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ご飯に余計な物を乗せるのは邪道ですか?

「条件、何だそれは?」


「私の幼馴染を捕まえて欲しいの。その男の名前はオービタル=デュランダル」


「幼馴染ね。捕まえて欲しいってのはそいつは犯罪者なのか?」


「いいえ、()()()()()()()()()()()()


 きちんと説明してもらわな、意味不明なんだよなあ。犯罪者ではないが、これからやらかすって事か?


「そんな顔されても困るわ。私もあいつに聞いてもお前には関係ないって言われて無視されちゃうし、そしたら急にいなくなるのよ!? ひどくない!!」


「で、そいつ行く先に心当たりとか」


「ないわよ」


 いや、キッパリと言い放ったが無いわよじゃねえよ。どこにいるかわかんね奴を探せとか無理難題じゃねえか。


「つまり、何を目的にしてるかも不明だし、どこに行くかのあてもない。そんな奴を探せって事か?」


「そういう事になるわね」


「無理無理、絶対無理だってわかんだろ!?」


「じゃあ、この水の宝玉はなしね」


 そう言いつつ、空間にしまい込んでしまった。足元を見られている。俺が親身になって話を聞いてやったのに、なんて奴だ。親の顔が見てみてえわ。あっ、もう見てたわ。


「わかった、オービタル・デュランダルな。探すよ、さがしゃいいんだろ」


「ええ、お願いね」


 今日会った中で一番いい笑顔をした。いい性格してるよこいつ。


「あ、そう言えば、リューネがこれ渡せって言ってたから持ってきたぞ。感謝しろよ」


 俺はそう言って、リューネ博士に頼まれていたカードを取り出してアリシアに渡した。アリシアは嬉しそうな顔をした。


「流石は魔導都市で一番の研究者であるリューネ博士ね。仕事が早いわね」


「それって、どうするんだ?」


 誰でもお手軽で魔術師になれるカードの話を俺はリューネやエクレアに話した内容と同じ内容をアリシアに話した。アリシアは自分でカードの性能を確認した。先程のトクンの魔術を入れては放ってを繰り返して、性能の確認をすましてもう一度ご満悦の表情だ。


「それぐらいのメリットとデメリットは理解しているつもりよ。だけど、そうね。リーン国内じゃ、受け入れられる事はないでしょうね。リーンの外で、魔術師の真似事をするのにはちょうどいいんじゃないかしら」


「お前の話を聞いていたら、俺もそう思うよ」


 アリシアは調べ切ったおもちゃを捨てるように、俺にカード返してきた。


「それ、あげるわ」


「貴重なもんじゃねえのかよ!!」


「貴重でも何でも、使えなくちゃ意味なんてないわ。リーン内で使えない物を時間をかけて研究するのは私にの時間の無駄でしかない。研究の成果には満足したし、いらないのなら貴方が処分しておいて」


 風の大地で見つかった遺物だとか言ってたけどなあ、まあアリシアの性格的に要らないものなのだろう。俺は後で売り捌いてお金にでもしようかと思いながら、カードをしまった。


「あの、ちょっといいですか?」


 びっくりして後ろを向くと小柄で猫背の少女が立っていた。俺と目を合わせてくれない。見るからに腰が低そうな少女だ。


「あの、すいません。えっと、弱者がいつまで私を見ているんですか?」


 えっ、今なんて言った? 物腰が弱そうでか細い声でなんつった。聞き間違えかな、言いそうにもないセリフ出たし。


「あの、その、えっと、弱者って耳も遠いんですね」


「ああん!!!!」


「ひっ!?!? なんで……」


 俺が声を荒げたのだが、彼女は何故自分が声を荒げられているんだと言った様子だ。


「ヴァイオレット、自分の部屋から出てくるなんて珍しいじゃない」


「おいおい、お前このまま話を続けるのかよ」


「ヴァイオレットは私と同じ五人いる五賢者の一人なの。物腰は低いけど、自分が一番強い魔術師だと信じて疑わないの、許してあげて」


「やはり、男は野蛮な猿。怖いよぉ……」


 ヴァイオレットと呼ばれた少女に言いたい事は山程あるのだが、文句を言うと進まないので俺は我慢してやった。


「それで、ヴァイオレットは何をしにきたの」


「アリシアちゃん。なんと、私が書いてた人は何故カレーに余計な物を乗せるのかって論文が完成したの」


 魔術師となんも関係ねえ!! なんだ、そのゴミみてえなお題目は!! せめて魔術の事で書けや!!


「よかったわね、後で読ませてもらうわ。えっと、それだけ?」


 アリシアがそれだけと言いたくなる気持ちもわかる。俺だったら、顔面をビンタしてるとこだよ。


「あ、あと、これ、言おうかな。で、でも、どうでもいい事だしなぁ」


 さっきの論文よりもどうでもいい事があるのか。ないない、絶対ねえよ。


「ヴァイオレット、言って」


「うん、アリシアちゃんがそう言うなら。えっとね、リーン国内で魔王軍の六魔将が現れたらしいの。へへっ、どうでもよかったよね、ごめんなさい」


「どうでよくねえよ!! お前の頭の中どうなってんだ!? しょうもない論文よりも数百倍は大事な事じゃねえか!!」


「しょ、しょうもなくないもん!! それに、魔王軍は勇者とアリシアちゃんのお母さんが近くにいるから大丈夫と思うし」


「会話に倒置法を使うんじゃねえ!!」


 勇者と大賢者が対応するから大丈夫ですよって後から言うんじゃねえよ。安心感とかがちげえだろうが。


「母さんがいるなら心配はないんじゃないかな。それじゃ、オービタルの件は頼むよアリマ」


 二人は人は何故カレーに余計な物乗せるのかという論文で盛り上がり始めたので、アリシアの部屋を出た。賢者って情緒がおかしくないとやってられねえんかな。

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