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探偵は死人と語る  作者: 一茶
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プロローグ


「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」

 たしか江戸時代に誰かが言った言葉、だったような気がする。無理なことだってやる気さえあれば案外うまくいくかもね、みたいな意味なんだと僕は捉えている。

 もっと深い意味があるのかもしれないけど、それよりも言葉の中から意味を自分で見出すことが大切なんだと思う。

 自分で考えて、それがたとえ間違いだったとしても、考えたことに変わりはない。人間は考える葦であるって、なんか昔の人が言ってたけど、多分そういうことなんだろうと僕は思う。

 人間は脆く儚い。少しの傷が致命傷になり、少しのミスが命取りになる。ライオンのような鋭利な爪を持っているわけでもなく、象のように大きな体を持っているわけでもない。

 そんな自然界最弱な存在である人間が、今となっては地球の頂点に君臨しているのは一体どうしてなのか? それは人間には考える脳があったからだ。

 ライオンや象はその生まれ持った才能で多くの獲物を獲得することができた。しかし人間には鋭利な爪なんて生えていないし、せいぜい百キロちょっとの体重で大型生物に対抗することなんてできない。

 だから僕たちの先祖は考えることにした。

「どうしたらライオンから逃げることができるだろう」

「どうしたら象を狩ることができるだろう」

 と。

 まさに「為せば成る、成せねば成らぬ何事も」と言える。

 この二千年間で人間は日々葦のような存在で、しかし為せば成ることを信じて生きてきた。

 どんな苦境に立たされていたとしても、その先にある「成る」を目指していた。

 だからこそ僕たちは知らなければいけない。あったかもしれない未来、存在したかもしれない可能性、その先にあったはずの「成る」にたどり着くことができなかった人たちの声を。

 折られてしまった葦たちの悲しみの声を。


 まだ肌寒い冬の日のことだった。


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