勉強会のその後に
転移陣に乗って、ほどなく…目的の洞窟前にたどり着く。
洞窟の中じゃなくて、洞窟を閉じた場所に…か。
「ここなんすか?」
「…うん。たしか…この辺だったと思うんだけど……っと、『エアーカッター』うーん…もうちょっと数増やすか。…っと、『コピー』…………っと、つむじ風も出して土を運んで…っと。ん! よっし! こんな感じかな? 4人だったらこれくらいの広さなきゃ、入りにくいもんね」
パッと見、よくある山。
たしかここだったよね? という場所を掘り、入り口を確保。カムイさんと一緒に来た時の手順を、遡ったような作業を普通にしただけなんだけど。
「…ワアー」
横から聞こえてきたのは、謎の棒読みをするサリーくんの声。
「…え。なに? なんでそんな反応されてるの? 俺」
「イヤー、ナンデモナイデスヨ」
「え? なになに? 何か言いたいことあるなら、言ってほしいんだけど」
「サリーはきっと、やっぱりアペルはアペルだなぁって思ってるだけですよ」
棒読みがさらに続いたサリーくんをフォローしたのかよくわからない謎のセリフは、ジャンさんだ。
「え? 俺は俺でしょ? よくわかんないんだけど」
首をかしげる俺の耳に、カムイさんが盛大なため息を吐いたのが聞こえた。
「サリーはいいから、早く中に入んぞ。アペル」
「ん? ほっといていいの? 大丈夫?」
「大丈夫だろ。…な? サリー」
「あ、大丈夫でーす」
「ん? 本当に大丈夫なの? この流れ」
「いいから早く中に入るぞ」
後ろ髪を引かれるようにサリーくんをチラチラ見る俺に、カムイさんがさらに急かしてきた。
「あ、うん。わかった」
カムイさんを抱いた俺を先頭に、洞窟の中へと入っていく。
サリーくんは一番最後だ。
「じゃ、外から見えないように認識阻害かけちゃうね。音も漏れないようにしなきゃだよね」
認識阻害の魔方陣を構築してから、そこに防音のものを追加で付与していく。
前回はそういうこともしなかったから、作業の最中とかを誰かに見つかっていたかもしれなかったなとあの時のことを思い出す。
作業中に塞いでおけばいいかもと思ったけど、換気のためにも見えないようにしつつも穴は塞がないでおく。塞ぐのは、また帰宅する時だ。
「その魔方陣も、そうやって重ねているってことは、自分でアレンジしたものなんすか? それとも既存の?」
サリーくんが、魔方陣をまじまじと見ている。
「基本的なところは既存といえば既存のものなんだけど、防音のものと一緒に出来ない仕組みになっていたから、その辺をすこーしだけいじったんだ。だから、オリジナルに近いかもしれないね」
「既存のものをいじった…って、どの辺の仕組みを変えたんすか?」
お? 早速、魔方陣についての勉強会開始だな。
「じゃあ、比較対象を出しておこうか。…こっちが、既存ので、認識阻害と防音のが別々になってるもの。使う時は二枚を少しずらして重ねて配置もしくは時差で同じ場所に展開になると思う。…で、俺のが…一枚で認識阻害と防音ね。間違いさがし、やってみて?」
サリーくんの目の前に、分かりやすいように三枚の魔方陣を宙に浮かせて配置する。
「魔力注がなきゃ、発動しないから。もっと近くで見てもいいよ」
正解は、フローチャートみたいに枝分かれしていく時の分岐のタイミングと、急がば回れみたいな部分がちょっとあるってのなんだけど…わかるだろうか。
「魔方陣に使われている文字が読めないものがあっても、記号と思って見比べたら、きっと違いに気づけると思うよ?」
マップを開くと、洞窟の中でカムイさんと探索した道がわかる。それと同時に、発動させた魔方陣の効果が出ているのかもマップに出ている。
(…うん。ちゃんと認識阻害と防音効果が作用している)
「カムイの方にも、マップあるよね」
「おう。共有になってんぞ、ちゃんと。…で、今回は何か目的の石でもあるのか」
とかカムイさんに聞かれたものの、実はそこまでコレっていう石があるわけじゃない。
「目的は特にないんだけど、これまで手にしていない石があれば、それが何に使えるか…ってのを調べたくてね。ピアスとかブレスレットに追加付与したいものに関して、俺の魔法だけでも付与は可能といえば可能なんだけど、保険かけて魔石とか使える鉱物があったら使いたいんだよね。その方が、持っている側の負担も少なくなりそうだし」
「持ってる側の負担って、どういう意味だ?」
人差し指で頬をポリポリかきながら、苦笑いを浮かべる俺。
「だってさ、俺の魔法って威力がバカじゃん」
加減をして設定をしていても、カムイさんのピアスから発せられる雷魔法のアレは、第二段階のでかなりな威力でさ。それで身を守れるとしても、すぐ近くでそれが落ちるんだから、影響がまるっきりないわけじゃない。
スタンガンみたいに発動したとしても、その瞬間に本人以外には影響がないようにしたい。
それに第二段階のあたりから、音とが振動とか結構なものだからね。
攻撃対象者のそばでだけ影響が出るように、ある種の結界に近いものを張るようにすれば、保護対象者には影響は出ないはず。
それのサポート的な役割を果たす石が見つかればいいな。
「なんだ、今更なこと言いやがって」
カムイさんが、ため息まじりにそう言いながら、俺の腕の中から地面へとぴょいと降りる。
「ってことは、だ。なんだっていいから、石が見つかれば…てやつか」
「うん。こんな石? って思うようなものでも、全部回収していきたい。組み合わせ次第で、何かに使えるかもしれないから。その辺の組み合わせをじっくり考えるのは、家でもできるし」
「石だけか? 今回の採掘は」
「うー…ん。ミスリルみたいなものが他にもあればいいなと思ってる。俺用の武器、自分で何か考えて作ってみてもいいかなといいかなって思いはじめてね。魔法が使えない場所がないとも限らないから、そういう時に相手の動きを止められるとか、相手の意識を別のものに向けさせられるようなものとかあったらいいかなって」
と、俺がカムイさんに話していると、ジャンさんが何度もうなずきながら微笑んでいた。
「そっち方面なら、俺がアペルが思い浮かべたアイディアを形にするサポートが出来そうな気が。魔法自体が使えない場所でも、武器その物に付与を与えておいたものは有効になっている場所も結構あるんで」
「あ! じゃ、こういうのは? 麻痺する程度の毒を仕込んだ針を飛ばすもの。相手が動いたら外れちゃう可能性があるから、最初に向けた相手にロックオンしたら刺さるまで追尾するとか!」
「…え」
「だって、さ。俺ってそういうの今までやってきたことないから、相手に動かれると当たらない針ばかりになりそうで。相手に動かないで! って言って、待ってくれるわけないしね。…なら、追いかけた方が当たるし、俺も不安は少ない! そういう設定を針か針を仕掛ける武器に付与しておくの。…どう?」
俺が某アニメを思い出して、それが追尾型だったらと思ったことを思い出して、この世界でなら可能なのかもと口にしてみただけなんだけど。ジャンさんの反応は、顔をヒクつかせて困った顔つきになってるだけで。
「どう…って」
なんて返していいのか、悩んですらいるし。
「俺、おかしなこと言ったかな。武器に携わってきた人たちからしたら、おかしなことを言ってるようにしか聞こえない…かな」
「いや、そうじゃなくて」
「俺って、そういう方面に知識も経験もない上に、自分にその手の技術もないってことも自覚してるつもりでね? だから…なんとかそれをフォローっていうかカバーできる仕組みを構築できたらって思っただけなんだ! でも、何かおかしいって思うことがあるんなら、是非ともご教授願いたいっていうかさ!」
身の丈に合わないこととか思われてるのかなとかいろんなこと考えちゃう。ジャンさんが、何も言わないから…。
「それとも…教えるの、やっぱり素人の俺が相手じゃ…知識と経験差がありすぎて……ダメ?」
ジャンさんが口にしにくくて言ってくれないのなら、俺の方から言うしかない。
「お互いに、無理だって思うことは言い合おうよ! お願い!」
もっと近くなりたいと思える相手だから、”言いにくいこと”を作りたくない。それぞれの家の事情とか言いにくい意味合いが違うものは、いつかきっと話してくれるとしても…だ。
「違…っ、そうじゃ」
お願い! と声を少し張って伝えた俺に、ジャンさんは右手のひらをひたいと目が隠れそうな位置にあてて、そのままゆるく頭を振る。
「違うんですよ、アペル」
本当に困ったように。
「……ごめん。無理言った自覚ある。ジャンにだっていろいろ都合あるんだろうにさ…」
気づけばジャンさんにかなり近い位置まで近づいていた俺は、二歩ほど下がって距離を置こうとしたんだけど。
「待っ…!」
あともう一歩下がろうとした俺の手を、ジャンさんがパシッとつかむ。
「誤解させたみたいで…すみません。お願いですから、離れないでください」
そう言って、俺をさっきの位置まで手を引いて戻そうとするジャンさん。
「だって…」
その距離が現段階での、俺とジャンさんの距離なのかもと思ったからだったのに。
焦って急に距離を詰め過ぎたなって思ったんだ…。
「そうじゃなくて、ちょっと話を聞いてもらっても?」
と言ってから、俺の手をそっと離して、つかんでいた場所を何度か手で撫でた。
「痛くはなかったですか? 咄嗟だったんで、思ったよりも力が入ったかもしれなくて」
さっきまでの目とは違って、今度はどこか不安そうな目をしているジャンさん。
「大丈夫だよ、全然痛くもなんともないよ」
俺の手を撫でていた手をそっと外し、手首をプラプラと軽く振ってみせると、ジャンさんはホッとした顔を見せた。
「あのですね…。ちょっと驚きすぎて、言葉が出なかった…が正解です」
そうしてジャンさんが話し出したのが、俺にとっては意外な感情で。
「驚き…? え? 何に?」
首をかしげていると、カムイさんの笑い声が響き出す。
「ジャン。こんなんでいちいち驚いてたら、アペルと一緒になんていらんねぇぞ」
とか言って大笑いしているカムイさんを見て、ジャンさんが小さな目を細めてから口を尖らせた。
「わかってますよ、そんなこと。……でも、斜め上の発想をされたり、自分が過去にこんなのがあったらと思っていたものについて実現可能だと言わんばかりに話されて…驚かない方が無理でしょ」
ここでまた意外な話が飛び出した。
「ジャンも、そういうのがあったらなって思ってたことあるの?」
なんだか嬉しくなって、思わず手を取る。
「他にも何か考えていた武器とか魔法とかあったらさ、絶対に隠さないで言ってね! 出来るかどうか確認してみようよ。一回じゃ実現しなくても、他の方法考えるとかさ! 1人よりも2人、2人よりも3人…ここには4人もいるしね? 4人が知恵や知識、アイディア…無理だろうってことでも出してみたら、どれか実現可能なものにぶち当たるかもしれないよ?」
嬉しくなって、取った手に力を込める。思いの強さが伝わればいいと願いながら。
俺がそう言えば、一瞬ポカンとしたように口を開いてから、まばたきの間にふわっと笑んで。
「そう、ですね? それは楽しみだ」
と言いつつ、俺の手を握り返してきた。
互いに自然と笑いあってて、それに気づいて照れ笑いになって。
「……気持ち悪ぃな、お前ら。野郎同士で」
カムイさんが、呆れたようにそう言うまで照れ笑いの応酬が行なわれていた。
…と。
「わかったぁあああ!」
すこし離れたところから、サリーくんの声が聞こえて。
「…あ。忘れてた、そういえば」
思い出して、サリーくんのところへと駆け寄った。
「さっきの間違い探し、わかったの? サリー」
魔方陣を挟むようにして、サリーくんの向かい側に俺は立つ。
「全問正解かはわかんないっすけど、まずは…ここ」
サリーくんの指先が魔方陣の端の方を指さす。
「魔方陣の輪郭部分。内側に行くにしたがって、一枚で済んでいる方は外に太めのメインの輪郭になるのがあって、中に行くほど細い線が足されてる。二枚に分けてる方は、太いのしかない。そこが違う。…………そこに属性違いの魔力を流す時に、ここで分けておくと反発しない。線一本につき一属性、みたいな? で、中心から外側へと三本縦線があるやつで、それぞれの属性違いを同時に発動するつなぎの役割を与えてる…とか? っていうか、間違い探しっていうよりも、俺はそういう役割で構成されていたらいいなーって思った思いつきの方が大きいかも。だから、多分正解じゃない!」
不正解です! と言ってるんだろうに、あまりにも楽しげに言うもんだから、俺はつい…。
「あっはははははは。合ってませんって、そこまで堂々と…くははははっ」
大笑いをしてしまう。
希望的観測ってことだよね? サリーくんが言っていることは。ちゃんと読み解いたわけじゃないから、正解じゃない…と。
「面白いなぁ、サリーって」
「そっすか?」
「うん。面白過ぎて、これから毎日飽きなさそうな気がしてきた」
「お! それは嬉しいっす。でも、本人はいたって真面目なんすけどね」
なんて言うから、若干申し訳なく思いながら、目尻の涙を指先で拭ってから俺は答えた。
「でもね、残念だったね」
と。
「…え。それ、どういう?」
俺の言葉に、今度は顔を曇らせるサリーくん。尻尾がへにゃりとうなだれたように垂れている。
「だって、正解じゃない! って言い切ったじゃない。サリーは」
「はあ、まあ」
と、まだ元気なく返すサリーくんに、俺は言葉を続けた。
「ほぼ正解だよ、残念ながら」
ニッコリ、笑顔で。
「え? はぁ?」
「他に気づいたことは? まずはって言い方をしたってことは、他にもあるんでしょ?」
「え? あ、うん。えっと…さ」
そう言いながら、気づいたことをどんどん口にしていくサリーくん。
武闘派かと思いきや、こっちでも能力発揮出来ちゃいそうな感じだ。サリーくん次第だけど、サリーくんが使用可能な魔法とか魔方陣とか、無理ない程度に一緒に構築していくのも可能かもね。
「…うん。思ったよりもいろんなことに気づいてたんだね。さすが!」
「…そういう風に言われ慣れてないから、すごく照れるって」
「そう、なの?」
「なの!」
「…じゃ、これから俺がどんどん褒めてくよ。いいとこはいいって、ちゃんと伝えるべきだって思うから」
俺がそう言いながら、今度はサリーくんの横へと近づいていく。
「ってことで、答え合わせするね?」
三つの魔方陣を指先で指し示しながら、ここはこうで、こっちにはこういうものがないのを、こっちの魔方陣ではこれを補って、逆にここは分断させて…とか一つずつ説明していく。
魔方陣をまじまじと見ながら、真剣に説明を聞く姿に顔がほころぶ。
(あの後任の人にも、こんな風に話が出来たらよかったのにな)
内心、そんなことも思い浮かべながら。
「なるほど! ってことは、途中でどっちかの効果を切りたい時には、むしろ二枚に分けて展開させた方がいい…ってことかー。時限式に切れるようにも出来るんすか? たとえば防音の方だけ時限式で、5分経ったら消えるとか」
「可能だよ。ただ、時限式にするんだったら、本当にその時間までにやるべき作業が完了するっていうのが前提でしょ? 完璧にそれが守れるなら、時限式にするのもいいんじゃないかな? そのやり方と、魔方陣のどの部分に仕掛けるのがいいかも、今度教えるね」
「了解っす! たっ♪のしかったー♪」
本当に楽しそうなその声に、三つの魔方陣を消す。
俺とサリーくんのやりとりを、カムイさんとジャンさんが何も言わずに黙って眺めてて。
「お待たせしましたー」
「さ、行きましょ!」
2人揃ってがそう言うと、カムイさんがぴょこんと跳ねてこっちだと示してきた。
その後をジャンさんがついていく。
俺とサリーくんはその後に続き、歩きながらカムイさんの動きを追った。
途中でカムイさんは何度もキョロキョロしながら、山にあるだろう素材になりそうなものを探してくれていた。
思ったよりも奥へと進んでいくカムイさん。
すこし離れた場所から付いていってたら、その姿が見えなくなった。
その瞬間に、遠くで声がした。
「う゛ぁ゛? な゛!? アペ…」
叫び声に聞こえたそれが、途切れた。
マップを出すと、さっきカムイさんが曲がっただろう箇所で点滅している。
あわてて駆け出して、カムイさんが曲がったはずの場所を曲がろうとした俺の前に、ジャンさんの腕があって。
「それ以上、進まないでください」
俺を止める。
「…カムイは?」
マップにはカムイの居場所はここだって出ているのに、姿がどこにもない。
「それが、目の前でいきなり消えたんです。だから、ここから先に進むのはよく調べてからにしましょう」
コクンとうなずいてから、一度だけ呼んでみる。
「カムイー! ここのどこかにいるの?」
大きな声で。
でも声が向こうに消えていくだけで、反響すらしない。
魔法か何かがかかってるのか、それとも落とし穴的な何かかな。
俺の後についてきていたサリーくんも、ジャンさんが止める。
「魔法的な方は俺が確かめるから、そうじゃないとこ任せてもいい? 2人に」
うなずいた2人を見てから、カムイさんが消えたんだろう場所を調べていく。
なんだろう……、これ。
魔法的なものはないんだけど、近いものがある。魔法だけど魔法じゃない? え? どういうこと?
何に反応したのかな。なんでカムイさんにだけ反応した?
こういう仕掛けでわかりやすいのは何だろう。
何かがぶつかる。何かをした時。魔法を使うとか何か? でもカムイさんは、魔法まるっきり使えないわけじゃないみたいだけど、使うようなことがまずない。じゃあ、それは違う。
ベタなやつでいえば、重さ? でもそれって、一定の重さ以上で落下するとかそういうのじゃない?
カムイさんで落下するなら、俺だってジャンさんだってサリーくんだって、全員落ちちゃうよね。
俺が乗るとか実験していたら、何やってんですか! ってジャンさんあたりに言われそう。
「…なら、仮説を立てて…」
土魔法である程度の重さの塊を置く。風魔法にのせて。
「…アペル? 何をやってるんですか」
「いや。ほら…重さで反応する落とし穴とかあるかなぁって思ったんだけど、カムイが落ちるなら全員落ちちゃうかな? と思ったんだけど、なんとなくそれも違う気がして実験的な? どの重さで反応するかなって。…そっちは何か気づいたことでも?」
俺がそう聞くと、ジャンさんが呟く。
「床というか地面がね?」
「地面が」
「キレイすぎるんですよ」
「キレイすぎる」
俺はその言葉を繰り返す。
「そう。他の方へと枝分かれしている道は、何かしら石とか草とか落ちていたり生えているのに、ここだけ何にもない。それは逆におかしいな、と」
「じゃあ、俺が想定しているのがもしも合っていたら、落下していれば地面にあるものは一緒に落下している…みたいなことにつながるのかな」
「合ってるかわかりませんが、可能性はありますね」
2人でうなずきあって、俺はやりかけていた作業を続ける。
「最初にサリーと同じ体重で置いてみるよ」
「…把握されてるし」
「ごめんって」
俺が予想していることが合っているのなら、重い方から順にカムイの重さへと変えていけばいいはず。それに先に重い方からやっていけば、土の塊も削っていけばいいだけの話だからね。
「…変化なし。じゃあ、次は、ジャンので………こっちもか。じゃあ、次は俺……。無反応か」
ふう…と息を吐き、たしかこれくらいだったなと思われる土の塊まで削っていく。
と、かすかにカチリと音がして土の塊が目の前で消えて。
「え?」
俺が声をあげたのと、「誰だ! んなもん落とし…」カムイさんの驚いたような怒ったような声が途中まで聞こえたのは、ほぼ同時だった。