翻訳機
博士
「はろー、はろー、ないすとぅーみーちゅ」
井上
「……何してるんですか、博士」
博士
「おお、井上君。今はグローバルな世の中じゃな」
井上
「はあ、そうですね」
博士
「井上君はアメリカには行ったことあるかいの?」
井上
「いえ、国内から出たこともありません」
博士
「ワシもじゃよ。不安でたまらんの」
井上
「え、もしかしてアメリカに行かれるんですか?」
博士
「いや、近所の山田さんが家族旅行でロシャンゼルスに行くんじゃと」
井上
「へえ、そうなんですか」
博士
「じゃが、山田さん一家、英語がしゃべれないそうなんじゃ」
井上
「自分もしゃべれないですけどね」
博士
「じゃろ?英語をしゃべれる奴なんか、そうそうおらんじゃろ」
井上
「そ、そういうこともないとは思いますが…」
博士
「で、山田さんがワシに翻訳機を作ってくれないかと頼んできたんじゃよ」
井上
「………無謀ですね」
博士
「無謀とはなんじゃ、無謀とは。こう見えて、立派な科学者じゃぞ。完璧な翻訳機を作ってやると約束したのじゃ」
井上
「そうですか」
博士
「ただ、大事なことを忘れておっての。ワシャ、英語が話せんのだ」
井上
「いやいやいや、普通、それ忘れないでしょ」
博士
「はろーって日本語でなんだっけ?」
井上
「そこから!?英語がしゃべれないってレベルじゃないっすよ、博士!!」
博士
「まあ、英語がしゃべれなくても日常生活には困らんからの」
井上
「博士はね」
博士
「まあ、そんなわけで、家電屋に行ったら、翻訳機があったわけよ」
井上
「山田さんも博士に頼まず店で買えばいいのに」
博士
「ワシだって科学者としてのプライドがある。その翻訳機を買って、中の部品をそっくりそのまま別の機械に移し替えたのじゃ」
井上
「それ、違法なんじゃないですか!?いいんですか、そんなことして!!」
博士
「まあ、ばれなきゃいいんじゃない?」
井上
「プライドもくそもないですね」
博士
「そうして完成したのがこの翻訳機じゃ」
井上
「電子辞書みたいな形ですね」
博士
「翻訳機能をオンにすると、翻訳が開始されるわけじゃ」
井上
「へえ、ちょっとやってみていいですか?」
博士
「うむ、こいつは自信作じゃぞ」
井上
「じゃあまずは。ハローハロー」
翻訳機
『こんにちはこんにちは』
井上
「ちゃんと翻訳されてるじゃないですか!博士にしてはすごいっすね」
博士
「博士にしてはとはなんじゃ。まあ、これがあれば世界中どこへでも行けるぞい」
井上
「グッドモーニング」
翻訳機
『おはよう』
井上
「ナイストゥミーチュ」
翻訳機
『はじめまして』
井上
「すごいっすよ、これ」
博士
「逆もできるぞ。このスイッチを押せば日本語が英語になるんじゃ」
井上
「ああ、これっすか。ポチッとな」
翻訳機
『英語変換モード』
博士
「じゃあ、なにか日本語をしゃべってみたまえ」
井上
「えーと、じゃあ、お元気ですか」
翻訳機
『ゴー、トゥー、ヘル』
井上
「……は、博士?なんか怖いこと言ってますけど…」
博士
「ん?なんのことじゃ?英語はよくわからん」
井上
「自分の聞き間違いかなあ。こんにちはこんにちは」
翻訳機
『ファック、ユー』
井上
「博士…、移し替えるとき、なんかイジりました?」
博士
「いいや。ま、ちょっとヘンな部品を壊しちゃったけど、問題ないだろうと思ってそのままにしといたけど」
井上
「それですよ、きっと。過激な単語で翻訳されてます」
博士
「えー、うそー、信じらんなーい」
井上
「その昔のOLっぽい言い方やめてください」
博士
「ワシがやってみよう。元気ですかー?」
翻訳機
『元気があればなんでもできる』
井上
「違うよ!!なんで猪○のセリフが出てくるんだよ!!ある意味すごいけど!!」
博士
「す、すごいじゃないか、こいつは!!」
井上
「目を輝かせないでください、博士」
博士
「いくぞーっ!!」
翻訳機
『おーーー!!』
博士
「いーち!にー!さーん…」
翻訳機
『………ダァ……』
井上
「テンション低っ!!」
博士
「ダーーーーーーッッ!!!!」
井上
「こっちはテンション高っ!!」
山田さんは家電屋でちゃんとした翻訳機を買って行ったという。
最後までお付き合いありがとうございました。




