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第九十三話〜ついにヤツが現れました〜

 赤熱した鉄を叩く。

 ただ無心に、ただ目の前の鉄をより強い鋼へと変えることだけを考えて叩き続ける。何度も何度も折り返し、ひたすら叩く。こうして鉄を叩いている間は色々なことを忘れられる。そう、色々なことを。

 周りでめっちゃ俺を見てる蛇人族のお姉様達のこととかな! いや、甲斐甲斐しく垂れた汗を拭ってくれたり、飲み物を持ってきてくれたりするのは助かるんだけどね。

 今、俺が作っているのは鋼の剣だ。とは言っても鍛えているのは普通の鋼ではなく、ハンマーを通して俺の魔力を浸透させ、性質を元の鉄より大きく変質させた魔鉄、というか魔鋼の剣である。

 鍛造の時点で多量の魔力を練り込まれた鉄や鋼はその性質が変化して魔鉄や魔鋼と呼ばれる素材へと変化するのだ。

 魔鉄や魔鋼は通常の鉄や鋼に比べると魔力の通りが良くなり、魔力を保持する能力も大きく上がる。付与する魔力に属性が宿っていれば製品そのものに属性魔力が宿り、特殊な効果を発揮することもある。

 例えば風属性の魔力を宿した魔鉄や魔鋼製の武器は見た目よりも軽くなり、鋭さが増したり武器そのものに風属性が付与されたりするのだ。

 しかし、そういった物の流通量はさほど多くない。

 第一に鉄や鋼を魔鉄や鋼に変質させられる程の魔力を注ぎ込める鍛冶師が少ない。それだけの魔力があれば魔法使いとしてある程度大成できるからだ。そして鍛冶をする魔法使いなどもほとんど居ない。

 第二にそれだけの手間をかけるならミスリルなどの魔法金属を使ったほうがよほど手間がかからない。ただそのまま鍛えるだけで魔鋼に匹敵、あるいは上回る性能を発揮できるからだ。魔力の付与に関しても属性魔力を持つ魔物の素材などと一緒に鍛えることでより容易に行える。

 第三にどれだけ手間を掛けて鍛えても一級品のミスリルやオリハルコン製の武器と比べるとどうしても性能が劣る。

 なので正直魔鉄や魔鋼という素材は流行っていないのだ。手間がかかる割に性能がいまいちで魔法金属と違って普通に錆びる。

 しかし、今の俺にとっては手間さえかければミスリルの武器とほぼ同等の性能を得られるという点で非常に有用な金属である。魔力は有り余ってるしな。

 地魔法で作った簡易炉に、鍛えていた鋼を入れて火魔法で加熱する。赤熱したらまた叩いて折り返して鍛える。それを繰り返して棒状にし、更に叩いて剣の形に整形する。刀身の歪みやバランスなどをチェックしてから焼入れ、焼戻しを水魔法と火魔法で行い、砥石で研げば刀身の完成だ。

 あとは神木で柄を作り、蛇人族に分けてもらった革や金具で鞘やベルトを作れば魔鋼の長剣の完成である。長さは柄を入れて俺の腕の一・五倍ほど。神々に砕かれた晶芯刃銀剣とほぼ同じ長さだ。剣のバランスもほぼ同じように調整したので、久々に手にしっくりと来る武器を手にできた。

 試しに何度か素振りしてみても違和感は無い。妙だな? スキルポイントシステムが失われて剣の腕が落ちていると思ったんだが。思ったよりもしっくりくるな。まぁ、自分では感じないだけで実際には腕が落ちているのかもしれないけど。

 刀身に魔力を通して各種魔力撃も試す。切れ味優先の閃撃も破壊力優先の爆撃も問題なく使えるようだ。蛇人族に彫金道具を借りて耐久力増加の魔法文字も刻印したので、これでそう安々とぶっ壊れるようなことは無いだろう。

 鍛冶場のお姉様達が出来上がった魔鋼剣に興味を持っているような素振りを見せたので、彼女達に渡してみた。すると彼女達は魔鋼剣を仔細に眺め、小さなハンマーで軽く叩いてその音色に耳を傾けたりバランスを図るかのように軽く素振りをしたりした。

 ある程度見て満足したのか、鞘に収められた魔鋼剣が帰ってきた――のはいいけど親方お姉様の蛇身が絡みついてきた、他のお姉様達も次々と身を寄せてきてその蛇身を絡めてくる。誰も彼も頬が上気して目がヤバい。これはアカン。そう思った時である。

 ダァン! と大きな音が鳴り、俺に絡みついていた蛇身がキュッと締まった。痛いよ!?


「貴様ら、昨日もそうやってお役目を途中で投げ出しただろうが。二日連続では許されんぞ」


 音のした方を見ると、無表情で青筋を浮かべた翠鱗の蛇人族がいた。顔所の足元の地面がベッコリとへこんでいる所を見ると、どうやら先程の音は彼女がその蛇身で思い切り地面を叩いた音であったらしい。

 うん、あの蛇身で叩かれたら骨の一本や二本じゃ済みそうにないな。実際コワイ。

 翠鱗の蛇人族に怒られた鍛冶場のお姉様達は見るからに不満です、という表情を見せたが結局渋々といった様子で俺を開放してくれた。良かった、助かったよ。あのままじゃ俺の貞操がマッハだった。


「明日はもうちょっと短い刃物を作りに来るから、またよろしくな」


 そう言って手を振ると鍛冶場のお姉様達はニッコリと笑ってくれた。翠鱗の蛇人族が睨むとあかんべーをいていたけど。てか舌長いのね。

 少し歩いたところで少し前を歩いて(這って?)いた翠鱗の蛇人族が呆れたような溜息を吐いて振り返ってきた。


「人間、お前は少々迂闊すぎる。私がたまたま通りかかったから良いものの、そうでなければあの場でとんでもないことになっていたぞ」

「うーん、まぁそれならそれで。本当に嫌なら抵抗するさ」

「それならそれで、だと?」

「それほどまでに求めてくれるなんて男冥利に尽きるじゃないか。皆美人さんだしな」


 俺の言葉を聞いて翠鱗の蛇人族が無表情のまま首を傾げた。


「お前達人間にとって我々のような醜い化け物と交わるのは耐え難い苦痛だろうが?」

「え? いや、全然」


 一体こいつは何を言っているんだ? という顔でお互いに見つめ合う。いや、向こうは無表情だけど。目がそう言ってるんだよな。

 嫌がる理由がよくわからない。どうしても蛇がダメな人でもなければ普通ウェルカムじゃないのか? 俺が普通じゃないのか? いや、だってこんな美人だぞ? ウェルカムだろう常識的に考えて。


「やはりお前は変なやつだ」

「ひでぇ……そういえば、どこに向かってるんだ、これは」


 溜息を吐いて移動を再開する翠鱗の蛇人族の後を追いながら問いかける。どうも集落の奥にある岩山の方へと向かっているようだが。


「お前達の寝床を用意すると言っただろう。用意ができたので案内に来たのだ」

「おお、寝床。どんなのか興味あるな」


 テントよりも悪いということはないだろう。蛇人族が用意する寝床というものがどういうものなのか俄然興味が湧いてきた。

 くねくねと艶かしく動く翠鱗の蛇人族の蛇身を眺めながら歩くこと数分、岩山の岸壁にぽっかりと穴が開いているのが見えてきた。どう見ても自然の洞窟ではない、大きな四角形の穴だ。大型の車両でも楽々出入りできそうなその穴は、俺から見れば巨大な搬入口かなにかのように見える。


「やっぱり遺跡を利用した住居なんだな。この出入り口は生きてるのか?」

「開け閉めはできるようになっている。詳細な方法は教えられんが」

「そりゃそうだよな」


 住居を守るための要のようなものだろうしな。でも、そうなるとここの動力は生きてるってことになるよな。案外ここにも擬神格が眠っているのかもしれん。


「こっちだ、ついてこい」


 施設の内部は薄暗かった。彼女達は夜目が効くか、あるいは視覚以外の何かで視界を補える能力を持っているんだろう。確か蛇は温度を感じるピット器官を備えている種が居たはずだが、彼女達もそういう器官をどこかに備えているのかもしれない。

 この遺跡もシェルター遺跡や先日擬神格を手に入れた遺跡と同様に白い陶器のような素材で作られているようだ。入ってすぐの空間は非常に広く、大型の車両が並んでいたか、あるいは大量の物資が備蓄されていたのではないだろうか。この施設は多分軍事施設か物資の集積場か何かだったんだろうな。

 天井も高く、左右の壁には等間隔で通路らしきものが奥に伸びてた。そして、どうやらこの施設は少なくとも四層からなる巨大施設であるらしい。今俺が歩いている地上階の上に二階、三階、四階があるようだ。もしかしたら地下階もあるかもしれない。


「随分と熱心に見ているな」

「初めて見るからな。俺は好奇心が強いんだ」


 チラリとこちらに視線を向けてくるが、別に咎めているわけではないらしい。しかしこれは部屋数が多そうだな。建物の構造は単純だから迷うことはないだろうが、同じような部屋ばかりだろうしちゃんと覚えておかないと部屋を間違えるかもしれん。

 俺が案内されたのは一番奥の列の右側、手前から三番目の部屋だった。覚えやすい場所でよかった。これが奥から三列目とか四列目とか中途半端なところだったら間違ってたかもしれん。


「ここがお前の部屋だ」

「おう、さんきゅー。鍵とかは?」

「内鍵だけだ。我らの中に盗みを働くような輩は居ないが、不安なら大事なものは持って歩くのだな」

「わかった。まぁ大丈夫だろ」


 そもそも俺の場合全部トレジャーボックスに入れて歩くしな。俺の言葉をどう解釈したのかは判らないが、翠鱗の蛇人族は満足そうに頷くと扉を開けて中へと入っていった。俺もそれに続く。


「中は結構広いんだな」

「我々には少々手狭なのだがな」


 部屋の中には蛍光灯のような照明装置があるらしく、結構な明るさだった。部屋の大きさはホテルのツインルームくらいの大きさだろうか。部屋の真ん中には丸いベッドのような寝台が置かれている。大きさはダブルベッドくらいの大きさだ。早速ベッドに歩み寄って硬さを確かめる。


「おお、結構柔らかい。マットは何を使ってるんだ?」

「マット? ああ、寝具か。それは布の袋に獣の毛を詰めたものだ。その上に更に布をかけている」


 獣毛のマットレスに清潔なシーツをかけてくれているらしい。貴重なものだろうに。


「こんな上等な寝床を用意してくれてありがとう。これなら気持ちよく眠れそうだ」


 そう言って振り返ると、目の前に翠鱗の蛇人族が居た。彼女は変わらず無表情だったが、その目はある種異様な『色』を宿していた。頭の奥で警鐘が鳴り響き、俺は咄嗟に後ろへと跳ぶ。


「んっ……す、すまん」


 俺の挙動を見た翠鱗の蛇人族は咳払いを一つして自ら後ろに移動して俺と距離を取った。


「迂闊なのは私だったな。危ないところだった」

「いや、なんというか……大丈夫か?」

「大丈夫だ」


 彼女はもういつもどおりの無表情に戻っており、異様な雰囲気は感じられなくなっていた。どうもあれだな、蛇人族は本能的な部分が多い種族なのかもしれん。だからあまり人間とうまくやれずに大森林に引きこもっているのかもな。


「すまないが失礼する。自由に歩き回ってくれて構わないが、自分達の部屋以外には立ち入らぬように頼む。広間側の二部屋をエルフ達の部屋として割り当ててある」

「ああ、わかった」

「私はエルフ達を案内してくる。出歩くなら気をつけるように」


 そう言って翠鱗の蛇人族は部屋から出ていった。


『惜しかったなぁ。いっそ身を任せればよかったのに』


 いや、あれはなんかヤバいやつだろ。もう少し理性的に襲ってくれないと骨が折れそうだ。物理的に。


『それもそうだね。アルケニアより大分攻撃的な本能が残ってるみたいだし』


 そーなのかーって自然に出てくるなよお前。進捗どうですか?


『進捗ダメです』


 帰って、どうぞ。おら! 早く作業しろよ!


『なぁんてね、冗談冗談。進捗は悪くないよ。ちょっと披露したいものがあってね』


 駄神がそう言うと、俺の胸のあたりが急に熱くなり始めた。心臓が早鐘を打ち、熱さは胸から全身に広がり、体の感覚が徐々に無くなっていく。


「な、なんだ……? お、お前、何を……うあぁ!?」


 視界が強烈な光で塗り潰され、体中の異常な熱が一気に抜けていく。光が収まると、丸くてふかふかの寝台の上に見覚えのある姿があった。


「いぇーい☆ 貴方の永遠の恋人、リアルちゃんでへぶぅ!?」


 何やら奇怪な動きでポーズを決める駄神の頭をパシィンと割と本気で叩いてやった。あっけなく寝台にべしゃりと潰れる駄神。丈の短いワンピースがめくれて純白のパンティが見えているが、こんなに嬉しくないパンモロもなかなかないな。


「ちょっと酷くない? ここは超絶美少女なボクの登場に咽び泣いて足を舐めたり、勢い余って押し倒したりするとこじゃないの?」

「ないです」


 がばっ、と上半身を起こして抗議してくる駄神の頭をもう一発叩く。なかなか叩き心地の良い頭だな。


「痛いんだけど!?」

「お前の顔を見たら叩かずには居られなかった。反省はしていない」


 涙目で見上げてくる駄神を見下ろす。うん、文句の付け所がない美少女である。

 見る角度によって虹色にも見える神々しい銀髪、端正な顔、シンプルな白いワンピースを着た成熟しきっていない起伏の控えめな、少女らしい身体。清楚でありながら強烈に劣情を誘う完璧な肢体。


「やらしい目だねぇ……しょうがないにゃぁ、良いよ?」


 駄神がいやらしく目を細め、見せつけるようにワンピースの裾をそっと上げて眩しい太ももを見せつけてくる。そんな駄神に俺はフラフラと顔を近づけ――。


「フンヌッ!」

「あいだぁ!?」


 思い切り頭突きをしてやった。駄神が頭を抱えて丸い寝台の上をゴロゴロと転げ回る。


「なんでお前実体化してんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

「擬神格の力で依代を創造するくらいのことはできるさ。自分で動かせる身体があったほうが何かと便利だしね」

「ほう。それで擬神格の力を使い果たしたとか言わないだろうな?」

「てへっ☆」

 駄神が自分の頭をコツンと叩いてぺろりと舌を出す。


「うそうそうそ! うそです! ちゃんと力を取り戻したから! というか擬神格である程度力を取り戻したから実体化ができるようになったんだってば!」


 俺の殺気に気がついたのか、駄神が慌てた様子で手を振る。本当だろうな? こいつ。


「でも取り戻した力は微々たるものだよ。それでも実体化した上であの子達の目を欺ける程度にはなったけどね」


 駄神がひらひらと手を振って肩を竦める。


「で、俺の力はどれくらい戻るんだ?」

「とりあえずストレージの機能を戻したよ! 中身もそのままだよ!」


 うわ、凄いドヤ顔だ。その膨らんだ鼻の穴を摘んでやりてぇ。


「うわ微妙」

「微妙!? 微妙ってなに!?」

「いやだって、中身つっても残ってるの俺の服とかお気に入りの食い物とか調味料とかちょっとした武器……ああ、神銀とか黒鋼の杭とかはあるか。他に何あったっけかなぁ」


 ストレージを操作するのは久々の感覚だ。内容物の一覧を展開し、中身を確認する。


「そこそこの現金と金銀財宝、予備武器は……お? いいのあった」


 ストレージから総神銀製のクォータースタッフを取り出す。そういやこいつだけは神々との戦いで使わずにそのままストレージに残してたな。作ったは良いものの影が薄くて全然使ってない武器だったが、今になって役立つとは。


「これなら神木をベヘモスの素材で強化したのよりも耐久性も杖としての性能も上だ」


 軽く振り回してからストレージにしまう。そう、これ持ち歩くのに今ひとつ不便なんだよな。いつか神銀自在剣に使ったのと同じ仕組みでペンサイズに縮小できるようにするかね。

 と、一通り確認して寝台の上を見ると、駄神がやる気なさげにだらりと寝転がっていた。角度的にこちらからは見えないが、股もおっぴろげでパンモロ状態だろう。見た目美少女なのにあんなだからなぁ。


「お前もうちょっと慎みを持てよ。そんなんだから見た目良くてもグッとこないんだよ」

「べっつにぃー? ボクなんて役立たずの微妙なアレだしぃー? どうせ評価してくれないなら気を遣う必要もないしぃー?」

「うわめんどくせぇ」


 思い切りいじけていた。流石に少しいじめすぎただろうか。


「なんだかんだ言ってお前が居ないと立ち行かないんだ、機嫌直せよ」

「便利だからご機嫌取りですかぁー? 心が篭ってないなー、あーやる気出ないなー」


 完全にヘソを曲げてしまったらしい。仕方がないので駄神の頭のすぐ横に腰を降ろし、キラキラと輝く白銀の髪の毛を撫でる。


「悪かったって。俺とお前は一蓮托生、一心同体の同志だもんな。蔑ろにするような発言をして悪かったよ。謝るから機嫌直せ、な?」

「むー……ならキスしてくれたら許してあげるよ。んっ」

「えぇ……」


 駄神がキスをせがんでそっと目を瞑る。いやぁ、ちょっとそういうのは勘弁してほしいなって。色々危ないんで。だってこいつ見た目だけならめっちゃ可愛いんだよ。駄神だからって理由で今までぞんざいに扱ってきたのに、実体化してこんな風に攻めてくるのは良くない。良くないよ。


「はやくしてよ、いくじなし……」


 逡巡していると駄神の腕がすっと伸びてきて俺の首に巻き付き、ぐっと俺の顔を引き寄せた。柔らかい感触が唇に触れ、なんとも言えない甘い香りが鼻孔を満たす。


「おま、んむっ!?」

「んー……」


 文句を言おうとしたらずるりと舌が口腔に侵入してきた。逃げようとする俺の舌に駄神の舌が絡みつき、唾液を吸われて下品な音が静かな室内に響く。脳の奥がジンと痺れ、興奮が身体を熱くする。


「へへへ……ボクはねぇ、堕落や享楽、あらゆる邪な快楽を司る悪い神様なんだよ」


 駄神が唇を離し、そう言って俺の唇の端をぺろりと舐める。警鐘が鳴る。ダメだ、これ以上は。


「良いんだよ? 我慢なんてしなくても……全部受けとめて――」

「タイシー? いるの?」


 スライド式の扉が開き、リファナが入室してくる。空気が凍りついたかのような静寂が部屋の中を満たす。俺の興奮度も一気に急降下する。良かった、終わったかと思ったよ。助かった。


「またなの? またなのね? というか、その女誰よ!?」


 がおー! とリファナが吼える。助かってなかった。

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