4章
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「なるほどね、そんな経緯があったのか」
「ちょっ! 明里? 今の説明おかしくね?」
「なにが?」
「なんか、あんた実はあーしに勝ててたみたいなこと言ってんじゃん?」
「だって事実だし」
「いやいや、確かに力を温存しときたい、みたいなことは言ってたけど、やり続けてたらあーしが勝ってただろ? あれは!」
「なによ? 納得いかないなら続きやる? 今! ここで!」
「だから、やめろって! 教室が壊れるだろ!」
「なんだよ司! それがあれか? 勝者の余裕というやつか?」
「本当、お兄ちゃんは最低だね……」
「そ、そんなんじゃねーよ!」
「まぁまぁわかったわかった」
斗真が場を納めた。
「それにしても一色兄妹の試合は面白かった。私も久しぶりに血が騒いだよ」
「あの試合を面白いだなんて……、やっぱりセンセーって英雄なんだなー」
「まぁ、お前たちの異常な強さの話しなんだが、そんな能力をなぜ身に付けたんだ?」
「もちろんジェノサイドを倒す為だ!」
「そうだねー、あーしも今じゃこんなだけど当時はふさぎ込んじゃったもんなー」
「なるほどな、復讐心がお前たちをそこまで……、いや本当になんなんだろうな? あいつらは。まったく、嫌になるよ」
「先生……」
「さっきからお前たちはジェノサイドを『倒す』といっているが知ってるんだな? ジェノサイドの正体を……」
ジェノサイドは世間的には隕石の衝突ということになっている。しかし風前市に住む者なら、世間には偽りの情報がまわっていることを知っている者も少なくない。
「見たのか…… 奴を」
生徒三人は、頷く。しかし、誰も話し出そうとはしない。
「辛い思いをしたんだな」
沈黙の中、スカートに落ちた雫の音に、全員が反応した。
「燕……」
司が燕に話しかける。燕の頬には涙が静かに流れていた。
「あちゃ……、やっぱ駄目……だなぁ。勝手に出てきちゃう……」
明里が燕にハンカチを渡していた。
「すまない。思い出させてしまったな」
「先生……、違うぜ?」
「?」
「俺たちはあいつの事を一度たりとも忘れたことなんてねぇよ。きっとこの手で復讐するまで忘れることなんてない」
「……」
「だから、当時、一〇年後にまた落ちてくるって知ったとき、心が震えたぜ? これは復讐のチャンスだってな」
「お兄ちゃん……」
「私は正直、あんな者には二度と会いたくないのだがね」
先生は続きを話す前に明里に弱い微笑みを向けた。
「明里が助けを求めてる魔女にも……」