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どこまでも深い黒



痛みとほっこりさは、共存しないはずだ。


――のに、今日の俺の目覚めはそのどちらもが与えられたもので。


「痛いのに嬉しいって、なんなの? もう!」


痛みの残る頬を手のひらで撫でながら、中途半端な怒りを露わにしつつ起き上がる俺。


「ふぁあ…。悪かったって、アペル」


文句を言う俺に、ちっとも申し訳なさそうに見えない謝罪をしながら毛づくろいのような仕草をするカムイさん。


「痛いのに癒される感触なんて、卑怯にもほどがある」


「んなこと言われたってなー、別に痛くしてやろうと思ってたわけじゃねえし。俺のこの身なりで癒されるとか勝手にぬかしてんのもお前くらいだぞ? アペル。……おい、聞いてんのか?」


打撃的には痛かったけど、もふっと蹴られたそれはそれで心地よかったんだ。


「まーたウットリしてやがる。おーい……そろそろ帰ってこいよ、アペル」


胡坐をかく俺の膝を、そのもっふりした手でポンポンと叩くカムイさん。


「あぁ…今日も天国の感触。カムイ…好き」


「はいはい、お前が好きなのはこの毛並みだけだろうが」


「違うって」


「はいはい、わかったわかった」


傍から見たらバカげたやりとりも、今じゃすっかり日課のようになっている。


「さーて、と。朝ごはんを食べたら、ひとまず向こうの様子を仕掛けておいたものでチェックしてから、状況次第では直接出向こうか」


そう話を切り出した俺に、カムイさんはうんうんとうなずいてから嬉しそうに呟いた。


「お? 飯、食うのか? …なら『人化』…っと、よし。何食わせてくれるんだ? 飯だ、飯」


ウキウキしているのが、見ているだけで伝わってくるよう。


「じゃあ、よくある朝ごはんってやつを出すよ?」


そう言ってから、まずはご飯だな! と白米好きだった父親を思い出した。母親は炊き込みご飯の方が好きだったみたいだけど。


ご飯に、焼き魚…は、やっぱり鮭の塩焼き。それと豆腐とわかめのお味噌汁。小松菜とツナの和え物に、漬物も欲しいな。…納豆も食べたいけど、今度にしよう。いきなりアレを出してみて、カムイさんの反応を見るのが怖いかも。


納豆の代わりってんじゃないけど、長芋の千切りしたものを出そう。麺つゆをかけて食べるの、好きなんだよな。すり下ろしたのもいいけど、千切りの方がシャキシャキと音がして好きだ。


「…っと、はいどうぞ!」


同時に手をあわせて、最初に手をつけたのは俺が味噌汁でカムイさんは焼き魚。鮭をほぐして、ご飯の上にのせて、ご飯と一緒に口の中に。


「…ん! 塩加減がいいな。その茶色いのは、これにはかけなくていいのか?」


しょう油のことを指しているようだけど、今日の鮭はしょう油なしでいけそう。


「俺はかけないよ、ちょうどいい感じの味だから。…こっちには、この麺つゆっていうのをかけてね」


「…お? なんだ、これ。混ぜれば混ぜるだけ、透明な糸引くぞ? ………ぬるぬるすんな。…ったら、口ん中がうるせえ。シャキシャキ言ってるぞ。で、ここに…米! …ぶふふ。うめぇな、これは。……で、この熱いのを…ん、…ぷは。おー? 味噌汁っての、いい匂いもするし美味ぇな。く…っ、よっと…ん? 白いのが摘まめんぞ?」


「じゃ、スプーン使いなよ。はい」


「くっそ…。そのうち摘まめるようになってやる。…うお。口に入れた瞬間、崩れたぞ。やわらかすぎねえ? これ。お前よく摘まめるな」


ああ、豆腐のことか。


「そりゃあ、慣れてるからね」


とか言いながら、わざとらしく箸で摘まんで口に入れる。


ふ…と、カムイさんの視線が一瞬だけ上にズレてから、口角が上がった。


「今、何色?」


これを聞くのは、何回目だろう。もう憶えていないくらい、聞いたんだけど。


「あー…黄色」


「黄色、黄色…かぁ。……どういう原理なんだろな、結局」


息を吐きつつ、首をかしげる俺。


「なんとなーく、こういうことか? ってのは思い当たるけどな。…アイツらが言わねえことは、俺から言うのもアレだから予想も口にするつもりねえけど」


「ふふ。カムイはカムイ…だね」


義理堅く、優しく、賢く、時に厳しくて、あたたかい。


「なんだそりゃ」


きゅうりの浅漬けを食んでポリポリいわせながら、楽しげに朝食を食べるカムイさんを鑑賞する。


「俺も一緒に見るからな、さっき言ってたやつ」


朝食もそろそろ終わりそうな頃合いで、カムイさんが話を切り出した。


「あ、うん」


短く返しつつ、俺はぬるめのほうじ茶を出す。


熱々のは、また今度。気分的にゆっくりできない時は、すぐに飲める温度がいい。


カムイさんも気に入ってくれたようで、ちょっとずつ飲んではハァー…と一口ごとに息を吐いていた。


『アペルさん。起きてますか?』


そろそろ監視カメラのようなそれを確かめようとしたタイミングで、ナナさんの声がした。


スピーカーに切り替えて、「おはようございます」「お? ナナか」と声をかける。


…と、『朝から悪いんですけどね? 昨日の広場まできてもらっちゃても、いーすか?』なんて申し訳なさそうなセリフが聞こえてきた。


「なんかあったんですね?」


『はい。なんかというか、アクションあったのがいるので、相手をしてもらえたらいいなという話になりまして』


「イチさんはどうしたの? この手の連絡ったら、彼のが連絡してくるのに」


俺がそう言うと、ナナさんが乾いた笑いを浮かべてから呟いた。


『例のあのバカの後処理が、さっきやっと終わったところなんで。さすがに可哀想かと思って、俺が連絡しときますって執務室で休ませてます』


ああ…元・上司のアレか。


「手間かけるねー」


『いや。アペルさんが悪いわけじゃないんで、気にしないでいーっす。バカはバカだなーって感じだから』


なんて言葉を聞いて、あの言葉を思い出した。


「俺がいた場所の言葉で、バカは死ななきゃ治らないってのがあるよ。…死んで治るもんなのか、定かじゃないけど」


『ははっ。無理でしょうね』


そんな会話を数回交わしてから、準備ができ次第すぐに向かうと約束をして通信を切る。


「アクションがあった、か。まあ…思ったよりも早かったな」


「…うん」


俺が監視カメラもどき以外にあの連中に仕掛けたのは、元の世界でいうところのVRっていったっけ? 実体験じゃないけど、体験しているような仮想現実を体験させるやつ。


テレビでそういうのをアナウンサーがやってて、きゃあきゃあ騒いでたのを見た記憶がある。


目の上にそのVRのなんだっけ…ゴーグル? メガネ? その代用品の魔方陣を貼りつけた。


街中浸水していく。ひどく濁った水がゆっくりと自分の足元から上がってくる。足首、膝…と来た時点で水のわずかな流れにすら、体が揺らされてグラついて。…ってとこまで、視覚的効果のみならず体感も出来ちゃう上位版。


自分らが無関係の街の民に味わわせるところだったことがなんなのか、とくと味わえ! と思いながら仕掛けたものだ。


ついでに、その状態に魔方陣によって起きる可能性があったいろんな攻撃も、当たらないけど近づいてくる…って程度の体験が出来るようにもしてあったんだよな。


そのどっちかが奴らに反省を促せる材料になってたら…なんて意地が悪いことをと、自身を責めつつ構築した魔方陣だ。


とかなんとか目の前にいない彼らを想像して、たられば論を脳内で巡らせていたところで答えはまだ出せるはずもない。


「行けるか? アペル」


昨日と同じ白い生地に刺繍つきのローブを羽織って、小さく息を吐く。


「…うん、行こうか」


「今日はおんぶしなくてもいいのか?」


カムイさんが、ホーンラビットの姿でこっちに半身をよじりながら背中を示してくる。


「その格好のカムイに乗っかったら、潰れちゃうでしょ」


あははと笑いながら、俺はしゃがんでから手を差し出す。転移のための手つなぎだ。


「じゃあ、人型だったらおんぶかよ」


の声に、「さぁね」と言いながらつないだ手に力を込める。もふっとした感触に口角を上げて、俺は転移した。


――――場所を移したその先は、昨日の人気(ひとけ)がない場所。そこからはカムイさんを抱っこして、あの広場まで戻る格好で進んでいく。


『ナナさん、広場のどこに行けばいいの?』


ナナさんに話しかけると、近くにある建物を伝えれば迎えに来てくれるという。


すぐに本当に飛んできたような速さで迎えに来たナナさんについていき、(くだん)の相手の前へと近づいていく俺とカムイさん。


「イチさんももうすぐ来ますって、連絡がありました」


「そっか。…寝てないんじゃないの? みんな」


見張りに立っている獣人さんが、欠伸をかみ殺しているのがわかる。


「まあ、数日間の話でしょうし。ちょっとくらいなら何とかなりますよ。最長で一週間くらいまでなら不眠不休も行けると思うんで」


「それはダメだよ? 経験者がいうんだから、絶対にダメ! 命が縮んじゃう」


人差し指を立てて、いいかい? という感じで言い聞かせる。


「…ふ。母親みたいっすね、アペルさん」


「母親? やだよ、それは」


「ってか、経験者って穏やかじゃないっすね。アペルさんこそ、もうやっちゃダメっす」


「わかってるよ」


「ナナ。それは俺が絶対にさせねえから、安心しな」


「そうだった。カムイさんがいたら、絶対にやらせなさそう。…頼みましたよ? カムイさん」


「おうよ。任せな! ナナ」


とか話をしているうちに、ある一つの檻の前に到着した。


ここからは、ナナさんと親しげな空気は醸し出さない。


「謝罪をするから、この状態から解放してほしいとか」


「…そ」


短く返し、へたり込んでいる相手の目線に合わせるように、俺はしゃがんだ。俺の腕から地面に下ろしたカムイさんが、小さな目を細めて鼻をヒクヒクさせながら相手を睨みつけていた。


一旦、魔法を解除。魔方陣はそのままで、状況次第じゃまた行使してもいいように。


「…謝罪の内容は?」


昨日の態度をそのままに、偉そうな態度で目の高さは同じだけど気持ちは上から目線で。←…を、心がける。


「お…俺たちが…悪かった。悪かったから、だから…もうやめてくれ」


涙や鼻水の跡で、顔が汚い。鼻水の跡がカピカピになってる。


「何がどう悪かったのかってわかってて謝罪してるの? その謝罪は、誰へ向けてのものなの?」


多分、これから全員に問いかけるだろう質問。


「悪いことをした…からっ。だから…っ」


「うん、聞いてるよ? 悪いことをしたんでしょ? 誰に対して、何をしたの? どうだから、こんなことされちゃったの?」


ゆっくりと、まるで子どもに言い聞かせるような速さでしゃべる。


「だから……魔法で、天気…と、他もやろうとして」


「うん。…それで魔法が使われたら、どうなってたんだろうねー? 魔法はイメージが大事でしょ? 想像はしてたよね? どの程度の被害ってあたりまで」


「街……壊滅」


ああ、そこまで想像出来てたんだ。っていうか、それくらいのものを仕込んでいたってことね? レベル的に。


「壊滅ねー。街が壊滅してもいいって思ってたんでしょ? バカ課の連中は」


「バカ、課」


「うん、魔法課なんて言わないよ? バカの集まりじゃん。魔法の使い方を知らないんだからさ」


「そんな…こと、は」


使い方を知らないはずがない。んなこと知ってるよ。俺が言ってるのは、本当の意味での使いどころという意味での使い方だ。


そんなことはないと言おうとした彼のその言葉に、チリッとイラついて言葉をワザとかぶせた。


「知っててやったんなら、バカ課かクズ課のどっちかでしょ? アンタらがいた場所は。街が壊滅するってわかっててやったんだよね? 自分らだけは逃げおおせて、騒ぎのことなんか無関係ですーって感じの顔をして。その後も魔法と戯れて、楽しく過ごしました…とさ? って、自分らだけ平和に過ごせる未来を描いでいたんだよね?」


「そこまでは」


「そこまで…っていうけど、壊滅って言ったよね? 自分で。…なら、平和じゃないじゃない。そんな状態で、笑って過ごせるような誰か、いると思える? 壊滅ってことは、住む場所も食べるものも飲む水も簡単に手に入らなくなる。それまでとは違う、何もないところから生活を始めなきゃいけない。……自分がその枠から外れるなら、別にいいかーって思えてたの? …なら、異常だよ。視野、激・狭めじゃん」


「そん…っ」


顔色を変え、さっきよりも青白くなって言葉を失った女の子の姿をした彼。


パッと見、女の子をいじめているみたいでイヤだな。俺、悪者じゃないもん。説教してるだけだもん。


ややしばらく彼を見つめていると、そのうち彼は俺から目をそらし。…という状況を過ごしてから、先に話を切り出したのは俺の方。頃合いかって思ったからさ。


「で? もう一回聞くよ? だ・れ・に・な・に・を・し・た・か・ら・あ・や・ま・る・の?」


わかりやすく、区切りながら問いかけた。


ガバッと顔を上げ、何かを言いかけ、ハク…と息とも言えないものを吐くようにわずかに口を動かして、でも言葉は発さず口を真一文字に結んだ。


口を噤んだまま、彼が大粒の涙をこぼしていく。肩先がヒクッヒクッと震え、声をあげて泣くのを堪えているのがわかった。


「――言ってみて? 今、自分の中にある言葉」


静かに、まっすぐ言葉を送る。今度こそと、願いながら。


「ご…ごべん゛な゛ざい゛ー」


一度こぼれてしまえば、あとはその勢いに任せるがまま…言葉が涙と一緒にこぼれていく。


「街のみ…んな、危、険な目に遭わせ……ようとした。グスッ…。自分たちのこと…だけしか、頭になかった」


やれやれって思うのは、こういう時なんだな。


指先をわずかに動かして、VRの仕様のものを外して、彼の元の姿に戻して…っと。


魔法を使えなくするか、魔法自体を忘れさせるか…は、全員のこれからがハッキリした時点でまとめて片付けよう。


「彼を別の場所に収監してくれますか」


ナナさんの名を呼ぶことなく、命ずるだけに留める。…と、察しがいいナナさんも合わせてくれたよう。


「了解です。……ん」


たった一文字だけ発したら、近くにいた部下らしいのがわちゃわちゃ集まってきて、開錠した檻から彼を連れていなくなった。


「まずは、一人。……さーて、今日一日で何人までまともな話が出来るだろうね? カムイ」


「さぁな。最初だけがよかったよかったで、おしまいなパターンもあるからな?」


カムイさんのその言葉に、ふ…と苦笑いを浮かべてこう返した。


「知ってる。過度な期待は、しない方がいいってことくらい」


変わらない人は変わらない。変われない人も変われない。変わりたい…と気づき、変わる必要があると一歩踏み出そうとする人だけが変われるんだ。


あの会社にいて学んだうちの一つがそれかもしれない。


今の彼の後に続き、他の誰かが自分たちが犯した罪に気づいて、早めに声をあげてくれたら…。


そう思っていたのは、コッチの勝手で。そして、俺が持つ甘さで。


「…暇だな、アペル」


「だね? カムイさん」


ある程度の時間まで広場にいようと思っていた俺の願い空しく、初日に謝罪をしてきたのはたった一人。


二日目になって5人が我慢できずに声をあげ、その半分の謝罪は受け入れられるモノだった。


最後の最後まで謝罪の謝の字すらなかったのは、あの課長。バカすぎると思って、名前を付けました。バ課長、と。


バ課長の檻の前に行き、盛大にため息をつく。


「自分がしでかしたこと、まだ理解できていないの? 自分が先導して間違ったことを推し進めて、部下をこんな場所に閉じ込めることになって。……誰が一番悪いのか、反省が必要なのか…本気でわかってないの? …ねえ」


淡々と事実を伝えるけれど、ムスッとした表情のまま「やかましい」とだけ返してきた。


「自分らがしようとしたこと、俺がなかったことにしていなきゃどうなっていたのか…って体験したよね? 恐怖は感じなかったってこと? 自分らが仕掛けた魔方陣がちゃんと発動していたら、どんな目に遭ったか…体験したんだよね? その態度を取れるってことは、恐怖でもなんでもなかったの? 平気だったってこと?」


改めて、何も感じなかったのか…と問いかけてみた俺に、バ課長が返してきたのはこんな言葉だった。


「どうして……なんで、どいつもこいつも俺の凄さがわからんのだ。見ようとしなかったんだ。なぜ、褒めもしなかったんだ」


まるで、子どもが親に褒めてよと駄々をこねているのと大差ない文句のようなそれ。


「あの魔方陣の、どこをどう…褒めろって?」


感情を露わにし過ぎないようにと淡々とした口調で話す俺の声が、ひどく遠くで聞こえている気がする。…どうして?


俺のその問いかけがよほどお気に召さなかったのか、まくしたてるように一気に吐き出す。


「どこを? ……どこもかしこもだ。アレは、芸術品だろう? 多才な攻撃魔法の後には、嵐の効果を増幅し、雨水で街のすべてをキレイさっぱり流して無に帰すことで終わりとなる。見る目のない阿呆どもをどこぞへ流してしまった後に残るのは、本物の価値がわかる者だけ。……素晴らしいだろう? この意味が分からない輩は、二度と魔法を語るべきではない」


体を拘束していなきゃ、身振り手振りでもつけていそうな語りっぷり。


やらかしかけたことの罪の重さを、コイツは理解していない。自分への評価がすべてで、魔法というものが自分を高めるアイテムで。


俺があの孤島のような作業室で黙々と独りで戦っていた時、誰も…俺を評価なんかしてなかった。


気づいててよ。察してよ。…とか思ったことはなかったはず。


そんかし、知っててよ…とは思っていた気がする。


誰もが逃げているその場所で戦う俺という存在だけでいいから、と。


評価されたくない人間なんか、どこにもいないさ。きっとね。


でも…だからって強制的に評価をしろと、他人の命も人生も巻き込んで訴えかける手段は認められないし、褒められたもんじゃない。


「…清濁(せいだく)(あわ)()むなんて、無理じゃん。うざったいな、コイツ」


ボソッと俺が呟いたらしいけど、無自覚で無意識。


すぐそばでイチさんもナナさんも、ナンバーズとして俺の様子を見てて、カムイさんも2人に近い安全な場所で事の成り行きを見守ってくれていた。


ムカついている自分を自覚していたけど、頭がカァッと熱くなるって感覚はなかった。不思議なほどに、心臓の音も穏やか過ぎるくらい。


そのバ課長をまっすぐな視線で見下ろす俺の姿を3人が見ていて。


「…漆黒?」


「黒だな」


「コレ、過去の資料にない色です。イチさん」


闇の色よりも深い黒に染まった俺の髪色と、顔から表情が抜け落ちている様子に違和感を抱き。


「……アイツの逆鱗ってやつに触れちまったみたいだな」


いつもとは明らかに違う空気を纏う俺に、3人ともかける言葉を失っていた。



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