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第116話〜家族サービスに奔走しました〜

短い! キリの良いところがここしか無かったんです許してください!_(:3」∠)_

「「むー……」」


 食後、今日のお土産である酒を出したところ、マールとメルキナが不満げにぷくーっと膨らんだ。


「妊娠中の飲酒はお腹の子供に悪いからね。我慢しなさい」


 エルミナさん、温めたお酒を飲みながらそんな事を言っても逆効果だと思います。


「私も不満」


 カレンは酒が苦手なので、こちらも不満げだ。シェリーとシータンは割といける口である。こちらの世界では飲酒制限などありはしないので、子供でも普通に飲むのだ。とは言ってもあまり小さな子供に飲ませるのは良くないともされているのらしいけど。彼女達は俺と結婚もしているし立派な大人なのでお咎めなしだ。


「私は甘い蜂蜜酒とかの方が好きだね」

「温めたやつにザラメを少し沈めて飲んでみるといい」

「お酒に砂糖を入れるのかい? うーん……?」


 俺のアドバイスを聞いたデボラが変な顔をしながら酒盃に一摘みのザラメを入れて飲み始める。


「んー、悪くはない? のかねぇ?」


 微妙らしいが、そのままよりは良いのかちびちびと飲み始める。しかしマールとメルキナとカレンは不機嫌なままだな。よし、ここは俺が一肌脱ぐか。


「よし、ちょっと道具を作ってくる」

「急にどうしたんですか?」

「ご機嫌斜めの君達にふわふわで甘い魔法みたいなお菓子を作ってやろう」

「それはいいわね!」


 お菓子と聞いてメルキナの顔がぱぁっと笑顔になる。カレンも羊耳をピコピコと動かして期待に目を輝かせている。これは気合を入れて作らねばなるまい。


「そのためにはまずお菓子を作るための道具を作らねばならない」


 というわけで工房へと向かう。わたあめ機の構造そのものはそんなに難しいものでもない。小さな穴が無数に空いた容器の中でザラメを融解させ、その容器を回転させて溶けたザラメを遠心力を利用して糸状に飛ばすだけである。やろうと思えば乾電池で動くモーターと空き缶、アルコールランプ、桶といった材料で簡単に作れるのだ。

 そして、今の俺には最高レベルの鍛冶スキルと魔道具作成スキルがある。楽勝である。


「どんなものが要るんですか?」

「ザラメが溶ける熱に耐えられる材質の器だな。小さめの口がついた円筒状のもので、コップくらいの深さのものがいい。金属製のものがいいかな?」

「それなら私の錬金工房にちょうどいいのがありますね」


 というわけでマールの錬金工房に向かう。俺の鍛冶工房のお隣である。さらば俺の鍛冶工房。


「ガラス製のものもありますけど」

「小さい穴を空けるから金属製のほうが良いかな」

「ならこれを」


 マールから受け取った銅製のカップに空間魔法で小さな穴を無数に空ける。うん、こういう精密作業には最適だな、空間魔法。俺でもないと魔力切れでぶっ倒れるだろうけど。そしてカップの底に加熱の魔法文字を彫る。


「ザラメが焦げた……」

「溶かすなら百六十℃から百八十℃くらいですよ」

「なるほど」


 錬金術でも砂糖はよく使うのでマールはとても詳しかった。俺は大体百八十℃くらいになるように魔法文字を刻印し直す。


「うん、あとはこれを回転させるんだが……」

「遠心分離機を使ってみますか」

「そうだな、飛び散ったら大変だから桶の中でやろう」


 マールと二人で遠心分離機を改造し、わたあめ機が完成した。錬金術も便利だな……金属同士をこんなに簡単に接合できるとは。


「よし、実験だ」


 銅製のカップが十分に温まったのを確認し、遠心分離機を作動させてからザラメをカップに投入する。


「なんか蜘蛛の糸みたいなのがいっぱい出てきたわ」

「甘い匂いがする」


 カレンがクンクンと鼻を鳴らすのを横目に木の棒にわたあめを絡ませていく。ふむ、これは少しコツがいるかな? どうやら全てのザラメが放出されたようだ。


「じゃーん、これがわたあめだ」

「確かに綿みたいにふわふわですね」

「どうやって食べるの?」


 わたあめを指で少しちぎり、首を傾げるメルキナの口元に持っていく。


「はむっ……甘い! ふしぎ!」


 私も私もと言ってくるマールとカレンにもわたあめをちぎってあーんしてやる。


「ふわぁ、これは不思議ですね。口の中で溶けちゃいます」

「おいしい」


 三人とも気に入ってくれたらしい。どんどんわたあめを作り、一人に一つ行き渡らせる。


「雲を食べてるみたいですね!」

「そうね、面白いわ。作るのも楽しそうね」

「でもちょっとべたつく」

「人肌で簡単に溶けるからなぁ……よし、これを持ってリビングに戻ろう」


 急造わたあめ機をストレージに収納し、四人でわたあめを食べながら移動する。


「あら? なぁに? それ」

「わたあめです。タイシさんの世界のお菓子だそうですよ」


 一見お菓子に見えないわたあめはリビングに残っていた飲ん兵衛達の興味を惹いた。俺は急造わたあめ機をストレージから取り出し、目の前でわたあめを作って見せてやる。


「甘いわね……不思議な食感だわ」

「食べた気がせぬの」

「お酒には合わないわねぇ」


 と言いつつクスハもエルミナさんも満更では無さそうな表情だ。他の娘もおおよそ気に入ったようである。


「あんま食べ過ぎるなよ、虫歯になるぞ。要はこれ砂糖だからな。食い過ぎは身体に良くない」


 毎日食ってたら太るか糖尿病まっしぐらな気がする。


「俺の住んでた所ではお祭りの時とかに屋台で売る手軽なお菓子って感じだったな。常食するものではない」

「ふむ、お祭りの時にですか……でもこのわたあめは売れそうですね。ザラメに色を付けたら……おお、なかなかカラフルですね」


 マールが錬金術を使って果物とザラメから様々な色のザラメを作り、色付きわたあめを作り始める。確かにこれはカラフルで面白いな。


「微かに果物の匂いがする」

「おいしいです」

「あざやかですね!」


 色付きわたあめを貰った獣人三人娘が楽しそうに笑う。うん、シェリーとシータンはちょっと呂律が怪しくなってるな。寝かせたほうが良さそうだ。

 後日、低コスト化と模造対策を施したわたあめ機の開発に成功した俺とマールは交易ルートを通じて各国にわたあめ機と多様なフレーバーの錬金ザラメを販売。これが売れに売れまくり、勇魔連邦を支える貴重な財源の一つとなった。世の中、どこで何が役立つかわからんものである。


 ☆★☆


 ゲッペルス王国に捕虜を移送したら次の会合までは比較的暇である。なので、俺は家族サービスをすることにした。


「わたあめ機を改良しましょう! これは売れますよ!」


 という感じでマールと一緒にわたあめ機を改良したり。


「ご主人様がクローバーを離れている間に変わっている風景も多いですよ。見て回りませんか?」


 と言うフラムと一緒に街の見回りや警備隊の訓練をしたり。


「旦那様、政務が溜まっております。大丈夫です、私もお手伝いしますから」


 と、ティナと一緒に書類とにらめっこをしたりしたりする。


「私にも構うべきだと思うの、ねぇパパ?」


 と甘えてきたメルキナを思う存分甘やかしたりもした。


「ちょっと食料備蓄が危険域だよ」


 と忠告をしてきたデボラと一緒に支援要請していた食料を受け取りにも行ったな。


「タイシ、構って」

「わたしも、およめさんですよ。かまってください」

「あ、あの、私も」


 と擦り寄ってきた獣人三人娘と思う存分遊んだりもした。


「主殿、大樹海の長達にも無事を伝えに行くべきじゃぞ」


 と言うクスハと一緒にアルケニアの里や鬼人族の里、川の民の居住地にも行った。土産の酒が大層喜ばれたな。


「あなた、カレンディル王国から反逆者の領地を落としたとの方が入りましたわ。折衝に行きますわよ」


 とネーラに連れられ――いや転移で連れてったのは俺だけど――てカレンディル王国にも行った。ネーラは前回の甘めな交渉は何だったのかと思うほどに厳しい条件をカレンディル王国に突きつけ、賠償金や勇魔連邦にとって有用な利権を毟り取っていた。カレンディル国王の髪の毛が相当散ったんじゃないだろうか……マールに言って胃薬と増毛剤を作ってもらおう。


「タイシくん、私とデートに行きましょ♪」


 そうエルミナさんに言われてハイヨロコンデー! とホイホイ着いていったら大樹海の怪獣討伐ツアーだった。俺が何を言っているかわからないと思うが俺にも何が起こったのかよくわからなかった。ただ今になって思えばエルミナさんに上手くコントロールされて怪獣に突っ込まされていた気がする……エルミナさんには逆らわないようにしておこう。


「わたしにもかまってよう……」


 連日の家族サービスで流石の俺も疲れていたのだが、リファナに半泣きで懇願されてしまっては奮起しない訳にはいかない。リファナは街での買い物に興味を示していたので、カレンディル王国の王都アルフェンやミスクロニア王国の王都クロンで二人きりでデートをした。最後にはいつもの調子を取り戻していたので、デートは成功ということで良いだろう。




「家族サービスって大変だな」

「タイシさんの甲斐性の見せ所ですね」


 俺の腕を枕にしながらマールがクスクスと笑う。今日はマールの日なので、俺達は一緒のベッドに入って互いの体温を感じながら話をしていた。無論、マールは身重なのでそういうのはナシである。そういうのってなんだって? 野暮なことを聞くなよ。


「今日のゲッペルス王国との折衝はどうだったんですか?」

「ティナとネーラが頑張ってくれてな、俺が思ってたより毟り取ってたな。えーと確か……」

「……ふむ、妥当なところですね」


 具体的な賠償金の額などを伝えると、マールはそう言って頷いたようだ。鳶色の髪の毛が俺の鼻先をくすぐる。


「しかし、これで暫くはのんびりできるなぁ。クローバーの発展にようやく注力できるってもんだ」

「あはは、そんなこと言ってるとのんびりできなくなっちゃいますよ」

「ははは、マールはおかしなことを言うなぁ」


 そんな会話をした翌日の昼過ぎに、そいつは現れた。

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