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探偵は死人と語る  作者: 一茶
真部真夏の知り合いについて
2/6

北の大地は雪が降ろうが積もろうが、鍛え抜かれた脚力を駆使して学校に登校するという。滅多に雪が降らない地域出身の方たちには分からないだろうが、そういうものらしい。

 交通が麻痺することもあるらしいが、そこは長年の経験と先人たちの知恵のおかげで「雪道の歩き方」なる歩法があるとか、ないとか。

 片栗粉を潰すような感覚を足で感じる。

 腰丈まである積雪も、すっかり見慣れた風景になってしまって。チェーンを巻いた車のけたたましい走行音が響く通学路をトボトボと歩き、学校へと向かっている最中。

 スニーカーを履かなくなって久しいかもしれない。ぐしょぐしょに濡れた靴ほど心地の悪いものはないし、何より冷える。指先の感覚がなくなってしまったのはこっちに引っ越してきて初めての登校日のことだった。

 大雪。学校なんてあるはずないと踏んでいた僕にとって、平然と登校する同じ制服の人たちを見たのはあまりにもショッキングな出来事で。急いで着替えを済ませてはいたスニーカーは、今では靴箱の奥にしまっている。

 それなりの値段で、それなりにカッコいいスニーカーだったけど、ファッション性よりも利便性が重要視されるこの土地で、宝の持ち腐れとなってしまったスニーカー。

 おろしたてだったのに……

「あれ? 今日ってそんなに寒いかな?」

 真部真夏が立っていた。

 通学路にある大きな交差点。大きな十字路で信号待ちをしている人たちの中に、見慣れた顔が笑顔を振りまいている。

「おはよう」

「はい、おはようございます。じゃなくて、なんでそんな重装備で歩いてるの?」

 ダウンにマフラー、下には制服の上からスキーウェアを履いて、ポケットにはカイロまで入っている。これほどの装備を持ってなお、寒い。体の芯から凍る勢いで寒い。

「寒いからに決まってるだろ。真部こそなんで生足なんだよ」

「寒くないからに決まってるじゃん。佐々くんこそ、そろそろこっちにきて二ヶ月は経つんだから慣れないと」

「一日中冷蔵庫の中に閉じ込められてる状況に慣れなんてないだろ! 死ぬは普通!」

「死なないよ、普通。その証拠にほら、佐々くんより薄着の私は死んでないでしょ?」

 制服姿でくるりと回った真部は、確かに寒そうに見えなかった。白い生足が大変健康そうに光っている。

「……えっち」

「眼福でした」

 朝から心がぽっかぽかになった


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