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勢いで動くと人生は破滅します

 海賊生活にも慣れてきた、俺とエクレア。今日もいつものように日課をしているとシルドラからお呼び出しがかかる。という事で、船長室まで二人で行くとシルドラがいつもの調子で待っていた。


「よう、短いようで長かったがようやく水の大地に着くぜ」


「ああ、そう言えばそんな話だったな」


「そんな話でしたね」


「お前らが忘れてんのかよ!?」


 いや、だってね。この海賊船に乗って、一週間ほど月日が流れたが居心地は悪くなかった。むしろ、良かったと言ってもいいだろう。俺はどちらかと言えばはみ出し者の分類なので、海賊の方が性に合ってるのかもしれない。


「約束通り、お前達には仕事をしてもらうから。その成果次第じゃ、ここで解放してやるよ。ただし、俺の納得行く成果が出なかったら一生奴隷だと思えよ」


「奴隷とかエッチな事するつもりか!?」


「しねえよ!!」


 そういう事で、一週間ぶりの地上に降りた俺とエクレア。磯の匂いばかりした海とは違って、地上はいいなって思うわけ。俺達がシルドラに案内されたのは、酒場だった。特になの変哲もない酒場。


「景気づけに酒でも奢ってくれるのか?」


「久しぶり、いいご飯にありつけそうですね」


「馬鹿言え、何で俺がお前らに酒と飯を奢んなきゃいけないんだよ。マスター、酒を頼む。それから、魚のソテーに美味しい前菜を一つ追加だ」


「はぁ、結局飯を頼んでんじゃねえか」


「あいよ、奥の席にどうぞ」


 酒場の亭主はシルドラにそう言われて、奥の誰も使っていない小部屋に俺達を案内した。なるほど、わかったぞ。合言葉で、カジノへの道を隠しているわけだな。隠す理由は全くわからんがな。


 シルドラは近くの棚をいじると地下への扉を開いてくれた。俺達に手で合図を送るので、黙ってついて行くとそこはシルドラの言っていたカジノであった。楽しそうに裕福そうな男や女が遊んでいやがる。


「さてと、んじゃ。早速、着替えてもらおうか」


 それぞれ指定の衣装があるみたいで俺とエクレアは着替える事になった。俺が着替えるのは男物の黒を基調とした服だ。ここまでの移動でカジノのディーラーが着ていたのを見たので、この衣装になるってのはわかっていた。


 俺の体格にピッタリな服である事に恐怖を覚えながら、俺は袖を通して外に出る。


「最低限場所に合う服にはなったじゃねえか。結構、似合ってんぞ」


「誉め言葉として受け取っておいてやるよ。それで、エクレアはまだか? 先に着替えに行ったはずだが」


「女性は着替えるのに時間がかかるんだ。男はゆっくりと女性を待つのも仕事の内だぜ」


「自分も女性だから、魂がこもった言葉だな。説得力がある」


「フンッ」


 シルドラと会話をしながら待っていると、着替える部屋の奥からオロオロとした様子でエクレアがやって来た。どうやら、服を見られたくないようでこっちの方を壁の所から顔を出して様子を伺ってくる。


 野生動物か何かかな。頭にはウサギの付け耳を付けていたので、どういった衣装を着ているのかは大体想像がつく。


「何してんだ、さっさと来いよ」


「シルドラさん、本当にこの衣装しかないんですか? 露出が多くてとっても恥ずかしいんですけど」


「悪いが、ここの女性用の服はそれなんだ。適当に、男に笑いかけて案内していれば終わる仕事だから我慢してくれ。もちろん、お触りとかは禁止だからな」


「人前に出るんだぞ、いつまで壁の後ろで恥ずかしがっているんだ。さっさと出てこい!!」


 俺の言葉に渋々と言った様子で、エクレアはようやく姿を現した。エクレアは俺の想像通りの服装をしていた。


 そう、カジノでうさ耳と言えばバニー服だ。黒ではなく白色のバニー服。胸の部分の露出を気にしているのか、そこの部分を手で押さえている。


「こ、この服で人と言葉を交わすのは少々厳しい気がします」


「いつもの服と大して変わんねえだろうが。あの、ミニスカシスター服と露出の差はそんなにねえだろ」


「ありますよ!! めちゃくちゃあるんですけど、普段私のどこを見ていたんですか!!」


 普段どこを見ていたって、ミニスカの足の露出が異様に高い服に胸の露出が増えただけだろ。そこに何か違いでもあんのか。俺にはわかんねえが、エクレアの感性的には駄目だって事らしい。


「お前は見た目だけはいいんだから、そこを利用して上手く酒とか会話とかで仕事をこなせって事だろ。俺がディーラーをするから、カモをお前の見た目で釣ってこいって事だよ」


「見た目だけ!? 他にも聖女としていいとこあると思うんですけど!!」


「お前いつまで聖女のふりしてんだ。いいか、聖女はな落ちぶれたように密航なんかしねえし、バニー服も着ねえよ。現実を知れ!!」


「私は女神イリステラに仕える聖女のつもりでしたが、いつの間にか聖女じゃなくなっていた……?」


 俺の言葉にショックを受けた様子だった。まあ、ショックを受けようが受けまいが、やらないと俺達はシルドラから解放されないので、やるしかないのだが。


 シルドラもようやく海賊らしいところが見られた気がした。ひとまずは様子見という事で俺は他のディーラーがカードをしている姿を見る事にした。その隣でエクレアは接客をしているのだが、どうも引きつった笑みを浮かべている。いつものように頑張れ。


 俺がシルドラから聞いた、カードと呼ばれるゲームのルールを簡単に説明しよう。四十枚のカードがあり、二十枚は黒、二十枚は赤のカードだ。客に赤か黒を事前に選んでもらって、ディーラーはトップのカード捲るだけの簡単な仕事だ。


 後は客がチャンスアップという、もう一度同じ事を繰り返して当て続けると金が倍になって行く寸法だ。


 それで、俺は何で他のディーラーとお客がゲームをしている姿を見ているのかと言うと、決して勉強の為ってわけじゃない。ここのカジノはどれほどのレベルの客が来ていて、ディーラーはどんなイカサマをしているのかを見るためだ。


 見ていた感じだと、普通に遊んでいるようにしか見えねえな。俺にわからないようにイカサマをしているってわけじゃなささそうだ。薄々気づいてはいたが、どうやらこの世界にはイカサマという概念がまだ存在していないようだ。


 つまり、やりたい放題ってわけだ。それがわかればいい。


「さてとそろそろ俺もやり始めるか」


 隣から、ドゴーンと明らかに何かと何かがぶつかったような音がした。人と物がぶつかった感じだ。もう、何なのかは大体理解していたのだが、俺は恐る恐るそちらを見るとバニー服を着たエクレアがおっさんのお客さんを投げ飛ばしていた。


「何してんのお前。客を魔物か何かに見える呪いにでもかかってんのか?」


「だって!! 私のお尻を触ろうとしてきたんですよ!!」


「いいだろ、尻ぐらいさ。減るもんじゃねえし」


「よくないですよ!! 減るんですよ、私の尊厳とかが!!」


 はあ、とにかく何か問題を起こすよな。最近、敏感になってるからまたお前の気のせいなんじゃねえのかと思ってしまう。さてと、吹き飛ばされたされたお客さんには何て言えばいいんだよ。


 俺はエクレアに吹き飛ばされたおっさんの方に近づいた。


「すいませんね内のもんが大丈夫っすか?」


 そう言って、おっさんに手をかした。おっさんはお礼も言わずにふんっと偉そうな態度で手を握った。すぐにでもエクレアと同じ様に吹き飛ばしてやりたかったが、ぐっとこらえる。


「ふうっ、ここの従業員はどうなっているんだ。少し、尻を触ろうとしたぐらい喚きおって、わしを誰だと思っておるんだかまったく」


「ええ、すいませんねえ」


 俺の返しも適当になって行く。どうやら、今回はちゃんとセクハラされていたらしいな。のしのしとおっさんはエクレアに近づいて行く。


「上の者に言われたら困るだろう」


「そ、それは……」


「なら、どうすればいいかわかるな?」


 エクレアのお尻にセクハラおじさんが手を伸ばす。今度は我慢をしようとしているようだ、目だけは俺に助けを求めているのだが。そう言われてもな、ここで問題を起こすとシルドラに後で何を言われるかわかったもんじゃねえしな。そん目をされても困るんだが、俺にはなんもできんぞ。


「クックックッ、最初からそうやってしおらしくしておればよかったものを」


「あ、お客様」


「どうした、見てわからんか。わしは忙しいんだ、後にしろ」


「見てわかるかボケ。セクハラジジイがお触りしてぇならそれ用の店あんだろが!!」


 俺はおっさんの顔面を掴んで、思いっきり机に叩きつけた。やってしまったーーーーーーーー。勢いに任せて全てを投げ捨ててしまった。


 当然だが、周りは俺の行動を見てガヤガヤしている。エクレアだけが嬉しそうな表情である。

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