新たなる幕開けと戦いの始まり(終)
新たなる幕開けと戦いの始まり(終)
反ハオ勢力の勢いは盛り返す計画を立てていた。
葬儀当日の暗がりの中の出来事である。
「この失態をどうするのだ。お前が勢力を取り戻す時だと言ったから私はリホウ将軍と計画を実行した」
「勢力だけでなく、あなたは首相の椅子も狙っていたではありませんかトウカク将軍」
「そういうお前も副首相の椅子を狙っての計画だったのだろう、テイ党首」
「お二人とも、責任のなすりあいをされてももう組織にすべての報告が行っている頃です」
「だったらどうすればいいのだ。WRは一族もろとも処分する組織だぞ。それに加担したとなれば組織の人間ではないお前も例外にはならないぞ、ミンハン」
「分かっております。その為に各地で葬儀の日に暴動を起こすように仕組んだのではないですか?」
「そうだったな。それを自分の演説で収めて国民の信用を得る計画だったがこの際、民の信用などもうどうでもよいわ」
「暴動を大暴動になるように扇動すればいいのです。そしてWR組織からの脱退を宣言してやればいいのです」
「いや宣言は出来ないが脱退の意思を示すか」
「しかしあの未確認飛行物体といい私達に勝機はありますかね?」
テイが疑問を投げかける。
「勝機はあるのではない。自ら作り出すものだ」
「はい」
そこへトウカクの部下がやってくる。
「トウカク様、リャンミオの部隊が消えました」
「やはり動きおったか。予測はしていたことだがこれまでかもしれないな」
「明日の暴動はいかがいたしましょう」
「やめておけ。お前達部下の命まで捨てることは出来ん。これから私が投降する。自分の欲のために動いてしまった私の責任だ」
「しかしトウカク様、我々は戦えます。リャンミオの部隊といっても我々の部隊の1/10の人数に過ぎません」
「お前はリャンミオの部隊の恐ろしさを知らないのだな。ハオの警護としておとなしくしているリャンミオだがその一族が中国統一に暗躍していた影の部隊だ。チャンがあんなことさえ発言しなければ中国は分断することもなく偉大な中国でありえたのだ」
「それなら、なおさら中国の領土奪還とリャンミオの部隊の消滅を賭けて、戦う理由があります。トウカク様が新しい中国を導いてくだされば良いのです」
「もう言うな。私が決めたことだ。それにもうすでにリャンミオの部隊の一部が動いてきているはずだ」
その時、全身黒を纏った人物が暗闇の中から現れた。
「もう来たのか、リンシン」
「お前達がハオさまとリャンミオの居ない間に何を企んでいたのか既に調べはついた」
「リンシン」
トウカクの部下の顔色が青ざめている。
「リャンミオの兄、龍神のリンシンなのか」
「トウカク将軍、出来ればあなたに投降していただきたい」
「私もそのつもりだ。部下達に責任はない。すべて私の判断だ」
「それを聞いて信用できると思うか。この先あなたの部下があなたと同じように行動する確率の方が高い」
「WRの指示が出ているのか」
「WRなど俺には関係ない。私はハオさまとチャンさまを守る一人の影に過ぎず。チャンさまを守りきれなかったこの命生きるに値しないがハオさまのために影ながら動くと心に決めた」
「それなら我が中国のために手伝わぬか。チャンの目指した新しい中国を共に作ろうではないか」
「あなたの作ろうとしている国などに興味は無い。俺には国づくりなど興味は無い」
「お前との会話を楽しんでいる時間に我が兵士達が駆けつけてくれた」
「それがどうした。たかだか20人で何が出来る。龍の爪の餌食になるだけだ」
その会話の最中に逃げ出そうとしていたテイは一斬りにされた。
ミンハンはあまりの恐怖に立ち竦んでいる。
「お前達、やめろ。お前達の敵う相手ではない」
「しかし」
「いいから武器を捨てるのだ」
「分かりました。お前ら武器を捨てるのだ」
駆けつけた兵士は全ての武器を床に置いた。
「これでいいのだな」
「もう遅いと言いたいところだがハオ様からどうしても捕らえて連れてこいと言われている。お前達は命拾いしたな。後ろを見てみろ」
そこにはリンシン以外の黒装束を来た部隊が姿を現していた。
「これがチャン様の誇る龍の影と呼ばれる部隊か」
「側近であれ、部隊であれ、命令されれば殲滅することが私達の仕事だ」
「その部隊がわざわざ投降させるために動くとはこの国も変わったな」
「ああそうだ新生中国という国は生まれ変わった。チャン様の意志を継ぐハオ様によりさらに変わる」
「いずれ暴動が起きる。私が起こさなくても誰かが起こす。この国はそういう国だ」
「それでもハオ様の望む国を俺は守る」
「あの若造にはそれほどの力があるのか」
「武にしか頼れないあなたには分かることは無い」
「お前には分かるのか」
「チャン様が命を掛けて守られた。ハオは本物の龍になれると言い残された」
「他国に安易にテロリストを送りこまれるようでは我が国も地に落ちた事件だったな」
「あれは我が国の汚点だ。ドイツの首相自らあのようなことを」
「そうだったな。首相そのものがテロリストではな。あの話が本当なら」
「本当だ。私はすぐ傍にいた」
「お前達が殺した疑いもあるということだな」
「チャン様を守る為に戸惑いながらも何人かの幹部は斬ったがチャン様の救出には間に合わなかった」
「リャンミオですらあのような事が起こるとは予想できていなかった」
「お前は妹に一族の命刻を奪われて悔しくはないのか」
「俺はすでに一族ではない。一族の名は捨てた」
「ハオにどんな思惑があるのかは知らんが投降するとしよう。お前達暴動の計画は中止だ。各地の兵士に連絡しておけ」
「分かりました」
「今日まで私についてきてくれたことに礼を言う。この場を持って私の部隊は解散してよし。好きなところへ消えろ。リンシン、暴動計画もなくなり、私の部隊はなくなった。許してくれるか」
「あなたも名のある将軍らしく判断が早いな。見なかったことにしよう」
「お前も甘くなったなリンシン」
「私が甘くなったわけではない。すべてはハオさまのご指示だ」
「そうだったか」
少し肩の力が抜けたトウカクをリンシンの部隊で囲いこみながらハオの元へと連行した。
そして、夜が明け、日が登り明るくなってきた頃にハオの元にリンシンとトウカクが到着する。
「ハオ様、早朝からもうしわけありません」
「リンシン、詳細は掴めましたか?」
「はい、トウカク将軍がリーダとなってこの計画を指揮したようです」
「そうでしたか。それで殺さずに捕まえて来れましたか?」
「はい、連れてまいります。トウカク将軍をこちらへ」
「ハオ様随分と変わられたようですね」
トウカクがハオの雰囲気に変化を感じているようだ。
「私は兄の意志を継ぐと決めましたので」
「それで私を国民葬儀の目の前で始末なさりたいのですか?」
「いえ、あなたにはこれからも新生中国の将軍として働いていただきます」
「今何とおっしゃいましたか」
「今まで以上にあなたにはこの国のために働いていただきます」
「何故私を殺さない。あなたと命とこの国の首相の椅子を狙った人間だぞ」
「はい、承知しております。それにあなたの命はもうリンシンに委ねるしかない立場にあります」
「私の部隊は解散したのだが」
「あなたにはリンシンの部隊の下に付いて頂きます。そして、部隊の再結成をしてください」
「ハオ様あなたは何を考えておる」
「今国内の中で権力を争っている場合ではありません。トウカク将軍、目を覚ましてください」
「あの事件のことか」
「あの事件だけではありません。日本の私の友人が助けてくれなければこの国はすでにドイツのものになっていました」
「あなたは篠山の件といいえらく日本と友好的らしいですがこの国の行く末をどう考えておられる」
「それを国民葬儀の席でお話します。私の描く国づくりは理想の塊かもしれません。お手伝いいただけないなら解放しますのでどこかに消えられても結構です。ただ、本当にこの国の首相の椅子を狙っていたのなら本気でこの国のあり方を考えて賛成していただけるならお残り下さい」
「ハオさま、あなたはチャン様とは違い、本当に甘いお方だ」
「そうなのかもしれません。しかし、この甘さを支えてくれる方々と共にこの国を兄さんが作り上げたかった国に変えていく覚悟です」
「理想に甘さに反吐が出る。しかし話だけは聞こう。納得できないなら席を立ってもいいんだな」
「構いません」
「それならこのままチャン様の葬儀に同席させていただく」
殺される覚悟で望んだトウカクにハオの言葉は物足りなかったがその言葉の端々に自信に満ち溢れた輝きのようなものを感じていた。
(昔のわたしもああいう風だったのかもしれないな)
チャンの葬儀は粛々と行われていった。
新生中国の国民だけでなく分裂した国のトップの顔も見える。
そして、ハオの弔辞が始まった。
生前の兄は非常に厳しくも優しい人でした。
国民の皆様も知っていることでしょうが私の命は兄によって救われた命です。
兄が望んだ国づくりは領土を恐怖で支配することではありません。
今この国は分裂した兄弟国との流通が盛んになり、私が開発した言語システムにより言葉の意味の行き違いで起こっていた争いも減少し、言葉の壁もなくなりました。
しかし、流通が盛んになるほど、偽物の紙幣が多く使用されるようになっています。
そこで私はこの国の紙幣の刷新と日本への通貨製造を依頼しています。
なお、日本の技術者は明日から私の部下がリストアップした工場へ赴任してきます。
この国からも多くの技術者が近く日本へ派遣される予定です。
近い将来、分裂した中国との通貨紙幣併合も考えております。
兄が夢見ていたことはまだまだありますが私は可能だと思うことからすぐに着手していきます。
道半ばで命を落とした兄の分も出来る限りをやり遂げる覚悟です。
国民の皆様の力もお貸しください。
それから絶縁状態にある国の話もしておかなければいけません。
我が国の研究者たちがドイツの捕虜として囚われています。
人体実験をされているのではないかという疑いもあり、現在調査中です。
我が国内で不審人物の旅行者を発見した場合はただちに警察ではなく軍にご連絡ください。
なお不正を見つけた場合も軍にご連絡ください。
賄賂や不正をするものについては捕らえた後、罰を与えるだけでなく、保釈、刑期を終えた後は罪の重さにより年単位で月々ボランティアをしていただきます。
本来弔辞というものは本人の過去の過去の経歴や思い出を述べるものだとおもっていますがわが兄はこの国の未来の行く末ばかりを楽しみに生きていました。
過去の歴史よりも今を生きている私達は未来を考えなければいけません。
過去の記憶に囚われることで人も国も後退します。
私が言いたい事は今を作り出している私達が後退すれば過去にも劣る未来を作り出すことを心に留めながら生きていかなければならないということです。
わたしも明日死ぬかもしれません。
しかし、国民の皆様にはその後も私の言葉を思い出し、この国を作り上げてほしい。
それからまだ決めていなかった軍のトップにはトウカク将軍を指名します。
厳しくも部下思いの姿勢はわが国の軍のトップに相応しい人物です。
そして今回副首相に就任した楊副首相が帰国しております。
文武ともに優れ、顔立ちも整った女性でこの国の発展にも頼りになる存在です。
最後になりますが我が兄の葬儀にこれほど多くの国民と来賓だけでなく、兄弟国の国民に来ていただいたことに感謝します。
ハオの口にした弔辞にまだ半信半疑の出席者たちは拍手とともに不満足そうな顔をしているものも少なくは無かったがこの後その構想に賛同する兄弟国から国の返還が行われることもあり、気付けば新生中国の領土は分裂する前の領土の80%近くに戻っていた。
「ハオ様、何故わたしのようなものを軍のトップに据えるとおっしゃられたのですか?」
「あなたはリンシンの話によると部下を助けることと責任をとることの2点を即座に回答されたと聞きました」
「その通りです。WRという組織の指示ではないと分かりましたので部下の命は助けていただきたいと思い解散も指示しました」
「だからです」
「リーダーによっては部下のせいにするものもいる」
「わたしの考えた計画でリホウ将軍は証拠を消す為に自ら命を落としました。リホウは私の親友と呼べる存在でした。わたしもリホウの為なら命を懸けることもできます。しかし、リホウの命とリホウの部下の命を巻き込んでしまったことに気付いてしまった」
「リャンミオの部隊が交代させられた時点でリンシンはおかしいと思ったみたいですが何故あのようなことを。影の部隊の存在を知っているあなたとは思えない失態でしたね」
「リャンミオの部隊と影の部隊以外を除けばほぼ私の軍として掌握できると思っていたのが間違いでした。チャン様だけでなくハオ様まで尊敬されているものが多くいることを知りませんでした」
「兵士の方が戦争好きな方ばかりとは限りませんよ」
「チャン様のためにこの国を守りたいと思い志願したものが多くいました」
「あなたは何のために軍人になったのですか将軍」
「自分の生まれた土地、家族、この国の平和を維持するためでした」
「それなら改めてお願いします。トウカク将軍。私は少しだけリホウさんより運が良かっただけです。もし私が亡くなっていてもこの政策はリンシンが受け継ぐことになると思っていました。リャンミオにはそう伝えていましたしね」
「影の部隊のトップがですか?楊副首相ではないのですね」
「あの方は首相の席に座りたくないようです。私が亡くなるようなことがあればアメリカに帰ると言われました。その事については本人の意思を尊重するとして後継はいないのでは私も困りますので」
「チャン様側近のようなものか」
「本当ならリンシンに首相をなってもらいたかったが断られました。しかし遺書ということになると断ることはできませんからね」
「私が軍部を好き勝手に操ることになりますがよろしいのですか」
「トウカク将軍、あなたはリンシンの部下ということをお忘れなく」
「あなたはそこまで考えておられるのですね。あなた亡き後も体制は変わらずですか」
「もう自分の欲に生きるのはやめてください。部下とこの国とリホウ将軍の気持ちを考えてこれから先を生きてください。これは首相としての命令です。あなたがその指名に応じるのならのお話になりますが」
ハオは強い口調でトウカクに訴えるように言った。
トウカクは涙を堪えるように歯を食いしばった。
少しの間の後に言葉を発した。
「ハオ様、これからよろしくお願いします」
トウカクは深々と頭を下げた。
「トウカク将軍。指名を受けたということがどういうことか分かっていますか?犯罪に関するほとんどの処理が軍に回って来る様になります。あなただけでなくあなたの部下も忙しくなりますが大丈夫ですか?」
「その点ならご心配無用です。体力と実行力は我が部隊の自慢です」
「それと不正を見つけたときの判断はお任せします。本当に反省の色の無い時はよろしくお願いします」
「いえ、不正は見逃しません。小さな不正を捕まえて処分をしないとしてもこの国のためにボランティアをしてもらうというのは良いお考えです」
「この国はまだまだ凶悪な犯罪が頻発する街もあります。警察ではなく軍隊が出て行くことでこの国から逃亡するか収まるか捕まえるかの3つの選択しかないように判断させなければいけません」
「なるほど。兄弟国との流通も盛んになるとそれを狙う犯罪集団も出てくるかもしれませんね。その為の軍隊ですか」
「国の中で軍事訓練だけで眠らせておいてはもったいないですからね」
「他国からの旅行者も犯罪を犯すことは出来なくなりますね」
「警察には国民の相談や家庭内の問題に深く関与してもらいたいと思っています」
「各地で暴動を起こす予定だった部下達が国のために各地で活躍することになるというわけですね」
「同じ誇りなら国を本当に良くする為に動いてほしいのです。重苦しい誇りよりも尊い誇りに生きてほしい。あなたにもそうあってほしいと私は思っています」
「あなたはやはりチャン様の弟ですね」
「はい」
「ハオ首相さっそく今現時点を持って任務に付かせていただきます」
「国家統一院のシステム更新が終わっているのであなたも入れるようになっている。そこから各部隊に指示してください」
「分かりました。しかし扉はどのようにして開くのですか」
「あなたそのものを認識すれば開くようになっています」
「分かりました」
トウカクはハオと話していた部屋を出ると急いで国家統一院に向っているようだ。
向いながら部下であろうタブホの向こう側に指示をしている姿も見えたが消えていった。
「ハオさん、お疲れ様でした」
「藤原さんこそ、お疲れ様でした。空間ステルスとはいえ立ったまま話を聞かれるのはしんどくなかったですか」
「気付かれることの無いように距離が離れていましたので途中座っていました」
「それなら良かったです」
「ハオさん、今日はもうお休みになってください」
「エアーサンダーで一時日本へ帰りましょう」
「分かりました」
「楊さんが明日からの2日間の行事はすべて引き受けていただけるとのことです」
「大丈夫ですかね」
「楊さん、軍人上がりですから大丈夫だと思いますが文句が来るとしたら私だと思いますので気にしないで下さい」
「アハハハハ」
「ハオさんの笑う声が聞けて良かった」
藤原はしみじみと言った。
「心の底から久しぶりに声が出ました。藤原さんと楊さんとの会話も面白かったのですが」
「面白くありません」
藤原は笑顔で否定した。
「藤原さん、ありがとうございました」
笑ったと思うと今度は深々と頭を下げた。
「ハオさん、チャンさんの分も生きてこの国をより良くしていってください」
「そのつもりです」
その時藤原の背後にリンシンが立っていた。
「お前が我が妹の許婚か」
「はぃ?」
藤原はキョトンとした顔をしている。
「いつ式を上げる予定だ」
「まだ予定はないですが」
「式といっても一族の儀式に則ったものになるがな」
「儀式?」
藤原の時間は既に止まっているようだ。
「リンシンもうその辺りで止めるんだ」
「しかし、ハオ様」
「リャンミオに報告してもいいだな」
「やめます。あと藤原といったな。今のことをリャンミオには絶対言うなよ。言うとお前の命は無い」
「俺の命が無いということはあなたの命もないということだよね」
「どうしてそうなる」
「チャンさんが冗談で言っていたからなあ。あれは冗談じゃなかったのかも」
「チャン様が冗談。確か正装でスーツを着用していたがお前あの時のあいつか」
リンシンの顔色が変わる。
「ハオ様、私を処分するなり始末するなりしてください」
「いきなりどうしたんだリンシン」
「チャン様に絶対に手を出してはいけない男だと言われた人間に手を出してしまいました」
「何故お兄様がそんなことを」
「私がハオ以外で認めた男は渡部とさっきまでこの部屋で話していたあの男だといったことを忘れていました。チャン様が冗談を言われることはハオさまを除いてはこの男だけです。手を掛けてはいけない人間を脅してしまいました」
「手を掛けるって俺はまだ死んでいないぞ」
「お前は黙っていろ」
「リンシン、それも威嚇になっているよ」
「やってしまった。この男の話術に嵌ってしまいました」
「藤原さん、あなたはやっぱり才能がおありですね」
「はぁ」
藤原がいつものため息をついている。
「リンシン、私はいいからトウカク将軍の動きと補助をしてやってください」
「分かりました。何か動きがあれば報告いたします。それでは」
何事も無かったようにチラリと藤原の方を睨んでリンシンは部屋を出て行った。
「私は何人に命を狙われているのでしょうか?」
「正直私には分かりません」
ハオが笑っている。
「まあそういいながらもピンチらしいピンチはあまりないのですが」
「内輪でのピンチが多いようですね」
ハオが冗談を言った。
「ハオさん、冗談が出ましたね」
気付くと二人は泣いていた。
その傍には満面の笑みを浮かべているチャンの写真がおかれていた。
チャンの国民葬儀を境に各国の情勢は予断を許さない動きを展開していたことにこの二人はまだ気付いていなかった。




