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俺の生まれる前の事は知らねえ

 気持ち良く飛んで戻ってきたエクレアは、満足した様子で竜の背中から降りてきた。


「あーー気持ちよかったです!!」


「それはよーござんしたね」


「ふふっ、そんなに拗ねないでくださいよ。きっといつか、この子にもアリマの乗りたいって気持ちが伝わりますよ」


「拗ねてねえし!!」


 とりあえず、エクレアには今日は竜と格闘するから帰れない事を伝えた。


「えーーーー!! 私のこのお腹はどーすればいいんですか!?」


「たまには飯を抜いてもいいだろ!! てか、食ったんだからもういいだろ!!」


「アリマと一緒に食べたいんですよ!!」


「わかったよ。後で一日アステリオンの散策につきやってやっから、それで今日は勘弁しろ」


「えっ、本当ですか!? じゃあ、今日は我慢しますね」


 飯の話でごねたエクレアだったが、後で一日町の散策に付き合ってやる事を伝えると喜んで帰って行った。


 あんなに嬉しそうにして、なんだったんだあいつは。


 さて、また俺とスケベドラゴンだけ残ったわけだ。スケゴンはまたもや眠そうにしている。


 だが、さっきのどうでもいいやり取りのおかげで何個か分かった事もあった。


 一つ目は、こいつがある程度賢いという事だ。俺の言葉に反応するという事は、人間の言葉をある程度は理解しているんだろう。


 二つ目は、割と理性的であるという事だ。その証拠は俺の体だ。現在は傷だらけではあるが動けないという程でもない。


 よく考えればわかるんだが、あいつが本気で人間に危害を加えようと思ったら、俺なんて簡単に殺せてしまうだろう。


 だが、俺はこうして生きている。それが何よりもの証拠だろう。

 

 三つ目は、背中に人を乗せたくないってわけじゃない事だな。エクレアを理由はなんであれ乗せていた。つまり、乗せる事は自体は嫌じゃねえって事だ。


 むしろ俺には、俺の背中に乗るのならそれ相応の覚悟を見せろって感じがしてきたな。だって、鞍自体は取り外してないんだもん。


「お前は誰も乗せないんじゃなくて、自分を乗りこなせる人物を待っているわけだな」


 自分で乗せてあげるのと、俺が乗り込んで命令するってのは全く違うものって事だな。


 後は、こいつ自身が人間の女性に対してなんらかのでかい感情を持っていそうではあるって事だな。それは俺がスケゴンに乗り込むのには関係がないのかもしれない。


 だが、なんだか気になってきた俺は竜牧場の店主に聞いて見る事にした。俺がやる気がない竜牧場の主の元へと戻るとそこには竜牧場の店主はいなかった。


 店主はいなかったが変わりに見覚えのある人物が座っていた。その人物は俺に笑顔で手を振ってくる。


 そう、ネストだ。服装はきっちりと竜牧場の店主の服装をしている。いつものように今日は竜牧場の店主の役割をしているのだろう。


 どこかにいるんじゃねえかとは思っていたので驚きもしねえな。


「さっきまでいた店主はどうしたんだ?」


「おいおい、せっかく美少女に会えたんだ。王都で始めて会った時のようにうれぴーって喜んでくれたまえよ」


「俺は一度だってそんな風に喜んだことはねえ」


 あの時は生まれた村で余りにも女を見ていなさ過ぎてどうにかなっていたんだよ。今は隣に居るエクレアのレベルが高いのと、まあまあ美少女ってだけなら水の大地でも結構会って来たしな。


「もうお前レベルじゃ、やったーとはなんねえんだよ。残念だったな」


「おぉ、慣れって言うのは怖いものだね。それで、アリマ君の問いに答えて上げるなら()()()()()()()()()()()()()()()()


「出たよ、俺が見たのは竜牧場の店主はおっさんだったぞ。お前とは似ても似つかねえよ」


「竜牧場の店主としての役割を一時的に拝借しただけさ。君との会話を終えたら、きちんとご返却するよ」


 役割を奪う事はどうやれば可能なのですか? とは聞いても答えてくれなさそうなので、細かい所の話は無視しよう。


「まあいいや。だけど、とんでもねえタイミングで入れ替わってくれたな。俺は店主に聞きたい事があってここに来たのにな」


「しょうがないなあ、僕が答えて上げるよ」


「いや、お前店主じゃねえじゃん」


「今の僕は店主だから店主が知っている事は答えてあげられる。さあ、存分に聞いてくれたまえ」


 とネストは断崖絶壁のような胸を自信満々に張った。こいつの話を要約してみると、ようは自分が今は俺が見た店主だからって事なんだろう。意味わかんねえが、こういう奴なのはわかっている。


 もう、突っ込む気持ちもないので素直に聞いておくことにしようか。


「じゃあ、聞くが今俺が相手をしている竜がいるだろ。どうにも俺には人間の女に執着しているような気がするんだ。過去に何かあったのか?」


「ふむ、それなら答えられそうだね。彼はどうやら小さな頃に親から捨てられたみたいだね」


「親か……だが、人間の女に執着しているのとは関係がなくないか」


 親って事はさ。親の竜って事だろ、ここから人間の話が出てくるとは到底思えないのだが。


「確かに普通に考えるのなら、竜の子供の親は竜って事になるわけだね」


「それが、当たり前じゃないのか?」


「アステリオンではね。卵から人間が竜を育てる事もあるんだよ。どういった理由で育てるのかはそれぞれ別の理由があるとは思うんだけど、一般的には竜騎士が自分の相棒となる竜を育てるときによく用いられる方法らしいね」


「なるほどな、強い竜を育てるときに卵から育てていれば懐きやすいって事か」


「そういう事だね」


 よくできた方法だなと感心する。現に強い竜が俺の言う事を聞かなくて困っている。だが、子供頃から一緒なら話が変わってくるだろう。


 一緒にいる時間が長ければ、本来懐きにくい種族の竜でも言う事を聞いてくれ確率が上がるかもしれないな。


「つまり、理由は知らねえが人間の親がいてあいつを捨てたって事だな。それで、その親の性別は()()()()()()()


「流石、アリマ君だ。よっ、転生した名探偵!!」


「それはもう煽りだろ」


 だから、あいつは女性に執着していたんだな。子供の頃に捨てられたって事は親の愛情を存分にはもらえなかったんだろう。


 体だけが大きくなっても親に甘えられなかったのが忘れられないって事だ。


「その捨てた奴が今どうしているかは知っているか?」


「おおっ、探してあげるのかい。優しいねアリマ君は」


「そんなんじゃねえって、俺の事は知っているだろ。俺はいつだって自分の為に知りてえだけだよ」


 俺の今の目的はレースに勝つことだ。レースに勝つには強い竜が必要。だから、あいつが欲しいってだけだ。だが、あいつに認めてもらう手段として捨てた親を探して乗せてもらえるのなら探してやらんこともない。


「自分の為ねぇ……うんそう言う事にしておいてあげようかな。それで、捨てた親の事だけどね。どうやら、この牧場で卵を買ったらしいんだ。その記録が残っていて、どうやらアステリオンに仕える竜騎士の女性だったみたいだよ」


「買ったのはいつだ」


「二十年ぐらい前だね。これは統一戦争時代って感じじゃないかな」


「ぞの時期か……」


 統一王が世界を統一する前の話だ。俺はよく知らねえがその頃はバチバチに殺し合いをしていたらしい、統一王が世界を一つにする事で大地も今の形となって平和な世の中になったと言われている。


 つまり、捨てた親の女性が生きている可能性は大分低いって事だ。

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