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DH  暗闇の手 激動(第二部)   作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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新たなる幕開けと戦いの始まり(3)

新たなる幕開けと戦いの始まり(3)



場面はブラウンの逃亡の場面に移る。


「アレクシアさん、どうやら私の立場も危うくなったようです。亡命をお願いできますか」


「分かりました。もうすでに近くまでステルス機体で迎えに行っていますのでお待ちください」


「よろしくお願いします」


その数分後、ブラウンの前にステルス機体が姿を現した。


「これが日本の秘匿していたデータから製造されたステルス機体か」


「ブラウン元大統領お迎えに上がりました」


「出迎え感謝する」


「直ちにお乗りください」


「分かった」


こうしてブラウンはドイツへと亡命した。


中国の事件が起こっている隙を突いてアレクシアの言っていたドイツの部隊が世界各国に拡散していた。


軍事だけでなく洗脳も会得している独特の部隊だった。


アレクシア自身が口説いている人材も存在している。


(日本の内閣府の守屋の場合)


日本では内閣府のスタッフとして働いている守屋がターゲットにされた。


しかしこの守屋という男は篠山に惚れ抜いている人間だった。


内閣府内に篠山内閣の転覆を企む噂の話題が出るといつも不機嫌になるほど篠山に心酔していた。


事あるごとにメディアに篠山の功績を流し、内閣転覆のリークを密かに流していたのもこの守屋であった。


しかしある時期を境にリークした情報が一向にメディアの表に出なくなるようになった。


それでも守屋は自分のブログの中で柔らかい内容にしながらも公表をしつづけた。


しかし思うように読者もアクセスも集まらず、嘆いていた。


政治に関心あるものの少なさに日本の将来についても憂れうようになっていた。


そんな時に一通のメールが届いた。


あなたの望む世界を私と一緒に築き上げていきましょう


私はドイツの首相アレクシアです


ドイツ大使館に連絡をお取りください


守屋はもちろん性質の悪いイタズラだと思ったがどうしても気になり念のためドイツ大使館へ連絡を入れてみた。


しかし、そのメールは本物だった。


ドイツ首相が自らドイツ国内で私に会いたいと言うことだった。


守屋はその週の仕事を終えると次週は有給願いを出し、ドイツに旅行に行くと言って休暇を取った。


ドイツから帰った守屋はいつも通りに仕事をこなしていたが一つだけ変化したことがあった。


人付き合いをしない優秀な人間を飲みに誘うようになった。


守屋自身はフランツのようにマイクロチップを埋め込まれてはいなかったがドイツが開発した最新通信機器ルルモンドが聴神経の近くに埋め込まれていた。


それはフランツに埋め込まれた周波数とはまた別の周波機器だった。


ルルという言葉でドイツ大使館 モンドという言葉でアレクシアへの直通とドイツの部隊の中でも幹部クラスのものにしか与えられていないものだった。


守屋という存在はアレクシアにとってWRの日本の結束を崩す重要な人材だったのだ。


「守屋さん、あなたは日本だけに拘る必要はないのです。世界を目を向けられてはいかがですか?」


「私には篠山さんのような魅力も度胸もありません」


「さまざまなリーク、あなたのブログも拝見させていただきましたがあなたには世界に変化を促すセンスを感じました。ぜひとも私に力をお貸しください」


そういうとアレクシアは守屋を抱きしめた。


「あなたのようなお方が」


「日本はあなたにお任せします。優秀な人材で私たちの手伝いをしていただけませんか?」


「分かりました」


この時に守屋は女性としてのアレクシアの魅力に負けてしまったのか、本気で日本の変革を考えたのか、帰国後頻繁に日本の動きをドイツ大使館に伝えていた。


そのときにまだ政府の中でセキュリティの担当をしていた田中と知り合ったのだ。


この田中がその後WRのセキュリティトップに座ることになる。


守屋は頻繁に田中の思う世界を褒めていた。


「世界は自分の力でコントロール出来る様になる」


「そうだな。お前のセキュリティには抜け穴は見つからないからな」


「いやまだまだだ。これから先にもっとすごいものを開発して守屋にも見せてやるよ」


「俺も政治の世界で世界を変革したい」


「そうだったな。お前は篠山さん篠山さんだったな」


「いや今はアレクシア首相の理念に憧れている」


「お前も世界に目を向けるようになったか。俺も嬉しいぞ」


「田中、今度お前に会って欲しい人物がいる」


「まあ俺ならいつでも空いているが誰だ」


「それは今は口に出来ない」


「お前まさかテロリストとかじゃないだろうな。世界の変革とは口にしたが」


「そんな人物ではないしテロリストになりたいわけでもない」


「そうだったな、すまん」


「いや、いいんだ」


「今週末辺りなら少し予定を空けれるが」


「今は最新セキュリティシステムの開発と設計の真っ最中だったな」


「俺には嫁も女もいないからな。予定といえばそんなところだ」


この後日、田中もドイツ大使館でアレクシアに対面した。


そして、田中もルルモンドを装着した。


新しいセキュリティシステム開発に成功した田中はその功績を買われWRの組織の一員に加わることになった。


セキュリティ部門でも田中の能力に敵うものはおらず、すぐにセキュリティ部門のトップに座る事になった。


その後、ルルモンドを使用し、守屋と連絡を取り合いながらイザベルの部屋に侵入する事件を起こすのである。


DHやアースシステムについての情報はその田中であっても手に入れることは出来なかった。


イザベルの部屋に置かれているシステムはイザベルか藤原以外には動かすことが出来なかった。


起動までには成功したもののパスワードが一致しない。


どれほど優れたエンジニアであってもそのパスワードを解く事は出来ない仕様だった。


パスワードを間違える度に64文字のパスワードが変化するのだ。


もしも奇跡的に田中がそのパスワードを解いてしまったとしても次に求められるのはイザベルの笑顔と指紋認証である。


藤原の場合は声紋と指紋認証になる。


田中はそこまでは辿り着けなかったが辿り着いたとしてもそこで断念するしかなくなるのである。


自ら作り出したセキュリティシステムの映像を加工して削除することは出来ても、イザベルが独自に組み込んでいるセキュリティシステムが存在することまで知らなかったことも田中の予測しなかったことだった。


そしてパスワードの誤打をするとイザベルのムーブにもその連絡が行くように出来ていることも予測していなかった。


しかし、日本の施設共通の開発データである初期型エアーサンダーのデータはこの施設からサーバーを跨ぎ、内閣府からさらにサーバーを跨ぎ、ドイツではなくアメリカのブラウンからドイツへと送られていた。


ブラウンが逃亡に使用したステルススーツもブラウン側の部下が流したDLEDシステムが装着され無音で移動空中飛行が可能な2世代先とも言って良い最新の科学技術が詰め込まれたものだった。


田中は施設外で銃殺により処分された。


表向きは日本のテロ事件の犠牲者として報道され、その亡骸は家族の下に運ばれた。


洗脳された様子も見られなかった田中はドイツ心酔者とされ、死体の解剖もされなかった。


ルルモンドの存在は気付かれることはなかった。


ルルモンドでその出来事を知った守屋はすぐにアレクシアに連絡を取った。


「アレクシアさん、田中が処分されました」


「残念なことでした。私もルルモンドを通して聞いていました。守屋さん、あなたには緊急事態のない限り、当分の間指示を出すのを控えます。普段どおりにそちらでの仕事にこなしてください」


「ルルモンドの存在は気付かれていないようでした」


「そのようですね。しかし田中さんほどの人でもイザベルのセキュリティは破れなかったのですね」


「天才の中でもさらに上がいるということでしょうか」


「しかし田中さんは多くのデータをこちらに流していただきました。おかげで新しい開発が進んでいます」


「世界の変革の為にお役に立てたのなら田中も満足していると思います」


「守屋さん、あなたもくれぐれも気を付けて下さい。影ながら見守らせていただきます」


「よろしくお願いします。篠山についても大きな動きがあればその時は連絡させていただきます」


「それでは」


田中の事件では過去にドイツを旅行したことのある守屋も疑われる対象にされたが篠山の一喝で守屋は難を逃れた。


その時守屋は篠山を越える人間になったという錯覚に陥っていったがそれは守屋の妄想に過ぎなかった。


テロ事件で次は篠山が狙われるのではと思った内閣府のスタッフの数名が辞表を出し辞めていき数ヶ月の間その人間と近親者のものも調べられるなどされたが怪しいものはいなかった。


内閣府の犯人は何者かが潜伏し、そこから情報が流れたことになっている。


実際は時間の魔法であった。


田中がシステム内の操作をし、守屋の送信したデータの時間と送信場所の上書きをしたのだった。



(場面がアメリカに戻る)


「ブラウンさん、私の計画もばれてしまいました」


「ジョンソン、あれは完璧な計画だった。WRの部隊もお前に掌握されているのだろう」


「いえ、すでにその部隊も撤退しました」


「誰が計画の邪魔をした」


「渡部のようです」


「渡部にはそんな器量はなかっただろう」


「変わったのかもしれません」


「変わったといえば親馬鹿になったということは聞いていたが」


「多分そこなのかもしれません」


「守るものが出来て渡部本来の人格が表に出てきたということか」


「最近の渡部の功績を見てもそうとしか思えません」


「私とお前の読みが外れたということか」


「そのようです」


「お前はそこで拘束されろ。私に付き合うな」


「いえ、私もあなたのいるドイツに向います」


「お前まで家族を見捨てる必要はない」


「あなたに付いていくと決めました。もうすぐステルス機の迎えがやってきます」


「ジョンソン、すまないな」


「あなたが謝る必要はありません」


「分かった。ドイツに到着したらお前に見せたい施設がある」


「楽しみにしています」


こうして、ブラウンに続き、ジョンソンもドイツに向かったのだった。


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