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おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~  作者: ハル*
アレだよ、アレ。…って、なんだっけ。
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閑話 終わらない夢の中で




「――――なんでココにいるんだっけ、あたし」


手のひらを自分へ向けて、指を一本ずつ折りながらカウントする。


「たしか、夢を見てた。それから、夢の中で何かが出来たってなって。それから…ん、っと、どこかに行って、誰かに会って。えっと、あとは…何かした気がするんだけど、そのどこかで何を…したっけなぁ」


指を五本折ると、手がこぶしになった。反対の手も使おうとしたけれど、その続きが思い出せなくて五本の指が伸びたまんまだ。


「ん、っと。なんだっけな」


そう呟く自分の声が、なんでかやけに響く。


(本当にココってどこなんだろう。まわりに何もなきゃ、誰もいないし)


だだっ広いだけの空間。そこにいる自分。


「…って、あたし…誰だっけ」


どうしてか自分についての記憶も曖昧なのは、どうしてなんだろう。


そして、何でココにいるのか。ココにいると気づいた瞬間、口からもれた言葉がそれだ。


アレもコレも理由が分からない。


疑問に感じているはずなのに、頭にそれが浮かんだなって感覚はあるのに、大したしないうちにそれが消えてくような不思議な感覚もある。


そんなに記憶力ない人間だっけ、あたしって。


(そもそもで、あたしってどんな人間だったっけ)


何に対しても、ボンヤリする思考。首をかしげてしまう自分を持て余す。


「…え」


どうしたもんかと思っていたはずが、何を考えていたのかが消えたことに気づいた瞬間。自分の手のひらに、それまでなかったものが乗っていた。


なんだろう、コレ。


四角い箱みたいなものに、赤い●で印がついている。六面あるそれぞれのの面には、●が1個から順に6個まで。それが手のひらに4個乗っている。


なんだっけ、コレ。どこかで見たことがあるようで、無いようで。


大きくも小さくもないそれを指先で摘まんで、目の前に掲げたりそれよりも少し高めに掲げて小さく振ってみたり。


鼻先に近づけて、匂いを嗅いでもみた。変わった匂いはしなかった。


…と、無意識で両手でその四角いものを宙に放った。


地面にバラバラに転がり、●の数もバラバラな状態で回転をやめた。


「ん? えと、んと、●●と、●と、●●●●●と、●? ……●が9?」


何の気なしに、●の数を数えて足してみたその瞬間だ。


足元がフワッと淡く光って、まるでこっちに進んでみなよと言わんばかりに道を示してくれている。


よく見ればその光の数は、さっき数えた●の数と同じじゃないか。


「ちょうど退屈していたし、よくわかんない場所だし。コレで暇つぶしが出来るってことでいいのかも。…ふふ」


一歩ずつ歩を進めて、光の道を歩いていく。9個目まで足を進めたけど、その先にはどうやっても行けない。足がその場所に縫い留められているかのように、ピクリとも動くことを許されないんだ。


「どういう仕組みなんだろう、コレ」


首をかしげたあたしの手に、さっき同様でまた六面の四角いのに●が描かれている箱が乗っていた。


足を進めていた時には、なぜか地面にもその形は無くなってた。どこに行っていたのか、謎。なのに、特定の数を歩くとまた現れたんだ。


「なんか変なのー」


そう呟くし、本当に変だとも思っているのに、調べることもしなきゃその先の行動をやめることもない自分。そこにも違和感はあるはずなのに、違和感を抱いたことすら薄れていく。


「ま、いっか」


この言葉で片付く程度の、軽い悩み扱いになってしまう。なんか、変。


変だと思う自分と、何も考えようとしない自分とか混在する。なんか、変。


「そーっれ!」


さっきと同じで、宙に4つの箱を放つ。


「今度は…………っと、あー! 惜しい! ●と●と●と●●●か。どうせなら、同じ数字で揃った方がカッコよかったのに」


偶然なんだろうけど、妙に惜しいと感じる。なんか、変。


合計で6つの光がつながって、また道を示してくれた。キレイだな。


(さっきのと合わせて、15進んだことになるのかな)


とかなんとか思いながら最後の光を踏んだ瞬間、足元の光が強くなる。


「キャッ!」


一瞬まぶしい光に包まれたと思ったけど、さっきまでと何も変わったことはない気がする。


「ただ光っただけ?」


右足を上げ、今度は左足を上げ。その場で足踏みでもしているみたいに、足を動かしてみる。


「なにも変なとこない…? の?」


誰に対して聞いているわけじゃないけど、大きな独り言をこぼしては首をかしげた。


けれど、すぐさま不思議なくらいどうでもよくなって。


(なんか変な感覚あるんだけど、これって。……って、ま、いっか)


よく見ると自分の着ている服が、どこかで見たことがあるアレっぽい。


「あ! そう! 絵本の中にいた魔法使い!」


そう、絵本の中でいかにもな感じで描かれている、魔法使いの衣装だ。三角に尖った帽子のつばは、幅が広めで。


「ちょっと大きくない? サイズ」


子どもが大人の服を無理に着ている感じのサイズに思えてしまう。


服は裾に向かって広がっていくワンピースっぽいもので、金糸の刺繍が裾にある。袖口にも同じ刺繍が縫われていた。


「でも、色が茶色っておしゃれじゃないなぁ」


こげ茶の、地味なワンピース。


「この格好に杖でも手にしていたら、本物の魔法使いみたい」


そう言いながら自分には魔法が使えない気がしている。それが嘘か本当かはわからないのに、使えない気がして。


「魔力がものすごくあって、魔法使いの師匠でもいたら…違うのかもだけど。ココがどこかわからないから、師匠なんて存在に出会えるかも…な」


昨日のことも明日のことも、頭の中でハッキリしない。


そんな曖昧な記憶の中でも、多分これは正解だろうと思えるのが自分の名前くらい。ついさっき思い出した。


「ジュノ…で、合ってるよね? 名前」


多分正解? とか思っている時点で、自信が無いのが透けて見えそう。


「ま、いっか」


たった数秒前に考えていたはずのことにも執着することもなく、《《その言葉》》で次へと行動を始めてしまう自分に気づけていない。


――違和感しかないっていうのに。


さっきから自分が放り投げている四角いものが、サイコロというもので。それはたまたま進んだ先で得た知識。


「…っっせーの!」


放り投げたサイコロが、●●の面で4個とも止まった。たったそれだけなのに、テンション爆上がり。


「きゃあああ! すっごい!」


どこの歌かわからない鼻歌を、ご機嫌なまま口ずさみながら進んでいく。


「…え? きゃっ」


8歩目。そこに足をポンと踏み入れた瞬間、さっきまでとはすこしだけ違う光が自分を包み込む。しかも、光っている時間が一瞬じゃない。


淡く、大きく光り。そうしてまるでその光が自分の手に吸い込まれていくみたいに、体の端から手の方へとたどっていくように消えていった。


「気のせいかな? 体があったかいや。…んふ」


光の消え方、体のあたたかさ、全体的な感覚がそれまでとは違うのに気にならない。すぐにサイコロを手にして、また宙に放つ。


「いーち…いーち、にー、にー…で、6かー。ふんふん♪ふふん♪」


その繰り返しをどれくらいした頃だろう。魔法使いのそれっぽいワンピースの色が、変。気に食わないとかじゃないけど、なんか変。


多分、さっきまでとは違う? 自信ないけど。さっきまでの形と色が思い出せない。それと、刺繍されている模様。


「キレイな深緑。このキラキラした刺繍、ずっとあったっけ?」


金色の糸で縫われている葉っぱがクネクネしながら繋がっている? 何か意味がある模様なのかな。


「ココって、暑くもなきゃ寒くもない。どこかの部屋の中なんだろうか。…おーい、誰かいる? ねーぇー」


サイコロを手に握りこみ、何の気なしにどこかにいるかもしれない誰かへと声をかけてみた。


思ってたより大きな声が出て、自分で自分の声にビックリ。


「はー…っ、ドキドキするじゃないのよ。こんなに大きな声出せたんだね、あたしって」


今までの自分がこんなにも大きな声を出したことがあったのかを思い出そうとするのに、また思い出す途中でボンヤリしてきたあたりで、どうでもよくなってしまう。


なんて言うんだろう。人の顔とか思い出したいのに、輪郭がハッキリしていないのに似てるかも。


その形が人なのか、動物なのか。もしくは、生き物ですらな存在なのか。それすら決めかねるほど、ぼやけた感覚だ。


ハッキリしないことは、気分が悪いはずなんだけど。


「ま、いっか」


呪文かなにかのスイッチみたいに、その言葉を吐けば本当にどうでもよくなる。


「なんか変…なのかなぁ?」


その言葉を誰かが拾ってくれるか否かもわからないその呟きを、独り言にしては大きな声でもらし。


「………………静か」


無反応な現実に、またポツッと。


「ま、いっか」


そう呟いて、サイコロを宙へと放った。


――――同じ目が揃うことを、ゾロ目という。…へえ。これで何回目だっけ、そのゾロ目っての。


「これで五回目だと思うんだよなー」


とかボヤきつつ、●●●が4つなので12進んでいくあたし。


このゾロ目っていうのになった時に、いちいち光ったり体がホコホコぽかぽかしてくるのも続いている。


熱っぽいとかのぼせるとか、その手の不快さはないからいいんだけど。


「10ぅ、11ぃ…っと12ぃー」


12歩目で、これまで同様に体が光り、体があたたかくなった。ここまでは今までと多分同じ。正確な記憶じゃないけど、きっと合ってると思う。


「え? ま、待って…待って…! この感覚って、もしかして」


ココロオドル。


ワクワク。


ドキドキ。


ソワソワ。


「これはきっと!」


たとえ記憶が定かじゃなくても、あたしの体が憶えている。


胸の前あたりで両手のひらを上へ向けて、じっと見下ろす。そして、そのままで右手だけ軽くこぶし状にしてから人差し指だけをこぶしから解くようにすれば、人差し指の指先だけが空へと向く。


いつかどこかでやった。いつかは思い出せないけど、感覚はある。このやり方で間違いないハズ。


地面にサイコロをほったらかしにして、一本だけ立てた指先を見つめることに集中する。


見つめることというよりも、その指先に集めていく。その感覚を思い出せ!


さっきまで体に蓄積していった、妙な温かさ。熱っぽさとも違う、居心地のいい…質のいい毛布に包みこまれているようなホッとする温かさだったんだ。それは勘違いじゃなければ、きっと。


「遠い昔、誰かの前で誰かのためにか…こうしていた気がするのに」


その誰かが、モヤがかかった感じで思い出せないんだ。


でも。


たぶん。


きっと。


「このやり方で合ってる…はず」


頭でじゃなく、体が憶えている感覚に身を任せる。


体中を満たしつつあった温かさを指先に流すような、集めていくような。そんな感覚。


「焦らない…ゆっくり、じっくり」


ドキドキが焦りを生み、早くどうにかしたい気持ちだけが先走りそうになったけど。でも、それじゃダメだ。


「そうじゃない、きっと」


誰かに遠い昔に言われた気もするし、言われていない気もする。曖昧でふわふわしたその記憶に、今は触れないでおく。そのかわり、まるで血の巡りを辿るようなそれを追いたくて、そっと目を閉じる。


「呼吸はゆっくり吸って…すぅー……(吐く)…ふぅぅう…ー」


それを繰り返していくと、体を巡っていたものが時間をかけて右手へとジワリジワリと体内を這うように動いてく。


皮膚の下。血管の中。それに近い場所だと感じているはずなのに、皮膚の上をギリギリ触れているか微妙な感覚で何かが這っているみたいでもある。


さっきまでは、体内で這っている感じだったのに?


虫に近い物は、すこーし苦手だ。目を開ければ虫がいるわけじゃないってわかるのに、感覚はそれに近くなっていく。


ぞわぞわじゃなく、ザワザワした感覚に変化していく。


脳内での例えは、決して気持ちのいいものじゃないのに。虫だの体を這っているだの。


「でも……這っていった道に沿って上がって…くる!」


温かなモノが、そのやり方で合っていると言わんばかりに集まっていく。一点に。


サイコロを転がさなきゃダメなんじゃないかって思う自分と、それは後でもいいと言ってる自分がいる。


後者の自分の方の想いが強いのか、さっきまで何度も自分の手に勝手にのってきていたサイコロが、ずっと足元に転がったまんまなんだ。


「この感覚だ……ははっ…魔法だ、コレは」


今自分がいる場所がどこで、この場所に誰かがいるのかいないのかもわからず、サイコロを振り続けている自分が何をしようとしているのかもわかっていないのに。自分のことは、名前くらいしか思い出せていないのに。


「ああ…魔法だ。これは魔力が巡ってるんだ」


顔が勝手にゆるむ。口角が上がってしまう。目尻に涙が溜まっていることに気づき、ツ…ッとこぼれ落ちたけどほっとく。


拭う余裕なんてないし、拭うのに使える手がふさがってるもん。


「だって…今、この手で涙を拭ってしまったら」


せっかく指先に集まりだした魔力が乱れてしまいかねない。


ま、そういうこと。


「…ああ、この感覚だ…」


ゾクゾクして、たまらなくなって、それからそれから…。


「ふ…うっ」


胸の奥の方が熱くなって、苦しくなって、指先へと巡っていく魔力とは別に、ノドから口へと何か息苦しいほどの感情が言葉になって吐き出されそうなのに、心の別の場所にある感情がそれを吐き出すなと引き留めている。


ポロポロとこぼれていく大粒の涙が頬を伝い、喉元へと流れてそのまま胸元へ流れていくこともなく、襟に滲みこんでいく。


胸が締めつけられそう。苦しい。切ない。理由がなんなのかわかんないのに、勝手に涙があふれちゃう。


「あ……あぁ…」


切なさで胸の中が満たされそうになった刹那、指先へとその熱が集まり。


「――この(あか)だ」


親指の爪ほどの大きさの光が、指先で揺らめく。


自分がいる“ココ”は真っ暗でも何でもないって理解しているのに、今、自分が見つめている指先の小さな小さな炎だけが明るく浮かんでいるよう。


その紅しか見えない。


涙のせいで、キレイに灯っている炎が歪んで見えてしまう。それでも、それでも。


「キレイ…キレイだよ」


炎のまわりに、まるで輪郭をなぞっているように、オレンジの光が走っていて。


ウットリとしながらその炎を見つめていた。


その時間が、実際にはほんの1分足らずだったらしいのだけど、そのことにあたしが気づくことはなかった。


経過時間に気づくよりも、別のことに先に違和感を覚える。


「…え、やだ……まって」


指先の炎が徐々に小さくなっていくのと同時に、さっきまで体にあったはずの温かさも《《減って》》いく。


なくなるんじゃなく、減る。温かさ=体温という概念じゃない気はしてた。きっと、アレ(まりょく)だろうって。


炎が指先からなくなったタイミングで、体に感じたその減っていく違和感も落ち着く。多分、これ以上減らない。


炎を作り出したから、その影響で減ったというだけなら納得できる。魔法を使うのに魔力を対価に使うのは常識だったから。


(にしては、思ったよりも減った気がする。今の魔法って、使用魔力そこまでのものじゃなかったような)


曖昧でどこかぼやけた記憶の中から、なんとなくそれだろうっぽいことと照らし合わせて思考して。


体がやけに重いというかダルい。


「…はぁ、疲労感っていうんだっけ。こういうの」


そう呟きながら、大げさでもなんでもなく膝をつくくらい体が重く感じられ、そのまま正座した格好になった。


膝をついた勢いのままに、頭をカクンと垂らすように下げたその時だ。


「…………ま、いっか」


なんて言葉で片付けられる状況や体調じゃないのは、自分自身が一番体感しているはずなのに。


「さ、サイコロ振ろうっと」


一瞬前まで起きていたことを、なんでもなかったみたいに動き出す自分がそこにいる。


その様はまるで、あらかじめそういう動きをするように仕組まれた魔法か何かのようなのに。それに抗う術を持たず、思考も消されていることに気づけないあたしがいた。


そのことに気づけるのは、このサイコロを何回振ったらだろう。


こうやって違和感に気づけているはずなのに、それを表に出して考えられず、あたしの中にいるもう一人のあたしのように、ひっそりと思考し続けて。


表立って思考して、現状からどうにか逃げようとか思いついたところで、それすら次のサイコロを振る時にはリセットされてて。


(ココがどこかで、あたしはいつまでかわからない時間を、ただサイコロを振ってはどこかへ向かって歩き、時々起こる変化に一喜一憂しながら過ごせと言われているんだろうか。…でも、何故?)


その理由を探るには、何の情報も得られないだろうこの場所じゃ、エンディングは変えられない。自分が望むエンディングへと進めない。


そんな気がする。


「――――わ! 今までと違う色のとこじゃん。…え? ゴール? ゴールってことは、ココでおしまい?」


何度も何度もサイコロを振り、時々あの時と同じく体が発光したり温かくなったりを繰り返し。どれほどの時間が経過したのかもわからくなった頃に、その場所にたどり着いたあたし。


「やったぁああああ!!!!」


曖昧な記憶の中で進み続けてたどり着いた場所で、形容しがたい達成感に近いものを噛みしめた直後。


これまでの中で一番の眩しさに包まれ、反射的にあたしは目をギュッと瞑る。


「…ココは?」


眩しさを感じられなくなったあたしが目を開けた時、よくわからないどこかにいた。


…と、体が一瞬重くなって、すぐさま軽くなった。


(今の…なに?)


よくわからない状況に首をかしげた自分の口から、ボソッと小声である言葉がこぼれ落ちる。


『――――なんでココにいるんだっけ、あたし』


その言葉がスタート地点でのスイッチになる言葉とも知らず、そう呟くように仕組まれているとも知らず。


手のひらを自分へ向けて、指を一本ずつ折りながらカウントする。


「たしか、夢を見てた。それから、夢の中で何かが出来たってなって。それから…ん、っと、どこかに行って、誰かに会って。えっと、あとは…何かした気がするんだけど、そのどこかで何を…したっけなぁ」


指を五本折ると、手がこぶしになった。反対の手も使おうとしたけれど、その続きが思い出せなくて五本の指が伸びたまんまだ。


「ん、っと。なんだっけな」


そう呟く自分の声が、なんでかやけに響く。


(本当にココってどこなんだろう。まわりに何もなきゃ、誰もいないし)


だだっ広いだけの空間。そこにいる自分。


「…って、あたし…誰だっけ」


なんて感じで、同じ行動を繰り返している。


こうして自分の中に存在()る自分の意識がいつまで残されているかわからない。


もしかしたら、ワザとあたしの存在が残されているんじゃないかとすら考えている。でも、本当にそうなんだとすれば…何の為に?


外側のあたしが首をかしげながら、サイコロを指先で摘まんだりしていろいろ確かめた後に、四角いそれらを宙に放った。


「ん、と…? ●がー」


●の数を足していき、足元の光る道を鼻歌まじりに進み。


――きっとずっと終わることのない時間を、たった4つのサイコロだけをともにして過ごしていくんだろう。


「きゃあああ! すごくない? これ、すごくない? 全部同じ数なんて、ありえるの?」


サイコロの数字はきっとさっきまでとは違うはず。確率の問題、たしか。


そこだけはやけに現実味を帯びているなとか思うのに、外側のあたしに何も伝えられない。影響を与えられない。


「ん? なんか、光った。…お? 体…あったかい? …ま、いっか」


定型文のような言葉を発すれば、次はサイコロを振るだけ。


「っっ…っせーの!」


ただサイコロを振るだけなのに、無駄に高めのテンションで。




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