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今、六魔将何人目なんだ?

 明日の朝、朝食を済ませてすぐに東の方へと出発した。東の方って情報以外はなかったので、見つけるのに少しぐらい時間がかかると思っていたら、どうやら俺の杞憂ですんだようだ。


 何で、すぐに見つかったかと言うと話は簡単だ。そちらから逃げてくる人々がいたからだ。とりあえず、一人捕まえて話を聞いてみよう。


「おいっ、ちょっといいか?」


「なんだよ、俺は今忙しんだが」


「すまない。俺は旅の者なんだが、これから向かおうとしている方から人がたくさん逃げて来ているので気になってな」


「そんな事か、リーンの東の町が魔王軍の六魔将に占拠されちまったんだ。勇者様と大賢者様もいたんだけど、敗走しちまったらしい、だから逃げれる奴は東の町から逃げてるんだよ。わかったら、どいてくれ」


 そう言って、男は走り去ってしまった。


「……リュカさんとリーンさんが負けた? あの二人の強さは知っていますが、一人ならまだしも二人そろっているような状況で負けるとは思えませんが」


「エクレアもそう思うか、俺も同意見だな」


 リュカとリーンがそう簡単に負けるとは思えない。考えられる理由は二つある、一つは六魔将が今までのとは違って、本当に勇者と大賢者二人を相手にしても余裕で倒せるほど強い。


 もう一つは二人が実力を発揮できない状態にまで追い込まれていたかだな。前者だと、俺にはどうしようもねえ。エクレアでもどうしようもねえだろう。


 だが、後者でもめんどくせえ。まだ、どうにかできる可能性は出てくるが勇者と大賢者が実力を発揮できない状態まで追い込む知性を持っているわけだ。考えただけで面倒な相手だって事はわかっちまう。多分、今回の相手は後者側だ。


「こんなに大勢の人間が逃げてこれるってのがおかしいもんな」


「えっ、どうしてですか?」


「六魔将は部下がいたはずだ。ただの人間を追うのには部下に追わせて狩ればいいわけだな、だけどそれをしてねえって事はなんか狙いがあんだろ」


 思い返してみれば、今までの六魔将には数は違えど部下がいた。今回もいるに違いない。だけど、東の町の人々は無事に誰にも追われずに逃げてきている。


 つまり、わざと見逃されている可能性が高いってわけだ。まあ、勇者と大賢者の相手をしていて、そこまで手が回らなかったって事もあるとは思うけどな。


「どっちにしても、ここで会話してても始まんねえし、東の町まで様子を見に行くしかねえな」


「そうですね。何をするにしても、東の町が現在どうなっているのかを確認しない事には始まりませんよね」


 気を引き締めて、近づいて行かねえとな。だって、職業ガチャが貯まりきってねえもん。今だと、全てがエクレアだよりになってしまう。途中で強い魔物に会わない事を願っているぜ。


 東の町との距離が近づいてきた時だった。


「アリマ……」


「なんだよ」


「目の前にとてつもない力を持った何かがいます」


 エクレアが指を向けたのは草むらだった。心無しかエクレアが震えているように見える。それだけ危険な相手だって事だろう、逃げるしか選択肢が残されてねえ。すぐにでも、逃げよう。そう思った矢先だ。それは草むらから飛び出してきた。


 大きな体躯にトカゲの頭。体全体は固そうな鱗で覆われている、人型の俺よりも一回りも大きい爬虫類。見た目からして、強そうだ。間違えない、これがエクレアの言っていた相手だろう。


「アリマ、下がってください!!」


 言われなくても、下がるつーの。エクレアが俺の前に盾になるような形で立ちふさがる。トカゲと一触即発のような空気が流れる。エクレアが先手必勝とばかりに殴りかかろうとした時だ。


「ま、待て!! お前達に話があるんだ。そ、そうだ、武器だな、ほらっ地面に置いた。これでオレは丸腰だぜ、敵意を落としてくれ」


 そう言って、トカゲは背中の大きな斧を地面に投げ捨てた。なんとも、拍子抜けというほかない。こいつは魔物だ、話が出来るってなら東の町の事も知っているに違いない。話を聞く価値は間違えなくある。


「騙されてはいけません!! 身にまとうオーラから、彼が素晴らしい武術の使い手である事はわかっています。素手の状態でも、私と同等……いや、それ以上の力はありますよ。ほらっ、アリマにも見えるでしょう、あの者が出す圧倒的な強者のオーラが!!」


「いや、知らねえよ。なんだよオーラって、そんなゴリラ特有のもん見えるわけねえだろ。相手が敵意を落とせと言ってるんだし、ここは話を聞いてやってもいいんじゃないか」


 それにしても、エクレアにここまで言わしめる相手か。初めて見た気がするな。特殊な能力があるわけじゃなくて、単純に殴り合いがエクレアと同等って事だろう。


 それだけで化物って事がうかがえるな。今思うと少女の姿をしたエクレアがこのトカゲと同じくらいに強いってのが、おかしな話なのか。慣れって怖えな。


「ヘヘッ、オレの実力を見切るとはお嬢ちゃんもやるな。だけど、本当に戦う気はないんだ。この通りだ、話を聞いてくれ!!」


 そう言って、トカゲは地面に頭をつけた。流石のエクレアも、これには戦意を落としたようだ。力で解決できる強者が頭を下げる。よほどの事情があんじゃねえかな。


「ほらっ、話ぐらいは聞いてやろうぜ」


「……そうですね」


「助かるぜ。オレの姿を見たら人間はみんなビビッて逃げちまって話にならねえんだ」


 そうだろうな。俺もエクレアがいなかったら、問答無用で逃げてたと思うしな。普通に今まであった魔物の中ででかくて単純に怖いんだよな。


「俺は元魔王軍で元六魔将の一人、怪力のグラン。恩人であるリュカとリーンが危険なんだ!!」


 俺とエクレアは驚いた表情で顔を見合わせる。これは予想外だ。まさか、六魔将の一人だったとはな。

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