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【6000PV感謝】最強魔法士の魅了が彼女には効かない件 ~最強魔法士は彼女の隣を手放せない  作者: 雨屋飴時


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7-2 魔法管理局




 無数の光線が、フィリクスを目掛けて伸びていた。

 さっきよりさらに強力な拘束魔法だ。


「わあ、花火みたい」


 見惚れつつ、フィリクスは詠唱を始める。

 足元に魔法陣が広がり、筒状の結界がフィリクスを包んだ。

 ただの詠唱結界だったが、向かってきた光線が弾け飛ぶ。


「お前、本気で逃げる気か」

「何を今更。当たり前でしょ。拷問なんてごめんだもん」


 それに、もう少しだけリュシアと一緒にいたい。

 ふ、と湧き出たその言葉に、自分で驚く。

 なんだ、それ。それじゃあまるで――

 

「――じゃ、次は俺の番ね」

 息を呑む声を無視して、フィリクスは地に手を這わす。

「まさか攻撃魔法を使う気か……?」


 驚愕する叫びが聞こえ、防御魔法を唱える声が聞こえ出す。

「さすがにそれはしないよ。とはいえ反応が遅いなあ。

 ――【樹縛(ルートバインド)】」 

 フィリクスの足元の魔法陣が、一層光を強める。

 上空に光が収束し、そこから眩い白銀の閃光が放れた。

 視界を焼くようなその光に、森の木々が影絵のように浮かび上がる。


「ぐわっ!」

「目が……!」


 一瞬視力を奪ったその隙に、地から這い出た木の根が彼らの足に巻き付く。

 動けば動くほど木の根が彼らの足に食い込み、決して逃がさない。

 地面に拘束された術士たちは、呻き声を上げながら身動きできずにいた。


「お前、拘束魔法なんて使えたのか?」

「これだけね。

 というか、ちょっと簡単に捕まりすぎじゃない?」」


 フィリクスの声掛けに術士たちが奥歯を噛み締める。

 こういうことを言うから俺は嫌われるんだよね、と苦笑したその時、森の奥から、目立つ《香り》がした。


「!」


 くゆる香木のようなそれを、フィリクスはよく知っていた。

 まじか。なんで来たんだ。

 思わず歯噛みする。

 木々の奥から現れたのは、漆黒のケープを翻した銀髪の青年。

 引き締まった体躯に、精悍な顔つき。

 鋭い青の瞳が、真っ直ぐにフィリクスを捉えている。

 魔法管理局主任監察官、ダルセイン=ヴォルク=アストレイン。


「――ダルセイン様自ら来たの?

 珍しいね、閣下殿ぉ」

「閣下はやめろと言っているだろう」


 彼はフィリクスに向かって歩みを進めると、地面に拘束された局員たちを一瞥し、深い溜息をつく。


「ダルセイン様、申し訳ございません!」

「いや、いい。あいつが簡単に捕まるとは思っていない」


 【(フレア)】と呟き、ダルセインは局員たちに巻き付いた木の根を燃やす。

 魔法のコントロールが正確だからこそなせる技だ。そうでなければ体も一緒に燃やしてしまう。

 それでも尚、木の根は再生していたが、その内逃れるようになるだろうことは明確だった。


「あーあ、せっかく動けなくしたのに」


 肩をすくめて見せると、局員たちが怒り露わにする。

 今にも食ってかかりそうな局員たちを、ダルセインが片手を上げる動作一つで抑えた。


「お前は本当に厄介ごとしか起さないな」

「えー、俺はいつも被害者でしょ」


 軽口を叩くフィリクスに、ダルセインは呆れたような目線を送る。


「まあいい。捕らえる前に、一つ聞いておかなければならないことがある」

 ダルセインの声色が低くなる。

 フィリクスの表情を一つも逃さんとばかりの鋭い眼光。

「なに、そんな顔しちゃって」

「二日前、広域探査をした時、お前の魔力の《香り》が一瞬途切れた。

 何か思い当たることは?」

「――途切れた? 《香り》が?」


 どういうことか、まったく分からなかった。

 二日前ということは、リュシアに会った日だ。

 あるとしたら、リュシアの入れたお茶を飲んだことくらいだが、嘘発見効果があるとしか聞いていない。

 いや、そういえばもう一つ、お茶を飲んだ。

 ほんの少しだったけれど、あれは確か――


「魔道具が壊れてたとかじゃなくてですか? 」

「それは確認済みだ。

 念の為聞くが、まさか《香り》を消す禁忌に手を出したわけではないだろうな?」

「え。そんなことできるの?」

「………」


 ああ、いらないことを言った。

 と言いたそうなダルセインの顔。


「いや、知らないならいい。こちらの誤作動ということにしておく。

 とりあえず、お前は大人しく投降しろ。

 ――【鋼鉄の鎖(アイアンバインド)】」


 ダルセインの足元に、魔法陣が展開された。


「!」


 淡く輝く魔法陣から、漆黒の鎖が生き物のように蠢き、フィリクスめがけて襲いかかる。


「急だなあ、もう」


 避けるだけでは躱しきれない。

 フィリクスは鎖に向けて片手を突き出す。


「【灼熱の弾丸(ブレイズショット)】!」

 

 炎の弾丸が放たれ、鎖に直撃した。

 轟音と共に鎖が焼き切れ、勢いを失って地面に散る。


「中級魔法で詠唱なしか。相変わらず忌々しいな」

「いやいや、ダルセイン様の拘束魔法ほどではないでしょ。

 ほんと、しつこいったらないんだから」


 鎖はすべて焼き尽くせない。

 残った部分が執拗にフィリクスを追尾し、紙一重で回避する。

 体勢がわずかに崩れた、その瞬間、


「【雷鳴の槍(ライトニングランス)+(ケージ)】」


 ダルセインが再び詠唱すると、彼の周囲の空間が微かに歪む。

 空気が振動し、無数の雷の槍がフィリクス目掛けて降り注いだ。





ダルセイン再び。

戦闘シーンばっかですみません。そしてもうちょっと続きます……。

もうしばらくお付き合い頂けたら嬉しいです(>_<)


追記:次回11/13に投稿予定です。  

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