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第十一章 『御前会議』 その3



「・・では、そういった廃墟もどこかに通じるているんですか。・・何というか,、先ほど、カイ殿が説明なされた〝迷路〟の格子扉みたいですな」

「扉・・扉・・そのドコデモ扉、全部開けたらどうなるんだ」

「それこそ、迷い込みそうですな・・」

「・・それは果たして・・反逆の徒の巣窟か、亡者の群れの溜まり場か・・と、いうことですかな」

「そんなの、どっちもゴメンですよ・・」

「何というか・・悪霊の墓を暴くようなもんか」

「国そのものが、墓の上に建立されたとも言えますな・・」

「それも、主神に刃向う輩の・・」

「しかし、『月の王朝』は万世一系・・前王朝を倒した話は聞きませんが・・先史時代はともかく」

 

 その言葉にハルはふと、ジュメ大使が嵌っていたと云うシュメリアの古代史とは・・という思いが、心に過った。シュメリアの国史は、「月の部族」による建国神話から成っている。当然、その傍流たるミタンに於いても、それは同様だった。

 ・・シュメリアに点在している多くの禁足地・・記録にない先史の時代の・・。


 そう思いつつ、ふと、ハルの視線はこの会議に臨んでいる『精霊の森』の女王に向いた。

 リデンはずっと無言のまま、落ち着いた様子で列席者の議論を見守っている。時折出る、トンデモ発言に微笑むくらいで・・。

 永遠の時を生きるという、森の精霊・・。果たして、麗しき精霊の女王陛下御自身はお持ちなのだろうか・・。そんな記録に刻まれていない・・〝時〟の記憶を・・。


「・・では、一王朝と云うより、我々の住むこの世界の乗っ取りを、企てているのか・・」


 ふと我に返ると、議論はさらに白熱していた。


「・・ちょっと、話がデカくなり過ぎでしょ」

「そうですよ。まだ、実際には何も起こってないんですし」

「確かに、妄想が過ぎましたな・・」

「自分達で、勝手に『迷宮』に入り込んでしまったようですね・・」

「では端的に、実際に起ったことのみを並べると・・そのシャラは、『月の宮殿』の主に納まったことを手始めに神殿をも手に入れて、その『魔月の扉』を開けるべく既に二ヵ所を抑えている。そして現在も、その妄想とも思える扉を抉じ開けるべく、着々と準備を整えいると・・」


 その言葉に、それまでのやや飛躍した話に些かポカンとしていたテンドや村長を初めとする『春の森』の代表達の表情がとりわけ引き締まり、緊迫感を帯びた。


「・・あの山に・・そんなものが・・」

「それがもう・・ここまで、地下道で繋がっているんですか・・」


 これまで付近の山や森で、僧服を纏った身元不明の遺体が何件か見つかっていた。その幾つかの首許には、何か獰猛な獣にでも襲われたと思われる跡があった。

 しかし、この森にはそんな危険な獣は棲息してはおらず、不審な思いが募っていたところだった。


「それで、あのシュメリアの王位転覆を謀ったと云うその目的も、全ては、その扉を形作るために王宮が必要だと云うことなのか」

 やっと議論が現実味を帯びてきた。

「では、その残りの一か所、『月の王宮』とは、文字通り現王宮を指しているということで良いのですね・・」

「そこのところは、まだハッキリとは言い切れません」

「ところで一つ疑問なのは、何故シャラは、すでに婚礼は無効となっておられるミタンの姫君を誘拐したのでしょう」

「・・それなのですよ、理由もなく誘拐するはずもありませんから」


 それから議題は、『ミタン王女誘拐及び皇太子一行殺害未遂事件』の首謀者シャラの拿捕、及びペル姫救出のための作戦に移り、カンの描いた神殿内部と周辺の地図を見ながら会議は進んだ。


「何よりも最優先されるべきは、無事、姫君を救出することです」

 

 シャラの奇妙な計画の一端が明らかになった今、俄かに小さな姫君の安全に対する懸念が高まっていた。そのために、まず地下道から少人数で神殿内に潜入して、ぺルの行方を捜すことにした。

 その間、増員したミタン軍を密かに神殿正面の近くと、この『春の森』に分けて配置させる。


「・・そして姫君を無事に救出した後に、こちら側から密かに侵入して・・正面から脱出する者達を挟み撃ちにして、一連の事件の首謀者シャラを探して拿捕する」


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