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探偵は死人と語る  作者: 一茶
真部真夏の知り合いについて
6/6

「ねぇ佐々くん。一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「一つなんて悲しいことは言わないで、いくつでも聞いていいんだよ?」

「別に一つでいいっていうか、一つしかないんだけど。まぁそれはいいとして」

 一日の授業終了して、部室へと向かう道中。まだ全貌を把握することができていない校舎の中で、僕は真部と二人で歩いていた。

 マンモス校と称されるほど生徒の人数が多いこの三日月高校では、一年生から三年生を棟に分けて管理していて。

 僕たち一年生がいる棟には、のべ二百人の生徒が蠢きあっている。

 だからなのかクラスメイトの顔や名前は把握できていても、いっぽ廊下に出ると知らない人たちで溢れている。

 見たことのない生徒や、聞いたことのない名前が飛び交っているその廊下を僕たちは歩いていた。

「今朝私たちは午前七時三十分に横断歩道で出会ったよね?」

「そこまで正確な時間は覚えてないけど、多分それくらいだったと思う」

「そして私が先に渡って、学校に着いたのが七時三十五分。それから三十分後の八時十分に君は登校してきた」

「そうだね。そこまで正確な時間は把握してないけど、たぶんそれくらいだったと思う」

「この三十分の間、いったい君は何をしていたのかなぁって。だってあの横断歩道から学校までたった五分の距離だよ? そこで三十分も時間をつぶすなんて、なんだか私心配になってきて」

「心配って、なんの?」

「佐々くんが学校に行きたくないのかなぁって」

 ここで正直に「横断歩道で死人と会話をしていた」なんて言ったら、間違いなく頭のおかしい人だと思われるだろう。

 もちろん僕にだってそれくらいは少し考えればわかる。

 だからと言って変に話をはぐらかすと、ますます心配させてしまうかもしれない。引っ越してきて初めてできた友達で、唯一僕のことを気にかけてくれる生徒。

 そして何より女の子である真部を悲しませるようなことはしたくない。

「別に、知り合いと話してただけだよ。そんな心配するようなことじゃないって」

「佐々くん、こっちに引っ越してきたばっかりだよね? 何も知らない土地に一人で来て不安だって、この前言ってたよね?」

 温かな眼差しが一瞬で凍ったのを僕はこの目でしっかりと捉えていた。

 天然カイロである真部でも、冷たい心を持っていることにある意味安心を覚えた。


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