表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/260

エクレアの聖女モードを久しぶりに見たな

 俺達はジークと共にアステリオン王国へとやってきた。竜誕祭と呼ばれる祭りが開かれているという事もあり、凄い盛り上がっていた。


 聞いていた話によれば、十年に一度のメインイベントだしみんな楽しみにしていたという事だろうな。じゃあ、その中でも一番の楽しみにしている聖竜の誕生を見れないというのは国民にとっては一大事と言った所か。


 あんま言いたくねえけど、魔王が侵略してきてますって時に呑気な事だなぁ。


「どうだ、中々活気に溢れてるだろ。この時期は外部からも聖竜様の誕生を一目見ようとやってくるからな。ちらほらと偉い方々もいるみたいだぜ」


 ジークは俺達にあの人がどの国の偉い人で的な事を教えてくれるのだが、俺は死ぬほどどうでもよかったので聞き流していた。


 いや、全部いい感じに肥えて髭を生やしたおっさんじゃねえか。区別がつかねえんだよ。それに俺は権力とか誰が偉いとかどうでもいいしな。


 祭りの商店とかってぼったくりなんだけど、お金を使いたく魅力があるよな。お金がまったくないんですけどね。かと言って、旅をしながらお金を稼ぐ手段も限られてくるしな。


「あっ、聖女様だ」


 振り返ると小さな子供がエクレアの方を指さしていた。だが、当のエクレアはあれこれって私の事ですかと言った表情をしていたが、すぐに王都時以来の聖女フェイスになった。


 久しぶりに見たな、エクレアの聖女モード。瞬時に猫を被るのは流石だと言わざるおえないな。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。


 温和な笑みで優しそうに子供と接している。すると、人だかりができてきてエクレアの周りは人で埋まってしまった。


 もう、かろうじてエクレアの声が聞き取れるくらいだ。


「聖女様は何をしに来たの?」


「アステリオンの聖竜の誕生を一目見ようと思いましてね。竜誕祭にやってきたのですよ」


 子供にも敬語で話しかけている。いや、どんな相手でも対応を変えていないと見るべきか。


「もしかして、聖竜様の調子が悪いのと何か関係が?」

「聖竜様の様子を見に来たのではないか」

「イリステラ教の有名な聖女様がアステリオンに足を運んでくださるなんて、俺一生の宝にします」


 などなど、周りの大人たちからも大絶賛だ。火の大地では、エクレアの存在は大人気だったが、水の大地ではイリステラ教の教会や支部も見当たらなかったからなんだか久しぶりな気分だ。


 水の大地の奴らは神を信仰している素振りなんて一切なかったしな。信じているのは魔術だけって感じだったし、どっちかというとエクレアの変わりにリーンがその対象だって感じがするな。


「ええ、もちろんです。聖竜様の調子が悪いとも聞かされていますので、私の力で解決できるのであればしたいと思っています」


 ゆっくりと祈るような動作をとる。


「聖女様が来てくださりゃ安心だ」

「今回ばかりは駄目かと思ったわ。でもこれで聖竜様も誕生なさるわ」

「お願いします聖女様!!」


 もう、なんかの宗教みたいな感じでエクレアが一回の動作や何かを言葉にするだけで大盛り上がりだ。イリステラ教と呼ばれる宗教みたいなもんだったな。


 流石に王都でもこんな感じじゃなかった気がするな。なんて言うか、盲目的に信頼しすぎている感じだ。こりゃ、エクレアも変な姿は見せられないだろう。


 猫を被るってのもわかるもんだ。


「エクレアの奴。随分とアステリオンじゃ人気なんだな」


「まあな、アステリオンは竜を信仰してる関係で国民のほとんどがイリステラ教徒だからな。信仰している神の声を聞く聖女も同じくらいに信仰対象だから、ああなっちまうのさ。それに、聖女様は王都から動かなかったからな。お目にかかれる機会ってのがないのも爆発的な人気の秘密なんじゃねえか」


 なるほどな、実際に会ったことないはないが良い噂だけが聞こえてくる聖女様をみんなが信仰しているわけだ。子供も大人も全員がな。


 実物も猫を被っているので噂通りだし、そりゃああやって熱狂的にもなるか。今もアイドルがファンの相手をするかのように握手を求められているので対応している。


 エクレアは律儀に全て答えている。


「その割にはジークは会った時に握手とか求めなかったよな。ジークはイリステラ教徒じゃねえって事か」


「いんや、親から俺の世代までバリバリのイリステラ教徒だぜ」


「んじゃあ、本物の聖女に会えたって感動しなかったのか?」


「実際に聖女様に会うまでは俺もあんな感じだったなあ」


 ジークは遠い目をしていた。そう言えば一番最初に会った時はジークはエクレアの事を聖女と認識していなかったな。


 まあ、俺達の後ろでうひょーーーーとか言ってた女が噂の聖女様だなんて誰も信じねえわな。信じたくもないって感じではあるか。


 聖女に期待している分だけ、本物がそれにかなわなかったら落胆も大きくなるもんな。


「それに、お前さんにも会ってみたいと思ってたんだぜ」


「俺に……?」


 俺は世界で有名になるような事は一つもした覚えはないぞ。自分で言うのもなんだが、俺が有名になる時は正義とは反対の事で有名になると思うしな。


「お前さんも中々に有名なんだぜ」


「えっ、そうなの」


「そりゃそうだろ、聖女のお付きの男にして勇者の幼馴染。世直しの旅をしている救世主だなんて言われてるんだぜ」


「すまんが今は誰の話をしているんだ?」


 凄い!! エクレアはギリギリで俺以外の相手なら優しくて丁寧だから本物と乖離していないとも言える。だが、俺への評価はぶっちぎりで真逆じゃないとおかしい。


 そんな聖人君子になった覚えは一度だってねえよ。


「ははっ、謙虚だねぇ。確かに悪い噂もあったさ、聖女様の弱みを握って体を好き放題しているとか、聖女様の首に犬の首輪をつけて散歩しているとか、旅の金をケチる為に密航したとかな」


 やべえぞ、最初の奴以外は全部本当の事ばかりじゃねえか。こっちが正しいはずなのにエクレアとリュカの評価に並べられているせいで、俺まで聖人みたいな扱いになってやがるじゃねえか。


 俺が嘘の情報を流してるみたいで嫌なんだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ