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余計な奴らが出てくる

 さて、リーンの言う通りに頑張ってオルトの気を引いてみますか。気を引くってだけなら、倒さなくてもいいから俺の得意分野だ。


 えっ、エクレアとグランはどうしたって。倒すわけでもねえのにあんな脳まで筋肉で出来てるやつらを連れてくるわけねえだろ。


 絶対に面倒になるだけってわかってるからな。呼ばずにあのまま事件解決するまで放置でいいだろ。


 俺は中央にいるオルトの元に向かう。


「何奴だ!!」


 いや、何奴もなにもねえだろう。俺はわざとお前に気づかれるように思いっきり真ん中から歩いて来たからな。


「あー、タコさん悪いんだけどこの町を解放してくれやしませんか」


「タコではない。クックックッ、聞いて驚くがいい。俺は狡猾のオルト、魔王軍の六魔将の一人だ。すでに町も勇者も俺の手の中にある。貴様が何者か知らんが降伏するんだな」


 知ってるんだよ。知ってる情報を偉そうに開示しやがって、でも時間稼ぐために会話で時間を稼げるならそれに越した事はねえか。


「へー、でもそんな脅しには乗らねえぜ」


「あくまで俺には向かうようだな。しかし、貴様にも見えているはずだろ、この人質どもがな!!」


「それで、その人質がどうかしたか?」


「いいか、貴様が動いたら人質の命を殺すぞ。お前は大人しく捕まるしかないんだよ」


 ここでまずは第一関門だな。俺しか突破できない部分だ。


「どうぞ」


「へっ!?」


 いや、敵のお前がそんなに驚く事か? どうぞって言ったんだよ。


「馬鹿な!? 人質がどうなってもいいというのか!?」


「逆に聞きたいんだけど、全く見ず知らずの人間が人質にされていたとして自分の命と引き換えに助けるか? 俺は助けないぜ」


「き、貴様は勇者側のはずだ。そんな事を言っていていいのか!!」


「何か困る事があるか? 俺はねえけどな」


 なんかもう、オルトの方からこんな奴がいてもいいのかって顔されてんだよなあ。


「いいや、まだだ。俺にはこれがある」


 オルトの大きな瞳が輝いた。確かにお前には催眠があるな。


 ちなみに堂々と立っているが、別に催眠に対して何か対策をしてるわけじゃない。これはかけだ。


 俺はオルトの目を特に何かすわけでもなく見つめている。


「食らえ、催眠波動!!」


 ふむ、なんだか若干眠いような感じがするがだがやはり俺の推測は正しかった。


「俺には効かないみたいだな!!」


「馬鹿な!? 魔術耐性があるわけでもないお前に俺の催眠波動が破られるなどありえん」


「ふっふっふっ、俺はお前の催眠がどんな相手に効かないのか知ってるんだぜ。そう、俺は常に欲望に忠実に生きてるからな!!」


 グランは言っていたからな。欲望に忠実に生きてる奴は催眠にかかりにくいってな。


「少しは我慢というのを多かれ少なかれしていると言うのにこの男は、我慢を知らんのか」


「知るか!! 我慢なんて俺の辞書にはねえ!!」


 そう、狡猾のオルトにとって天敵なのは、勇者でも大賢者でもねえ。俺だったわけだ。


「お得意の催眠も俺には通用しなかったみたいだな」


「こんな自己中の塊みたいな奴が勇者サイドに存在していたとはな」


 すると、遠くからドタドタと足音が聞こえてくる。せっかく俺の異世界初の完封勝利で幕を降ろせそうな気がしたのだが。


 嫌な予感がした。こっからさらに無茶苦茶になる予感がしたのだ。


「アリマ大丈ですか!! やや、このタコみたいな奴がオルトですか!!」


「アリマ、交戦してるのならオレ達に早く伝えてくれればいいものをよ。まさか、オレ達の事を思ってか。水臭えぜ」


 余計な二人が参戦してきた。今回は明らかにいらない戦力である。


 しかも、さっき自分達が話していた事をもう忘れていやがる。


「目を見るな!! お前らは目を見たら催眠にかかるって言ってたばかりだろうが!!」


 二人はささっと下を向いた。こいつら、オルトが催眠波動をしていたら危険だったぞ。


「くぅ、対策済みと言うわけだな」


 オルトも狼狽している。対策済みってよりかはこいつら対策した事を忘れてそうなんだよなあ。


「さあ、観念してください。私は貴方の位置が気配でわかりますよ」


「危ねえ!!」


 エクレアが拳を振り上げたが、その先にいるのは俺だった。


「何が、気配でわかりますだよ。全然わかってねえじゃねえか!!」


「ありゃりゃ、邪悪な方を狙っているつもりなのですが。あっそうか、アリマが一番邪悪だからですね!!」


「それが言い訳になると思っとんのか。後で覚えてろよ」


 なんで、味方から攻撃を受けなくちゃならねえんだよ。


「まだまだ甘いな嬢ちゃん。本物の戦士は気で相手の場所を探るんだよ」


「本当かグラン、本物の戦士は気で探れるんだよな。なら、何で俺の方に拳を振り上げているんだ。本当に探れてんのか!?」


 俺はギリギリの所でグランの拳をかわした。地面が裂けたような亀裂が走った。


 小目玉のダマの誘導で何とか回避できているが、いつ当たってもおかしくないんだが。


 洒落になんねえって、あんなの受けるぐらいならオルトに催眠された方が百倍ましだっつーの。


「オレの攻撃をかわすとは中々やるじゃねえかオルト!!」


「お前、誰と戦ってんだ。お前の中でイマジナリーオルトを作り出してないか?」


 というか二人共俺だけを狙うのは何なんだよ。同士討ちしてもらった方がマシだよ。


「お前ら何しに来たの!? お前らがした事って、俺に襲いかかった以外ないんだけど」


「だって、前見えませんし」「前見えねえからな」


「お前らちょっと前に自分が言った事を思い出せ!!」


 何が目を見ずにオルトと戦えるだ。敵味方関係なしに襲う、バーサーカーになってるだけじゃねえか。


「小目玉、貴様何をしている!! まさか、俺を裏切ったのか!!」


 やべえ、こいつらのせいでダマを隠してたのが、オルトにもバレたし。こいつら来てから碌な事ねえんだけど。


 ダマは震えて、俺の後ろに隠れてしまった。俺の唯一の癒しを脅してんじゃねえぞ。一つ目催眠野郎が。


「そんなんだから、部下に裏切られんじゃねえか?」


「俺の前で茶番をさっきから見せつけやがって、こうなりゃとっておきを見せてやる」


 オルトの目が揺らぎ出した。すると周りの小目玉達が集まり出したのだ。


 何をする気なんだ。

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