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誓って賄賂などはしておりません

「おーーい、やっと追いついたぜ。お前さん無茶苦茶だな」


「おおっ、ジークじゃねえか。随分と前に来たな、今回のレースは後ろでやり過ごすって言ってなかったか?」


 俺の後ろから来たのはジークだ。


 ジークと酒場で話した時には、今回のレースにはそこまで力を入れていないから、名誉の為に参加はするが適当に流すと言っていたのだが。


「なんだよ、なんだかんだでいい順位になろうとしてんのか」


「ちげえよ、お前さんのせいで後ろは大乱闘なんだよ。俺の相棒が傷つくのはごめんだから、危なくない所まで飛ぼうとしたらここまで上がってきちまったんだ」


 へえ、後ろの方に興味ねえがそんな大乱闘になってんのか。んじゃ、実力のあるやつ以外はほとんど排除できたと考えてもいいな。


「ジークそれは災難だったな」


「主犯格の人物が他人事だな」


「丁度良かった、目の前の竜騎士が邪魔だから蹴散らしてくんない」


 いやー、本当に丁度いい所に飛んできたよ。俺一人じゃ、流石にあの大群を突破する方法はなかったからな。数の暴力はどんな状態でも強い。


「えー、今日は適当に飛んで酒を浴びる程飲む予定だったんだが」


「いいだろ、お前。俺に借りがあるって言ってたじゃねえか」


「ここにタダで乗せてきたのと、竜を買ってやったのと、竜の乗り方まで教えてやっただろ。これで返せてんじゃねえの?」


「忘れた。だから、もう一回返せ」


「とんだ暴君だなぁ。まあ、感謝しているのは間違いねえからな。久しぶりにおじさんも本気出しちゃおうかね」


 自分でもよくわからない借りの話で何度も擦り続けるのは、ほんのちょびっとだけ罪悪感があったりなかったりした。


 わりぃ、やっぱねえわ。


「おいおい、あれってジーク副団長じゃないかどうしてここに?」

「救世主と知り合いだったのか」

「まさか、ジーク副団長は救世主側なのか!?」


『まさかの救世主側でジーク副団長も参戦だ!!』


 前にいるライアン側の竜騎士達はジークの姿を見て動揺している。観客達もジークの姿を見て、さらにテンションが上がっているようだ。


「ジークって、もしかして結構偉い?」


「んっ? いや、偉くないさ。元アステリオン竜騎士団の副団長ってだけ、今はしがない傭兵のジークだ」


 副団長って事はまあまあ強いんじゃねえのか。ジークの強さは知らねえけど、これは俺の想像よりも期待できそうだ。


「よいしょっと」


 ジークは背中にずっと肌身離さずに背負っていた大剣を構えた。特徴的な大剣の形をしているな、ただの大剣ってわけじゃなさそうだ。


 竜に乗りながら一切のバランスを崩さないその姿は、ジークが俺とは違って竜に乗り慣れている証拠だろう。


「流石は副団長様だな。だが、近接武器じゃ竜に乗った状態では少々分が悪いんじゃねえか」


「こいつはただの近接武器じゃねえのさ。見てなって」


 するとジークは剣先を竜騎士団の集団へと向ける。いったい何をするつもりなのだろうか?


『あ、あれは!?』


 知っているのか実況者!! せっかくだから俺に教えてくれ。


『竜大剣と呼ばれる武器です。竜騎士同士の戦闘を想定されて作られた大剣で、剣先が開いて弾が飛び出す仕組みとなっております。威力が高いので、皆様はできるだけ近づかないようにしてくださいね』


 と実況者が観客達に向けての注意喚起をしていた。なるほど、竜は固いうろこで覆われているからちょっとやそっとじゃダメージにはならない。


 そこで、生み出された武器ってわけか。このアステリオン独自の武器っぽいな。


「ご名答。んじゃ、派手に散りな!!」


「総員退避ーーーー!!」


 ジークの持つ竜大剣から弾が発射されて空で大きな爆発が起きる。竜騎士の何人かは今の衝撃で墜落して行くのが見える。


 とんでもねえ威力だ。


「ひゅー、派手にやるなジーク。やる気がねえんじゃなかったのかい?」


「やるとなったら本気でやるのが俺の性分なんでな。残った竜騎士も可能な限り俺が引きつけてやるよ。さあ、久しぶりに稽古でもつけてやるぜ!!」


「サンキュージーク。後で酒でも奢ってくれ」


「そこは奢ってやるじゃねえのか!?」


 ジークは俺とは離れる様に、できるだけ多くのライアン派の竜騎士を連れて消えてしまった。それでも、相手の数はまだまだ健在だ。


 俺はアステリオンに知り合いなんざいねえからな。それに、相手は国の王子だ知り合いの数じゃどうしても負けちまう。


 数は減って来たからちょっと無理すれば突破できそうではあるが、ギリギリまで無理するのは避けてえ。


『今度こそ、救世主は万事休すか!?』


 実況者と観客達は目まぐるしいレース模様に満足の様子だ。割とこっちは必死なんだぞ。


「お待たせしました。少し、後ろの敵を片付けていたら遅れてしまいました」


「随分と遅かったじゃねえか、これも最強ジョークって奴かノービス」


「ここから最強の力をお見せしますよ」


 最強の竜騎士であるノービス=エレクトラムがようやく来た。相変わらず顔の表情が一切変わらないので、悪いと思っているのかどうかすらもわからんがこれで何とかなりそうだ。


『おおっと!! まさか、まさかの、我が国最強の竜騎士も救世主側だぁ!! もう、賄賂か何かを渡しているのではないかと疑いたくなってしまう!!』


 うるせえわ、渡してねえっつーの。


「では、私の後ろにいてください。一気にライアンとの距離を詰めますよ」


「りょーかい」


 俺はノービスの後ろへと移動する。できるだけドラの体力を温存する形で、最終盤面にまで行けそうだ。

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