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泉ケイの学費を稼ぎたいというアルバイトの動機と、その結果としての死は、マスコミを動かした。いくぶんは、私たちの担任である芝先生の尽力や、長尾グループの社員による告発――労働環境に対する鬱憤――もあったのだろうが。
マスコミと長尾グループのやり取りである。
「沖縄サンフラワー高等学校は、民間教育施設である三波学園高等部に、あらゆる学校業務を丸投げしているが、これは学校教育法上に反しているのでは?」
「違法との認識はなかった」
「沖縄サンフラワー高等学校には学校としての活動実態がまったくなく、日本各地に存在する三波学園高等部で業務が完結してしまっているが。しかも、統一的な活動実態はなく、現場の校ごとに業務が完結しているが」
「違法との認識はなかった」
「教育内容に関しても不適切な実態があるようだが。通信制高校にも学習指導要領があり、それに沿って教えねばならぬはずだが。面接指導やレポートの添削回数、特別活動時間などが定められているが」
「三波学園高等部は高校ではないので、そもそも学習指導要領に沿って教える必要はない」
「実際の授業にしても、不適切な実態があるようだが。通信制高校にも関わらず、自宅で行うレポートなど存在せず、週に一日か二日だけ三波学園に登校して、そこで問題集からのコピーを解くだけといった状態のようだが」
「あくまでも三波学園は民間教育施設である。どのような授業を行おうと勝手である」
「校舎も不適切な状態にあるようだが。三波学園のほとんどが、自己所有でない雑居ビルのワンフロアを間借りしているだけの校舎で、そのビルも、風俗街に位置するなど、不適切な設置になっているが」
「あくまでも民間教育施設である。どこに設置しようと勝手である」
「その不適切な民間教育施設で行われた不適切な授業を、沖縄サンフラワー高等学校の授業としてしまっているようだが」
「違法との認識はなかった」
「違法との認識がないわけないと思うのだが」
「違法との認識はなかった」
「常識的に考えて、違法との認識がないわけないと思うのだが」
「違法との認識はなかった」
「三波学園高等部における授業は、塾や予備校と同様に、正規の学校における授業の補助でしかないはずだが。三波学園ではレポートの作成はもちろん、面接指導や、添削指導、成績付けまで行っているが」
「三波学園高等部で授業を行っている全教員は沖縄サンフラワー高等学校に勤めている。沖縄サンフラワー高等学校の教員が地方へ赴いているかたちである。法的な問題はないと認識している」
「沖縄サンフラワー高等学校には活動の実態がまったくないはずだが」
「教員は沖縄サンフラワー高等学校が雇用している。法的な問題はないものと認識している」
「三波学園高等部笠原校に勤めている教員は、不適切な状態にあったようだが。普通免許状を所持しておらず、臨時免許状を発行してもらい、教員という身分を得ている状態だが」
「臨時免許状は行政から正規に発効されたものである。教員としてなんら問題はない」
「国語や数学、英語といった複数の免許状をひとりの教員に発行してもらっているようだが」
「すべては行政による審査があり、それをクリアして発行してもらっている。行政による審査の善し悪しは、我々の問題ではない」
「行政へ提出する書類の捏造を行っているようだが」
「我々の内部調査では、そのような事実は認められなかった。臨時免許状は正規のものだと考えている」
「臨時免許状だが、たとえそれが行政の審査を通った正規の免状であっても、発行してもらった各都道府県内でしか効力を持たず、さらに有効期限があるはずだが。今回の事件では、沖縄で発行してもらった臨時免許状を、東京都内で使っているが。また、有効期限も切れており、延長の手続きも行っていないようだが」
「違法との認識はなかった」
「授業がすべて無効になるはずだが」
「該当の教員は退職しているため、詳しくはわからない」
「それは隠蔽のための解雇なのか?」
「答える必要はない」
「その人物以外にも、臨時免許状や特別免許状を大量に発行してもらっているようだが」
「今回の事件とは関係がない」
「教員免許状の不正発行は民事ではなく、刑事罰が問われるが。また、審査における書類の捏造は文書偽造の罪、組織的に行っているため組織犯罪処罰法、無免許教員による授業も犯罪になるが」
「違法との認識はなかった」
「宣伝においても、不適切な実態が指摘されているが。とりわけ、三波学園高等部は、一時期、高校卒業率百パーセントとまで宣伝していたようだが。三波学園高等部は高校の卒業にはならないため、高校卒業と宣伝するのは不適切なはずだが」
「担当者の認識が甘かった。沖縄サンフラワー高等学校の数字を載せてしまった」
「沖縄サンフラワー高等学校の卒業率を行政に問い合わせたところ、実際の卒業率は百パーセントではなく、七十二パーセントのようだが」
「独自の算出方法を用いている」
「世間一般的には、それを水増しというが」
「違法との認識はなかった」
「教員はカウンセラー資格を所持していると宣伝しているが、わずか数日で取得できる民間資格でカウンセラーと名乗るのは問題があるのでは?」
「法律上の問題はない」
「三波学園高等部は、高校と誤認させるような宣伝も行っているようだが。「高校からの編入・転入」「通信制高校」「高校卒業」と宣伝しているが、これらの惹句は、優良誤認ではすまないが」
「担当者の認識が甘かった」
「ほかにも不適切な宣伝を行っているようだが。毎日電話を掛ける、その場で決定させる、畳み込むようなトークをする、不安をおあるといった宣伝をしているようだが」
「法律上の問題はない」
「沖縄サンフラワー高等学校と三波学園高等部の関係に対する説明が、まったく行われていないようだが。よくわからないまま通っている在校生や卒業生が大勢いるようだが」
「我々は十分な説明を行っていると自負している」
「学費の宣伝も不適切なようだが。パンフレットなどには一校分の学費しか書かれていないが」
「法律上の問題はない」
「入学直前になって、二校分の学費が必要という事態が発生しているが」
「法律上の問題はない」
「生徒に極めて高額な学費を請求しているようだが。沖縄サンフラワー高等学校と三波学園高等部の母体は同じにも関わらず、両校から学費を請求しているようだが。学費が二重請求されているような状態では?」
「法律上の問題はない」
「入学時に学費を一括納入させる、支払えない生徒にはローンを組ませているようだが」
「法律上の問題はない」
「「入学を渋る生徒にはいったん学費の安いコースを選ばせ、あとから高額なコースに切り替えさる」といった不適切な指示もあったようだが」
「法律上の問題はない」
「入学後に高額なナントカコースを勧めたり、高額な教材を購入させているようだが」
「法律上の問題はない」
「使用用途不明の費用も請求しているようだが。教育充実費の内訳を知りたい」
「答える必要はない」
「営利目的が度を超しているのでは?」
「法律上の問題はない」
「沖縄サンフラワー高等学校には、単位をまったく取らず、卒業する意思もなく、名前だけ在籍して幽霊状態になっている休眠生が大勢いるようだが」
「すぐに復学したいという生徒からの要望である」
「休眠生を利用して、名目上の卒業率を上げているようだが」
「法律上の問題はない」
「休眠生を利用して、補助金や助成金を不正に受給しているようだが」
「今回の事件とは関係がない」
「休眠生に事業を行っているように見せかけて、架空の経費を計上し、脱税に利用しているようだが」
「今回の事件とは関係がない」
「とどのつまり、高校卒業を売りにしたビジネスなのでは?」
「法律上の問題はない」
「一部の実態は、明らかに学校教育法に違反しているが。宣伝においても、優良誤認どころか、詐欺罪が成立する状態だが」
「違法との認識はなかった」
「地方の民間施設に学校業務を丸投げして、教員免許状を不正に受給して教員を作り上げ、詐欺同然の宣伝を行い、極めて質の低い教育して、非常に高額な学費を請求するといった状態に、違法性の認識がないとは思えないが」
「違法との認識はなかった」
「違法との認識がないわけないと思うのだが」
「違法との認識はなかった」
「改善すべき点が多く見つかるが」
「法律上の問題はないと認識している」
「今後も不適切な学校運営を続けていくつもりであるのか?」
「そもそも、サポート校のような制度は、通信制高校にも関わらず毎日通いたい、という生徒の要望に応えたものだ。生徒の高校卒業のために我々は尽力している」
「高額な学費を請求するための方便に聞こえるが」
「生徒にも納得の上で通ってもらっている」
「長尾グループからの主張があれば報道するが」
「本校へ通うとなると生徒の負担が大きい。むしろ、地方の権限を強化すべきである。地方ですべての業務を行えるようにすべきである」
「現行法では、刑事罰が問われる犯罪も行っているようだが」
「違法との認識はなかった」
「ないわけないと思うのだが」
「違法との認識はなかった」
「知らないのは法律ではなく、恥では?」
「違法との認識はないんです」
会見後、長尾グループの担当者――謝罪会見に登場する人物は、だれもが同じような人物だ――の口から一言こぼれた。
「なんで、うちばかりなんだ。みんなやってる、どこもやってるだろうに」




