第九十九話〜邪神の力を手にしました〜
「ここが中心部?」
メニューのマップ機能を活用して暫く進み、それでもそれなりの時間をかけて俺達は施設の中心部へと辿り着いた。ここは嘆きの牢獄塔の最奥の部屋にそっくりだ。
部屋の広さは学校の体育館ほどの広さはあるだろうか。そこそこ広くはあるのだが、用途の判らないタワー上の機械がそこそこの数配置されている上に、中央部に大きなガラス張りのシリンダーのようなものが鎮座しているせいで手狭に感じる。
エルミナさんとリファナの二人は俺の傍からあまり離れず、興味深げに部屋の中を見回している。
「タイシくん?」
「多分あの中央の装置に擬神格があると思います」
ガラスのシリンダーのように見えるが、あれは多分嘆きの牢獄塔にあったのと同じ装置だろう。ガラスのシリンダーのように見えるアレは実の所円柱状に形を維持している液体のようなものなのだ。どういった仕組みで液体があのように形を保っているのかは知らないが、触れればずぶりとほとんど抵抗もなく手が沈み込んでいくはずである。
「間違いないね、あの中から擬神格の反応を感じるよ。もうビンビン来てるね」
部屋の中が一瞬まばゆく光を放ち、駄神が顕現した。その頭に速攻で一発拳骨を落とす。
「いだぁ!?」
「とりあえずさっきの礼だこの野郎」
「野郎じゃないですぅー、ボクは完璧美少女のリアルちゃんですぅー。暴力はんたーい」
涙目になりながらリアルがサッとエルミナさんの陰に隠れる。エルミナさんを盾に使うとは、なんと卑劣な。
「それよりも擬神格だ。取り込めよほら、早くしろ」
「あの中に手を突っ込むのはイヤ。タイシが取って渡してよ」
「お前なぁ……」
俺だって女の子の身体から擬神格毟り取るのなんて嫌だよ。でもこのシリンダーでけぇな? 暗くて中もよく見えないし。
「それよりも中を見えるようにしてくれ。俺も中が何なのかわからないのに手を突っ込むのは御免こうむる」
「それもそうだね。えーっと」
リアルがシリンダーのすぐ近くにあるパネルを操作すると、真っ暗で何も見えなかったシリンダーの闇が晴れてその中身が明らかになった。
「おいおいマジかよ」
「うわぁ、これ……」
シリンダーの中に入っていたのは、異形だった。全身の肌は青黒く、頭に角が生え、四肢の先に刃物のような鋭い爪を備えた異形だ。口は大きく裂け、鋭い牙が覗いている。全身には硬そうな剛毛も生えており、筋肉も肥大化していてまるで人間には見えない。
全体としてみれば間違いなく人間ではないのだが、元は人間であるということがなんとなくわかる。率直に言って見ているだけで気分が悪くなる異形だ。
「人間、なの?」
「そうみたいだな。何をどうしたらこうなるんだか」
「これはあれだね、間違いなく善神じゃなく邪神の擬神格だね! いいぞ! すごくいいぞ! さぁ、早く引っこ抜いてボクにプリーズ!」
駄神は大興奮しているが、俺を含めた他の三人は絶賛ドン引き中である。
「ええ……? あれ取り込むの? ばっちくない?」
「ばっちいとか言うなし!? きっと由緒正しい邪神の擬神格だよあれは! うーん、何を司っているのかな? 闇……いや、もっと直接的な、暴力? 獣性かな?」
「良さそうな雰囲気が皆無なんですがそれは。取り込んでも大丈夫なのか? 俺、いきなり乱暴者になって暴れだしたりしない? というかお前大丈夫なん?」
「それは絶対に大丈夫。神格としてボクに勝てるヤツなんてとっくの昔に使い潰されて完全に消滅してるから。さぁ、早く早く!」
「ほんとにござるかぁ?」
ハイテンションなリアルに疑いの眼差しを向けながらもシリンダーへと手を伸ばす。ズブリ、とシリンダーへと沈み込む俺の手を見て誰かが短く悲鳴を上げた。恐らくリファナだろう。とりあえず今は集中することにしてシリンダーの中の異形へと手を伸ばし続ける。
擬神格が埋め込まれているのは嘆きの牢獄塔に囚われていた少女と同じく胸のほぼ中心部、心臓の上あたりだ。その色は乾いた血のようにドス黒く、昏く、紅い。指先に硬い感触が触れた、その瞬間である。
「うおわぁっ!?」
「タイシくん!?」
「タイシ!?」
擬神格に手を触れたまさにその瞬間、異形が目を開き俺の右手を捕まえようとその鋭い爪の生えた手を伸ばしてきた。あんな手で握手でもされようものなら俺の手は間違いなくズタズタに切り裂かれてしまうだろう。
「あっぶねぇ!?」
手首を握り潰される前になんとか手を引き抜き、事なきを得る。黒い獣はシリンダーの中で暴れていた。目を真っ赤に光らせ、爪を何度も振りかざす。しかし、その体は爪の先一ミリどころか毛の一本もシリンダーの外に出ることは叶わなかった。
どれだけ暴れても、どれだけ叫んでもシリンダーは決して中のモノを外には出さないようにできているらしい。
「どうすんだ、これ。こんなに暴れてたら擬神格毟り取れねぇぞ」
「うーん、そうだね。封神容器の外に出すのは論外だなぁ。随分肉体の変異が進んでるし、本能しか残ってないみたいだから権能を暴走させそうだ」
「なんか怖い響きだなぁオイ」
獣性を司る神の権能ってどんなものかわからないが、そんなものが暴走したりした日にはどう考えても禄な事が起こりそうにない。
「んじゃどうする?」
「うーん、封神容器には自決対策として中に入っているモノの再生効果があるんだよねぇ」
「ほんっとエゲツねぇな古代人」
「でも、頭部を破壊すれば再生するまでそれなりにタイムラグが有ると思うんだよ」
「んじゃシリンダーの外から頭部を一突きにして、その隙に毟るか」
ストレージから極光剣を取り出し、構える。幸い、シリンダーの大きさに対して黒い獣の身体が大きいため、黒い獣は満足に動くことができない。俺の剣の腕なら黒い獣の頭部を穿つのは簡単にできるだろう。
「行くぞ」
三人が見守る中、俺は紫電のような一突きを黒い獣に見舞う。手応えを感じるとともにダメージを増加させるために捻りながら剣を引き抜き、すかさず胸の擬神格へと手を伸ばす。
黒い獣は旺盛な生命力を発揮したが、俺の行動の方が早かった。擬神格を毟り取る動作にレベル5の格闘スキルが乗ったのかも知れない。
結果としてシリンダーの中の異形は擬神格を抜き取られたことによってあっけなく死に絶え、シリンダーを一瞬赤く染めたあとに跡形もなく消えてなくなった。消え方は嘆きの牢獄塔の女の子と変わらなかったな。
「哀れね」
「そうだな。気が遠くなるほどの長い年月の間こんな場所に囚われ続けて、最後には呆気なく殺された。同情を禁じ得ない」
「でも、あのままここにずっと囚われ続けるよりは良かったのかもね。ずっと独り、こんな暗闇の中でただ生き続けるだなんてゾッとするわ」
「そうかもな」
抜き取った赤黒い擬神格を眺める。あいつが元々どんなやつだったのかは知らないが、冥福を祈っておこう。
「ほら、取れたぞ」
「うん、ありがとうね。あの封神容器は厄介でさ。神であるボクが触ると取り込まれちゃんだよ」
そう言ってリアルは俺から手渡された擬神格を受け取り、しげしげと眺める。
「うん、やっぱりこれは善神ではなく邪神の類の擬神格だね。力が強いな……やっぱり獣性、暴力性、憤怒あたりを司ってた邪神じゃないかな」
「本当にそんなものを取り込んで大丈夫なの?」
エルミナさんが心配そうにリアルに問いかけると、リアルはクスクスと笑った。
「心配症だなぁ。大丈夫だってば」
そう言って笑い、リアルが擬神格を握りしめる。
「これは良いね。馴染む、実によく馴染むよ」
リアルの手の中にある赤黒い結晶が禍々しいオーラを放ちながらサラサラと崩れ落ち、そのオーラのようなものがリアルに沁み込むように消えていく。どう見てもヤバげにしか見えない禍々しい光景だが、本人は至って普通のテンションだ。その表情には清々しさすら感じる。
「この光景を見ていると、あの男が言っていたのも少し判る気がするわねぇ」
「まぁ、太古の邪神には違いないですからね」
「本当に大丈夫なのかしら?」
エルミナさんとリファナは心配しているが、まぁなんとかなるだろう。というか、もしダメだったとしても俺にはこいつ以外に頼る相手が居ないのだ。
「んっ、ふぅ――はぁ……」
擬神格の吸収を終えたリアルがなんか色っぽい声を出している。
「終わったか? 調子はどうだ?」
「うん、全盛期に近い力の脈動を感じるね。今回取り込んだ擬神格はボク自身が思っていた以上にボクとの相性が良かったみたいだ」
そう言ってリアルがニッコリと微笑む。
ああ、なんだこいつ超可愛い、押し倒したい。
「ん? どうしたの?」
リアルが目を細め、蠱惑的な笑みを浮かべる。なんだか頭がぼうっとして正常に思考が働いていない気がする。何もかもどうでもいい。ただ、目の前のものを使って快楽を得たい。堕落を貪っていつまでも過ごしたい。
気がつけば、俺の身体にまとわりつくものがあった。美しい女達だ。なんということだ、目の前の女だけでなく他にもこんな極上の快楽が転がり込んでくるとは。
俺は運が――。
「はい、終わり」
「はっ!? んん!?」
何か今、俺はとんでもないことを考えていたような。うわぁ、これ完全にやべぇやつじゃねぇか。ガイナの時はまだ寸前で抵抗できてたが、今のは全く抵抗できなかったぞ。
「あ、あら?」
「あれ?」
俺の足に絡みついていた二人も正気に戻ったのか、わけがわからないという顔で俺の顔とリアルの顔をキョロキョロと見比べていた。やべぇ、こいつ地母神ガイナみたいに精神に作用する何かを撒き散らしてやがる。
「毒電波やべぇな……これがお前の力か?」
「毒電波とは失礼な……そう、これがボクの権能だよ。堕落と快楽の味はどうだった? とてもとても甘く、逃れ難いものだったでしょ?」
「え、えぇ……今のは、ちょっと凄いわね」
「リアルちゃんもちゃんと神様なのね……」
二人が立ち上がり、なんだかモジモジしながら俺から距離を取る。うん、わかるよ二人の気持ち。まだ色々と収まらないもんな!
「地母神ガイナも似たようなことしてたよな」
「あの子はいつも全力だから、セーブするのは下手くそなんだよねぇ」
それじゃいつまで経っても上達しないから良くないんだけどね、と言いながらリアルが自分の身体の調子を確かめるかのように軽く身体を動かしてあちこちをチェックしている。
エルミナさんとリファナはさっき自分がしようとしていたことを思い出しているのか、二人して顔を両手で覆って悶絶していた。自分の行動が恥ずかしくなったんだろうな、あれは。
「野良犬に手を噛まれたようなもんだと思って気にしないほうが良いですよ」
「野良犬とは失礼だなぁ。神ですよ、神。ボクはこの世界の唯一神」
「はいはい、唯一神唯一神。で、今回は取り込むのにどれくらい時間がかかるんだ?」
「ん、大丈夫だよ。ノータイムで取り込み完了したから」
「今まで三日くらいかかってたのにか?」
「これでもう三回目だよ? ボクだって事前に準備くらいしているさ。それに、今回は善性の神じゃなくて邪神の類だったからね。ボクと相性バッチリだったし」
そう言って細い腕で力こぶを作ってみせるが、全く迫力がない。まぁ、いきなり某世紀末覇者みたいなムッキムキになられても反応に困るけどさ。
「んじゃ擬神格集めはこれで終わりか?」
「そうだね、まぁこれくらいが適正かな。過ぎたるは及ばざるが如しと言うしね」
「適正とかあるのか」
「神にだって己の分というものがあるんだよ。もう一度世界再生をするっていうならもう少し力が要るけれど、現状を打破するだけならこれだけ力があれば十分過ぎるくらいさ。それに、これ以上力を得ると隠れるのが難しくなっちゃうしね」
リアルがにんまりと笑い、軽く手を振る。
「うおっ!?」
その瞬間、俺達は遺跡の外へと転移していた。魔力の反応も全くなし、視界の暗転すらも無くワンアクションで遺跡前のキャンプ地点まで戻ってきていた。今のは転移魔法ではない、もっと別の何かだろう。
「これくらいは朝飯前ってね。それじゃあ英気を養ってからまずはバルガンドのところに行こうか」
「バルガンド?」
「神のうちの一人だよ。鍛冶やものづくりを司っていてね、キミのことは気に入ってたみたいなんだ。大きな槌を持った老人の姿の子だよ」
「あのファッキン大槌爺か」
俺が丹精込めて作った装備品の数々をバッキバキに壊してくれたクソジジイである。そういや恵比須顔のおっさんを殴ってすまんなとか言ってた気がする。
「キミの味方になってくれそうな子を挙げていくとね、まずは今言った鍛冶神バルガンド、酒神メロネル、風幸神ゼフィール、まずこの三柱かな。戦神ディオールも行けるかもね、気に入ってたみたいだし」
「なるほど、名前だけ聞いてもまったくわからんな」
「君は神に対して興味なさすぎるよね」
リアルが苦笑する。そうは言ってもなぁ、興味が沸かないんだから仕方ないだろう。元の世界には神なんて目に見える形では存在していなかったし、その加護を身近に感じたこともなかった。むしろ、宗教や神なんて胡散臭いという感情しか持っていなかったんだからな。宗教とか神とか言われてもピンと来ないんだよな。
おまけに俺の住んでいた国、というか俺の生きていた時代では宗教といえば怪しげな新興宗教か、あちこちでテロだの戦争だのを起こしていたとかそんなイメージしか無い。もちろん敬虔で、親切で、尊敬のできる人々も沢山いたんだろうけれど、日常的に俺のような人間が触れる『宗教の絡んだニュース』と言えばそんな生臭い話ばかりだったのだ。
「まぁ、困ったときに神頼みする程度には敬ってるよ」
「それは色々と間違ってると思うよ」
「こればかりはなぁ、俺の生きてきた環境がそうだったからとしか言えないなぁ」
目に見えない超自然的な存在に対する敬意が無いってわけじゃないんだけどな。
神殿や教会、神社や寺社なんかの宗教施設に漂う厳かな雰囲気は嫌いじゃない。そういった場所に行くと気が引き締まる感じがするし、人として恥ずかしくないように生きようと思うこともあるさ。
「それはそれとして、おーい。そろそろ戻ってこい」
恥ずかしいやら突然の転移でびっくりしたやらで呆然としていたエルミナさんとリファナを正気づかせて野営の準備を始める。とは言ってもここでキャンプを張っていたのを撤収していたわけではなかったので、薪拾いやかまどの準備、服や身体の浄化などの細々とした作業をしただけだ。
腰を落ち着けた俺達は地魔法で作ったテーブルセットに腰掛け、ハーブティーを手に今後について話し合うことにした。
「それで、えーとなんだっけ? 神と会うんだっけ? 神、神ねぇ?」
「その胡散臭いペテン師を尋問する官憲のような目をやめてくれないかな?」
「んなこと言っても面と向かってそう言われるとピンとこねぇんだよなぁ」
「ピンとこないも何も、実際本人達と会って殴り合ってたじゃん」
「そうなんだけどさぁ、どうにもこう、神って感じが無いんだよな。ちょっと常識外れに強い奴らって印象しかねぇわ。ああ、でも神殿に降臨した地母神ガイナには度肝を抜かれたかな」
あの時はヤバかった。地母神ガイナから発せられるスーパーバブみエネルギーによって何も考えられない感じになったからな。あれは反則だったわ。
「あの子は男の子に対しては滅法強いから……って、そうじゃなくて。まずはバルガンドだよ。あの子なら口も固いし、キミを気に入っていたからきっと味方になってくれるさ」
「ほーん。まぁ、まずは会わないと話が進まんよな。で、具体的にはどうやって会うんだ?」
小腹が空いたので缶詰のビスケットや果物を出す。早速リファナが果物の缶詰に手を伸ばした。エルミナさんも果物の缶詰に取り掛かるようだ。俺はビスケットだな。
「もちろんそれは考えてあるよ。神にはね、御座と呼ばれる執務室のような空間があるんだ。他の神でもそうそう簡単には干渉できないプライベートルーム、或いは自分の領域みたいなところだね」
「なるほど、そこに乗り込むわけか」
「そういうこと。他の神では干渉できないとは言っても、ボクにとっては鍵のかからないドアみたいなもんだからね。そりゃもういつでも出入り自由さ」
「そして『勝手に入ってくんなババア!』って言われるんだな、わかります」
「ババアじゃないし! どこからどう見ても超絶美少女ですし!」
つっても、多分この世界で最高齢なのは間違いないんだよなこいつ。まぁ、年齢なんてどうでもいいけど。寿命や成人年齢、それどころか命の価値まで違う異世界でそんなの気にしてもなぁ。
「普通、神の御座に辿り着くには峻厳な山とか、魔獣の跋扈する領域とか、絶海の孤島とか、そういう試練を越えなきゃならないんじゃ?」
果物の缶詰を片手にリファナが首を傾げる。
「そういうのは一般人向けだね。タイシはボクの使徒なわけだし、何よりボク自身が導くんだからそういうのはすっ飛ばしていいんだよ」
リアルが手をひらひらと振りながらハーブティーを口にする。
「そもそも、その程度の試練はやってもやらなくても変わらないしね。今のタイシならどんな試練も赤子の手を捻るようなものだし」
「まぁ、今聞いた範囲のが試練だって言うなら余裕だよな」
峻厳な山なんて飛行魔法でひとっ飛びだし、そうでなくとも全力で山をかければ一万メートル級の山でも簡単に踏破できるだろう。寒さや空気の薄さはおばけみたいなVIT補正で気にもならないだろうし。
魔物の領域なんて俺にとっては経験値の塊でしかない。極大爆破で殲滅して経験値美味しいです、って感じだろう。むしろそんな場所があるなら是非案内して欲しい。
絶海の孤島もやっぱり飛べば良い。マップも駆使すれば迷うことはないし、食料や水の確保はストレージと転移魔法でいくらでも補給し放題だ。
「余裕なんだ……」
「なんだか急に遠い存在になったみたいねぇ」
「やめてくれ、そういうのは割と真面目に傷つく」
苦笑いをする二人に俺も苦笑いを返す。
「そうね、悪かったわ。タイシはどんなに強くてもただのエッチな男の子だもんね」
「そうよね、義母にも手を出しちゃう誘惑に弱い普通の男の子だったわ」
君達、そういう方向で心を抉ってくるのも良くないと思います。
「そういう二人はどうなのかな?」
「え? べ、別に普通よ?」
「う、うん。普通よ?」
俺の言葉に二人があからさまに動揺する。先程のリアルが発した毒電波のことを思い出したのだろう。
「ほほう……それじゃあエッチなのが俺だけなのか、存分に確かめさせてもらおうじゃないか。いくぞ、リアル」
「いいね、久しぶりにボクの本分を発揮してみようか。ゆんゆんしちゃうよー」
「ひ、ひぃ」
「お、落ち着きましょう。私、そういうのは良くないと思うわ?」
「慈悲はない。やれ」
「あらほらさっさー。そぉーれ、ゆんゆんゆんゆん」
この後どんなことが起きたのかはご想像にお任せするが、一つだけ言っておく。
毒電波は用法、用量を守り正しくお使いください。でないと色々と危ない。お兄さんとの約束だ。
 




