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水の大地に行く方法

 水の大地に行くと決まったわけだが、ここで一つの問題が発生したわけだよ。それはな、俺達のいる火の大地から水の大地に移動するには船を使って海を移動しなくてはならないのだ。


 当たり前の話なんだが、俺達は船なんて持っていないし、持っていても操縦できなわけだ。必然的に定期的に船を出してくれている港町に行って、船に乗せてもらう必要があるわけなんだが、まあ、その、お金がかかるんすよねえ。つまり、金がねえから船に乗れねえって事だよ。


「今日の飯だぞ」


 そう言って、俺は皿の上にドックフードを置いた。そう、犬用の餌である。でも、人間が食べられないわけじゃねえと思うんだよな。


「人用の食べ物じゃない!?」


「仕方ねえだろ、これが一番安かったんだよ」


「それにしても、ドックフードはないんじゃないですか。アリマの甲斐性なし!!」


「なに、じゃあいらねえって事だな」


「いらないとは言っていませんが、待ってください!! 謝りますから、ドックフード私にもください!! このままでは、お腹空いて死んじゃいます!!」


 という事で、文句を言いながらも移動中にろくな物を食べていないエクレアは涙を流しながらドックフードを口にしていた。そろそろ成人に近い男女が、ドックフードを食べている姿はとてもじゃないが他の人に見せられるものではねえ。絵面がやばすぎだ。


「うぅ、ひもじいです。私達って、そんなにお金がないんですか?」


「多分その辺の子供のお小遣いの方が多いぐらいだと思うぞ。このままじゃ船に乗って水の大地にも行けねえしな、どうすっかなあ」


「何故、こんな事になってしまったのでしょうか」


「お前、どの口が言ってるんだ。その無駄にでかい胸に手を当てて考えろ」


 もう、疲れているのかいつものセクハラまがいの発言にも反応しなくなっていた。静かに胸に手を当てて、エクレアは目を瞑って何かを考えている。


「いや、心当たりがないですね」


「ねえわけねえだろ!! お前が道中に考えなしに飯をバクバク食ったからこうなってるんだよ!!」


「ええ、たかだかご飯くらいでそんな。大袈裟ですよ」


「よく考えろ、収入があるのならご飯ぐらい余裕かもしれんが、俺達は今どちらも無収入なんだよ。そんな奴らが何も考えずに豪華な食事と宿をとっていたらどうなるか考えろ」


 そう、収入がないのだ。だから、お金は増えないし減る一方なんだよ。移動するだけの旅はエクレアが出てくる魔物を倒しながら、移動するだけだったので難なく、火の大地の唯一の港町に着いた。だが、ここいらでお金を増やす方法を考えないと火の大地から出る事さえできねえ。


「アリマ、自慢ではありませんが私はお金を稼いだことがありません」


「俺も自慢じゃねえがお金を稼いだことがねえ。うーん、そうだエクレアお前教会に行って信者から金をせびって来いよ。お前が涙を浮かべながら体を近づけてお願いしますって言えばイチコロだろ」


「嫌ですよ!?」


「わがまま言ってんじゃねえぞ!! お金を稼ぐっていうのはそれぐらい大変なんだよ。ほらっ、信者から金を搾り取って来いよ。寄付金とか何とか言ってさ」


「よくもまあ、そんな悪い事がポンポン浮かんできますね」


 エクレアが乗り気じゃないようだ。しかし、そうなってくると地道にバイトのような形で雇ってもらってお金を稼ぐ必要が出てくる。そうなれば、どれぐらいの間この港町に軟禁される事になるのやら。


 そもそも、お金を稼いだ所で、波の稼ぎ方では食費で終わって、お金が貯まる事がないような気がする。となると、逆転の発想だ。お金を払わずに船に乗る方法を考えればいいんだ。俺って頭いいぜ。


「密航するか」


「しれっと、凄い事言い始めましたね。ダメですよ、密航なんて。犯罪じゃありませんか」


「だが、これ以外ですぐに水の大地に渡る方法があるか」


「うぐぐぐぐ、じゃ、じゃあコインで決めましょう。私が勝ったら、別の方法にしましょう。アリマが勝ったら、私も腹をくくって密航します」


 謎の覚悟を決めている所悪いのだが、俺にはイカサマコインがある。当たり前だが、お前がこの勝負を仕掛けてきた時点で俺の勝ちは決定しているってわけだ。残念だったなエクレア、お前は密航するしかねえって事だよ。


「表か裏どっちだ」


「裏ばかり出ていましたから、今回は裏です」


 俺は当然の権利のように表しか出ないイカサマコインを使う。ドキドキしながら、エクレアが見ているが結果は決まっているのだ。


 エクレアちゃんは疑うという単語を覚えた方がいい、エクレアに疑われたところで上手くのらりくらりと言い逃れするけどね。結果は表であった。


「嫌です。絶対に密航なんてしません」


「一瞬で約束を反故するな。聖女らしく、結果を受け入れろ」


「はい、動きません。私はアリマが密航をしないと言うまで、ここをぜぇーーーーーーーたいに動きません!!」


 子供様な事を言い出した聖女様。はぁ、まあ駄々をこねる事は最近の流れでわかっていた。俺は無言で、魔導都市エンデュミオンで使った犬用の首輪を取り出した。


「その首輪は何ですか!? 何故、無言で取り出したんですか!? クッ、しかし私は屈しませんよ。例え、首輪をつけられて犬扱いされても、密航はしませんよ。ふふっ、もう慣れちゃいましたからね!!」


 エクレア、気づいているか。犬扱いを受けて慣れてしまったという事実にさ。どう考えても王都セイクリアの聖女としての尊厳を失っているよ。まあ、俺にはどうでもいいけどな。


「じゃあ、この首輪をつけてもらってお前には犬の物真似をしながら男性からおひねりを貰う作業するか。今回はやり始めたら一定の金額が貯まるまで容赦なくやるぞ」


「わかりました、密航します。アリマに従います!!」


 一瞬で心が折れてしまった。流石に人間としての尊厳までは失いたくないようだった。なんか、エクレアは俺と旅をし始めてから、大分悪い事に対する意識が薄れているような気がするんだが気のせいって事でいいよな。俺のせいじゃねえよな。


「じゃあ、とりあえず港に近づいてどうするか考えるぞ」


「うぅ、女神イリステラ様こんな不埒な私をお許しください」


 大丈夫だって、女神イリステラはお前の犬の姿を見て上からケラケラ笑うタイプの神様だからさ。という事で密航をする為に、港町の船が停泊している場所までとりあえず移動するのだった。

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