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おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~  作者: ハル*
アレだよ、アレ。…って、なんだっけ。
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宇宙はドコカでつながってて※9/19加筆修正


「さーて…と。……話を聞ける状態ではありそうだな? 全員」


カムイさんが全員を見回してから、そう呟き口角を上げる。


「その姿のままで話しても大丈夫?」


俺がそう聞くと、右の口角を上げただけで大丈夫なんだとわかった。


「じゃ、話すか。マジで長話になるからな? 途中で無理だって思ったら、抜けてもいい」


「ん。わかった!」


「了解です」


「そんなもったいないことするわけないっす」


各々で返事をし、カムイさんの話を待った。


「……じゃ、まず最初に言っとく。俺は、精霊王だった」


いきなり出た予想外のワードに、身を乗り出す。


「え? 精霊の王様? 誰が?」


「俺だよ! 俺!」


思わず、えぇえええーという顔をすると、カムイさんにデコピンをされた。


「いったぁ!」


「変なツッコミしてねえで、とりあえず話を聞け」


「はぁい」


そんな俺を見て、ジャンさんもサリーくんも声を殺して肩を震わせて笑っている。


「…二人は驚かないの? 精霊王なんてのが初っ端に飛び出してきて」


「驚いていないわけじゃないですけどね。アペルが今まで散々いろいろ驚かせてくれてくれていたので、ある程度は耐性があるというか」


「ひどいなぁ」


ジャンさんが冷静に返してくるもんだから、ムッとした。


「本当のことでしょ?」


そう言いながら、どこか楽しげにまた肩を揺らしている。やっぱり酔ってるのかな?


「話が始まってわずかでこれだ(笑)」


カムイさんも、肩を揺らして笑ってる。


「これじゃ、どこまで話が出来るか予想つかねえな」


「まあまあ」


カムイさんの言葉に、多分ほろ酔いのジャンさんが言葉を続けて、話の続きを促した。


「ったく。……じゃ、話を続けるぞ? とにかく俺は精霊王だった。今の言い方でわかっただろうが、過去の話だ。さっきサリーが召喚したライラ。あれも俺の配下の一人だったはずだ。見ただけでどの程度の力があるかどの程度のランクの精霊かがわかるから、アイツのこともノームの連中のことも対応が出来た。…ってもな、今はそうじゃねえ」


カムイさんがそう言うと、サリーくんがツッコむ。


「じゃあ、今は何かやってるとかないの?」


その問いかけに「ホーンラビットやってるだろ」とカムイさんが笑う。


「たしかに!」


サリーくんが大きくうなずく。


「精霊王やってたのは、今回のホーンラビットになる前までだな」


ふんふんと俺もうなずきながら、精霊王からホーンラビットになれるんだー…とか妄想して笑いそうになっていた。


「…アペル。お前が今、ものすごーく失礼な想像か何かしたのを、俺は察した!」


「え? そう? せいぜい、精霊王ってのがよくわかんないけど、それがどうにか進化か退化したらホーンラビットになるのかーってことを考えたくらい」


「それ絶対に退化ですよね」


俺のボケでも何でもない言葉に、サリーくんが続けて会話に入ってくる。


「だよね」


「ね?」


二人でうなずきあってから、「で? どうなの?」と言わんばかりにカムイさんの顔を見た。


「んなわけねえだろ? 転生だ」


ったら、精霊王の次は転生とか言うし。


「精霊王って死ぬことあるんだ」


てっきり死とは縁がない世界なのかと思っていたのに、寿命か何かで死ぬこともあるのか。


「あー…ちなみに死んだ理由は殺されたからだ」


今度は物騒なワードが出た。出てくるワードの予想が出来ないよ、カムイさん。


「神族のやつらの会合に呼ばれてなー? その時に狙われてってのと、他の奴らの方でも神同士の争いってのがあった影響で巻き込まれたようなもんだ。そのついでに殺された。まあ、いろいろめんどくさくなってきた頃合いだったからと、次代に引き継いでもいいのかもなって思ってたのもあって、その死を受け入れた。……ったら、そのダメージ受けたままで、ホーンラビットに転生してて、精霊王として持っていたいろんな力がこの体に馴染むには小さすぎて。自分の力に傷つけられたダメージも追加になったらよ、あっという間に瀕死状態になってな。…どんだけの時間かけりゃあ馴染むかの目処もつかなかったのもあって、マジでめんどくさくなって。いっそのこと転生なんてもんせずに、このまま死ぬのも悪くないなと思ってたのに」


と、ここまで話してから、カムイさんは俺を睨むような目つきで見つめてから。


「コイツが俺を生かしたんだ。素材を取らせてくれたお礼だって、回復をして」


俺はその視線に、人差し指を自分へ向けて示してから。


「命の恩人の逆バージョンだったの? 俺」


助けちゃダメだったの?


「……そんなぁー」


あの時のカムイさんを思い出す。思い出して、思い出して、思い出して。


「…無理! あの時のカムイを見て、自分に貸せる手があったら貸してる。救える能力があったら、救ってる。それに! ……それに! 俺はカムイとの出会いは運命だったって今でも思ってる。カムイとあの場所であの時に出会ってなきゃ、今の俺は存在しない」


心の中で願うように、強い気持ちをカムイさんへと吐き出した。


お願いだから、あの出会いを望んでいなかったなんて言わないで…と。


どんな表情してたのか知らないけど、三人とも俺の顔をジーッと見てから頬をゆるめた。ほぼ同時に。


またカムイさんの腕が伸びてきて、乱暴に俺の頭をガシガシと何度も撫でた。


「わかってるから」


それだけ告げて、いつもよりも割増しに優しげに笑って。


「ま、この命の恩人によってだな? 俺はこうして今日も美味い飯が食えている。いいことだろ? な? アペル」


その後に言ってきたのが、ご飯の話ってなんだよ。もう。


「アペルと一緒にいると飽きる暇がないってのと、相乗効果があった。……従魔契約結んだだろ?」


「あ、うん」


と思ったら、久々のワードが出た。


「実はあれな。……お前に言わないままなの、悪かったんだけどよ、一緒にいるんだったらいっそのこと精霊王だった時の諸々の回復と、同期にかかる時間の短縮に一役買ってもらうつもりもあった。…アホみたいな魔力だの規格外なことばっかだろ? お前」


そういえば、あの契約についてそこまで詳しくは聞いていなかったな。知らないことだったから、カムイさんを信じてお任せみたいなものだったもん。


「まるっと同じ能力だなんだって戻ったわけじゃねえけど、やれることは日々…増えていってる。ルナアースにいた時とは違う能力も増えてるから、完全同期が叶えば…みんなとのこれからの旅に貸せる力は多いはずだ」


「ルナアースっていう場所だったの? カムイがいた場所は」


「…ああ。お前が住んでた場所でいえば、月っていう場所か。たしか。俺たちの方での名称がそれだってだけだ」


思わぬ言葉に「はぁ?」と大きな声をあげてしまった。


「月の住人? あそこ、本当に生命体がいたってこと? ちょっと待ってよ、情報量多くない?」


月と言われてしまえば、ものすごく身近に感じる場所でしかない。


「それな? 俺たちが普段、アペルに対して思ってることだろうが。この程度でアタフタすんな」


なんて、呆れた口調でカムイさんが言えば、両側から二人のうなずく姿が見えた。


「それと……これを言っていいのか迷ってたんだけどな。…そこの記憶もさっき思い出したようなもんだから、もうちょっと考えてもよかったんだけどよ。…ズルズルと先延ばしにするようなのは、俺の好みじゃねえ。…だから、言うことにした」


カムイさんの表情が、いつになくコロコロと変わっていく。


ついさっきまで、どこか呆れたように俺を見ていたのに。


真面目な顔つきをして、すこしだけ姿勢を正したかと思ったら短く息を吐き出したのが聞こえた。ふぅ…と、どこか重たげに。


(らしくなく緊張してる?)


初めて見るカムイさんの姿に、俺もつられてか姿勢を正してしまう。


「お前は楽な格好で聞いてりゃいいってのに。…バカだな? アペルは」


カムイさんは苦笑いを浮かべてから、こう切り出した。


「――――お前の両親の話だ」


と。


一切予想できていなかった、まさかの話題。


言葉を失って目を瞠って、何か言葉をいうでもないのに口をかすかに開いて、固まってカムイさんを見つめる俺。


「お前がそっちの年齢でいえば、10代後半あたりの頃に事故だったか? 両親を同時に亡くしたって何かの話の時にもらしてたな」


カムイさんの言葉に、薄れてきている元の世界の記憶を呼び起こす。


黙っていると、それを肯定ととってくれたよう。


「お前が住んでいた場所と、コッチと。時間の進み方が違うのは、何となく知ってるんだろ? 二度ほど向こうの様子を知る機会はあっただろ。俺と出会う前と、俺と出会ってからと。アペルがコッチに来てから、向こうの時間の方が早く進んでいるはずだ」


改めてそう言われて、たしかに…とぼんやり思い出す俺。その俺の様子を見て、納得したようにうなずいてから話を戻すカムイさん。


「…で、話を戻すぞ? お前の両親は、元々ルナアースの住人で」


また、まさかの展開だ。


「え? 地球人じゃなく?」


俺がイメージするところの宇宙人らしさの欠片もない二人だったはずなんだけど、地球人じゃなかったってこと?


「…地球人だったのはルナアースの方で命を落としてから転生をして、その行き先が二人ともお前がいうところの地球って星だった。生まれ変わってもまた巡り合う約束をかわして、地球でも夫婦として過ごし。そしてまた、同じタイミングで今度は地球で命を落とした」


その話だと、宇宙人のままで地球にいたってことじゃないんだな。じゃあ、俺は単純に地球人の両親から生まれた子どもってことでいいんだな。


(しかし…)


脳内でそっと呟き、驚いていた。


すこしだけどその手の小説を知っている俺。


(まさか自分の身内に、最近の小説でありそうなことと同じことが起きていたとは…)


「そして俺がまだ精霊王の時に転生をして、再び俺の下にいたはずだ。ただ……下級精霊だったはずだ。かなりな数がいるからな。すべてを把握できたわけじゃないが、記憶違いじゃなきゃお前の両親は一時期俺の下で仲良く過ごしていたと思う。俺が死んでからは、二人がどうなったのかはわからない。……知ろうと思えば、ライラあたりに話を通せば…もしかしたら探せるかもしれないが。俺が把握している範囲では、地球の記憶は残っていた。息子を置いてきてしまったと話していたのを、記憶している」


カムイさんの話には、ところどころ曖昧なものが混じっている気がする。


「……それ、ホント?」


主語をつけずに問いかける。


「…どれだよ、それって」


でも、やっぱりカムイさんには効果はなかったみたいで。


「全部」


だから俺は、ひとつひとつ確かめようと思った。


「カムイが俺の両親を知ってて、俺に話をしようと思ってくれた。それはわかったよ。…でも、首をかしげちゃうとこがアチコチあって、鵜呑みに出来なくて。…でも、カムイが俺に嘘をつく必要も理由もないとも思えてさ。なら、最初から確認をした方がいいのかもって」


俺がそう切り出すと、横から視線を感じた。ジャンさんだ。なぜか俺の方を見て、優しげな笑みを浮かべていた。


「??」


その笑顔をどうとっていいのかわからない俺は、あえて言葉にしなかった。


「ね、カムイ」


「…なんだよ」


「下級精霊の数は多いのに、どうしてカムイがその中のたった二人がどこからどう来て、どうなって、その精霊の過去や環境を把握できたのさ。多分だけど、俺が思うような数よりも多いんじゃない? それこそ数千とかじゃなく、数万以上とかさ。上級精霊とかだったらライラみたいに名前がついてても、下級精霊には名前すらつかないのもいるって、俺の方で調べがついたんだけど」


「…ちっ」


舌打ちするなよなぁ。


「俺のために嘘を吐いてる? 部分的に」


「…ちげーよ」


カムイさんが、わかりやすいくらいにブスッとふてくされた顔になる。


「お前の両親の話をしてやったら喜ぶかって思った。だから、話した。俺が知ってる範囲で。っつーか、話はまだ途中なんだけどな」


「……じゃあ、続き話してよ。その後でも途中ででも、さっき俺がした質問への返事をくれる?」


俺のことを思うんだったら、あいまいな情報のままで話してこないのがカムイさんっぽいのに。


(もしも俺が両親を亡くしたことで傷ついていると思っているならば、むしろ、俺の心の傷を呼び起こすとか思って、話題にすることすら避けそうな)


カムイさんと出会ってからこれまでの、彼の俺に対しての行動や気づかいを思い出してみる。なんだかんだいいながらも、俺が傷つかないようにってことと俺の意思を尊重する形で選択していくのを見守ってくれていた感じだよな。


両親が亡くなってから、大変だったかと聞かれたら大変だったかもしれないと返すんだろう。それでも、まわりには叔母さんもいたし、子どもながらにその時々で許される範囲内で進んできたつもりだ。


金がないなってことと、とにかく少しでも早く独り立ちしなきゃってことで頭がいっぱいで、寂しいとか思う暇が思ったよりも少なかった。


勉強やバイトの合間のちょっとした時間に急に来る、なんともいえない寂しさだけは感じざるを得なかったけど。


実際の年数だけでいえば、両親を亡くしてから約10年くらいは経ってて。実の親のことを風化させるほど非情なつもりはないけど、両親を思い出しながら誰かを羨みつつ過ごす感じでもなかったっけ。


毎日何かに追い立てられている感覚の方が、リアルだったもんな。


特に社会人になって以降は、そっちの方が生々しかった。


(ああ…。でも、会社のそれはトラウマみたいなものもあったけど、両親がいなくなってからのことは結構薄れていたか。…そこまで気にすることもないのかな。カムイさんからのこの話が終わったら、どんな気持ちになるんだろう)


まるで他人事のようにそんなことを思いながら、カムイさんの話の続きを待った。


「お前と俺の出会いに似たことが起きてたんだ、二人とは。…だから下級の精霊の中でも、なんだかんだで目についてたな」


「俺とカムイとの出会いに似たこと?」


って、踏んづけただけだよね? 俺が。


「戦いの中で、俺が吹っ飛んだ先にお前の両親がいて、俺のケツの下敷きにしちまってな。変な声が聞こえて、思わず謝った。すまん! って」


下敷きか。たしかに似てるといえば似てるけど、そんなことで目につくもの? どんだけ強い印象を与えてたんだ? 俺の親たちは。


「特に母親の方は、下級にしては珍しく回復魔法が使えるやつだった。特殊個体ってやつか。その魔法がな、お前と出会った時にかけてもらった感覚と似てたぞ。今考えたら、そのあたりも遺伝が含まれてたのかもしれねえな。お前がコッチに召喚された理由は全く無関係のはずなのに、コッチに来てから得られた能力のはずなのに。…こう…上手く言葉に出来ねえが、とにかく似てんだ。あたたかさってか、光っていうか。…あぁっ。なんて言えば伝わんのか、難しいな。そのあたりは」


カムイさんが顔を歪めながら話す両親のそれは、どうしても現実感がない。俺が知っている両親の姿しか浮かばないや。


「父親の方は、その母親に自分の魔力を分けてやれるやつだった。魔力は母親の方よりも多く持ってたからな。特に何かの魔法に秀でたってわけじゃなかったようでよ。…だからか、いつも一緒にいて、母親の方が誰かに回復魔法をかける時に手を繋いでいたのを憶えている」


まあ、仲は良かった。それは同じだ。両親が手を繋いでいたのも記憶している。いくつになっても仲良しっていいなと思ってた。そんな二人の姿に叔母さんが、子どもの前でイチャイチャするんじゃないわよって笑って言ってたのも憶えている。


「とにかく、いつも一緒。ちょっとした傷程度だったら、お前の母親は呼びつけられて魔法をかけさせられていたな。その仲の良さが特に目についていたんだろうと、今なら思える」


そこまで話を聞き「…そっか」とだけ返して自分の手のひらを見つめる。


カムイさんと出会って、素材になる角をもらって、そこで別れていたならば…今はない。それと、両親とのことにカムイさんが辿りつけていなかったのかもしれないってことか。


「袖振り合うも多生の縁、か」


この言葉が、ぴったりだ。


「ん? 初めて聞くな、それ」


カムイさんが食いつく。


俺はその反応に思わず笑顔になって、すこし照れてから説明をする。


「袖って、さ。こう…普通に歩いていたら、人がいるとこだとすれ違ったりしてわずかに触れあったりすることもあるじゃない? っていうか、無人島とかでもない限り、いろんな人や獣人とすれ違うじゃない」


まずは設定を説明だ。


「あー…まあ、そうだな」


カムイさんがイメージをしたらしいのを確かめてから、俺は話を続ける。


「そうやってすれ違っただけでも、それすらも前世からの縁や因縁だったりするんじゃないかって。こうやって俺が召喚されて、みんなといろんなタイミングで出会って、こうして今は一緒にいてさ。…カムイはカムイで俺の両親とも縁があって、精霊王だった時に会ってて、その後にもまた出会って。その両親から生まれた俺とも出会って。…全部が縁がつながりあって、ここにたどり着いたんじゃないかって。つまりは、そういう話を要約すると、そういうことわざになるなぁって」


話をしながら、三人を流し見ながら噛みしめていた。


「いろいろあったけど、運命にも近かったのかも。…なんて思いたくなっちゃうな。……両親が亡くなって、独りだなって思いながら過ごしてて。バカみたいに無理しながら働いて、ここに召喚されて、賢者とか言われてさ。…あの独りの時間がどこか行っちゃったみたいに、今は独りじゃなくて。ただ…ただ…楽しく過ごせる日が来るなんて思ってなかったもん。あのままずーっと、自分に無理を強いて、認められもしないのに認められようとし続けていた可能性だってあったはずなのに。……今は、俺をちゃんと見た上で肯定してくれる人たちがいる。その存在は俺にとって…」


と呟いてから、うつむき、両手を開いて重ねた状態であてて、ほう…と息を吐き。


「大切な…大切な宝物だ。もう、この手からこぼしたくない。離したくない。心からそう思う」


そして顔を上げて、みんなへ笑いかけた。


「俺と出会ってくれて、本当にありがとう」


いつだって感謝してた。なるべく感謝は伝えてきていたはず。…でも、改めて伝えたくなったんだ。


俺がそう言うと、カムイさんは耳を赤らめながら「…おう」とだけ返す。


ジャンさんは変わらずに微笑んでいて、サリーくんは俺から目をそらして顔を赤らめていた。


「反応薄くない?」


思わずツッコめば、サリーくんが困ったようにこう呟いた。


「アペルって、時々すごいんだってば」


って。


言ってる意味が分からなくて、俺は首をかしげる。


俺に見つめられたままのサリーくんが困っていたようで、ジャンさんが間に入ってきて。


「その辺で許してあげてくださいよ、アペル」


と言った。


許すって、別に怒ったりしてないのになぁと思いながらも、「うん」とだけ返して話を切った。


「それじゃ、話を戻すか」


カムイさんがそう切り出したかと思うと、続いてカムイさんの能力その他諸々の説明が延々と続く。


合間に何度も脱線しながらも宣言通りに話は長くなり、途中でサリーくんがウトウトしはじめたことで翌日への持越しが決定した。


「それじゃ、後は各々でゆっくりとね。何か食べたいとか飲みたいとかあったら、コレ…試しに使ってみて? ここで起動してから、こう……してくと…」


ちょっとした空き時間で細工をした、俺しか使えなかったいろんなものが注文できるパネル。


それを二人に渡して、かんたんに説明をして。眠たそうなサリーくんを部屋に送り、俺は自室へと引っ込む。


俺たちがいなくなった後の掘りごたつの部屋では、カムイさんとジャンさんがまた飲み始めていた。




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