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朝起きたら違う世界にいた。  作者: *蜻蛉羽
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III 俺の家、再び

俺の家、再び


レイナが仲間に加わった俺は引き続きアルディーンへの道を進む。


「さて、どうせ明日にはアルディーンにつくし、早めに野営の準備しようか」

俺は振り返ってレイナに声をかけた。

レイナは何かを考えているのかぼーっとしたまま俺の声が届いていないようだ。


「レイナ?聞こえてる?」

俺はレイナの肩をチョンチョンとつついた。


レイナはそれでようやく気がついたようで

「っ!あ、すいません、少しぼーっとしてました」

ビクッとしたあとに申し訳なさそうにもじもじし始めた。なぜもじもじする……

「どうかした?具合悪かったりする?」

俺はなんとなく体調が悪いのかと思い聞いてみた。


レイナはほんのり頬を赤く染めて

「い、いえっ、体調が悪いとかじゃないんです。それでなんでしたっけ?」

と言った、可愛いなこの子。

「あぁ、そろそろ野営をしようかなと思ってね、ちょっと早いけどどうせ明日に着くんだし、いいかなって」

「なるほど、それもいいかもしれませんね、では場所の方はどうしますか?」

レイナは周りをキョロキョロと見渡して俺に聞いてきた。


「場所は、ここでいいんじゃないかな?」

「え、ここ……ですか?周り木ばっかりですしモンスターも出ますし、大丈夫ですか?」

レイナの意見は最もである。寧ろこれが一般論である。レイナは悪くない。

確かに周りは森で木しかない、正直こんなところで野営をするのは無謀というものだろう。

「うん、そうだね、でもアイテムボックスに家入れてるし問題ないよ」

俺はそう言ってアイテムボックスから家を取り出した。

これのいいところは周りの障害物を無視してものを設置できることだ。もちろん元々そこにあったものは壊されたりしない。

つまりこの家をもう一度仕舞ったらここはもとの風景に戻るということだ。

「さて、これが俺の家だよ。入ろっか?」

俺はレイナにそう声をかけたが、レイナは口を開いて固まったままだった。

「レイナ?またぼーっとしてるよ?」

俺はそう言ってレイナの頬をツンツンとつついてみた。ぷにぷにしてた。


「ひゃぁっ!な、何をするんですかっレイヴさんっ!」

レイナはビクッとして数歩距離をとった。ひゃぁって、可愛いな。

何か最近レイナのこと可愛いってよく思うようになってきたな。

可愛いから仕方ないと思います。

「いや、またぼーっとしてたからさ、どうしたのかなって思ってさ」

「あ、すいません、ちょっとこの家にびっくりしてしまいまして、すごい大きいし……」

レイナはまたも俯きつつそう言った。

確かにこの家は当時の俺たちからしたら結構高かった物件だ。

この家を買うためにクエストに没頭して数ヶ月かけてやっと買った家だ。

「うん、ちょっと値が張ったからね、この家、1200万ガルだったかな?」

俺はそう言ってからこの世界の金の価値が違うことを思い出してハッとした。

案の定レイナが目を見開いて

「1200万ガル……?本当に言ってるんでしょうか、その金額なんて一般的な冒険者で一生かけて稼げるかどうかの額ですよ?」


やっぱりか……


1200万ガルはあっちの世界だと1年あれば稼げるぐらいの額だ。

こっちでは一般の冒険者一生で稼げるかどうかか……

少し気になったので自分の所持金を確認してみた。


384,175,927,481ガル


言わないほうがいいかなこれ。約4千億ガルあるんだけど……

これこっちの世界じゃ一生遊んで暮らせるんじゃないか?

クエストとか行く意味ないよな……

そういったことを考えていると

「あの、どうしたんですかメニュー開いてぼーっとしてますけど、何か考え事ですか?」

そう言ってレイナが俺の服の袖をくいくいっと引っ張ってきた。仕草が一々可愛いなこの子。


「あぁ、いや、今ちょっと自分の所持金を確認して言葉を失っちゃっただけだよ……」

俺は遠い目をしてレイナにそう言った。

するとレイナは勘違いしたらしく

「お金、ないんですか?少しでしたらお貸しできますが……」

レイナがそう言ってきた。女の子にお金を借りるなんてとんでもない。俺は慌てて

「いやいや、お金がないってことはないんだ。ただ、その……」

俺は今この事実をレイナにいうか迷った。引かれるんじゃないかってちょっと怖かった。

引かれるだけならまだいい。距離を置かれたら最悪だ。

この移動中にレイナのこと結構気に入ってたんだな、俺。


「どうしたんですか?フフ、今更レイヴさんのことじゃそうそう驚きませんよ?」

レイナは微笑みながら俺にそう言ってくれた。俺が不安なのに気づいたようだった。

素直に嬉しかった。

「そっか、いや、ありがとう。実はだね……」

俺はそう言って所持金をレイナに見せた。


「約4千億ガルですか……大貴族のレベルじゃないですねこれ」

「そうなの?まぁいままでクエストやって稼いできたお金だしねぇ」

俺は今まで仲間たちとクエストをこなし、酒場で騒いだりといった生活をしてきた。

それだけで貯まった金が大貴族以上の所持金になるとは思ってなかったな……

そしてふと思う。

「あいつら、元気してっかなぁ」

「え?あいつら?知り合いのお方ですか?」

思わず口に出していたらしい。レイナが聞き返してきた。


「いや、何でもないよ。気にしないで」

「そうですか、気が向いたらお話聞かせてくださいね」

レイナが一瞬寂しそうな表情をして、直ぐにニコっと微笑む。

「うん、じゃあ、家に入ろっか?」

「はいっ!レイヴさんのお家楽しみですっ!」

俺はレイナを促して家に入った。


玄関を通って家に入る

「「「「おかえりなさいませ、レイヴ様」」」」

4人のメイドたちが出迎えた。

このメイドは俺が使役している人に近いけど人ではない生き物だ。

「うん、ただいま、一日休んでまた家出るからそのつもりでよろしくね」

「かしこまりました。そして、このあとのご予定は?」

メイド長が前に出て俺に聞いてくる。俺は1息置いて

「うーん、そうだね、とりあえずお風呂沸かしてその間にご飯を済ませようかな。この子の部屋を1室用意しておいて」

「かしこましました。それでは失礼いたします」

メイド達が下がっていく。


「レイヴさん、さっきのメイドさん達は……?」

レイナが恐る恐る聞いてくる。

「あぁ、さっきのメイド達は俺が召喚してる人間に近いけど人間じゃない生き物なんだけど」

「人間に近いけど人間じゃない……?ちょっとわからないです」

レイナは理解できなかったようだ。


俺は完結にメイド達のことを説明した。


「つまり、レイヴさんは使役した生き物を召喚できる、そしてあのメイドはその内の1つということですか」

「うんうん、そういうこと」

軽く説明したらちゃんと理解してくれたようだ。


「じゃあ取り敢えず移動しようか、玄関じゃちょっとあれだしね」

俺はレイナと応客室に移動した。

その時レイナが落ち着かないのか少しもじもじしている。

「緊張しなくていいよ?ここ俺の家だし、メイド以外誰もいないからね」

「はい、理解はしているんですがどうも落ち着かなくて」

レイナにはこの家に慣れてもらわないとなぁ、これからも度々来ることになるだろうし。


「そういえばレイヴさんってどこから来たんですか?」

レイナが質問してくる。やっぱり気になるか、仕方ないよな。

でも俺は別の世界にいて起きたら知らない場所でしたなんて話をして信じてもらえるとは思っていなかった。

「うーん、正直に言って俺の話は信じてもらえるか不安なんだよね」

これは素直な俺の気持ちだ。

自分なら正直言って信じないと思う。

しかしレイナは

「レイヴさんが本当だというなら信じます。第一嘘をつく理由なんてないでしょう?」

「ありがとう、レイナ。じゃあ俺が君と出会うまでの経緯を話すね」


俺は朝起きてからのことをレイナに話した。

レイナはその話を聞いて笑うでもなく悲しむでもなく真面目な面持ちとなった。

「なるほど、つまり今いるこの世界のことは全く知らないということですよね?」

「うん、そうだね。前の世界との共通点があるなら分かる部分はあるけどこの世界にしかないものは……」

レイナはそれを聞くとニコっと微笑んで

「では私がこれからあなたにこの世界のことを教えていきます。アルディーンの街についたあともあなたに付いて行きます」

と言ってくれた。俺は思わず

「そんなに簡単に決めてもよかったの?もう少し考えなくても大丈夫?」

と聞いてしまった。なにせ一人の少女が出会って少ししか経ってない男に付いて行くというのだ。心配もするだろう。


しかしレイナは

「はい、私は大丈夫です。寧ろ付いて行きたいです」

決意の眼差しであった。こうなっては最早反対する意味もあるまい。

「わかった。これからもよろしくね、レイナ」

俺はレイナに感謝し、一緒に行けることを喜んでいた。

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