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聖女って絶対出てくるよな

 広場に行った俺を出迎えてくれたのは、余裕そうに立っているリュカと地に伏せてリュカを見上げているハーゲンであった。


 周りの様子から、俺は見ていないが圧倒的な差でリュカが圧勝した事がわかる。


 まあ、当然の結果だな。


「おっ、リュカどうだった。って、聞くまでもなさそうだな」


「結果は僕の勝ちだったけど、相手の方が剣の技量は上だったよ。僕は木で出来た剣しか持ったことがなくて、鉄だとやっぱり重みが違うなって感じたね。うん、もっと精進しないと強い相手が出てきたらその隙を必ずついてくるよね」


 周りの人間がリュカの言葉を聞いて驚きを隠せない様子だな。ここがリュカの凄い所だ。


 圧倒的に勝っても、全くと言っていい程満足していない。


 向上心の塊のような精神力。まさに勇者に相応しい心を持ち合わせているのではないだろうか。俺は倒れているハーゲン王子に近づく。


「ハゲ、お前負けたんだから敬語使えよな」


「お前に負けたわけではない!! だが、リュカの事は認めよう。彼は勇者に相応しい」


「リュカの手柄は俺の物で、俺の手柄は俺の物だからこの勝利は実質俺のもんだぞ」


「勇者よ、何故この男と幼馴染をしているんだ?」


 可哀想だけど、幼馴染は選べないんだよなあ。だってさ、女神様の命令で幼馴染になったんだもん。


 文句なら、リュカの幼馴染として俺を選んだ女神イリステラにでも言ってくれよな。


 何でもいいけど、リュカとハーゲンはお互いに認め合ったようでよかった。


 それから、今後の事について王様が俺達に話をしてくれた。前世の校長先生の話のように、長い話だったので大事な所だけかいつまんで話そう。


 勇者パーティーのメンバーを世界各地から集めてるから旅立つのは少し待ってとの事だった。


 今日は王都セイクリアに伝わる聖剣をリュカが受け取って、ひとまず終わりとなった。


 リュカは明日からは、ハーゲンと一緒に修行に励む様だ。遠目で騎士団の剣を教わりたいと言っている所を目にした。


 俺は用意してもらった部屋で休む事にした。部屋は流石王都って感じだ、田舎のボロ小屋の数倍マシな部屋を用意してもらえた。


「ふぅ、なんか色々あったな。俺は明日からどうしよっかなー」


 リュカが修行に入るという事は、明日から俺の身に何が起こるのか。それは、ものすっごい暇になるって事だ。


 死んでも一緒に修行なんてしたくなんかねえ。


 だから、明日からは絶対に広場には近づかないと心に誓っているってわけだ。明日からの事は明日の俺が考えてくれるだろうさ、今は今日必要な事を終わらせるとしよう。


 そう思っていると、女神イリステラから通話が来た。俺はすぐに出る。


『どうも、貴方の女神イリステラです。早速答えを教えてもらいましょうか、不届き者の正体を掴めた?』


「おう、名前聞こうとしたらいい感じに偽名使われてはぐらかされたぞ」


『何してるの!! アリマはもう少し女神の使徒としての自覚を持ちなさいよね』


「確か、ネストって名乗ってたぞ。明らかに偽名だったけどな」


 説教モードに入りそうなピンク頭だったので、無視して一応聞いた名前を伝えた。


 どうせ偽名だし、意味なんてないけどな。


 そう思っていたのだが、ネストの名前を聞いた女神イリステラは急に静かになってしまった。


 ネストという名前に聞き覚えがあったのだろうか?


『一応聞いておくわ、髪の毛が黒髪で胸が大陸と同じくらいペッタンコだった?』


「おう、お前の数倍美人だったけどペッタンやったぞ」


『ええ、アタシの方が数倍可愛いくてスタイルも抜群なんだけどね』


「ははっ、冗談は髪の毛の色だけにしとけ」


『冗談じゃないわよ!? んで、信託の巫女の事だけど。いいわ、もう放っておいて』


 女神イリステラは不思議と寂しそうにそう言った。知り合いだったのだろうか。


 こう言われてしまうと俺の探求心が暴れだしてしまう。


「おいおい、俺にも教えてくれよ。信託の巫女ってのはお前とどういう関係なんだ。女神の使徒なんだから俺にも聞く権利があるだろ」


『そいつは多分だけどアタシの友達なの。アタシ達と目的が同じのはずだから、放っておいても問題ないわ』


「ああ、つまり勇者に魔王を倒して欲しいグループの仲間ってわけな」


『そういう事になるわね』


 ふーん、こいつの知り合いもちゃんと地上にいるわけだな。さて、俺の目的も達したわけだし、今日は移動するだけで疲れたから俺は女神イリステラとの通話を切った。


 明日の朝、太陽を見ると昼のような気がしないでもないのだが俺が朝と言ったら朝なんだ。


 誰よりも遅く起床した俺はあくびを噛みしめながら広場の方を見ると、リュカとハーゲンが元気に修行していた。


 どうでもよかったので、俺は優雅に食堂で朝飯を要求して王城の飯を食べた。


 その後、する事が無くなってしまった。空を見上げていると、急に信託の巫女が言っていた地下室の話を思い出した。


 幽霊なんて信じてはいないのだが、何があるのかは興味がある。主に金目の物であって欲しい。


 俺は暇つぶしもかねて、王城を歩く。すると、いかにも地下に繋がっているであろう階段を見つけた。


 ご丁寧に立ち入り禁止と書かれた看板が立っている。


「ほーん、立ち入り禁止ね。つまり、入っていいって事だな」


 俺は一切の躊躇なく下へと降りて行く。そもそも、立ち入り禁止にしたいのなら見張りの兵士ぐらいつけた方がいいのではないだろうか。


 見張りがいなくて立ち入り禁止なんて、どうぞ入ってくださいと言っているようなもんだろ。


 地下へと向かうにつれて、暗くなる。階段を降りきると、そこは牢屋であった。


 罪人を閉じ込めておくための場所だろうか。


 俺は既に若干興味がなくなってしまっていた。しかし、上に帰ってもする事がない。


 なので、罪人がいるのならどんな顔してんだろうなあという気持ちで三つある牢屋を全て見て回ろうと思ったのだ。


 完全に思い付きでの行動だった。



「一つ目は住居者なしと」


 二つ目もいないな。これ、どうせ三つ目もいないんだろうなあとは思いつつも。


 ここまで来たので全部確認する事にした。女性と目が合った。女性は俺が来るなんて思ってもいなかったのだろう。キョトンとした顔をしている。


 気持ちはわからんでもない。俺だって人がいるなんて思いもしなかったし。


「人ですね。その様子ですと、あいつらの仲間じゃないようですね。貴方、一体何者ですか」


「俺は通りすがりの者だよ。あいつらってのは何の話だ」


「私の事を知りませんか!!」


 知りませんかって、俺は女性の全身をくまなく見る。金髪で碧眼の美少女、胸もでかいし尻もでかい。


 見た目だけで言うなら最高かな。とりあえず言える事はこんな奴は知らん。少なくともこの見た目なら、一度見たら記憶から消すのがもったいないので必死に記憶するはずだ。


「知らん」


「嘘ですよね、王都に住んでるんですよね!?」


「王都に住んでねえんだよ。俺は昨日ここに勇者の幼馴染として王都にやって来たばかりなんだよ。美人だからって、全員が全員お前の事を知ってると思うな」


 まあ、そのアイドル顔負けの見た目なら多少うぬぼれても仕方がないかもしれないな。


 それぐらいには美少女である。


「美人だなんて照れちゃいます」


 なんか顔を赤くして照れてっけど、この美人さんは手を鎖で縛られていて、その鎖が上に引っ掛けられている。そのせいで、強制的に脇が見えるばんざいの状態となっている。


 変な紋様のついた首輪もしているから犯罪者なんだよなあ。美人でも犯罪者はちょっとなあ、と自分の事は棚に上げておく。


「はっ!! 今はそれどころではありません。私の名前はエクレア・サンクトス。この王都セイクリアで聖女を務めています」


「はぁ、その聖女様がなんで鎖で繋がれているんすか」


「それはですね。私が重大な事実を知ってしまったからなのです。なんと、王都の王様は王様ではないのです」


「なぞなぞの話でもしてんのか?」


「違います!! 王様は魔王の手先と入れ替わっているのです!!」


 私しか知らない新事実を言ってやったみたいな顔をしていやがる。


 凄いどや顔で申し訳ないのだが、今の所は信じれる部分が少なすぎて聖女の名を語る精神異常者にしか見えない。


「んじゃ何か? 王様が魔物で、しかも魔王の手先。それを知ったエクレアは捕まってしまい、王城の地下で囚われの身となってしまったと」


「そうです。察しが良くて助かります」


「うーん、いきなりそんな話を信じろって言われてもなあ。聖女って服装ではないしな」


 そうなのだ。服装がボロボロの布切れであり、肌色の方が多いような気さえしてくる。これ、聖女って服装じゃねえぞって感じだ。


 こんなエッチな服装の聖女がいらっしゃったら、各方面に失礼だよ。


「ちが、違いますよ!! 誰がこんな服、好き好んで着ますか!!」


「じゃあ、なんか聖女って証明できる事ないんか。ほらっ、聖女なら聖なる力とか使えるだろ」


 俺の聖女のイメージだと、聖なる力で人を癒すみたいな感じだ。後は肌に特殊なあざがあるととかな。


 何をするにしても俺は今の状態で無条件で信頼はできん。

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