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大賢者リーン・ポートメント

 運命の塔から無事に帰還した俺は、下で待ってろと言ったエクレアを探すがどこにもいない。こんな事になるとは思っていたので、中央広場から離れてエクレアの姿を探す。


 すると、魔導都市の中央通りで子供達と仲良く話している姿を見つけた。隣には、早速人間と同程度の大きさにしてもらったココロもいた。あの花を出す機能が子供達を喜ばせていた。


 まさか、役立つ瞬間があるとは思わねえよ。


「どうだい、君の言う通りココロの大きさを人間の大きさにしてみたんだ。観察をしていたんだが、子供と触れ合うならあの大きさがいいな。魔導ゴーレムは大きい物ばかりだったから、盲点だったよ」


「すげえな、リューネはやっぱ天才だっただな」


 この短期間で、すぐに作り直せるのは流石だと言わざるおえないだろう。リューネはちゃんと博士だったんだなって。しかし、どこか不安そうな顔をしているリューネ。


「どうした、なんかあったか?」


「いやね、今回の騒ぎがあっただろう。ココロをこのまま研究していってもいいのかと思ってね。魔導知能はちゃんと使えば人の助けにはなると思うのだが」


 なるほどな。どうやら、リューネは自分が見つけた遺物である魔導知能のココロをこのまま研究していていいのかと悩んでいるようだ。


 今回の件で、悪い奴が利用しようとすれば兵器開発もできるらしいからな、扱いとしては難しい所だな。だけどさ。


「んー、まあ大丈夫だろ」


「その適当な根拠は。悪い奴らに利用されてしまったら」


「心配ねえよ。ココロは悪い奴らになんか協力しねえさ。だって、俺とエクレアとリューネが協力して、心を教えたんだ。魂が宿ってる、悪い事なんかしねえよ」


「そうだな。私ももう少し自分とココロを信じてみようと思う」


 俺とリューネがココロとエクレアを見ながら話していると中央通りで大きな歓声が沸いた。何事かと思って、俺とリューネが近づいていくと、大勢の人が集まっている。この都市ってこんなに人がいたのってくらい集まっている。


「だ、出して。出してくださーい」


 何とも自信なさげな声で主張する女性の声が聞こえた。大勢集まっている群衆から俺の所に丁度飛び出してきた。今まで見た女性の中で一番小柄で小動物のような少女だ。顔は美少女な。


「はぁ、やっと出られました。やや、あなたはアリマさんですね。丁度よかったです」


「俺のことを知っているのか?」


 どうやら俺の事を探していたらしい。俺の方は彼女の事は当然知らない。こんなに小柄で美少女なら、俺が忘れるはずはないのだが。すると、後ろから声が聞こえた。いつもの見知った腹ペコシスターの声だ。


「あ、貴方様は大賢者リーン様じゃありませんか!!!!」


「いえ、その、はい。いちおう、大賢者をやらせてもらってます。リーン・ポートメントです」


 少女はリーンと名乗った。大賢者とはいったいなんだ。火の大地で有名な人なのだろうか。名前からして、偉そうな感じだが。当の本人は気弱そうな感じだが。


「リューネ知ってるか?」


「いや、知らないな」


「嘘でしょ!? 貴方達は一体いままでどうやって暮らしてきたのですか!! 大賢者の名前くらいは聞いた事があるでしょう。水の大地で、最も優秀な魔術師に贈られる称号である大賢者の称号を持つ魔術師。それがここにいる、リーンさんなんです」


 いや、聞いた事ねえけどどうやらエクレアの説明の感じはめちゃくちゃすげー人みてえだな。


「でも、そんな人が俺に何のようだ?」


「話したいの山々なんですが、ここは人目が多いのでどこか落ち着ける場所はありませんか」


 確かに、周り人達も俺たちの様子を見ている。これではゆっくり話を聞くのも難しいだろう、仕方がないので俺達はリーンを連れて魔導研究所に戻った。戻ってすぐに、腰を落ち着けてリーンから話を聞く。


 リューネはココロの調節をする為にどっかに行った。俺とエクレアはリーンの方を見た。


「ふう、ようやく静かになりました。私は勇者リュカさん代わりにアリマさんに会いに来たのです」


「リュカの代わりっすか。あいつ自分で会いに来いよな」


 そろそろ俺も会って話がしたいと思っていたのだが、リュカが何をしていたのかとか俺の話とかをしたかったのだが。


「いえ、本当はすぐにでもリュカさんはアリマさんに会いに行きたそうでしたが、アリマに会ったら甘えちゃうからと泣く泣く私に頼んできまして」


 ああ、王都セイクリアを出る前に言ってたもんな。アリマに甘えちゃうからって、あいつそういうとこ律儀なんだよな。リュカらしいと言えば、らしい。


「私気になっていたんですけど、どうしてリーン様は勇者様の代わりを?」


 確かに気になってはいた。リーンはリュカとどういった関係なのかを。リュカの代わりとして来るということはリュカが信頼しているって事だ。


「それはですね。私は今勇者パーティーとして、リュカさんと旅をしている最中だからですね。はい」


「大賢者様と勇者様が二人が同じパーティーにこれは凄い事ですね!!」


「いえ、あの、その、私に様づけは不要なので、はい」


「いえいえ、リーン様と呼ばせてください」


「あっ、はい」


 押しに弱すぎる。性格が気弱すぎて、主張が小さい。


「それにしても、リュカもすみにおけねえな。こんな可愛らしい人と二人旅なんてな」


「可愛らしい、可愛らしい? その、ちょっと、適切じゃないような。私四十過ぎのおばさんですし」


「ぶっ!!!!」


 思わず吹き出してしまった。えっ、嘘だろ。俺はもう一度リーンの容姿を確認する。小柄で童顔過ぎて、十代ですと言われても信じたくなるレベルなんだが、不老不死か何かかよ。


「私子供もいますし」


「マジすか」


 この顔で結婚してる子持ちの女性でしたか、人は見かけに寄らねえな。この人の夫は隣を歩いていたら、犯罪者に間違われないだろうか。そこが心配だよ。


「アリマ、私はどうです。私は可愛いですか」


「おお、可愛い可愛い」


「トーンが全然違います!! 私の時だけ適当すぎます!!」


 俺はエクレアを適当にあしらった。


「そうですね。もう一つ訂正するのであれば二人旅ではなく、最近三人旅になりました」


「へぇ、どんな人なんですか?」


「人ではないですね。はい、六魔将の一人である魔族のグランさんです」


「どういった流れで!?」


 リュカは何をしているんだ。俺が見てない間に六魔将を倒すどころか仲間にしてんのかよ。期待裏切らないな。


「なんか、名乗りを上げて急に襲われた所を返り討ちにして、殺さずに見逃したら。そのまま、仲間になっちゃいましたね。いやぁ、リュカさんの懐の広さには驚きですね」


「そうすっね。俺の方は」


 そこから、今までの流れをリーンに話した。六魔将の一人を倒した事。魔導都市を救った事。ただ、運命の塔の事だけは話さなかった。


「という事はそちらは宝玉については何もわかっていないんですね」


「ええ、次にどうするか悩んでるんすよね」


 正直、こっからは行き当たりばったりで情報を集めるしかないと思っていた。とりあえずは今いる火の大地の火の宝玉からって感じのつもりだった。


「その話なんですけど、実は宝玉の一つである水の宝玉のありかがわかりまして、アリマさんには水の宝玉の回収をお願いしたいんです」


「ああ、それは構わんけどどうして俺に、リュカ達が取りに行けばいいのでは?」


 水の大地にある水の宝玉の場所がわかっているのなら、行ったことがない俺に頼まず土地勘のあるリーンが行けばいいに決まっている。それをわざわざ俺に頼むということは何か理由があるのだろう。


「えっとですね。私個人の話になって申し訳ないんですが、水の宝玉の持ち主が私の娘なんですよ」


「はぁ、なら尚更アンタが行けばいいんじゃないか」


「いえ、そのですね。恥ずかしい話ではあるんですが、娘が遅めの反抗期でして、私の話を全く聞いてくれないんです……」


 今までで一番悲しそうな顔をした。うん、世界の命運がかかってる時に親子喧嘩で止められるのは恥ずかしい話だな。


「その、私そろそろ大賢者を譲ろうと思って、娘に渡そうと思ったんですが娘に怒られてしまいまして、お母さんは大賢者の意味をわかってないって、私大賢者なのに」


 シクシクと泣き始めてしまった。確かに大賢者本人が大賢者の価値をわかってないと大賢者でもない娘に諭されてもなあって感じだしな。


「いいっすよ。それで、リーンの娘はどこにいるんだ」


「今は魔術国家リーンで賢者を務めています。名前はアリシア=ポートメントです」


 魔術国家リーンか。火の大地以外はさっぱりだ。んっ? 魔術国家リーン。リーンって、大賢者リーンの名前と同じだよな。


「魔術国家リーンって、まさか」


「私は辞めてと言ったんです。ですが、みんなが私の名前を国につけたんですよ」


 リーンは恥ずかしそうに顔を手で隠してしまった。国の名前に自分の名前が入ってるのは恥ずかしいよな。せめて死んでからにしてほしいよな、気持ちはわかる。


「国の名前になるぐらいの事をしてきたからですよ。そもそも、リーンさんはですね。大賢者でもありますが、なんとあの統一王と一緒に戦った人物でもあるんですよ。いわば生きる伝説なんです」


「いや、私なんて居ただけだったのにいつの間にか、周りが勝手に私の評価を上げていってしまって、私とか価値がない女ですよ」


「そこら辺は俺にはわからんが、合法ロリってだけで価値があるんじゃないですか」


 しかし、ここでも統一王か。統一王と一緒に戦った人物で、国の名前にもなり、世界一の魔術師の称号を持つ大賢者であるリーン=ポートメント。属性を盛りすぎではないか、強さはどうなのだろうか、強いんだろうけど。


「はぁ、私の人生っていつもこうなんですよね。私としては大賢者を引退してそろそろ南の孤島でも買って、夫と静かに暮らしたいんですけどね。私の夢が叶うのはいつになるのやら」


「叶うといいな」


 何故だろうか、こういう苦労している人の願いって一生叶わないような気がしてくるんだけど、気のせいだろうか。リーンは今後も何だかんだで、ずっと忙しいのではないだろう事が想像できてしまう。


「とりあえず、魔王を退治しない事には夢のまた夢ですね」


「そうだな。魔王を倒さねえとやりたい事も出来やしねえよ」


 俺も早く魔王を倒して、異世界で楽々隠居生活を送りたいんじゃ。俺の夢の為にも魔王には倒されて貰わねえとな。頑張れリュカ、俺も俺の夢の為に出来るだけ協力するぞ。


「愚痴を言っていても仕方がありませんね。私達はこれから魔物に襲われている人々を助けながら、宝玉の情報と魔王城の場所を探します。水の宝玉の件はお願いしますね」


「ああ、任せておけ」


 リーンは何度もこちらに頭を下げた後に、ため息をつき呪文を唱えて空間に穴を作り消えていってしまった。いや、しれっとやってますがその移動の仕方は強者特有のやつですやん。強いやつしかしないよ、そんな移動方法。

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