第九十一話〜蛇人族の村へと向かいました〜
どうも、タイシです。
神々にフルボッコにされて落ち延びた先で嫁のお母さんや嫁の幼馴染をたらしこんだタイシです。違うんです、駄神の陰謀なんです。
『人のせいにするのはよくないなぁ。結局のところ君の選択だよ? 断固拒否しようと思えばできるわけだしぃ?』
知ってるよ畜生!
『まぁ据え膳食わぬは男の恥だし? 英雄色を好むとも言うし? あまり生まれ故郷の慣習をダラダラ引きずるのも良くないと思うよ? 郷に入っては郷に従えって言うじゃない』
あー、うるさいうるさい。そして今、頭の中で俺を堕落の道に引きずり込もうと囁いているのが全ての元凶、駄神ことリアルさんです。
『はいっ♪ 超絶可愛いリアルちゃんですっ☆』
黙って、どうぞ。ちょっと状況を整理したいんで。
『はいはい、ボクも擬神格の処理作業で忙しいからまたね。数日かかると思うからよろしくー』
駄神が俺の意識の底に沈み込んでいったのを確認し、溜息を吐く。目を開いて飛び込んでくるのは質素なテントの天井だ。大きさは三人がギリギリ並んで寝られる程度のもので、今は俺一人が寝っ転がっている。
さして厚くもないテントの布地の向こうには焚き火の明かりが透けて見える。テントの外では俺の嫁であるメルキナの実母、つまり俺にとって義母にあたるエルミナさんとメルキナの幼馴染である褐色肌エルフのリファナが夜番をしてくれていることだろう。
微かな明かりに照らされる自分の右手をじっと見つめる。
見慣れた手の平だ。特に穴が開いているということもなく、何かがめり込んだような傷跡もなく、いつもどおりの手の平である。しかし、ほんの数時間前にこの手の平から俺の身体の中へと擬神格が入り込んだのだ。
一言で言えば『壮絶な体験』だった。
体の内部を硬質の結晶で切り刻まれるような苦痛がおよそ十五分ほど続いたらしい。自分で体験したことだと言うのに『らしい』というのも変な話だが、苦痛に喘いでいる間は時間の経過など意識できるような状態ではなかったのだ。経過時間は後から駄神に聞いた。
さて、この度俺が取り込んだ『擬神格』というものなのだが、こいつは一言で言えばこの世界の神様の力を結晶化したようなものであるらしい。
その昔、古代人は高次元生命体とも言える神という存在を神の座から引きずり下ろして『擬神格』とし、エネルギー資源や兵器として使い潰して栄華を極めていたのだそうだ。
そんなモノを俺が取り込んだ理由は単純明快で、神々に奪われた俺と駄神の力を補い、取り戻すためである。今はそのために大森林各地の禁足地を巡っているというわけだ。
今日手に入れたもので取り敢えずは一つ目。
探索を始めて数日で一つ目の擬神格を手に入れることができた……というのは果たして順調なのかどうなのか。一体いくつ必要なのかがわからないのだが、その辺りは今回取り込んだ擬神格の処理とやらが終われば駄神が教えてくれることだろう。
しかしまぁ、俺としては実に憂鬱な気分である。なんせ擬神格を取り込むのには大変な苦痛を伴う。知っていてなお挑めるのか、と言われるとちょっと怪しいところだ。流石に気を失うほどに痛くて、でも痛すぎて気を失えない……なんて体験は初めてだったからな。
ああ、実に憂鬱だ……いや、マイナス思考に陥ってはいけない。何か楽しいことを考えよう。さしあたっては明日向かう予定の蛇人族の集落について考えるとしよう。
明日向かう予定の集落に住んでいる蛇人族というのは、上半身が人間で下半身が大蛇という異形の者達であるらしい。俺の知識で言うところの半人半蛇の亜人と言えばラミアだな。この世界での呼び名はあくまでも蛇人族というわけだけども。
一応、そこで数日間休む予定である。蛇人族は戦闘能力が結構高いらしく、その集落内であれば魔物達に襲われることもなく安全に過ごせるだろう、とエルミナさんは言っていた。
リファナはちょっと微妙な顔をしていたが、蛇が嫌いなんだろうか? 俺は蛇も含めて爬虫類系はそんなに嫌いじゃないので、無問題だ。
しかしラミアと言えば元の世界では人外娘カテゴリの中でも屈指の人気を誇るキャラクターだった。上半身は美女、下半身は大蛇、その美貌で男を誑かして生き血を吸う――なんて感じの存在だったが、この世界ではどうなんだろうか? 会うのが楽しみだな。
まだ見ぬ蛇人族との出会いに思いを馳せながら、俺は夜番の交代時間まで身体を休めるのだった。
☆★☆
チチチッ、と名も知らぬ小鳥が何処かで鳴いている。朝靄の漂う森はまだ静かで、聞こえるのは小鳥の囀りと、僅かな葉擦れの音、そして俺の目の前のかまどの薪が時折爆ぜる音くらいである。
夜半過ぎに夜番を交代した俺はあまりにも暇だったのでこうして簡易的なかまどを作って鍋の番をしていたわけだ。
「おはよう、タイシくん。身体の調子はどう?」
ボーっと鍋を掻き混ぜていると優しげな声が耳朶に響いてきた。
「おはようございます、今のところは特に異変は無いですね。あ、そっちに石桶作って水貯めてありますんで」
「あら、ありがとう。気が利くわね」
テントから抜け出してきたエルミナさんが笑顔で礼を述べながら水を貯めてある石桶の方へと歩いて行く。
程なくリファナも起き出してきて寝ぼけ眼を擦りながらエルミナさんが向かった水場へと歩いていった。どうもリファナは朝が弱いようだな。いつもツンツンしてる女の子が寝起きでぽけーっとしてるのってなんであんなに可愛らしいんだろうな? ギャップ萌えというやつだろうか。
「んー、こんなもんか」
出来上がったスープを味見してそう呟く。
エルフの村から持ってきた骨付き肉から肉を取り外し、残った骨をよく洗ってからさっと下茹で。
すぐに冷水で冷やして肉片などを綺麗に除去し、あとはバキバキと適当に砕いて綺麗な水を張った鍋に投入。沸騰したら弱火でコトコトと煮る。
「あら、いい匂い」
「暇だったんで骨ガラをじっくり煮込んでスープを作ったんですよ」
「なるほどね」
アクを丁寧に取り除き、更に香草を入れてじっくり煮る。最後に粗い清潔な布でスープを漉してスープのベースが出来上がった。
更に調味料代わりに塩辛い干し肉を使い、干し野菜と昨日摘んでおいた香草を追加で入れ、味を整えれば立派なスープの完成だ。これに遺跡の探索で見つけたビスケットの缶詰と果物の缶詰を添えたのが本日の朝食である。
「おはよ」
「おっす。メシできてるぞ」
「ん……」
リファナも顔を洗ってきたようだが、まだ完全に起動してないなこれ。まぁ食ってる間にいつもの調子が出てくるだろう。
「蛇人族ってどんな奴らなんです?」
「んー、普通よ? 下半身が大蛇なだけで。魔法はあまり得意じゃないみたいだけれど、力は強いみたい。実際のところ、私もそんなに深く関わったことはないのよね」
「そうなんですか?」
「ええ。物資の買い出しの時にケットシーとか鳥人族の集落で出会うことがあるのと、たまに情報をやりとりするくらいの関係だから」
「大丈夫なんですか、それ」
「大丈夫でしょ、多分」
そりゃエルミナさんもリファナもエルフだから大丈夫だろうけども、人間の俺は大丈夫なのだろうか。大森林に住んでる人達って森の外の人間に対してひどく排他的って話を聞いた覚えがあるんですけど。
「大丈夫よ、何があっても私がタイシくんを守ってあげるわ」
「やだかっこいい。抱いて」
「朝から何言ってるのよ」
「私は良いけどね?」
エルミナさんの男らしい発言にキュンってなった。速攻でリファナに突っ込まれたけど、何があっても守ってあげるとか言われたらキュンってしない? 俺も見習おう。
朝食を片付けてテントを回収したら直ぐに出発することになった。
俺は武器が壊滅したのでシェルターの遺跡で回収した長銃型の魔法銃を装備している。いざとなったら鈍器にもなるしな!
「蛇人族の集落にはどれくらいで着くんです?」
「いつものペースで移動すればさして時間はかからないわ。どうせなら何か手土産でも用意していきましょうか」
「手土産?」
「宿代替わりに何か動物でも狩っていこうって話よ」
「なるほど」
というわけで本格的な移動前に蛇人族の村に持っていく手土産を用意することになった。二人ともこの辺りでは狩りをしたことがないらしいので、手探りの狩りになるようだが大丈夫なのかね?
「見つけた。これはブラックエルクのフンね、新しいわ」
「向かってるのはあっちか……風下から回り込むわよ、ついてきなさい。静かにね」
「アッハイ」
三十分もしないうちに二人は目標を捕捉したようだった。俺にはフンも足跡も全く見つけられないんですけど。心配なんて全然いらなかったな!
風のように森を往く二人の後についてゆくこと数分、二人が突如その足を止めた。俺も慌てて止まる。いきなりどうしたのかと戸惑っていると、エルミナさんは少し離れた茂みに身を伏せ、リファナは俺をすぐ近くの茂みへと引っ張り込んだ。
「一体どうしたんだ?」
「シッ、来るから黙ってなさい」
リファナが片手で俺の頭を押さえつけ、背負っていた弓を素早く構えて腰の矢筒から矢を抜いてつがえた。
森に静寂が満ちる。
聞こえるのは僅かな葉擦れの音と、小鳥のさえずり、間近にいるリファナの吐息と俺の心臓の音くらいだ。
暫く伏せていると、気配察知に何かが引っかかってきた。ゆっくりとした速度で動くそこそこ大きな気配だ。
森の奥から姿を現したのは、見上げるような巨体の鹿である。これはあれじゃな? ヘラジカとかそういうのじゃな?
体高は俺よりも遥かに高い。恐らく三メートル弱はあるだろう。体重は一トンくらいはあるんじゃなかろうか? これ、弓矢で仕留められるの? 対物ライフルとかいらない? 大丈夫?
隣でリファナが音も無く弓を引き、矢じりの先をヘラジカ(仮)へと向ける。何かに警戒したのか、ヘラジカ(仮)の動きが止まった。
次の瞬間、放たれた矢が風を纏って突き進み、ヘラジカ(仮)の目を射抜いた。巨体がビクリと震え、轟音を立てて倒れる。茂みから飛び出すと既にエルミナさんがヘラジカ(仮)の太い首にナイフを打ち込んでとどめを刺していた。
「良い矢だったわね」
「たまたま良い角度で動きを止めてくれたから」
謙遜しつつもエルミナさんに褒められて悪い気はしないのか、リファナの耳が嬉しげにピコピコと上下に動いている。なにこれ可愛い。
「タイシくん、悪いんだけどそこの木にこれを吊り上げてくれる?」
「合点承知」
トレジャーボックスからロープを取り出し、後ろ足を縛って近くの大きな木に吊り上げる。何にせよ血抜きをしないと話にならないからな。血抜きをしないと肉なんて臭くて食えたものじゃない。
まだ心臓が動いているらしく、エルミナさんが切り裂いた首から結構な勢いで血が出てくる。うーん、こういう光景も慣れてきたな。俺も順調に異世界に適応してきているらしい。
「どうします、これ。三人で解体するのキツくないですか?」
「そうねぇ、できないわけではないけど。とりあえず内臓だけ取り出しちゃいましょうか。本格的な解体は蛇人族の集落でやってもらいましょう」
「了解」
水魔法も使って血抜きをし、腹を割いて臓物を取り出す。取り出した臓物はトレジャーボックスにシュート! 皮剥ぎと解体は三人でやるのはしんどいので、水魔法で作った氷を腹に詰め込んでトレジャーボックスに収納し、蛇人族の集落に持ち込んで蛇人族に解体してもらうことにした。
「じゃあ行きましょうか」
「はい」
「うっす」
すぐに走り始めたエルミナさんの後を追い、リファナと俺も駆け出す。この辺りの森は比較的穏やかな様相で、魔物が出るような森特有の鬱屈とした雰囲気が感じられない。
そんな爽やかな森を風のように走ること一時間ほど。何かを察知したのかエルミナさんが足を止めた。俺の気配察知にはまだ何もかかっていないが、一体エルミナさんは何を察知したんだろうか?
「蛇人族の縄張りに入ったみたい。ここからはゆっくりいきましょ」
「なんでわかったんです?」
「あそこの木を見て。表皮が削れてるでしょ?」
確かに、エルミナさんが指差す木を見てみると、巨大なヤスリか何かで削ったような螺旋状の痕がついている。
え? 蛇人族が巻き付いたらこんな太い木があんなになんの? ロールミーとかそういう次元じゃなく巻きつかれたら全身複雑骨折になるんじゃないか、あれ。いや、複雑骨折になる前に肉が削げて摩り下ろしになるかもしれんけど。
「巻きつかれたらヤバそうですね」
「忍び寄って絞め殺すのが得意みたいよ」
蛇人族さんは思ったよりパワフルであった。
まぁ、こんな森の中だとパワフルでないと生きていけないんだろうなぁ。チラリとリファナの様子を窺ってみるが、特に顔色を悪くしているということはないようだ。別に蛇が嫌いってわけじゃないのかな。
俺は無手になってエルミナさんとリファナに挟まれて歩くことになった。人間の俺が武器のようなものを持っていたら蛇人族に警戒されてしまうかもしれないからだ。
「初接触の相手は緊張するなぁ」
「そんなに心配はいらないわよ。私とリファナがいるのにいきなり襲い掛かってくるようなことはないだろうから」
「だいいち、アンタ襲われても大丈夫じゃない」
「大丈夫だからといって襲われたり嫌われたりしても平気ってわけじゃないんだ」
誰かに敵意を向けられて気持ち良いとか爽快だとかそういった思いを抱けるような人間じゃないんですよ、俺は。敵意や悪意より善意を向けられたいと思うのは人として当たり前のことじゃなかろうか。
そうして歩くこと更に三十分、気配察知に複数の反応があった。
「近くに何かいますね。このまま歩くと囲まれますが」
「よくわかるわね? ま、気にすることはないわよ。進みましょう」
余裕のある笑みを浮かべてエルミナさんが歩を進める。この度胸はどこからくるんだろうか。やはり経験か。大人の余裕というやつか。そうして進むこと数分、行く手に三人の蛇人族らしき影が佇んでいた。周りに身を隠している蛇人族らしき反応は六つのままで、今や完全に周囲を包囲されている形だ。
「止まれ」
行く手を塞ぐ蛇人族達は全員槍で武装していた。上半身が美女で、下半身が大蛇。想像通りの『ラミア』的なビジュアルに感動を覚える。上半身の美しさももちろんだが、蛇身の艶めかしさにも目を奪われる。木漏れ日を反射した鱗がキラキラと光ってすごい綺麗なんだ。
「エルフの……見たことがある顔だな。人間なんぞを連れて我々の集落に何の用だ?」
全く感情の感じられない無表情のまま、真ん中の蛇人族が問いかけてくる。これもまたびっくりするほど美人だ。両脇に控えているのは部下なのか、一歩引いた位置で静かにこちらに視線を向けてきている。
「私達三人を数日あなた達の集落に泊めてもらえないかと思って来たのよ。別に貴方達に何か害を為そうと思っているわけじゃないわ」
「宿を……? お前たちの集落は確かにここからは遠いが……そもそも何故こんな場所にいる?」
「ちょっと事情があってね、禁足地を回ってるのよ。手土産も持ってきたから、あまり深く事情は聞かずに泊めてはくれないかしら?」
「禁足地を……? まぁ、深くは聞くまい。しかし、その人間の男についてはしっかりと説明してもらおう」
蛇人族達とエルミナさん達の視線が俺に集まる。やだ、ちょっとこんな美女達に注目されるとちょっと緊張しちゃうんですけど。
「タイシです、得意なことは戦闘全般と鍛冶、魔法もそこそこ使えるぞ! お姉さん綺麗ですね。鱗がキラキラしてて超クール」
ビシッ、と親指を立ててバチコーンとウインクをキメてやる。これで蛇人族のお姉さんも俺にキュンっとなってこの場が和やかに収まることだろう。間違いない。
「……なんだ、これは?」
「うーん、何かしら? 節操無しの男の子?」
「ちょっとあんたねぇ……」
「痛い! 脇腹痛い! 抓るのはやめろ! ふざけたのは悪かった!」
リファナが割と本気で脇腹の柔らかいとこを抓ってきやがった。どんなにレベル上がって高ステータスになってもそういうのは痛いんでほんとやめてください。
「いてて……とは言ってもね、何を話せば良いものやら。何が聞きたいんだ?」
「二人との関係は?」
「こちら義母、こちら嫁の幼馴染、そして二人ともパートナーです」
「???」
俺の説明に蛇人族の女性は困惑の表情を浮かべ、首を傾げる。無表情な美人が急に困惑の表情を浮かべるとなんか可愛らしいな。
「よくわからないが、親しい関係だということは理解した。ではお前は我らの集落、そしてこの大いなる森に住まう人々に対する害意を持っていないと誓えるか?」
「少なくとも現時点でそういったものは持ち合わせていないな。未来永劫、生きている限りそうかと言われるとそれは保証できない。だがまぁ、少なくとも嫁の故郷をどうこうしようなんて気はこの先も起こらないとは思う」
「正直なことだな」
蛇人族の女性は頷き、今度はエルミナさんとリファナに視線を向けた。
「ではエルフの二人よ。この男が我々に悪意を持って災いを齎した時にその心臓を差し出す覚悟はあるか?」
「勿論」
「そうなったら私がこいつを殺して私も死ぬわ」
重い! 重いよ! でもそれだけの覚悟を俺のためにしてくれるってのはなんというか、こう、胸にズンとくるな。この信頼を裏切るような真似は絶対にしちゃいけない。
「ならば我らの集落に逗留することを許可しよう。ついてくるが良い」
女性が蛇身をくねらせ、振り返って進み始める。脇についていた二人も同様にこちらに背を向けて進み始めた。上半身が一切ブレず、スーっと進んでいく蛇人族の歩きかたはなんとも奇妙だな。
後ろについて歩きながら、目の前で艶かしくくねる蛇身を見つめる。うむ、木漏れ日をキラキラと反射して綺麗だな。先程俺達と言葉を交わしていた蛇人族の女性の鱗は美しい翠色で、陽を受けて時折虹色にも輝くのだ。実に美しい。
その両脇を進む蛇人族は真ん中の女性よりも年若いようだ。二人とも赤っぽい鱗をしている。こちらも時折ルビーか何かのようにキラキラと鱗が輝いて美しい。見ながら歩いていると、いつの間にかこちらに振り返っていた三人と目が合ってしまった。なんとなく気恥ずかしい気分になる。
「人間、お前は私達が怖くないのか?」
「え? いや、全然。君ら美人じゃん。鱗も綺麗だし」
「ふむ……?」
何か得心がいかない、というような表情で蛇人族の女性は進み続ける。
「お前は変な人間なのだな」
「なんでやねん」
急にディスられた。なんでや。
それから先は何故か前を進む蛇人族の娘さん達の蛇身のうねりが三割増しくらいになった。動きがダイナミックで見応えがあるな。そしてまたなんかこちらをチラチラ振り返っている。なんなんだい君達は。
ふと横を見るとエルミナさんがニヤニヤしており、リファナはなにやら膨れっ面だ。
「なんでしょう?」
「んーん? なんでもないのよ?」
「ふん」
知ってるよ、ぼくこういうの知ってる。
流石にこれだけこっちの世界で過ごせばそろそろ察しもつくようになってきますよ。俺だってそんなにニブチンじゃないからね。つまり、そういうことじゃな? 蛇人族を美しい、綺麗と言うような人間の男が珍しくて前の三人が俺にちょっと興味を持ったと、そういうことじゃろ?
仮にそうだとして、どうしたものかな。まぁ流れに身を任せるのが良いだろうな。
11月10日発売の8巻に向けて連続更新だドン!
基本的な流れはWeb版と同じだけれど、加筆修正や閑話も入る書籍版もよろしくお願いします!_(:3」∠)_




