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大賢者ってのは賢者の中のトップなだけあるな

 地下へと進んで行くと拷問部屋のような場所があった。壁に鎖でつながれている大賢者リーンの姿を見つけた。リーンはぐったりとした様子で倒れている。もしかして、拷問にでもあったのだろうか。


 俺はすぐに近寄った。


「リーン大丈夫か!!」


「ふわー、あっ、おはようございます。アリマさんが来たって事は結構な時間寝ちゃいましたか」


「寝てただけかい!!」


 流石は大賢者だ。拷問部屋でも快適な睡眠ができるようだ。肝が据わりすぎている。


「まぁ、私の研究室よりかは片付いていて足の踏み場がありますからねえ。私に催眠する為に、精神を削ろうと拷問もしてきましたが大した事なかったですし。それで、私の娘に会えましたか?」


「えっ、まあ、会って来たけど水の宝玉は条件を出されてもらえなかったよ」


「そうですか。娘は私の事は何か言っていましたか」


 わかるぞ、明らかに期待している顔だ。だって、リーンの目が今までに見た事がないくらい輝いているもん。すげー、娘が自分の話をしているかどうか期待しまくりだもん。


 だけど、実際はアリシアにとって自慢の母親ではあるがコンプレックスになっている事の方がでかかったんだけど。リーンにそれを伝えるのはちょっと、それだけでリーンの精神が削れかねなさそうだしなあ。


「自慢の母親と言ってましたよ」


「そうですか!? ふふっ、アリシアちゃんは私の前だとツンケンした態度でいるのでわかりませんでしたが、やっぱりちゃんと私の事が好きなんですねえ。よかったぁー」


 俺はのどから出そうな言葉を抑える。もっと、子供とはコミュニケーションをとった方がいいですよとか言いたかったが、言わない。もう、家族観の問題だし俺がどうこう言うのも違う気がするしな。


「それじゃ、すぐに鎖を外して……」


「あ、待ってください。その必要はありませんよ。外すだけなら今の私でもできますので、状況を先に教えてもらってもいいですか?」


「えっ、でもその首の奴って魔力を封じ込める首輪ですよね」


 俺は王都にいた時に見たエクレアがつけられていた首輪の事を思い出していた。それと、リーンがつけられている首輪はそっくりだから、多分そうだと思ったのだ。


「あはは、この程度では私の魔力を止める事なんてできませんよ。ちょっと、特殊な術式を使っていまして私にこういった魔力封じは通用しないんですよ」


「じゃあ、ここまでの事を話しますね」


 俺はリーンに俺が東の町までの間に起きた事を話した。


「うーん、やっぱり人質が面倒ですね」


「そうだな。人質をどうにかしたいとは思ってるんだけど、中々方法が思い浮かばないんだよなあ」


 実際に、東の町に来てから特に問題が解決の方には進んでいない。オルトには手を出せないってのが現状の状態だ。だから、とりあえずリーンやリュカから話を聞こうと思ったのだ。


「アリマさん。どうにか、三十分だけオルトの気を引く事は出来ないでしょうか?」


「三十分は結構無理な注文だな、人質ありの相手にそれはまあまあ無理だってわかって言ってるだろ」


「でも、こんな事はアリマさんにしか頼めませんから。アリマさんぐらいしか今の状況に適した人物はいないでしょう」


「随分と一般人を高く買ってるな」


 俺だけならオルトに手を出す方法がある。そう、多分だが今出せる戦力である。エクレア、グラン、リュカ、リーンの中で俺だけが気兼ねなく()()()()()使()()()


 リーンも俺の本質に気づいているようだ。


「三十分以内にオルトに気づかれないように、私が人質を転移させます。その間、どうにかして時間を稼いでください」


「わかったよ。でも、悪いけど稼いだ後は俺は今は戦力にはなれねえぞ」


 職業ガチャが五万エン分たまっていないのだ。つまり、俺は今回戦力外って事になる。そこら辺はわかって貰いたい。


「大丈夫ですよ。あの程度の相手であれば、人質さえいなければ私とリュカさんのどちらかで余裕ですので」


「そっか、あの程度は余裕なんだぁ……」


 やはり、大賢者と勇者は化物やな。俺は別に化物になりたいわけじゃねえから別にいいけどさ。まあ、時間稼ぎだけなら頑張りますか。


 リーンは鎖を魔術で簡単に破壊した。どうやら、仕掛けるタイミングを待っていたようだな。


「リュカは今は助けない方がいいか」


「そうですね、三十分稼いだ後にでも助けた方がいいと思いますよ。ちょっと、リュカさんは優しすぎますからね」


「だろうな、まあ何とかしてみるよ」


「それで、ずっと思っていたんですけど隣の弱そうな魔物はいったい?」


 リーンは俺の隣でふよふよしている小目玉のダマの方を不思議そうに見ている。


「こいつはオルトの部下で魔物だったんだけど、俺に力を貸してくれてるんすよ」


「へえー、魔物って人間に協力してくれる知能があったんですね。研究してみたいなって、あれ?」


 リーンが触ろうとすると、ダマは速度はそんなに出せないが明確に拒否するように離れていく。そして、俺の後ろに隠れてしまった。


「強さを理解していてアリマさんが弱いから一緒にいても危険がないと判断されているんでしょうか」


「その発言は俺に失礼だと思わんか?」


 事実なんだからいいっすけどね。とりあえず、方針の方は固まったな。こっから、どうやってオルトから時間を稼ぐかだ。


「それじゃ、アリマさんは適当な時間に始めてください。私はアリマさんが動いたと思った時に動き始めますから」


 そう言って、リーンは転移魔術でどこかへと消えてしまっていた。エクレアをあんなに苦しめていた首輪を付けながら余裕そうに魔術を使っている所を見ると。本当に大賢者って凄いんだな。

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