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今までで一番使える奴の登場だ

 東の町の正面からでなく、横から近付いて中の様子を伺う。ど真ん中にいる奴が狡猾のオルトって奴なのかな。人型だが、タコみたいな触手があって目が一つ。単眼って奴なのだろう、目がでかいから見ずに戦うというのは骨が折れる作業だ。


 真ん中には生気が抜けたような目をしている人達が集まっている、どうやら催眠にかけられている状態ってのはああいうのを差すらしい。確かに、グランの言う通りあれでは逃がす事はできないだろう。


 なるほど、ああやって人質をとっているわけだな。しかし、リュカとリーンの姿が見えない。捕まってるって聞いたんだが。


 姿が見えない所を見ると、牢屋か何かに監禁している可能性があるな。どっちにしても、エクレアとグランにはギリギリまで待ってもらう必要が出てくるな。


「さてと、見つかったら一発アウトだが、中へと入らないと詳しい状態を確認することが出来ねえな。ここは、勇気だして中へと侵入するしかねえな」


 俺は東の町の中へと侵入した。


 中央でオルトが一人でぶつぶつ言っているな、何を言っているのだろうか気になる。俺は聞き取る為に音を立てずにゆっくりと侵入して行く。ギリギリ聞き取れるラインまで近づいた。


「クソッ、こんなはずじゃなかった。勇者と大賢者を洗脳して俺の手駒とする作戦だったのだが、流石は勇者と大賢者だ。中々、洗脳させてくれない。だが、時間はある時間をかけて洗脳してやる」


 ああ、あれか。イライラしてる時に独り言が出ちゃう奴な。俺も経験あるからわかるぜ。


 危ない所まで近づいて正解だったな、相手の目的もわかった。どうやら、リュカとリーンを戦力として使うつもりだったが、催眠が効かなかったので捕まえてるだけの状態になってしまったようだな。


 さーて、どうすっかな。このまま、オルトと戦うわけにもいかないから、現在リュカとリーンがどうなっているのかを探して見た方がいいかもしれんな。


「ムッ、俺の小目玉に反応がある。ネズミがこの町に忍び込んでおるな!!」


 オルトはそう言うと俺のいる場所まで近づいて来た。


 うげっ!! なんで、俺のいる場所がわかったんだ。素人なりに上手く音を殺していると思ってたんだがな。俺は空を見ると紫色の目玉だけの生物が浮いていた。


「こいつか!!」


 小目玉とオルトは言っていたし、分身か部下か何かだろう。攻撃をしてこない所を見るとオルトに場所を知らせるだけの存在のようだな。小目玉は敵意自体は全くないのか、俺の周りをふよふよと浮いている。


 オルトの足音がすぐ近くまで来ている。これはまずい、かと言って小目玉を倒して隠れるなんて時間はもう残されていない。俺が出来るのは一回の行動だけだ。


 小目玉を放置して隠れれば、小目玉が見ているので隠れても意味ない。小目玉を処分すれば時間が足りなくて多分見つかる。どうする、どうすればオルトから俺が侵入した事をばれない様にできる。


 小目玉は俺の気持ちも知らないでふよふよと浮いている。お前のせいで困ってんだよなあ。こいつらって意思みたいのもんはあんのだろうか。……一か八かだが、かけてみるか。


 俺は小目玉を掴んで、近くの小箱に隠れた。なんか、ぶよっとして気持ち悪いがそんな事を言ってる場合じゃないしな。


「おいっ、俺がここにいないってオルトに知らせろ。じゃないと、お前を潰すぞ」


 俺は手元の小目玉に向けて言った。俺がとった行動は脅しであった。小目玉にオルトとは別に意思が存在するのなら、死にたくないのは生物として一緒だろ。頼むから、別の意思があってくれ。


 小箱の小さな隙間から、外の様子を確認する。オルトは俺がさっきいた場所で足を止めた。


「いないな。おいっ、侵入者はどこにいったんだ小目玉。お前の姿も見えんようだが。なにぃ、見間違えでした、猫と人を勘違いしてましただぁ。俺はお前ら雑魚と違って忙しんだ、気を付けろよ」


 怒りながらオルトは東の町中央へと戻って行った。どうやら、俺は助かったみたいだ。手元の小目玉を見ると目玉に羽がついているだけなので、こいつの感情がよーわからんが意思はあるようだな。


 とりあえず、木箱から出る。俺は小目玉を解放した。


「助かったよ、もしかして俺の言葉がわかるのか」


 俺の言葉に小目玉が縦方向に頷いた。おおっ、どうやら意思疎通もできるようだ。すげー気持ち悪いデザインだなと思ってたけど、小目玉君も可愛く見えてきた気がするな。


「お前俺の事を助けてくれたけど、もしかしてオルトの事嫌いなのか?」


 こくこくと頷く小目玉。悲報、狡猾のオルトさん部下に嫌われていた。まあ、あの態度を部下にするようじゃ嫌われて当然と言えば当然だな。


「じゃあさ、勇者と大賢者が捕まってる場所ってわかるか。俺を案内してくれよ、もし案内してくれたお前の居場所を作ってやるからさ」


 何かを考えているのだろうか、少し時間があったが縦に頷いた。俺は少しだけ感動していた。魔物って、意思疎通が出来るんだな。


 小目玉が俺を騙しているってのはないだろう。騙すつもりなら、俺と一緒に箱に入っていた時にオルトに報告すればいいからな。まあ、命がかかっているからしなかったって線もあるから様子見だな。


「よおし、しょうめだまだからダマ。お前はダマだ。よろしくな、ダマ」


 名前を付けられたダマは嬉しそうに大きく縦に頷いた。嬉しそうにと言っただけで、本当に嬉しいかどうかなんて目玉だけだからわかんねえけどな。


 ダマはこっちの来いと言わんばかりに移動し始めたのでついて行く。町中はダマと同じ様な小目玉がうようよいやがる。ダマは見つからないような道を選んで移動してくれているようだ。


 助かる。今まで、一番俺の役に立っている味方なのではないだろうか。思い返してみると碌な味方がいないような気がした。なんだか、これだけでダマに愛着がわいてしまう。


「ここか?」


 ダマがある建物の前で止まった。ダマへの信頼度がこの短い時間で高くなった俺はそのまま警戒もせずに室内へと侵入して行く。そこは、何の変哲もない民家だった。中には当然だが誰もいない。


 ダマは民家の地面をコンコンと体当たりしている。そこを見ると、その地面の部分だけ色が変わっていた。俺はその部分を捲ると地下への階段が現れたのだ。


「この下に捕らわれているって事だな」


 ダマは頷く。こいつがいなかったら、俺は絶対に気づいていなかっただろうな。有能以外の何でもないな。

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