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DH  暗闇の手 激動(第二部)   作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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信頼と裏切りと真実と偽りの交わり(2)

信頼と裏切りと真実と偽りの交わり(2)



渡部がデトロイトに到着したとき、すでにブラウン一族の抹消は終わっていた。


付け加えると、専用機に乗っていたはずの渡部は途中のロサンゼルス国際空港で緊急乗換えをすることになった。


アメリカにいるオーストラリア出身者、旅行者による大規模なデモが各地で起きていたのだ。


どこからか情報が漏れ、この専用機のコースと、乗り込んでいたマクドナルドもターゲットの1人となっていた。


日本とアメリカによる合同作戦だったのではという噂も流れ、日本の親善大使まで加えられたらしい。


しかし、親善大使とはいえ、渡部というWRの上層部も乗り込んでいるこの情報が漏れたことは過去に一度としてないことだった。


それはWR組織内にスパイもしくは裏切り者がいることを表していた。


つい先ほどまで藤原と話していたアメリカの現状とWRの状況が表面化している非常事態がまさに今現在なのである。


「マクドナルド、ブラウンとは連絡が付かないのか」


この空気の中でも渡部は冷静そのものだったがその反面、ブラウンとの連絡が付かないことに関しての苛立ちはピークに近づいていた。


「申し訳ありません。この状況を生み出したブラウン前大統領は一族すべてが抹消されたようです」


「誰がその指示を出したのだ。アメリカには私よりも上の役職はいないはずだが」


「情報が混乱していて分かりませんが軍部の幹部クラスの行動だと言われました」


「デトロイトの施設に何か動きはあるか」


「いえ、平穏のようです」


「マクドナルド、お前はまだWRの人間と考えていいのだな」


「それはどういう意味ですか」


「お前個人のタブホの履歴を日本の施設からハッキングしてもらっていたが何故ドイツへ連絡を入れているのだ」


「お前が今言ったことは本当だろうが、一族が抹消されたのはブラウンの退任後すぐなのか」


「申し訳ありません。軍部の指示で隠していました」


「お前が話した相手は誰だ」


「ブラウン元大統領です」


「やはりか。生きていたのだな。1人ドイツに逃亡していたというわけか」


「その為に一族のすべてが変わりに抹消処分となりました」


「それでブラウンとどんな話をした」


「自分は新しい世界の誕生の助力をすると言っておられました」


「軍部はどうしてブラウンの逃亡を見破れなかった」


「退任後すぐに身柄を確保しようとしたらしいのですが消えたらしいです」


「ステルススーツか」


「ステルスと言われれば、そうなのかもしれません」


「いると思われる方角に発砲はしてみたのか」


「全方位発砲は試したらしいのですが手ごたえがなかったようです」


「全方位と言ったが地面や空中までは発砲していないと思うのだが」


「そうかもしれません。自分もそういう発想はありませんでした」


「それは仕方ないとして、まさかWRのデータまで持ち運ばれていないだろうな」


「少量のようですが持ち去られているようです」


「それで軍部もお前も私に隠したかったのだな」


「それとだ、少しそのままで動くな」


そういうと渡部はマクドナルドの服の中に仕掛けられた何かを取り出した。


「あなたはそんなことまで知っておられたのですね」


「お前を日本の親善大使に推薦したのは私だからな」


「はい」


「もう大丈夫だ。過去に日本にもドイツから派遣されてきた人間がいたが原因が掴めないまま脳の一部が焼き焦げて死んだ事件があった。良い青年だった。ドイツにはもちろんその死体を返却したが日本側で火葬し、骨としての家族に返した。その骨は培養技術で作り出したものだ。本物の死体は冷凍保存ののちに研究に研究を重ね、まだ明るみになっていない周波数が使われた形跡が確認された。脳のチップはあくまでも終着地点で命令を出す箇所は特殊な素材で出来たインプラントの中に残っていた。人工衛星を使った遠隔操作で稼動する世界最小のコンピュータのようなものだったが命令できることは唯一つ。意志や命令を司る脳の一部分の焼却のみ。」


「そんなことを」


「お前が気付かない間に着させられているそのスーツもWRではなく、その組織の者の仕業だ」


「何故、お分かりに」


「その周波数を検知する機能が私のムーブには仕組まれている」


「もう私の理解できる範疇を超えている事が起こっているということなのですね」


「そういうことだ。私だけでは二人ともすでにこの世には存在していなかった」


「どういうことですか?」


「日本で搭乗する時点ですでにお前に仕込まれたその装置は機能を失っていた。イザベルに感謝しろ」


「さすがイザベルさん。しかし、こんな小さなものが」


「取り外しはしたがまだ安心は出来ない。何しろ濃度の高い化学兵器を含んだ装置だ」


「もしこの装置が稼動していたら」


「周囲2kmは即死、広範囲に後遺症で苦しむものが出ていたと思われるがあくまでも私の思う予想であってもっと悲惨な光景になるのかもしれん」


「ドイツとの連絡をした私を何故疑わなかったのですか?」


「疑わなかったわけではない。だから色々と質問をしただろう」


「はい」


「お前はお前どおりだと分かったから、つい先ほど、疑いが晴れたばかりだ」


「そういうことでしたか」


「お前の欠点はこういうときには欠点ではなくなる。賢い人間ほど、難しいからなあ」


「その言葉、バーバラさんにも言われたことがあります」


「そうだったな。お前はバーバラに可愛がられていたからなあ」


「バーバラさんをあんな風にお変えになったのはあなたですよ」


「いや、私を蘇らせたのがバーバラだ」


「私はもうあの事件の時には事務管理の仕事(表の幹部クラスの仕事)で世界中を飛び回っていましたが前日も会話した内容を今でも覚えています。どうすればあの鈍感を振り向かせることが出来るのかって言われてました」


「そうだったのか。声を掛けられた時にはもう振り向いていたのだがな」


「私は気付いていましたよ」


「お前はこういうことに関しては」


その先の言おうとするが渡部は言葉を詰まらせている。


「すいません。思い出させてしまいました」


「いや、いい。俺が思い出させたのだからな」


「スミス所長にお会いになるための訪米ですか」


「いろいろと理由はあるが、それも1つだ」


「分かっております。もちろん私も同行させていただきますので」


「よろしく頼む」


乗換えを無事に終え、こうして渡部を乗せた機体はデトロイトに到着した。


渡部とスミスの再会が訪れようとしていた。


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