御徒町樹里ちゃんがゆくエピソードゼロ(お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。「キャラ弁」をお借りしました。
御徒町樹里は都内の高校に通う見かけはごく普通の女子です。
樹里は忙しい母親の由里の代わりに幼い妹達のオムツを替え、ミルクを飲ませ、登校します。
「宅建の試験の結果、今日届くんだっけ?」
洗濯物をたくさん入れた籠を抱えた姉の璃里が尋ねます。
璃理は女子大生です。でも探偵はしていません。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「そうなんですかって、貴女の事でしょ、樹里?」
璃里は呆れ気味に言うと、二階に上がって行きました。
「行って参ります」
樹里は元気よく言って家を出ました。
「御徒町さん」
そこに樹里と同じ高校に通う男子が現れました。
「はい」
樹里は笑顔全開で応じます。
「今日、お弁当を取り替えっこして食べようよ」
男子は意を決して樹里に言いました。
「いいですよ」
樹里は笑顔全開で快諾しました。
「やった!」
何故か男子は泣きながら駆け去りました。
樹里は首を傾げました。
「どうしたのでしょうか?」
そして、お昼休みです。
樹里はお弁当を出しました。
そこへ朝声をかけて来た男子がお弁当箱を持って近づきます。
「御徒町さん、試食をお願いします!」
男子はお弁当箱を差し出し、頭を下げます。
「はい」
樹里は笑顔全開でそれを受け取りました。
蓋を開けると某海賊漫画のキャラと思われる顔が海苔と鶏そぼろやから揚げなどで表現してありました。
「誰ですか?」
樹里はそのキャラを知りません。男子は項垂れましたが、
「○ロです。かっこいいでしょ?」
「そうなんですか」
樹里は容赦なくそのキャラの顔を箸でかき分け、ご飯を食べました。
唖然とする男子です。
「そぼろの味が上品で美味しいです。ご飯も冷めることを想定した炊き方がしてあって、程よい柔らかさと弾力ですね」
「おお!」
周囲にいた生徒達が集まります。
「すごいな、あいつ。御徒町さんに弁当を誉められてるよ」
皆口々に言いました。
樹里のお弁当の腕前はプロ並みで、毎日クラスの料理自慢が挑戦しているのです。
「但し、から揚げは揚げ過ぎです。下ごしらえの時の味付けも濃いです。揚げる事によって水分が失われる事を想定してください」
樹里は更に指摘しました。
「はい!」
男子は落ち込むどころか、メモをとっています。
「では、私のお弁当を食べてください」
樹里が笑顔全開でお弁当箱を差し出しました。
「ありがとうございます!」
男子は感動の涙を流し、樹里のお弁当を堪能しました。
「美味い! 美味過ぎるゥ!」
男子は号泣しました。
めでたし、めでたし。
お粗末ですか?(ムフ)