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やると決めたらやるぜ

 船が停泊している場所までやってきた。ここからどうやってバレずに密航するかを考えなきゃいかねえわけだ。とりあえず、物陰に隠れながら港の様子を伺う。


「今ならまだ間に合います。こんな事はやめにしませんか」


「黙れ、俺はすると決めたらやる男だ。密航して、水の大地まで行くぞ」


 何とも言えない顔のエクレアだが、渋々と言った様子でついてきている。


「さて、どーすりゃいいかな。おっと、あいつらは」


 俺が目をつけたのはタルを運んでいる船の乗組員だ。何個も大きなタルを二人で船の運んでは、戻ってきて同じ行動をやっている。非常に面倒な顔をしている。


「よし、あれを使うぞ」


 俺は近くに置いてある何もないタルを持ってきた。もちろん誰のかわからないので盗みました。中身ねえし、ゴミを代わりに捨ててあげただけなんだ。


「タルの中に入って、あの乗組員達に船の中に運んでもらおうじゃねえか」


「なるほど、そうと決まれば中に入りますね。さあ、アリマもどうぞ」


「どうぞって別々のタルに入るに決まってるんだろ。とりあえずお前はそのまま入ってろ、俺があいつらが船に入った隙にタルを動かしてやるからさ」


 という事で、タルを押してエクレア入りのタルを上手く紛れ込ませた。んっ、後ろから声がする。


お頭(おかしら)、出航の準備があらかた終わりました!!」


「おうっ、じゃあ出港するぞ」


 どうやら、ここにあるもう一つの船の船長と部下みたいだ。まずいぞ、全く関係ない俺がこんな所にいるのがバレたら怪しまれるに決まっている。俺は後ろを確認などせずに、急いでエクレアの入っているタルの中にダイブした。


「ちょ、急になんです!?」


「バレそうになったから、もうお前と一緒のタルに入るしかなかったんだ」


 エクレアと面と向かっている状態でタルの中にいる形となった。エクレアの顔はもう毎日のように見ているが、ここまで近づいて見る事もなかったなとまじまじと見ていると、急に顔を赤くして横に向いてしまった。


「そんな、見ないでください」


「見ないでください言っても、もう体の体勢が悪すぎて動く事も出来ねんだよ。ひとまず、船に入るまで我慢してくれ」


 すると、タルが宙に浮くような感覚に襲われた。どうやら、俺達が入ったタルがやっと運ばれているようだ。


「んっ、何かこのタル重くないか」


 外の乗組員であろう人物がそんな事を言っていた。俺とエクレアは見つめ合いながら、黙っている。


「私は太ってませんよ!!」


「急にどうした!! 何も言ってねえだろうが!!」


「目がそう言ってました!!」


「だから、もうお前の方しか見れねえんだって」


 そもそも、何も言ってないのに自分から言ったって事は自覚がある証拠ではないだろうか。自分が太ったかもしれないと思わねえと自分から言わねえだろうが。


 まあ、俺の目からはエクレアが太っているとは全く思わねえが、本人には言ってやんねえけど。


「ちょ、どこ見てるんですか!! わ、私の胸の谷間を見てましたよね。この、変態!!」


「だから!! いや、もういいわ。上向いてます」


 確かに一回太ってるか全身を見た時に目が行ったけど、男のサガって事で一回は許してくれよ。てか、体を動かせねえから首だけで無理矢理上を見る状態なので辛い。何でもいいから早く、タルを船に置いてくれ。


 少しして、タルがどこかに置かれた感じがして、その後に扉が閉まる音がした。俺とエクレアは息を殺しながら、沈黙していた。俺が首だけタルから少しだけ顔を伸ばして、外の様子を伺う。


 どうやら、船の食糧庫のような場所のらしい。揺られているので、間違いなく海の上である事はわかっている。


「で、いつまでこうしてればいいですか」


「いつまでって、水の大地に着くまでだろ。確か、水の大地に向かう為の船はこの時間は一つしか出てねえ事は調べてあるから」


「食事とかトイレは……」


「我慢しろ」


「嘘でしょ!?」


「まあ、冗談だよ。船の中に入ってしまえば、客のフリが出来るだろうし外には出れると思うぜ」


「それはよかったです。では、早速窮屈な場所とおさらばしましょう」


 そう言って、エクレアは力を入れて外に出ようとするのだが、声を上げるだけで外に出る気配がない。


「おいおい、どうした。まさか、出られないって言うんじゃねえだろうな」


「いや、待ってください。ほんと、あれ、力が全然入らないんですよ。アリマの方から出てくださいよ」


「わかったよ」


 そう言われて力を入れて脱出を試みたのだが、全然出られる気配がしない。むしろ、どうやって出るのか知りたいぐらいなんだが。どういう力の掛け方をしても、うんともすんとも言わない。


 俺は原因を探るべく状態を確認する。すると、一つ思い当たる事があった。エクレアの無駄にでかい尻と胸。そこが邪魔でつっかえているのだ。


「お前のケツと胸のせいじゃねえか!! あ、いってえ!! 頭突きをかます事ねえだろ!!」


「ふんっ!! アリマがそういう事言うからです」


 ご機嫌斜めな所悪いんだが、これは純然たる事実なんだよ。現実を見ろや。ここままじゃ、俺達はタルから出られねえんだぞ。


「ケツと胸を削ぎ落とせ」


「削ぎ落とせるわけないでしょ!?」


「じゃあ、どうすんだよ。おわっ!!」


 今度は船が波のせいで傾いたおかげで、俺達が暴れていたタルが横に倒れしまった。当然タルの横側は丸くなっているので、海の上の波の動きに合わせて動き続ける。


「ア、アリマ目が回りますーーーーーー!! と、止めてーーーーーーーー!!」


「止めてつったってよ」


 俺がどうする事も出来ねえんだよ。だって、目の前の視界がぐるぐるしてるんだもん。俺だって辛いんだよ。いつか止まると信じて俺とエクレアはタルの中で回り続けた。すると、ある時ピタリと動きが止まったのだ。


「よぉ、大丈夫か」


 タルの上から声が聞こえてきた。とりあえず、止まった事に対して安堵しかなかった。隣ではエクレアが目を回した状態で、気絶寸前の状態である。


「いやぁ、助かったぜ。タルから出られなくて困ってたんだよ」


「そいつはよかったな」


 段々と頭がクリアになっていくにつれて、自分が今何をしているのかを思い出してきた。俺は密航しているんだった。じゃあ、今しゃべっているのは一体誰なんだ。


 俺は顔を上げるとそこには海賊服を着た男が立っていた。海賊服!! いやそんなはずはねえ、普通の船の荷物に紛れ込んだはずだ。


「あのー、その、ここって水の大地行きの船の中じゃないんですか?」


「俺はシルドラ、俺の海賊船に乗り込むとはいい度胸してるじゃねえか。水の大地行きの船は俺達の隣にあった船だな」


 と、隣の船。俺は必死に思い出していた。そう言えば確かに隣には船がもう一つあった。それがまさか、海賊船だったとは。恐れ入ったね。


「それで、この船はどこに向かってるんだ」


「一応、俺達も水の大地に向かってるんだよ」


「マジすか、奇遇すね。へへっ!!」


「確かに奇遇だな。まあ、お前達が向かう先は水の大地じゃなくて、海の底に変更だがな」


 シルドラはいい笑顔で言った。ですよねー。

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