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探偵は死人と語る  作者: 一茶
真部真夏の知り合いについて
3/6

白といえば、雪の色は白が一般的で、積もった雪は全て白に見える。でも、雪は氷の結晶であって透明のはず。じゃあどうして白に見えるのか。

「それは簡単な話。光を乱反射させてるからだよ。氷はそのままだと透明だけど、かき氷にすると白くなるでしょ? 細かく砕かられた氷は結晶の一つひとつが光を反射させて人の目には白に映るんだよ」

「なるほど、だから雪は白いのか」

「砂糖とか片栗粉とか、白く見えるものは基本的に光を乱反射させてる結晶の塊だと思うよ」

「真部は博識だな。大抵のことは答えてくれるし」

「そりゃもちろん。それが私のセールスポイントだからね!」

 得意げに叩いた胸がほんのわずか、若干、微かに、細かく揺れた。

「宿題の答えから、この世の真理まで、右から左、下から上、一次元から三次元まで、見えるものなら答えを導き出すのが、私のポリシーだから!」

「へぇー」

「……あんまり興味なさそうだけど、一応あなたの方から振った話題なんだけど」

「そんなことないよ?」

 見えるものなら答えを導き出す。

 人間の視野角は約180度と言われている。その範囲のものであれば形や色、視線を合わせれば物のしっかりとした造形も理解することができる。

 焦点を合わせて遠くのもとや近くのものを見ることも、首を回せば反対側に広がる光景も。

 目線の高さに広がる光景が、現代を生きる人間たちの全てであり、僕にとって今を生きる人間たちの限界でもある。

「……どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」

 目で見て、耳で聞いて、体で感じた全てが、生きる人たちの全てであって。他人の感情、食べたことのないもの、聞いたことのない音、感じたことのない暗闇は非現実として存在すると僕は考えている。

 だから。

「早く行かないと、信号、変わっちゃうよ?」

 青信号を渡るのは普通のことだ。

 信号が変わるまで轢かれ続けた彼は、人間ではないのだろう。

 顔を隠した彼は、一人ポツンと立っていた。


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