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探偵は死人と語る  作者: 一茶
真部真夏の知り合いについて
4/6

 僕、佐々木佐々は普通じゃない。

 運動も勉強も得意ではなく、不得意でもなく。右を歩いている人がいれば右を歩き、左を向いている人がいれば左を向く。

 雨の日は傘をさし、寒い日は着込んでいく。

 それが普通だと思っているから。周りに合わせて、同じ行動をとる。それが人間が人間であるための必要条件であって、そうではないモノたちは弾き出されていく。

 それが人間であり、考える生き物であり、地上でもっとも強く、地上でもっとも弱い生き物である。

 と、僕は考えている。

 だからこれは、僕だけにしか見えないモノたちは、僕が生きていく上で不必要のモノたちであり僕にはなんら関係のないモノである。

 だから見えていない。見えていても見えていない。見えていないことにすることが正しいことだと思っているから。

そう気づいたのは小学校を卒業する頃だった。

生まれ持った才能、と呼んでいいのかはわからないけど。それは僕の日常で、色の見え方が人それぞれであるように、僕はそれを皆が見えているモノだと思っていた。

 

 

 横断歩道を行く人たち。人を避けあて歩くその波の中で一人ポツンと立つ顔の見えないモノ。

 人間と変わらない見た目だけど、決まってそれは顔に白い布を当てている。

「死人」と僕は呼んでいるけれど、その名称が正しいのかどうかはわからない。なんて言っても僕以外に見えている人に出会ったことがないからな。

「どうしたの? さっきからぼぉっとして」

「……いや、いい生足だなって思ってただけだよ」

「やっぱりえっちじゃん!」

 恥ずかしそうに隠しているけど、全然隠れていない。そこもまたいいと思ってしまう。

「冗談だよ。ちょっと忘れ物したから先に行っててくれ」

「……わかった。ちゃんと登校するんだよ!」

「こう見えて僕、転校初日から皆勤賞なんだぞ。優等転校生って呼ばれるほどにな」

「なんだかワガママボディくらい、いいとこ取りの名称だけど。わかった」

 手を振って先に行った真部さん。クラスが違うにも関わらずこうも関わってくれる人は、後にも先にも、なんならクラスメイトも含めて彼女くらいだろう。

 転校生は決まって人気があるようでないからな。

 さてと。これで変人扱いされずにすむ。

「すみません。少しお話しいいですか?」

 これまでの話は全部、僕がここにくるまでの話。この仕事を始める前までの考えで。

「……はい? 私ですか?」

 今は違う。

「そう、あなたです」

 顔の見えないその人は、僕の声に応える。

 僕は死人と会話を始めた。


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