表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/65

なになになになに?!



さすがにベッドで眠った@異世界三日目※二日目半ともいう。


なんだかいい匂いがしてたから、安眠効果がある匂い系とか枕がそれっぽいとかあったんじゃないの?


ステータスに鑑定が出来るようなことも書かれていたんだけど、どうやったら発動するのかわかんなくて謎。


普通にコールすれば出来るのかと思ったら、そうじゃないってことなのか?


あの時、猫の齋藤が唱えていたエアーカーテンとかいう魔法というか呪文。


いたって普通に唱えていたよな? 前後に何かついてたか? もしくは動きに意味があったとか。


「んぐ…ぅ」


こっちに来てからの情報量の多さに、あの時の記憶が曖昧だ。


今日も()()い朝食をしっかり食べて、あたたかい緑茶まで飲み、いつでも出かけられそうな感じで。


「マニュアルの方に、魔法の勉強について書いてあったな」


この街独自に開いている教室のような場所があると書かれていた。


その時にステータスの一部非表示とかの操作についても教えてもらえそうだ。


「なんていったって、無料ってのがイイ」


俺の生活のほとんどがタダ! 


それはわかってるけど、だからって安く学べるってのにわざわざ金をかけるのはどうかと思ってさ。


安いから質の悪い教室だったら、辞めればいいし、低料金でもいい先生がいるところにはいる…かもれないだろ。俺の経験上の話だけどさ。


「さー…て、と」


そう言いながら、あの時計を腕にはめる。念のためでカードは別で持って。


電源を入れて、行きたい場所を頭に思い浮かべる。


あの手続きをした場所(多分、役所?)の隣にある6階くらいの高さの建物の中にある、カルチャースクールみたいなとこ。


猫の齋藤のあの態度が、朝、目がさめてから妙に気になって、髪色が目立たないようにニット帽をかぶって髪を隠す。


答えが出るまでは、こんな生活でも仕方がない。正直、わかんない=気味が悪い=気持ちが悪い。なんだよな、俺の中じゃ。


ニット帽でも問題なさそうな服装だったら恥ずかしくならないよな?


クローゼットのドア裏についていた、バカでかい鏡をみながら身だしなみを整えた。


白いニット帽に、白と黒のチェック…か? シャツの中にVネック着て、下は黒のカーゴパンツ。…めちゃ楽。


元いたとこでの私服を思い出そうとするんだけどさ、どうしてもスーツなんだよな。


常に仕事ばっかしてたからか? スーツ以外着ていた記憶…ないかも。


好きな系統の服のイメージもわいてこない。好きな色とかもよくわかってない。自分のことなのに。


とはいえ、このクローゼットの中の服には、今のところ着ぐるみとタキシード以外はハズレなし。


昨日買ってきた服は別日にして、今日は動きやすそうで気楽な格好にした。


「え…っと、ここから近くのバス停に行くのには」


時計に思念を伝えて、行き先をナビしてもらう。


もしかしたら、俺が生きてたあの世界にもこんな風に便利なアイテムがあったのかもしれない。


でもあの時の俺には、それを知る術も使いこなせる時間もなかった。


その辺の時間もやり直している感覚で、変な感じ。


「っと、やばっ。バスの時間まで10分だ。急がなきゃ」


バスもこの時計で支払い可能ってことを、あのマニュアルで知った。洞窟当たりで猫の齋藤と一緒の段階じゃ、まだ時計は手にしていなかったしなぁ。


バタバタと出かける俺の手には、昨日買った物の一つで折りたたみ傘がある。


魔法が使えるようになるまでは、アナログなものに頼るしかない。本同様で、あえてアナログに頼る時もあるだろうとしても、便利な部分はうまく使い分けていこう。


俺以外にも数名バスを使う人? がいて、並んで順に乗り込んでいく。


今日は、今のところは曇り。


バスに乗って20分ちょっと。そこから少し歩いていくと、役所の隣の6階建ての建物へとたどり着いた。


この世界は俺がいたとことものすごく似ているものが多い。その辺、ストレスが少なくすむのが嬉しい。


エレベーターはなく、エスカレーターなんだな、ここ。階段でよろしくとか言われたら、登れる自信はなかったな。


体力皆無だと思うから、この姿の俺も。


4階が今日行く予定の教室の場所だ。


どこかのんびりしたスピードのエスカレーターに乗りつつ、どんな風に魔法を学ぶのかとそわそわする。


昨夜寝る前に、改めて自分のステータス画面を見た後に首をひねった。


レベル含めて、いろいろと数値が高いのか低いのかの判断が難しくって。


「…お。4階だ」


たどり着いた4階で、壁に貼られてる案内に従って進んでいく。


教室に入ろうとした瞬間、ドアが勢いよく開いて子犬やら小鹿やらがごちゃごちゃと飛び出してきて尻もちをついた。


「あー…おじさん、ごめぇん」


そのうちの一人が俺に言い捨てていったのが、それ。


「おじ…」


こっちに来てから、見た目だけでも若返ったんですけどね? とか思いながら、ゆっくりと立ち上がる。


「こら! 飛び出さないのよっ!」


と怒鳴りながら出てきたのは…なんだっけ、これ……オオアリクイ?


そのオオアリクイっぽいのも飛び出してきたもんだから、やっと立ち上がったのにまたコケそうになった。


「っと……すみませぇん」


聞こえてきた声は、女性らしき高めの声。…女性? 女性…か?


(女性にしては、しっかりした体に見えるような。オオアリクイって、みんな似たり寄ったりだったか? 体型は)


「大丈夫かしら? この後の参加者さん? ハジメマシテ…よね?」


その声は優しく、ふんわりした感じだ。


「水兎…といいます。魔法のこと何も知らないので、よろしくお願いします」


最初が肝心だなと挨拶をすると、小さな目を細めてから頭を下げてきた。


「こちらこそ、よろしくねぇ」


と言いながら。


その言葉づかいに、あれ? と違和感を抱きつつも気づかないふりをすることにした。


初対面でいきなりツッコむわけにはいかないだろ? オネェサンデスカ? とかさ。


――俺が参加した教室は、年齢層は低めもしくは高齢者向けの、魔法を学びはじめるか学び直しの人が集まった内容だった。


まわりは先週の復讐をやっててくださいと言われているのが多い中で、俺と数人の高齢者らしい人たちが魔法の基礎のついて話を聞くところから始めることになった。


属性は一人に一つでも二つでも三つでもいいけど、魔力の量が少なければ使いこなせなくなることが多い。まんべんなく使いたいのなら、低級の魔法を生活魔法として使用していく程度ならば魔力切れも起こさずにすむだろう…と。


魔力を使いすぎると、魔力切れになって吐き気がしたりめまいがするようになるとか。それを繰り返してしまうと、命が少しずつすり減ってしまうから、魔力切れを起こすほど酷使しないようにと言われた。


なので、最初に自分の総魔力の数値を知って、どこまで使うと限界かを意識しなきゃいけない。


「楽しく魔法を使うには、無理も無茶もしない! それが大事です。それと、悪いことをしていない人に向けて放出しないように! いいですかぁ? 魔法は、楽しく! これが大事です」


なんて言うオオアリクイの先生が、また目を欲しめて微笑んだように見えた。


魔力は血液や血液の中の酸素みたいなもんで、体中を巡りながら体を癒しているんだと。


ちゃんと魔力を巡らせることが出来ると、自然治癒力アップ、免疫力アップ、熟睡…などに効果があるとすごくいい笑顔で言ってくるオオアリクイ先生。


なんか、先生の経験談みたいに聞こえる。


ということで…! といきなり始まったのが、魔力を感知するための訓練だ。


「水兎さんは、まずは私と魔力を刺激するところから始めてみましょう」


「魔力を刺激…」


特殊な金属製の棒を渡されて、先生と俺とで端同士を持つ。そこに魔力を送りあって、上手く送りあえればキレイに光るという謎の棒。


その棒に触れただけで、体内の自分の中の魔力を感知して棒の方へと向かう感覚を感じさせてくれるんだって話なんだけどさ。


「せ…っ、先生! これ…くすぐったい!」


まさかの邪魔が、くすぐったがり屋って。


「そのうち慣れますし、これを使わずに感知できるようになればいいわけですから。…すこしの間だけ我慢です、水兎さんっ」


可愛い声で、我慢しろとか言いやがる。


ぶふ…っとふき出しそうになるのを堪えながら、自分の体内に魔力が在るのを感じはじめる。早いとこ感知しやすくならないと、いつまでもこの棒を握っていなきゃわからないんだ。


ある意味腹筋を鍛えられそうな空気の中、一旦休憩になった。


オオアリクイの先生が、休憩後に隣の教室にきてくださいとか言い出したんで、10分の休憩後に隣の教室へと移動する。


「……っと、え? どちらさんですか?」


オオアリクイの先生だけかと思いきや、オーブを着たどっかのえらそうなじーさんと、どこかの制服みたいな真っ白い長いジャケットを着たオッサン1・若いの2がいる。合計、4名追加? というか、どっかの隊ですか? 帯剣してるように見えるんだけどなぁ。


「先生、こちらの方々は?」


思わず足をとめ、ドアの境目っぽいとこで立ち往生。あんまり積極的に関わりたいと思えない系統かもしれない。なんていうか、相性が悪いのか肌で不穏な気配を感じる。


「あー…説明しますから、中にお入りくださいな。水兎さん」


先生の目はものすっごく笑顔なのに、ちっとも笑ってないのが理解できる。元職場でよく見かけた表情だよな、これ。


「あの…俺、なにかやりました? もしかして」


警戒せずにはいられないただならぬ雰囲気に、一歩下がる。どうしても入りたくないんだよな、この部屋に。


「いいえ?今のところは大丈夫ですよぉ」


人の腹は探りたくない。探り合いが苦手がゆえに、営業とか絶対向かないなって思ってたんだ。俺は。


今のところ、とかいうのかよ。勘弁してくれ。


「…………」


「「「「「…………」」」」」


部屋に入るか否かの場所で拮抗する、多分全員男。


「今日は帰ります。ご教授いただきありがとうございました」


なんとか笑顔を浮かべ、もう一歩下がりながら時計に思念を送る。


(同じフロアーに鍵穴…あった! ここを出てまっすぐ行って、左に曲がったとこ!)


授業を受ける時に相手に俺の情報が伝わってしまっているから、それをどうすることは出来ないんだとしても、とりあえず今はこの場から逃げた方が…イイ!


踵を返して、駆け足で五人から逃げる。


「あっ! 水兎さん!」


って、声がしたけど、気にしてる場合じゃない。


よくわかんない状況で、のほほんと相手に合わせているようなお人好しのつもりはない。


「あ! 廊下! 走ったら怒られんだよー、紫の兄ちゃん」


(紫?)


子どもたちに声をかけられるけれど、それも聞きながらして鍵穴の方へと急ぐ。


背後から駆けてくる足音が何人分か聞こえている。急げ! 急げ!


「いそげ! 俺!」


駆けながら鍵を手にして準備をし、後は挿すだけ!


「俺んちへ!」


ギリギリの距離まで追手がいたけど、なんとか家に帰れた。


玄関の中で、上がり口にへたり込んで乱れた呼吸を整える。


「なんなんだ、あれ。俺が今期の決算前の漂流者だってのと関係あるのか? いきなりあの人数で、妙な威圧感で立っていられたら…逃げるっつーの」


スニーカーを脱ぎ、チェックのシャツも脱ぎ、ベッドに倒れ込む。


「こ…怖かった……」


ここに飛ばされてから、特にひどい扱いをされたことはなかったし、手続きで長時間待たされたりはあったけどそれはそういう範囲外。


部屋の中にいた連中らの空気が、俺が作った資料の出来のひどさに上司と営業マンらに呼び出しを食らった時に似ていた。


心臓はまだバクバクしているし、呼吸もなかなか整わない。


声が震える。


「お…俺が一体、何したっていうんだよ」


早く慣れたいのと、ここでの自分の過ごし方を確立したいのと、この場所で求められている予算を使いながらも罪悪感が少なめな金の使い方を模索したかった。その中で、魔法が使えるっていうなら生活に使っていくか、他に使いどころを考えながら過ごすためにも力の使い方をって思ってもいたのに。


「タ…タダより高い物はないって…ことか? つまりはそういうことか? タダな分、俺がなにかを協力しなきゃいけなかったとかそういうこと? ……正解か不正解かの答え合わせに行くのは、正直…ヤだぞ。俺」


俺に対しての悪意がないと想定してみても、あんな風に威圧されてて素直に従うだろうと思われてもいたのか?


「あぁ……なんにしても、もう…無理。他の方法で魔法を使えるようになろう。あんな場所、二度と行くか」


まだ手の震えが取れない。


(会社で似たような目に遭った時、たしかあの時…叔母さんが)


おぼろげな記憶を引っ張り出して、バスルームへ。


パネルを操作して、バスタブにお湯を張る。


乱暴に着ているものを脱ぎ、いつものように先に体を洗うこともなく湯船に浸かる。


ザァアアアアアア……とお湯があふれて、洗い場の床がお湯で一瞬満たされてすこしずつ排水溝へと流れていく。


すぐそばの小さなパネルを操作すれば、手のひらにコロンとした入浴剤があらわれた。


お湯に落とすと、発泡剤みたいでシュワシュワいいながらすこしずつ小さくなっていくそれ。


いい匂いをさせながら消えていき、気づけばお湯は黄色がかった乳白色へと変化していた。


お湯に浸かっていると、自分の髪の毛が少しお湯に浮かんで視界に入った。


「紫、ねぇ」


あの時は、なんだろうな。あの子が口にしてた色は。


「今の俺は、何色?」


何で髪色が変化するのか、まだハッキリしてない。


いずれ情報が共有されるとは言っていたけど、いつまで待てばいい? って話だ。


その日を俺が待てるかどうか。


それと、どうしてああいう場所に呼ばれたのか知らないけど、この街に案内されたからここに住むって決まったけど、本当にこのままここに住んでて俺は安全なのか?


「格闘技をやってたわけでもない、魔法はチートなんだろうって内容の数を持っていたって、使い方を理解していなきゃどうしようもない。……自営の方法が、ない」


強張っていた心と体が、ほどけていく。


叔母さんが風呂に入って行けって言ったんだよな、あの時。それを思い出して、急いで風呂の準備をしたけど…多分正解だった。


ドブンとお湯の中に潜って、一気に顔を出す。


「…ぷはっ」


もうちょっといろんな視点からこの生活を考えなきゃダメかもしれない。


口のあたりまで浸かって、息を吐き出す。


ブクブクブクブブブブブ…と細かい泡が出て、変な音になった。


「…………よし、あがろう」


飯を食って、それから改めていろいろ考えよう。


昨日はマニュアルを読んで、知識を得ることをした。


得るものがあったら、次は活かし方だ。それと、本当にこの場所で生きていっていいのかを考えよう。


勢いつけて、バスタブから立ち上がる。


かんたんに体と髪を拭き、顔に塗るもの塗ったら腰にバスタオルを巻いてあの部屋へ。


「まずは、自分が落ち着くための行動だ。飯だ、飯」


落ち着かないときこそ、いつもと同じ過ごし方をした方がいい。叔母さんがそういって風呂に入れって言ってた。


そのやり方はきっと、うちの両親のそれだ。


炊き込みご飯とホッケの開きっぽい焼き魚。それに、白和え。あとは、豚汁。白和えは、うちの母親の得意料理だった。俺がまだ幼い時にはその味がよくわからなくて、あまり美味しくないっていったら苦笑いしてたっけな。


「それと…ほうじ茶っぽいやつ」


熱々のほうじ茶を飲み、息を吐く。


「…まずは、飯だ。…………いただき、ます」


本当にそれで落ち着けるのかなんてわからないけれど、今はすこし落ち着くための時間が必要だってことはなんとなくわかる。


パチンと手をあわせて、俺は豚汁に口をつける。味噌の匂いに、豚肉の甘い脂が混じった汁が体に沁みこむ。


「…美味ぇ」


顔がゆるんだのに気づき、自分はまだ大丈夫な気がしてもう一口豚汁を飲んだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ