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クアッカワラビーちゃんとカニくんの旅/続きです!

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/05/08

一話 旅の始まり


クアッカワラビーちゃんとカニくんは、一緒に旅をすることになりました。




 

カニくんは、アイドル活動をしていた私のイベント会場でファンたちと会話をしていた時に挨拶に来てくれた男の子。


ほんの数分しか話せなかったけど、その間カニくんは執筆で質問や返事をしてくれた。

声が出せない病気なのかな?と思ったけど、あえて何も聞かないまま会話を続けたの。

 

最後の方でした会話。

カニくんが紙にペンを使って書いたのは"旅がしたい"という言葉だった。

私はその瞬間、後先のことを考える間もなく叫んでた。

 

「私も行きたい!!!」


それ以来、ずっとカニくんと一緒に旅をしているの。


一緒に旅をし始めて分かったこと。


カニくんは、スキしか言えない。


紙を切らしてしまった時も・・・。


嬉しい時は「スキスキ。」

悲しい時は「スキ、スキ・・・。」

怒ってる時は「スキ!スキ!」と言う。


え、何それ可愛い過ぎじゃない?


クアッカワラビーちゃんがぷるぷる震えているとカニくんが質問してきます。


「スキ?」(お腹空いたの?)


「好き!!!」


今日もなんだかほのぼのと。

クアッカワラビーちゃんとカニくんの旅は続いていくのでした。








二話 森とおばあちゃん


「紙を買いに行こう!」


「スキ。」(うん。)


クアッカワラビーちゃんとカニくんは、

紙を求めて文房具屋さんを探し始めました。


カニくんはスキしか言えませんが執筆はできるのです。

しかし、紙が切れてしまったのです。

そんなカニくんを見てクアッカワラビーちゃんが率先して紙を買いに行こうと言いました。


霧に包まれた街に入ると、一本の長い石畳の道があり、

その両側に様々なお店が立ち並んでいます。

雑貨屋、本屋、時計屋、喫茶店、八百屋さん、

どれも古い建物で、

赤いレンガを基調としたものが多いようです。

霧に包まれていて街全体が薄っすらと灰がかって見えます。


「わぁ〜、綺麗な街だね!」


「スキスキ!」(うんうん!)


しばらく歩いていると文房具店を見つけました。


「あった!すみませ〜ん!」


お店の中から小さなおばあさんが出て来ました。


「あらあら、クアッカワラビーさんとカニさんのお客さんは初めてだねぇ。」


「私たち、小さなサイズの紙を探してるんです。売ってもらえませんか?


「小さな紙100枚で300円だよ。」


「あ!お金ない・・・どうしようカニくん!?」


「スキスキスキ。」(お手伝いしよう。)


「なんて言ってるか分からないよぉ〜!」


「おや?カニさんはお話ができないのかい?」


「はい・・・カニくんはスキしか言えなくて。

なのでずっと紙に書いて会話してるんです。」


「あらまぁ、それは大変ねぇ・・・そうね、じゃあこうしましょう。お庭をお掃除してくれないかしら?そうしたら紙をプレゼントするわ。」


「え、いいんですか?ありがとうございます!」


「スキ!」(ありがとうございます!)


クアッカワラビーちゃんとカニくんは一緒に庭の掃除を一生懸命しました。

カニくんが雑草をハサミで切り、その後ろからクアッカワラビーちゃんがほうきとチリで集めていきます。


2時間後。


「ありがとねぇ、助かったわ。はい、紙100枚ね。

それと、これは二人とも頑張ってくれたからお給料ね。」


おばあさんが1000円札を4枚、手渡してくれます。


「スキ!」(ありがとう!)


「おやおや、本当に紙に書けるんだね。偉いわねぇ。」


「私からもお礼を言います。ありがとうございます!」


クアッカワラビーちゃんがペンが入っている小さなブラウン色のショルダーバッグに紙を入れます。


「二人ともちょっと待った。」


外へ出ようとしたクアッカワラビーちゃんとカニくんが同時に振り返ります。


「あの、何か?」


「見たところ、食べものも持ってないだろう?

この近くの森にフルーツが成る木が沢山生えている場所があるんだ。川もある。」


「え!本当ですか!」


「私も先が長くなくてね。

年寄りの最後の頼みだ。一緒にピクニックしてくれないかい?」


おばあさんの案内で、クアッカワラビーちゃんとカニくんは森の中で食料を調達することになりました。


森に入ると、木のベンチが置いてある場所がありました。

目の前には川が見えます。


「綺麗だねぇ。おにぎり作ったんだけど食べるかい?」


「わーい!!」

「スーキ!!」(わーい!!)


こうしてクアッカワラビーちゃんとカニくん、おばあちゃんはベンチに並んで座りました。


二人にとって森の中でおばあちゃんと食べたおにぎりは生涯忘れらない味になりました。



 




三話 スキしか言えない理由


砂浜を歩いていた二人。

 

カニくんと旅を始めて2週間。

私はずっと気になっていたことを聞いてみた。


「あのね、失礼かなと思って聞けなかったんだけど、

カニくんはどうしてスキだけは話せるの?」


「スキ、スキスキ・・・。」(魔王呪いかけられた)


カニくんが紙に書いていく。

 

「え!病気とかじゃなくて、魔王って人に呪いをかけられたからなの!?その人はどこにいるの?」


「スキ・・・。」(知らない・・・。)


「そっかぁ・・・じゃあ、旅はその魔王を探す為に?」


ふるふるとカニくん。


「どうして?」


「スキ、スキスキスキ。」(君がいるから。それに、最初からそのつもりだった。)


「私がいるから探さないの?」


「スキ。」(うん。)


「何でよ!私がいたって一緒に探したらいいじゃない。

それに、諦めちゃうなんてダメだよ!」


「スキ、スキ。」(君を危険な目に合わせたくない。)


「カニくんの分からずや!そんな意気地なしのカニくんキライ!」


クアッカワラビーちゃんが走っていってしまいました。

カニくんは書くのをやめて呆然と立ち尽くし、呟きます。


「スキ・・・。」(僕は好き・・・。)


しかし、すぐにクアッカワラビーちゃんが猛ダッシュでこちらに向かって走って来ました。


タタタタッ!


「スキスキスキ!」(クアッカワラビーちゃん戻ってきた!)


クアッカワラビーちゃんは息を切らしながら言います。


「うそだよ。」


「スキ?」(うん?)

とカニくんが紙に書いて見せます。


「私がカニくんキライって言ったの嘘だもん!!

酷いこと言ってごめんね。」


クアッカワラビーちゃん、泣き出してしまいました。


「スキスキスキ。」(大丈夫、分かってるから。)


カニくんが寄り添うようにクアッカワラビーちゃんに声を掛けます。


「カニくんは私のこと好き?」


「スキ。」


カニくんが紙に書こうとしてクアッカワラビーちゃんが止めます。


「えへ、カニくんスキしか言えないからね。」




それからクアッカワラビーちゃんはもう一つ気になっていたことを聞きました。


「ねぇ、どうしてカニくんは私のファンになってくれたの?」


「スキスキスキ。」(笑顔が可愛いくてとっても素敵だったから。)


「ふふ、ありがとう。」


クアッカワラビーちゃんが嬉しそうに笑います。


「スキスキ?」(君はどうして僕と一緒に来てくれたの?)


「分かんない。でも、カニくんから旅って聞いていいなって思ったの。それにカニくんとの会話ほっこりしてて温かったんだぁ。」


カニくんの顔がいつもより真っ赤になります。


「あれ?カニくん、いつもより顔赤いよ。」


「スキ・・・。///」(えへ・・・。///)


カニくんが照れ隠しに"てててっ"と先を走っていき、砂浜に小さな小さな足跡が付きます。

その後ろから、クアッカワラビーちゃんの肉球の跡が追いかけます。

 

しかし、足の速さでカニくんはクアッカワラビーちゃんには敵いません。

あっという間に追い付かれてしまいました。


クアッカワラビーちゃとカニくんが並んで海を眺めます。


潮風が吹き、波のザザンという音とともに夕陽がだんだんと沈んでいくのが見えます。


クアッカワラビーちゃんがチラッと夕陽に照らされたカニくんを見ます。


カニくんは私のこと可愛い素敵って言ってくれるけど、

私よりカニくんの方がずっと可愛いし素敵だよ。

だってカニくんは、出会ったあの日から私の"推し"なんだから。







四話 魔女のマリアージュ


「魔王を倒すなら武器を持たないと!」


そう教えてくれたのは、次の街で出会った魔女のマリアージュさんでした。

この街は黒い街と言われるほど、黒を基調とした建物が多い街です。衣服も黒を着ている人が全員ではないが沢山いたのです。

マリアージュさんのお店は武器屋です。

話を聞いて無料で武器を提供してくれることになりました。


「クアッカワラビーくん、君はそうだな・・・やはり剣が良かろう。」


「わぁ、強そう!!」


「しばらくここで修行していくといい。」


「ありがとうございます。」


「君は、えーと。」


「カニ・・・。」(僕は体が小さいから無理だ・・・。)


紙に書くまでもなく、言いたいことがマリアージュさんに伝わったようです。


「大丈夫さ!この魔法の薬を飲めば君は大きくなって魔王を倒せるよ!」


「だめよ!薬で副作用起きたらどうするの!」


すかさずカニくんの体を心配したクアッカワラビーちゃんが前に出ます。


「大丈夫さ。副作用は今のところ発見されていない。

ただ、使うとしばらく動けなくなる。

だから、とりあえず渡しておくから、いざという時まで使ってはいけないよ。」


「スキ!」(分かった!)


カニくんが"てててっ"と前に出て言います。


「カニくん!危ないよ!」


「スキ、スキスキスキ。」(君にずっと守られているだけは嫌なんだ。)


「カニくん・・・。」


「それじゃあ、しばらくの間ここにいるといいよ。

クアッカワラビーちゃんの剣の練習、君には針を用意するからね。一緒にやろう。」


「スキ?」(僕も?)


「ああ。確かに私たちは君たちより遥かに大きい。

でも、小さな針でも飲み込んだら死んでしまうこともあるんだ。」


「スキ・・・。」(そうなんだ・・・。)


カニくんは戸惑います。


「私、カニくんが一緒がいい!」


しかし、そんな戸惑いはクアッカワラビーちゃんの一言で吹っ飛びます。


「君たちは本当に仲がいいんだね。そんなにお互いのことが好きかい?」


魔女にそう言われ、二人は照れくさそうに「「スキ」」と言って笑うのでした。







五話 クジャクのタタン


山に向かう途中の砂利道を歩いていたクアッカワラビーちゃんとカニくん。


しばらく歩いていると羽を閉じたままの雄のクジャクが現れました。


「わぁ、綺麗な羽!」


「スキ、スキ。」(うん、うん。)


「ありがとうございます。あなた達、この辺りでは見かけない顔ですね。」


「私たち、旅をしているんです。」


「スキ。」(そうなの。)


「あなたは、変わった話し方をしますね?」


「カニくん、スキしか話せないんです。」


「それはお困りでしょう。」


「スキ・・・スキスキスキ。」

(うん・・・魔王に呪いかけられた。)


「魔王、ですか。」


魔王、という単語にタタンの顔付きが変わる。

何か知っているみたいです。


「何か手掛かりはありませんか?」


「そうですね。船に乗らないとなりませんがサイエンス島という場所にいると聞きました。」


「え、本当に!?」


「しかし、危険ですよ。」


「分かってます。でも、カニくんを元気にしてあげたいんです!」


真っ直ぐなクアッカワラビーちゃんの言葉にカニくんは嬉しそうに"てててっ"と右に行ったり左に行ったりを繰り返しています。


「そうですか・・・。あなたは心根が綺麗な方ですね。分かりました。できる限り協力しましょう。

しかし、私はここを離れるわけにはいきませんから残念ながら一緒には行けないのです。」


「もちろん分かってます。」


「船着場にいるミラーっていう青年に"クジャクのタタン頼みだ"と言えば協力してくれるはずです。」


「分かりました!ありがとうございます。」


「スキ!」(ありがとう!)


「気をつけてお行きなさい。」


「タタンさん、教えてくれてありがとうございます。」


「スキスキスキ。」(ありがとう。)

とカニくんが小さな紙に書いてタタンに見せます。


「どう致しまして。」


クアッカワラビーちゃんとカニくんは、

サイエンス島に魔王がいる、というクジャクのタタンの協力を得て船着場に向かいます。


海にたどり着くと、今にも雨を降らしそうな曇り空。


「お願いします!サイエンス島まで乗せてください!」


船着場にいたのは青年でした。


「あそこは危険だ。近付かない方がいい。

それに、今日は雨の予報だ。これから海が荒れる。」


「スキスキスキ。」(明日にしよう。)


「カニくん・・・。うん、そうだね。そうしよう。」


「ん?なんだ、そっちのカニは喋れないのか?」


「そうなんです。魔王に呪いをかけられて・・・。」


「スキ・・・。」(ショボン・・・。)


「そうか・・・。」


「クジャクのタタンさんと会ったんです。」


「え、タタンに?まさか、タタンは俺にそれを頼みに?」


「はい。」


青年はしばし考えた後、髪をクシャクシャっと掻いた。

 

「はぁ・・・分かった。タタンの頼みじゃ断れない。

ただし、今日はダメだ。だから明日の朝向かおう。」


「え、本当ですか!?」


「ああ。」


「ありがとうございます!」


「スキ!」(ありがとう!)


やれやれ、参ったな。タタンの頼みか。








六話 覚悟


船に乗っていざ、魔王がいる島へ!


島に到着すると、ミラーが言いました。


「俺はここまてしか送ってやれない。家で妻が待ってるからな。」


「スキ。スキスキ。」(うん。行ってあげて。)


「ミラーさん、ありがとうございます。」


「いや・・・。」


ミラーが一瞬何かを思案したように二人を見る。


「気をつけて行くんだぞ。」


「はい!じゃあ、明日になったら迎えに来て下さい。

それまでに魔王を倒しますから。」


ミラーはもう一度、今度はクアッカワラビーちゃんを見つめます。


「・・・君は、何故そこまでできる?

困っているのはそっちのカニの方なんだろう?」


「カニくんは、私に新しい道があることを教えてくれた大事な友達です。だから、力になりたいんです。」


「スキ・・・。」(クアッカワラビーちゃん・・・。」


「そうか・・・。クアッカワラビー。君は勇敢だな。」


そう言うとミラーは身を翻し、また船に乗って戻っていきました。



街に戻ったミラーは、ある場所へ向かいました。


病院のベッドに横たわる愛しい人は彼の恋人です。

呼吸器を付け、白い息だけが繰り返し吐き出されています。


ベッドの横に膝をつくと、彼女の手を握りました。


「なぁ、サララ。俺はずっと怖かったんだ。自分がいない間に君を失ったらと。

だけど今、救いたい奴らが現れた。俺はどうしたらいい・・・。」


 





七話 魔王との戦い


それから、クアッカワラビーちゃんとカニくんは

魔王を探しました。

島の中心にある要塞へ向かう途中、色々な敵が現れたのです。

敵はおもにロボットです。

 

そんなロボットたちを、

クアッカワラビーちゃんの剣が凪倒していきます。

 

カニくんはぴょんっとロボットの内部に入り、配線をハサミで切り、針で刺し、バグを起こさせました。

ロボットはみるみるうちにガタガタと音を立てて崩れ落ちていきます。


そうしてようやく魔王を発見しましたが、二人はロボットたちとの戦いで疲弊していました。

特にクアッカワラビーちゃんはフラフラな様子です。


「スキスキ!スキスキ・・・。」(見つけた!この人が魔王・・・。)

「魔王!カニくんを元に戻して!」

 

「嫌だ、と言ったら?」

 

「戦ってあなたを倒す!」

「カニ!」(覚悟!)


魔王の剣に対抗して、

修行したクアッカワラビーちゃんの剣、巨大化したカニくんでしたが、魔王の力の前に押されてしまいます。

今の二人の力ではまだ魔王には届かないようです。


「「やられた!」」そう思った時です。


キンッという音がして閉じていた目を開けると・・・

そこには剣を持ったミラーが立っていました。


「スキ!?」(なんで!?)

「ミラーさん!?どうしてここに・・・。」


「彼女なら・・・きっとこうすると分かったからさ。」


三人は、なんとか力を合わせて魔王を倒しました。







八話 愛しい人


魔王を倒して帰ってきたミラーは、駆け足で病院に向かいました。

肩には、へにょんとしたクアッカワラビーとカニを乗せて。


「はぁはぁ・・・。あの、サララは、サララは大丈夫ですか?」


「ええ、サララさんは変わらず穏やかに眠っていますよ。」

と看護師が答えます。

 

「ほっ・・・。」


そして病室に入り、サララの元へ。

ベッドの横に椅子を持ってきて座ると、手を握りました。

すると・・・。


僅かですがきゅっと握り返す感触がしました。


「サララ?」


スキと、ゆっくりとゆっくりとサララの目が開いたのです。その目には涙が溜まっていました。


「みらーく、ん・・・。」


「サララ!サララ!!」


ミラーが椅子から身を乗り出し、サラに抱き付きます。

 

何ヶ月ぶりだろう。

階段から落ちて意識を失ったまま病院のベッドで眠りについたサララの声を聞くのは。


「「サララさん!」」


クアッカワラビーちゃんとカニくんの声がはもります。

二人は船での帰り際、ミラーから事情を聞かされていたこともあり、サララのことを心配していたのです。


「良かったぁ・・・。」

とクアッカワラビーちゃん。


「うん、うん。」

とカニくん。



お医者さんに診てもらい、しばらくした後。


「ところでミラーくん、そちらの方たちは・・・?」


ミラーが自分の涙を手で拭うと二人を見た後に答えました。


「ああ。友達だよ・・・大事なね。」


「そう。来てくれてありがとう。」


二人は顔を見合わせて微笑みます。


「あなたが助けたいって言ったのは、この子たちね?」


「よく分かったな。」


「分かるわよ。だってあなた、私とタタンさん以外と話す時、いつも険しい顔してるんだもの。

そんなあなたが、肩にクアッカワラビーさんとカニさんを乗せている。

二人を見る表情も優しかったし。」


「そ、そうか・・・。」


全てを見透かされ、ミラーが顔を染めて下を向いてしまいます。


「サララさんはミラーさんのどこを好きになったんですか?」

とクアッカワラビーちゃん。

「知りたい知りたい!」

とカニくん。


「おい。」


「そうね〜。」


「サララ、話さなくていいから。恥ずかしいだろう?」


「じゃあ、あなたは知りたくないの?」


「え、いや、それは・・・。」


三人にじ〜っと見つめられ、観念したように言いました。


「分かった・・・聞こう。」


「私がミラーくんを好きな理由はね、不器用な人だなって思ったからよ。」


「俺って不器用か?」


ミラーが意外そうな顔をします。


「かなり。」


「そ、そうか・・・それで、まさか理由ってそれだけか?」


「そうよ?何か変?」


「いや、だって不器用な奴なんてそんなのいくらでもいるじゃないか。」


「やーね。あなたほど不器用な人なんていないわよ。」


「そ、そうか・・・。」


「人が人を好きになる理由に、大抵はそんな大きな理由はないわよ。」


「そんなことはない。俺は・・・。」


言いかけて辞めます。


「俺は?」


「今は言わない。」


そしてクアッカワラビーちゃんとカニくんが帰った後。

病室でミラーはサララに抱き付いていました。


「ミラーくん、やっと会えたわね。」


「サララ・・・やっと、やっと会えた・・・ずっと会いたかった・・・。」


「私もよ、ミラーくん。」


泣いているミラーをあやすようにサララが頭を撫でます。

その瞳にも、彼と同じ涙が流れているのでした。







九話 スキがなくなって


ネモフィラの花が咲く丘の上。

辺り一面、美しいブルーの世界が広がっています。


クアッカワラビーちゃんは魔王を倒し、カニくんが喋れるようになって嬉しい反面、どこか寂しそうです。

そんなクアッカワラビーちゃんを見てカニくんが不安そうに質問をします。


花を踏まないように、ネモフィラとネモフィラの間にちょこんとクアッカワラビーちゃんが座ります。

その隣りにカニくんもちょこんと座ります。

そして、話を続けます。


「君は、前のままの僕が良かった?」


「ううん、違うの。ただちょっと寂しいだけ。」


「寂しい?」


「だって、カニくんのスキ、結構気に入ってたから。」


「僕のこと嫌いになった?」


「ううん、好き。」


「良かったぁ・・・推しに嫌われたら僕しんじゃう。」


「え!そんなに?」


「うん。推しってそれくらい大事なんだよ。」


「そっかぁ・・・じゃあ私も同じなんだね。」


「うん?同じ?」


「私も、カニくん推しだから。」


「え!?初めて聞いたけど?」


「だって、初めて言ったもーん。」


「ねぇ、もっと詳しく教えてよ〜。」


「また今度ね!」


クアッカワラビーちゃんが立ち上がって走り出します。


「今度っていつ〜!」


青空の下。ネモフィラが咲くこの丘の上で、

クアッカワラビーちゃんの後ろを必死で追いかけるカニくん。


色々な人たちの協力と案内の元、魔王を倒し、カニくんの呪いが解けました。

カニくんはもうスキとは言いません。


「ねぇ、カニくんは私のこと好きー?」


「うん。大好きだよ。」


「ふふ、私もねー、だーいすき!」


言葉が変われど想いは変わらず。

仲良しな二人の旅はこれからもずっとずっと続いていくのでした。



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