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DH  暗闇の手 激動(第二部)   作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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新たなる幕開けと戦いの始まり(2)

新たなる幕開けと戦いの始まり(2)


同じ頃アメリカの動きも騒がしくなってきた。


ブラウンに続き、デトロイトでの会議を欠席したジョンソンまでドイツに亡命したのだ。


「アメリカの大統領は腰抜け揃いになったのか。何がそうさせるのかは分からないがジョンソンの一族まで抹消対象になるとは思っていなかった」


渡部が怪訝そうな顔をしている。


「家族を見捨ててまでどうしてドイツへ」


マクドナルドも不思議そうな顔をする。


「すでに何かを用いられ洗脳されている可能性も否定はしないがアメリカはどうなってしまったのだ」


「いつからアメリカがこんな風になってしまったのかは正直私にも分かりません。WRという組織内でもナンバー3のポジションまで落ちてはいますがそれでも衰退という言葉は当てはまりません。寧ろ優秀な人材が多く揃えやすい領土の規模と多くの大学研究施設も揃っているのはアメリカだけです」


「マクドナルド、お前の言っていることは分かるがそれが原因なのかもしれないな」


「そうかもしれません。戦争とは違い、その驕りと物量作戦のような余裕が今のこの国を作っているのかもしれません」


「しかし、何故アメリカの大統領がドイツへ行きたがる。ブラウンにしてもジョンソンにしても元は研究者だったはずだ。家族を捨ててまで何をドイツに求めているのだ」


「家族の命と自分の命を引き換えにしてまで発明したいものがあるのでしょうか?」


「研究や発明ならアメリカでも出来るはずだが」


「施設の実権はスミス所長に握られていますからね。しかし小型培養装置の資料が向こうに流れたとしたらとんでもないことになっていましたね」


「めぼしい資料は持ち去られていないようだ。スミスも最重要データに関しては自身で持ち歩いていたようだからな。今はそのデータを私が持っている」


「渡部さん、今度はあなたがバーバラさんの役割をするおつもりですか?」


「スミスの命はあの薬が効いたとしてもどれくらい残されているのか正直わからん」


「体のだるさの方は時間とともに楽になっているようですね。体中の痣の方もほんのり薄くなっている感じがしました」


「もっと早く渡してやりたかったが。DHすら神のいたずらで開発してしまった私だ。あの薬を自分で作成できるわけがないと諦めていた時期もあった」


「藤原さんとイザベルさんに相談して良かったですね」


「私の見えないところでもあの二人は頑張ってくれていたようだ」


「渡部さんは家族に恵まれていますね」


「そうだな」


マクドナルドの言葉に渡部が否定することはなかった。


「f藤原との出会いは鮮明に覚えている。私自ら藤原の迎えに行ったからなあ」


「確か世界中から日本に送信されてくるサーバーテロを暗闇の中ですべて追尾してその犯人を見つけ出して収入を得る仕事を政府にじきじきに頼まれていた人物だったとは私も驚きました。日本政府のつけたコードネームが名もなき正義でしたっけ」


「その所在も名前も政府でさえ調べることが出来なかったんですよね」


「そうだ。自分のシステムを政府にも売り込み、その振込先も海外のサイバー口座を匿名で利用していたために政府は詳細は掴めなかったみたいだ。表側の裏の仕事だから直接WRと繋がることもなかった」


「しかしそのサイバー口座もWRの運営しているものですから組織に掛かれば居所も分かるんですけどね」


「部屋に入っても自分の構築したシステムで自動で犯人のデータ収集も可能だったがわざとその追尾先を探し出し、会話をしているときは世界中のサイバーテロリストと遊んでいるようだった」


「藤原さんらしいといえばらしいですね」


「あいつもあの時は心が壊れていたのかもしれないな」


「渡部さん、そういえば藤原さんの家族は?」


「分からない」


「分からないとは」


「あいつには戸籍が存在しなかった。自ら日本戸籍のデータを消去したのかもしれないが藤原という存在に至っては空白な部分が多い。その家も他人名義のものだった。ネットを使い購入するものもすべて他人名義だったことを考えると支援するものがいるのかもしれないと疑ったが本人が匿名で買い取った名義だと分かった時は不気味にさえ感じた」


「過去に藤原さんに何があったのでしょうか?」


「私以上のものを抱えているのかもしれないが今はその事について触れることは避けている」


「いずれ本人から話してくれるかも知れませんね」


「その時を待つことにしている」


「しかし、会議の議題の半分がブラウンさんとジョンソンさんの話でしたね」


「話を聞こうとしたジョンソンの欠席と亡命の連絡が来るとは思わなかったからな」


「日本からは篠山さんも来られていたのにすいませんでした」


「暫定政府の中にお前が居ないのも私としては納得いかん」


「渡部さん、ああいう肩苦しいところは自分には合いません」


「そう言うな。篠山さんも藤原を次期首相に据えようと考えているらしい」


「藤原さんも断ると思いますよ」


「マクドナルド、もし私がいなくなり、篠山さんもいなくなったとき、日本やアメリカという国を任せられる人物はどこにいる」


渡部がマクドナルドに鋭い視線を向ける。


「そこまで緊迫した状況だということですか?」


マクドナルドも真剣な眼差しで答える。


「ここまでの状況を考えると何が起こってもおかしくない」


「この短期間で多くの事件が起きましたね」


「コントロールしてきた側の組織の人間たちが謎の組織の存在に怯えている状況だ」


「そうなるとWRという組織も脆いのかもしれませんね」


「ここ200年は胡坐をかいている状態だったからな」


「戦争も仕組まれた実験のようなものでしたしね。私はその行為については反対ですが」


「昔の私なら喜んでいたのかもしれないが今は気付かぬうちに守りたいと思う人間が増えすぎた」


「イザベルさんが生まれる前までよく藤原さんと口げんかしてましたね」


「あいつは会議には出席するが寝ているからな」


「しかし新しいものを次々と生み出して結果を出すから誰も口を出せない・・・でしたね」


「あの頃、お前にいつも藤原の愚痴を言っていたな」


「人間は環境の変化で変わり続けるのかもしれませんね」


「変わらん人間も知っているがな」


「そうですね。篠山さんは揺るがない」


「しかしブラウンやジョンソンが向こうの手に渡ってしまったのは痛いな」


「そうですね。WRについて何か会見を開くようなこともあるかもしれません」


「WRについては世界のトップが否定をし止めることは可能だが家族の件についてはまではどうしようもない。ジョンソンの一族についてはもう少し猶予を与えることも考慮していれば良かったのだが」


「ジョンソンさんの裏切りで、また権力の形勢逆転が起きましたからね。臨時政府の顔もWR,裏の役職もWRに交代。今回の粛清については私は意を唱える気はありません。自分の命も無くなっていたかもしれませんので」


「お前にしては珍しいな」


「ジョンソンさんの行動はWRに対してのテロ行為です。そういうものに対して甘く構えるほど私も人が出来ていません」


「組織内で多くの命が失われた。今も組織内に裏切り者やスパイが潜んでいることも否定できない」


「渡部さんの持参されたムーブの大量生産も提案されましたが組織内に行き渡るまでには新たな方法で」


「DH、もしくはアースシステムかもしれん」


「幾らなんでもそれは」


「日本での事件が起きた日、イザベルの部屋も荒らされていたのだ。施設内と内閣府内のパソコンと繋がっていた。セキュリティ部門のトップが裏切っていた」


「そこまで」


「今話したことは日本組織の失態だが日本のスタッフ以外は誰も知らないことだ」


「私も報告は受けていません」


「お前に話したのは状況の深刻さを理解してほしいからだ」


「しかし、相手は自分の力を見せ付けながら何故自ら手を下さないのでしょうか?」


「それは私も感じたが脅迫と牽制を兼ねているのかもしれない」


「かつてのアメリカですか?」


「じわじわと世界滅亡を楽しんでいるのかもしれないな」


「オーストラリアだけでは済まないと言われるんですね」


「人類と英知との闘いなのかもしれん」


「渡部さんがそこまでの覚悟を持っておられるのなら私も次のアメリカの大統領になります」


「そうか」


「スミスが施設、マクドナルドが大統領になれば表も裏もなく結束が出来る。今はまずアメリカの建て直しだ」


「スミス所長が少し柔らかな人柄に変わりましたので会話するにも楽になりました」


「過去のスミスについては私にも責任があるので許せ」


「渡部さんもイザベルさんが誕生してから柔らかくなりました」


「そうだな。お前には話していなかったがイザベルが誕生した日は私の娘が自ら命を絶った日だ」


「そんな偶然があるんですね。いや偶然は必然だと藤原さんが言っていたな」


「それでもイザベルに対して最初は距離を置いていたがいつの間にかWRではなくイザベルと呼ぶようになっていた」


「それは私も同じです」


「そうだったな。組織の象徴としてのWRとしてお前は構えていたからな」


「マクドナルドさん、それは私の名前ではありませんと怒られました」


「お前はイザベルには弱いからなあ」


「麗しの女王ですよ。今は慣れましたが天真爛漫で頭脳明晰、誰でも弱くなりますよ」


「そう呼ばれているらしいな。私の娘もそうだった。今でも思い出す。イザベルに面影を重ねるときもある」


「この闘いが終わってゆっくりと出来るときがやってきたら渡部さんの家族の写真を見せてください」


「お前が私の家族写真を見てどうする」


「イザベルさんやスミス所長はいつでも会えますが渡部さんの奥さんや娘さんも見てみたいなと思いまして」


「この闘いが終わったら次の大統領の就任祝いに見せてやる」


「就任祝いが渡部さんの家族写真ですか?約束ですよ」


「ああ約束だ」


渡部とマクドナルドが会議後に雑談をしている時、スミス所長はローランドと今後のことについて焦りを感じながら話し合っていた。


その途中で渡部とマクドナルドが施設内に帰ってきた。


アレクシアはその間にも次の作戦を始動させていた。

 

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