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DH  暗闇の手 激動(第二部)   作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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(1) 大いなる宣言(終)

徹底的に跡形すら残さない撤退に成功したアレクシアとドイツだがその行動すら計画の1つにすぎなかった。


「中国から連れてきた研究者たちは無事にマイクロチップの装着が済んだのだな」


撤退後も特に変わった様子のないアレクシア。


「はい、全員埋め込みに成功しました」


「それでよし。表の世界の素の天才たちこそ、このマイクロチップの仕様が生きる。死ぬことの無い程度にクロックアップを最大限に上げるのだ。所詮は他国の駒だ。実験台には丁度良い」


「分かりました。あちらの準備の方もまもなく完了します」


「今日が世界に向けての本当の宣言だとは思っている人物はいないだろうね。世界が目を向けないのなら目を向けるようにさせればいいだけの事」


アレクシアの言葉に自信が溢れ出している。


「アメリカを陥れ、世界との結束に大きなヒビを入れると世界はどうなるでしょうね」


その表情には笑みさえ浮かんでいる。


「アレクシア、今回の失態の責任、この計画が成功すれば帳消しにしてやる。しかし、今回は最後まで冷静に行動するように」


姿は見えず聞こえてくるのはスピーカーからの声のみだったがアレクシアの表情は先ほどの余裕すらなくなり青ざめた顔をしている。


「申し訳ありません。これほどに手こずることになるとは思いませんでしたがそれと引き換えに大きな収穫も得てまいりました」


真正面のカメラに向かい、アレクシアが話しかけている。


「そのことについては自分の予想も超えた力が働いていることが分かったので許そう。お前が中国に行っている間に他の部隊も目立つことなく動くことが出来た」


「撤退は計画のうちですがまさかこれほど短い日数になるとは思いませんでした」


「次期首相の器を読み誤ったのは私も同じだ。お前だけを責めるわけにもいかないが今日の計画は備えの無い国への脅迫になると同時にドイツ側につく国も出てくる。ここからがWRとの本当の戦いになる」


「はい、承知しております」


「アレクシア、良い報告を待っている」


謎の人物との連絡が終わる。


「首相、ブラウン大統領から連絡が入っております」


「ようやく連絡が来たか」


「はいアクレシアです」


「これはこれはアレクシアさんご無沙汰しております。今日のドイツの天候はよろしいですかな?」


篠山首相との会話にはない口調のブラウン。


「ブラウンさん、それよりもトールハンマーの準備の方は出来ておりますか?」


「もちろん出来ております。アメリカとしてもトールハンマーの使用実験はしてみたかったのですが、機会に恵まれず中断しておりましたのでドイツのご提案に乗ることにしました」


「私どもの科学力を持ってすればその兵器も兵器の使用された場所もすべてが隠し通すことができます。ブラウンさんもその確認はしていただけましたでしょうか?」


「もちろん確認しました。それで今回はどの場所を目標に」


「実験といいながらも実践ですから他国と隣接が無く大きな領土となればオーストラリアの砂漠地帯などいかがでしょう?」


「なるほど、あの地域なら自然現象としてトールハンマーを隠し通せそうですね」


「しかしアメリカという国は抜け目のない人物がいつも実権を握っておられるのですね。日本にも媚を売り、こちら側にも恥ずかしくも無く連絡をされてくるとは思いませんでしたが」


「アメリカという国がこれからも生き残る為に私は動いているだけです」


「そうでしたわね。それでは時間通りによろしくお願いします。こちらの準備は出来ております」


「こちらも準備出来ましたので今回に限り、遠隔操作にてコントロールをお願いします」


「承知いたしました。それでは後ほど」


アレクシアとブラウンの会話が終わった。


「しかしアメリカという国もあそこまで落ちぶれたものが首相を務めるようになったとはいよいよ崩壊が近いわね。今回の件でブラウン大統領の退陣は本決まり。大国アメリカの同盟国への宣戦布告に世界は慌てふためくことになる。ならなくても世界中の人間が恐怖する出来事として記憶に残る」


「首相、準備整いました。トールハンマーの管理権のすべてを掌握しました」


「よろしい、それではオーストラリアの左半分を焦土とかしなさい。その後、権限をすぐにアメリカに戻しなさい。半分といわず全てといいたいところですが生き証人を残すことも大事ですからね」


「それではオーストラリアに向ってトールハンマーを落とします」


アメリカの所有するトールハンマーはその名の通り北欧神話の中に登場する雷神の神トールが手にしている武器を意味する。普段は地球の衛星軌道上で人工衛星の1つとして稼動しているように見せかけているが本当の姿は宇宙から目標に向かい攻撃できる宇宙兵器の1つである。

トールハンマーという言葉には似合わず小型のスペースシャトルを思わせる高性能爆弾を装備している。

しかしこの兵器の恐ろしいところは別の部分にあった。

燃料が小規模装置ながら時代遅れの核を利用しているのだ。

宇宙では不具合の多いソーラーパワーよりも軍事運用であるために燃料として信頼性の高い核融合装置が採用されてしまったがその信頼に応えるかのように稼動し2年を経ているが故障などの不具合は一度も記録されていない。


「軌道上の計算に間違いはないか」


アレクシアの声が強張る。


「再度確認いたしましたが大丈夫です」


「トールハンマーの核を傷つけずに計算どおりの箇所に遠隔小型爆弾を仕掛け、目標に落とせ」


アレクシアの命令に従い、ヒューマノイド部隊は稼動待機させているトールハンマーに次々とステルスタイプの遠隔型爆弾を仕掛けてゆくとすぐに去ってゆく。


このヒューマノイド部隊はステルス素材を使用しているためにどの映像にも映らない。


トールハンマーの行動を見守っていたアメリカ側も計画通りに実験が行われることだと信じていた。


しかし、このブラウンの取った行動がオーストラリアという国をほぼ跡形も無く滅ぼす結果になるとはこの時点でアクレシアでさえも予想していなかった。


「ヒューマノイド部隊がトールハンマーが落ちてゆくのを確認したとの連絡が入りました」


「あとは世界の動向を待つとしましょう」


トールハンマーが落ちてゆくことに驚愕したブラウンはアレクシアとの連絡を取ろうとしたがその後は繋がることはなかった。


気付いた時にはオーストラリアの大部分が隕石のように落ちてきたトールハンマーによって破壊された映像が世界中に流れていた。


そして、この時に初めてドイツの真の科学力の一端を垣間見ることになった。


オーストラリアが焦土と化し世界中がその映像に目を疑っていると、星条旗の入った人工衛星トールハンマーの落ちる姿が世界の全てのメディアで1日中流れ続けたのだ。


何者かによる大規模なメディアジャックは犯行声明もなく、24時間後にはどのメディアも正常に戻り、ブラウンの隠蔽を公表したいものの仕業ではないかと噂された。


アレクシアとブラウンの会話も多少の加工がされ、ブラウンがオーストラリアに落とすことに躊躇いどころかあの国なら丁度いいと話している会話も同時に流された。


アレクシアの方は必死にその案を静止しようとしている声が収められていた。


これには世界中からブラウンに非難が注がれ、これは本物なのか偽物なのかメディアが殺到し、ブラウンはすぐに世界中のメディアにこれを否定した。


一方、ドイツのアレクシアは非公式な会談の話なのでお話しすることはありませんと本物であると認めるかのように答えたがその後はメディアに姿を現すことはなかった。


その人工衛星が核融合によるエネルギーで稼動していた証拠を示すアメリカ軍の極秘資料がネット上で流出した。


ほぼ消滅といっていいほどのオーストラリアという国の姿に世界中から核廃絶の運動が巻き起こり、その運動はデモやテロを生むにまで大きくなっていくことになった。


しかし事態を重く見た世界のトップたちは隕石説で珍しく意見が統一され、核だとここまでの規模にはなることはないと、さらに宇宙からの防御に向けた軍事兵器の開発が必要だと発言する国さえ出てきた。




その頃ドイツでは。


「総統思うようには行きませんでした。申し訳ありません」


「何を言っているアレクシア。これで十分じゃないか。彼らは人民の掌握のために時間を掛けなければいけなくなった。そして世界中の国がアメリカに対して疑心暗鬼になっている」


「しかし、これでは今までとあまり変化はないか、時間とともに忘れられていくような気がします」


「アレクシア。オーストラリアという国が一瞬で滅んだことは世界にとっては衝撃的な出来事だ。お前にとってはもう興味の無いことかもしれないが」


「すいません。人間というものが生きていること事態がこの世界を汚しているとしか思えませんので」


「お前のその思考は偏りがあるが嫌いな考え方ではない。しかし、神側であるこちらがその考え方ではバランスが悪い。人民はその都度その都度行動を起こすが上に君臨するものもそのコントロールを保とうとする。人間から見れば私たちの計画実行していることが悪魔に見えるかもしれないが」


「自分の都合の良いように考える。それもあたしが人間の嫌いなところの1つです」


アレクシアの口調が一瞬だが素の口調に戻ってしまうほど、人間に対して強い嫌悪感が見え隠れする。


「WRの中に神の啓示と呼ばれるものがいるらしいが」


「多分前回邪魔をしたものだとは思うのですがまだ正体を掴めていませんが現在調査中です」


「分かり次第すぐに教えてくれ」


「承知しました」


「今回の出来事は当分収束はすることはないがドイツ首相としては表に立つことは控えるのだ」


「WRにしてやられる可能性があるということですね」


「人間の中にも神が紛れ込んでいる可能性も否定は出来ない」


「人の死に痛みは感じませんが同じく神が存在しているということなら話は変わってきます」


「お前にとっての区切りはそこになることは知っている。しかし神としての仕事を忘れることのないように」


「理解しております。それから話は変わりますが総統はいつお姿を見せていただけるのでしょうか?」


「時間の進むままにその時が来る機会も訪れるかもしれないとだけ言っておくよ」


「私の方もこの先の計画を進めます」


「まだまだ計画の始まりでしかない。これから世界がどう変化していくかは人間次第だ」


「神を越えた人種が存在しない世界で今一度人類に問いただすことが私の与えられた仕事ですので罪と罰を与え続けていきます」


「それを乗り越えれるかは人間次第か、もしくはこの神を越える人類の存在が再び現れることで神も悪魔も」


「それ以上は」


「そうだな、存在もしない存在に期待することは我々神の存在を否定することにもなる」



オーストラリアの消滅に伴い世界中の首脳が集まり、全世界に向けて、平和宣言が行われ、その後、世界各地で鎮魂慰霊祭が催された。


その平和宣言に体調不良により不参加だったブラウンはその後自ら退陣を申し出たために、副大統領のジャクソンが臨時大統領として代役を務めることとなった。


WRに背き、ドイツ側とも手を結ぼうとしたブラウンは組織により抹消されてしまった。


しかし、体調不良からの急変による死亡として世界中にそのニュースは伝えられた。


アメリカの人工衛星説を唱えていた科学者たちは自ら責任を取ったのではないかとアメリカ政府に回答を求めたが返答はなかった。


WRとしてのアメリカも危機的状態に陥った中で訪米を予定していた渡部の専用機がアメリカのデトロイトに到着しようとしていた。


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