナを風呂場に案内することにした。
レイナの部屋に到着し扉をノックする。
「レイナ、お風呂の準備が出来たらしいから案内しようと思うけど、今大丈夫かな?」
扉越しに声をかける。
「はい、大丈夫です、今出ますのでちょっと待ってください」
レイナはそう言って準備を始めたようで、物音がする。
そうして待ってから2分ほど経って扉が開いた。
「お待たせしました、それではお願いします」
「うん、じゃあ行こうか」
風呂場に移動している途中
「そういえばレイヴさんはお風呂のあとは予定はございますか?」
突然そんなことを聞いてきた。
「うん?お風呂のあとはそうだね、寝るぐらいじゃないかな」
「あ、そうなんですか、分かりました」
レイナは何故か嬉しそうな顔をしてそう答えた。
「どうしたの?何かあった?」
少し不思議に思った俺はレイナに質問した。
「い、いえっ、特に何もないんですがなんとなく聞いてみたといいますか」
「そっか、あ、着いたよ、ここがお風呂」
そうして話しているうちに風呂場に到着した。
風呂場は男用と女用で二つに分かれている。当たり前のことなのだが。
場所によっては混浴が普通というところがあるらしいが、俺は正直それは勘弁して欲しい。
風呂ぐらいゆっくりしたいのだ、異性が一緒に入ってるなど気が散って仕方ない。
そういった都合も含めて俺はこの家の風呂を男と女に分けた。
自分の家の風呂でくつろげないなんてまっぴら御免である。
そうして俺は脱衣所に向かった。今まで仲間も一緒に暮らしていた家なので結構広めだ。
2家族ぐらいならしっかり入れるぐらいの広さはある。
俺はこの風呂場もこの家の自慢の一つだと思っている。
実はこの家買ったあとに別の場所に持って行ってからかなり改築してある。
この風呂場も俺と仲間の意見によって大幅に改造されたのだ。
そして風呂場に入った俺はまず体を流し頭から洗い始める。
洗う順番は人それぞれ違うと思うけど俺は頭→顔→体という順番で洗っている。
一通り洗い終わった俺は湯船に入った。湯に浸かってゆったりとする。
風呂に入ってると余計なことを忘れてのんびりできるからいい。
そうしてゆっくりして30分ほど経った。
俺は風呂から出て体を拭いて服を着る。そして風呂場をでる。
出るとレイナが椅子に座って待っていた。
「あ、レイナ、待っててくれたんだ」
レイナの髪はしっとりと濡れていた。
綺麗な黒髪は濡れることにより艶があって非常に綺麗だった。
髪だけでなくレイナ自身も温まって体温が上がったのか肌が若干赤みがかっていて非常に色っぽかった。
そうして俺がレイナに見とれていると
「あ、おかえりなさい、レイヴさん意外とお風呂長いんですね」
レイナはふふっと笑ってそう言ってきた。
俺としては風呂はゆっくりできる数少ない場所だし長いこと入っていたいと思っている。
だから毎日何があっても基本的に風呂は欠かさないし毎回長いこと入っている。
仲間たちにも長いと言われたりもしたが。
俺が苦笑しながら昔のことを考えて
「まぁね、お風呂はゆっくりしたいから、いつもこれぐらいだね」
「なるほど、私もさっき出たんですけどいいお風呂ですね」
「でしょ、自慢のお風呂なんだ、仲間たちと意見出して改築した家だしね」
俺は昔のことを思い出してレイナを見る。
レイナはニコニコしながら俺の話を聞いてくれている。
いい子だなぁ、と思いつつこの家の経緯を話す。
「この家は昔俺たちが仲間になってクエストとかこなして生活が安定した頃に買った家なんだ。それでも結構厳しかったけどね。
そうして買ったこの家をアイテムボックスにしまって外に持ち出したんだ。そこで皆で意見を出して理想の構図を作った。
そしてみんなの魔法とかで改築してできたのがこの家なんだ」
俺が昔のことを思い出して話をしているとレイナはぽーっとしながら
「魔法でこの家を改築したんですか?仲間さんも一体何者なんですか……」
レイナが今の話を聞いて驚いていた。
そういえば向こうの世界の実力はこっちでは圧倒的なんだったか。
俺たちは向こうでも一応トップレベルの実力者だった。
トップではないのは表に実力が出ていない者達が自分より強いことがあったりするからだ。
それでも表に出てる人の中でも自分たちはほぼトップだった。
多分あいつたちもこっちに来たら規格外レベルだっただろう。俺はそう確信した。
「まぁ、さっきも話した通り俺たちは別の世界の人間だから、こっちの実力とは違うんだと思うよ」
「その世界恐ろしくて行きたくないです」
レイナは切実にそう言った。確かにこの世界の人間なら向こうの実力的に行きたくないだろう。
俺が逆の立場なら絶対に行きたくないと思うはずだ。
自分の手も出せないような実力者がウジャウジャいるようなところに行ってもクエストすらできるか危ういのだ。
クエストができないなど何かしらの仕事がない限り死活問題である。
逆に俺の場合はこっちのクエストは簡単すぎるんじゃないだろうかという疑問が残った。
あっちの世界のランクBモンスターがこっちではランクSとか普通にありそうだ。
モンスターが共通してるとは言えないため何とも言えないが。
俺がそんな疑問を考えているとレイナが真剣な面持ちで
「でも、レイヴさんがあっちに帰ると言うなら、私も付いて行きます」
「でもあっちの世界に行っても大丈夫?俺の予想ならこっちの最強があっちの2流なんてこともありえるんだよ?」
俺はレイナにそう問いかけた。実際あり得るのだ。
あっちでは上位とはいえ特出した強さでもなかった俺がこっちに来てみれば規格外レベルだ。
つまり基本的な人間やモンスターの強さはあっちのほうが全体的に高いことになる。
もし仮に俺だけが強いとなると俺だけが何らかの理由で強くなったと言われても納得できる。
しかしこっちの人間の強さや、モンスターの強さ、あっちの俺の仲間の強さを考慮すると先ほどの考えになるのだ。
「確かにそうかもしれません、でも、もし私がピンチになったらレイヴさんが助けてくれますよね?」
レイナはそう言って眩しいほどの笑顔で俺に期待の眼差しを向けてきた。
ずるいなぁ、こんなの、断れるわけないじゃないか。
でも、正直こういって頼まれなくともレイナに何かあれば助けるつもりではいた。なので
「あぁ、もちろんだよ、俺の力の届く範囲なら確実にレイナを助けてみせる。仮に俺の力が足りなくてもレイナだけでも逃がしてみせるよ」
俺はレイナの問いかけに真剣に答えた。
もちろん言っただけなんてことはなく実際にそうするつもりだ。
レイナの身に何かあった場合、俺の力で勝てるならレイナを助け出す。
俺の力が足りずに助けることができないならば、俺は死んでもレイナを逃がす。
今、俺はそう誓った。
「レイヴさんの力が足りないことなんてあるんですか?」
レイナが冗談っぽく笑ってそういった。
そして風呂から出てそこそこ時間も経ったので
「じゃあ部屋に戻ろうか。風呂あがりでこんなところにいたら風邪引くかもしれない」
「そうですね、戻りましょう、そして、ありがとうございます、嬉しかったですよ」
レイナは再び満面の笑みで俺のことを見てそう言った。
こうやって感謝されるなら俺も嬉しいというものだ。
俺の中のレイナは既にかなり大きな存在となっていた。少なくとも自分を犠牲にして助けようと思うほどには。
俺は一つ一つの仕草に愛らしさや可憐さを垣間見せるレイナに無意識のうちに見とれていた。
「レイヴさん?どうしたんですか?聞こえてますか?」
レイナが心配そうな顔で俺の顔を見上げながら胸元をツンツンとつついた。
その行動で俺はようやく意識を取り戻し、レイナを見た。
自分の胸元ぐらいまでしかない小さめの身長、長くて綺麗な漆黒の髪、少し垂れ気味の目や綺麗に整った顔
大きくはないが決して小さくもない胸。すらっと細く長い足。
今改めてレイナの全身を見たが、非常に美形だった、この子。
「あぁ、ごめんごめん、ちょっとぼーっとしちゃって、なんでもないから大丈夫だよ」
「そうですか?ならいいんですけど……」
レイナは少し残念そうな表情でそう言った。俺にはその表情の意味が理解できなかった。
そして特に深くも考えずに部屋に戻った。