第七話 開戦 グラスト王国vs魔導王国メルスタ
「我が祖国、グラスト王国は、魔導王国メルスタに我が祖国の軍門に下る事を要求する」
グラスト王国の国王らしき人が拡声器の効果を持った魔法道具を使い、メルスタに降伏勧告を出す。
「我が祖国、魔導王国メルスタは、グライト王国の軍門に下ることなど無い」
メルスタの国王らしき人は、思った通りその要求を突き返す。後でアリシアにこの問答の事を聞いたらこれは様式の様な物らしい。日本の戦国時代みたいだ。
「ならば征服するのみ! 騎兵部隊、突撃!」
「迎え撃つ。詠唱完了ししだいファイヤーストーム、撃てぇ!」
「うるさいな」
今日、ついに待ちに待った戦闘が始まった。両軍とも昨日の時点で布陣についておりいつ始まるのかと待ち続けついに始まった。だがうるさい。近所の小学校とかの運動会を想像して欲しい。正直子どもがいない身だとあれは放送の音が遠くまで届いてうるさい。白組と紅組が良い感じで接戦の時なんか逆に少し気になってしまう。
「お茶をどうぞ」
「おお、ありがとう」
今は日中でアリシアは外に出れないのでサキュバスのメルが付いてきている。バアルが夜の仕事以外は駄目だなんて言っていたがサキュバス達にメイドをして貰う時に「女の子がお茶の一つも入れられないのか?」と素で驚いたら何かを刺激したらしく最近はみんな家事全般を完璧にこなすようになっていた。
「取りあえず俺は戦死者がそれなりに出てくれないと意味ないし暇だな」
取りあえずは暇なので実況でもしてみる。解説はバアルさんお願いします。
「グライトがしょっぱなから騎兵を突っ込ませたが大丈夫なのか?」
「グライトは騎兵が強い国でして、騎兵もかなりの数が居ると聞きます。それに仮にも魔導王国の名を冠した国相手には魔法を軽減させる装備などを持っているでしょう」
そうか、俺も王だしこの戦闘を観て学べるところは学ばなきゃな。地球には無い魔法と言う物もあるしそれをふまえるとメルスタの事をよく観察しておこう。
「メルスタの魔術師が何かやってるあれが戦術魔法か?」
「はい、儀式呪文などとも呼ばれ、大人数で大きな魔術を行使するものですね、我々悪魔からしたらあの程度の魔法に手間をかける意味が分からないと言いたいところですが」
「人間は弱いからそれを補うために集まるんだよ。その集まった人が生み出した魔術の使い方の一つだ。それを俺たちが使えばもっと威力が上がる。だからむしろには出来ないよ」
ちなみに今どこから観戦しているかというと地上一キロを超えた辺りの上空から魔眼と魔術の併用でまるで戦略ゲームを上から見るような感じで観戦している。空間魔法の応用で椅子とテーブルを空中の空間に固定してそこに座っている。バアルとメルは普通に飛べるし俺もいざとなれば風魔法で宙に浮くぐらいは出来るので安全だ。まだ自由には飛べないが。
「空も地上一キロを超えると風も少ないな」
「ですが地上より気温は低いのでお腹をこわさないよう気を付けて下さいね」
メルがお母さんみたいなことを言って来る。ふと思ったがさっきのお茶はどこから出したのだろうか。
「お、メルスタの魔法が完成したっぽいな。見た感じ風魔法だがどんな感じだろう」
「おそらくトルネードの魔法でしょう。竜巻をおこす魔法です」
「お、竜巻が沢山。お~グライトの歩兵が面白い様に吹き飛ぶな。けれどあれだと死体が飛び散ってめんどくさそうだな」
さすが魔導王国と言うだけあって魔法が凄いな。俺の私見として攻撃能力の火魔法、防御能力の土魔法、、光に次ぐ回復能力の水魔法、そして相手に見えず早いのが風魔法だと思っていたが上位の魔法は攻撃能力も高めの様だ。
「なあメル、さっきのお茶はどこから出したんだ?」
「お屋敷でお茶を用意しておいてもらってそれを召喚魔法でここに召喚したんです」
「そうか、メルって意外に魔法の腕がいいんだな」
「そ、そんな事ありませんご主人様の方がすごいでしゅ」
慌ててかんだみたいだが聞かなかったことにしておこう。もう顔が真っ赤で可愛いし。
そのまま数時間が過ぎ、そろそろ日が暮れてくる頃、両軍が撤退し始めた。あの後の流れはトルネードで流れを作ったメルスタが攻め込んで行きグライトは防戦一方という感じだった。肝心の騎兵の馬がメルスタの国王たちが使った地獄の炎の炎を見ておどろき使い物にならなかったのも原因の一つだろう。結局攻め込まれたグライトは本陣に近づく敵を矢と魔法でチクチク削るだけだった。
見たところメルスタの歩兵は練度が低いようでそのまま戦闘が続けばグライトが押し返しただろう。でも今日騎兵は十分な死体が手に入ったので明日は是非メルスタの魔導兵に亡くなって貰いたい。インプ部隊も使用して明日はメルスタの被害を大きくするつもりだ。
日も完全に暮れ両軍とも陣営に戻ったところで地上に降りる。テーブルとイスは明日も使うのでそのままで、アリシアを迎えに行く。
屋敷についたところ。
「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」
サキュバスのメイド隊が以前冗談で教えた秋葉原風メイドで出迎えてくれる。
「ありがとう、けれどそれが正しい迎え方と言うのは冗談だぞ」
言葉を聞いた瞬間全員ガーンと擬音でも付きそうな表情をしてくれる。からかいがいのある種族だ。
取りあえずアリシアを起こしに行く。
「おはようございます。ご主人様」
字面は普段と変わらないが少し眠たそうな声だ。
「起きて直ぐで悪いがまたすぐ出かける」
まだ寝起きで少し寝ぼけたアリシアにそれだけ伝えサキュバス達を連れて戦場に戻る。
戦場についたらまずサキュバス達に命令をする。
「じゃんけんで負けたやつ二人がメルスタ側に魔力を通さないタイプの結界を不自然でない範囲で張ってくれ、その他の全員でMPタンクになって貰う」
そういうと全員でじゃんけんを始めるみんな顔が本気でちょっと怖い。結果が決まりじゃんけんで負けた二人が悲しそうにメルスタの方へ飛んで行く。そんなに嫌なのか。
魔力を通さない結界を張るのは昼の戦闘で気が付いたんだが魔法を使うと魔力の動きを感じる。アリシア曰く魔眼の効果らしいが魔法を使えるもので一部の人は魔力が見えるらしい。メルスタの国王なんかがこの部類だろう。
魔法の準備を終えて詠唱を始める。
「彷徨える騎士の魂よ、この戦に未練があるのなら我が矛として戦う名誉をやろう。
我が名は佐渡 誠。我に仕え忠実なる騎士となれ。我が軍の矛となれ。我を勝利に導け」
『創造英霊の騎士軍』
一気にMPが抜けて行く。ほぼすべてを使い切ってやっと創造できた。直ぐにサキュバスからMPを補給する。この詠唱恥ずかしすぎる。
先ほどの魔法はオリジナルで『眷属騎士団』と似たような効果を持っている。
結界を張っているサキュバス達も時間がかかるのは辛いだろうから直ぐに次の魔法に移る。
「戦士たちの骸よ、この戦に未練があるのならば我が盾なり矛となり戦う名誉をやろう。
我が名は佐渡 誠。我に従う忠実なる兵士となれ。我が軍団の要となれ」
『創造骸骨軍隊』
魔法の詠唱中からかなりのMPを持って行かれた為MPを吸いながら呪文を唱え終える。
ポーン スキル『眷属騎士団』がスキル『眷属軍団』へと変化しました。
今の魔法を詠唱した事でスキルが変わったらしい。取りあえずは今日はここまでにしておく。死体が急になくなっても不自然なのでスケルトン達は放置して行く。取りあえず元気そうなサキュバスに命じて結界を張っているサキュバスにも帰還を伝える。
家に帰る頃にはアリシアは完全に目覚めていたが俺は疲れたのでベットへ直行した。サキュバス達も疲れただろうから今回MPを吸われたものは休んで良いと伝えた。もう疲れた、寝る。
『魔眼100選』より
魔眼の定義としては魔眼とは特殊な効果を持った目であり目のスキルの事を指す広義語である。
魔眼として有名な魔眼としてコカトリスの『石化の魔眼』等が有名である。この魔眼は目で見たものを石化すると言う能力を持った魔眼である。だが視界に収めたものを無差別に石化するのではなく敵のみを石化する事が出来る。
人間に発現する魔眼だが狩人等の家系に発現する『鷹の目』と言われる魔眼もある。魔眼としては下級のもので類似上位魔眼に『遠見の魔眼』と言われる魔眼もある。こちらは誰が発現するか分かっておらず発現した者は弓者として名をあげる事も多い。また、上位の魔眼は下位の『遠見の魔眼』等のスキルを内包するものも多い。