閃剣の巫女編 Ⅰ-Ⅲ
ーーーーー襲われてから丸一日がたった。三人は警察みたいに情報網や、たくさんの人を動かせる権力を持っている訳ではないので、自然に歩いて探すことになった。(警察もあまり変わらないのだが)
「ねぇ、何か面白ことない?」
和音が吟に話しかけると吟はテレビにでも居そうな探偵のように指を顎にあてて考えた後、
「北に一キロ行ったビルの屋上から青山会長が僕らのことを監視しているよ?」
そう言われた和音は辺りを見回してみるが見えるはずもない。
「何で方角までわかるんだ?」
焔も視線を感じてはいたが、はなれすぎていたため場所までは特定できずにいた。
その質問に対して吟はすんなり教えてくれた。
「僕、〔千里眼〕って言う能力者なんだよ。それに加えて趣味がバードウォチングだから、ここらへんの方角ならすぐにわかるんだ……ちなみに、ここからだと真南に、焔のことを助けてくれた智子さんの家があるよ」
それに補足するように和音も話し出す。
「〔千里眼〕って言うのは、知覚系能力の中でも有名な能力で、一般的な視力や、胴体視力を強化できるんだよ。ちなみに、吟は最大でニキロ先の小さな小石まで見れるんだよ! すごいとおもわない?」
それを聞いた焔は、目を丸くして驚いた。そんなのが可能であれば、とんでもない距離からの狙撃だって不可能ではないからだ。
「……だから吟のSAは狙撃銃なのか?」
焔がそう訪ねると、吟はいつものように優しく笑いながら「かもしれないね」と言った。
◇◆◇◆◇
「……もしかして気づかれた?」
三人を監視していた、藍色の髪の毛に、国立能力科長野高等学校、の生徒会会長、青山 希は一瞬そんな気がしたが、それはないと思い直し、再び監視を始める。
なぜ、こんなことをしているかと言うと、昨日の朝に、長野警察署の署長を勤めている父、青山 慶大から、「希の学校の生徒二人と謎の少年一人が通り魔を追っているから、やめさせろ」と、連絡があった。
希は、それをしぶしぶ承諾し、昨日の昼ようやく見つけたと思ったら、早速戦いが始まりだした。
そこでは、圧倒的な技量で通り魔を追い払う少年も確認した。
この光景を見た希は、「戦いたい」と、強く願った。そして彼女は、父からの伝言を忘れずに、なおかつ合法的に、模擬戦ができる唯一無二の行動を始める。
◇◆◇◆◇
三人が、帰り道の坂をのぼっていると、一台黒塗りのベンツが横を通り過ぎ、そのまま、三人の少し前で止まった。
和音は何を思ったのか、自分のSAを展開し、警戒態勢を取り始める。
そして、ベンツからは、和音とさして変わらない年齢の巫女装束の女性が現れた。髪は黒く優美な輝きを出しつつも、大和撫子のようなおしとやかな雰囲気をも醸し出している。
ただし、身長は、百五十前後だが。
「あの中学生は、二人の知り合いか?」
焔がそう言うと、二人はすぐに焔の口を抑え、「アハハハ、」という愛想笑いを彼女へ向けた。
彼女も、若干笑顔が引きつっていたが、怒ることもなく、自己紹介を始めた。
「私の名前は、青山 希。長野能力化高校で、生徒会長を勤めさせてもらっています。今回はあなた方を注意しにきました」
その言葉に、三人は揃って顔を見合うが、三人とも首を横に振った。その様子にコメントもせず希は言葉を続ける。
「今すぐ通り魔を追うのをやめなさい」
その言葉に和音は、大声で反論しようとしたが、吟に口を押さえられて、モガモガとなにをいっているのかわからなかった。
「なぜですか? 僕たちはただ、街を歩き回って捜しているだけのただの野次馬当然なのですが」
吟が理由を訪ねると希はさらに厳しい顔し答える。
「……青山家総代の父からの命令です」
よほど口に出したくなかったのか、ものすごいいやな顔を向けてくる。
「…………わかりました」
そして、吟は、青山家総代の言葉に、逆らうだけの力を持っているわけもなくそう返事を返した。
それを聞いた希は、ほっとしたのか息を吐き出して次の話題を切り出そうとしたが、
「申し訳ありませんが、自分は納得できません」
突然、そう言いながら、焔が希に近づき始めた。
「どうしてですか?」
希がそう訪ねると焔は、さらに一歩近づき答える。
「あれに勝てるのは自分だけだと判断したからです」
「「「!!」」」
その場にいた全員が息をのんで焔のことを見る。
「……本気ですか?」
「……本気です」
当たりはさらに静かになり、まるでこの四人以外この世界にいないのではないかと思わせるくらい。1月の冷たい風が、あたりを吹きつける。
二人は互いに瞳を見つめ合い真意を読み取る。
「……どうしてもと言うのであれば、この私を倒すことができたら認めましょう。…………明日の朝十時に、高校の第三演習場でお待ちしております」
「わかりました」
そう言い残して希は、ベンツの後部座席に再び乗り込み、運転手の運転で、来た道を引き返していった。
その後三人は、互いになにもいわず、帰路へついた
◇◆◇◆◇
──────その夜、焔は、部屋の前にある縁側から、難しい顔をしてまん丸な満月を眺めていた。
そこへ、吟が、やってきて、隣に腰を下ろした
「どうしたんだい? そんな難しい顔をして」
焔は、顔を月に向けたまま、答える。
「少し元の世界のことをな……」
それだけ言って焔は、月を見つめ続ける。
「焔がいた世界ってどんな世界だったんだい?」
吟も、同じように月を見上げたまま質問する。
「俺がいたところはとにかく木が大きくて人がいっぱいいた場所だったよ。ま、ある戦いでほとんど燃えちゃったんだけどな」
「で?」
そう言って吟は話しの続きを促す。
「だから、そんな大事な時にいることができなくてその……残念、だなと」
「そうか……」
吟は、軽く相づちをうち月を眺め続ける。
「だから、俺は帰るんだ。この命にかえても元の世界に…………」
その後吟は、その場を静かに離れた。
◇◆◇◆◇
──────次の日三人は、長野能力化高校行きのバスに乗り込み、二十分ほどかけて高校前についた。(山の上だが、国立なので一、二本ほどバスが走っている。)
高校につくと、正月明けにもかかわらず、ちらほらと吟や和音と同じ服を着ている人が校内に入っていっている。
「にしても、広いなこの高校というのは。なんでこんなに広いんだ?」
焔が珍しそうにあたりをキョロキョロしながら二人に質問した。その質問にたいし、
「ここは、山も含めたら面積が四ヘクタールもあるからね」
「ま、能力行使の練習は、広いほうが、事故も少ないしね」
と、丁寧に、説明してくれた。焔は、すぐさま案内用の地図が貼られたボードを見つけ、じっくり見たのち、
「あの中学生がいるところに案内してくれないか?」
吟が、「あの人は立派な、高校生だよ」と、やんわりといいながら、ついてきて、とうながした。
この校舎は、大きく三ブロックにわかれる。
まず、普段生徒が授業を受ける教室がある、四階建ての「教室棟」
次に、主に屋外での非能力系スポーツをする施設がある「部活棟」
最後に、実技や室内での体育を行う施設が立ち並んでいる、「実技棟」
そして、今回は、実技棟の施設の一つへ足をはこんだ。
金属製の少し重みのある扉を引き開けると、そこは、白い壁に縦横四十メートルはある大きな部屋だった。そして、扉の正面の壁ぎわには動きやすそうな半袖半ズボンに、身を包んだ青山生徒会長がいた。
よくきたわね
声には出してないが目で、雰囲気でそう訴えてるように、焔には感じられた。
「十五分待つわ。その間に準備体操してね」
わかりました、とそっけない返事を返して焔は、ストレッチを始める。
◇◆◇◆◇
「どうしてそこまでするの?」
和音は、ストレッチの手伝いをしかながらそう尋ねずにはいられなかった。
「なんとなく、かな?」
と焔は、何でもないように答える。が、その後に
お礼かな、と付け足した。
そして和音には、それ以上尋ねることはできなかった。
──────それから、数十分。互いに準備を整えた二人は、向かいあった。
「覚悟はいいですか?」
そういいながら希は、刀型のSAを展開する。
「どっからでもどうぞ」
焔は、不適な笑みを浮かべながら、SAの片手剣を展開しながら返事を返す。
そして、審判の吟による模擬戦開始の合図であるホイッスルが鳴り響いた。
続く
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byパーソナルデータもう見せて良いかな?とこの頃考える音無