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慣れない事はするもんじゃねえなって

 だが、少し違和感がある。それが何なのかはわからない。先程の攻撃で多少ダメージはありそうだが、まだまだ全然戦えるのは職業の力で確認している。


「ふん、俺の魔導ゴーレムとお前の魔導ゴーレムでは実力差があるようだな」


「ぬかせ!! 機体の性能差で勝ち負けは決まらねえって、どっかの偉い人も言ってたぞ」


 しかし、性能差は埋まる事は決してない。つまり、同タイミングで同じパンチを繰り出せば、必然的に負けるのは俺だ。なら、答えは一つしかねえ。敵の攻撃を避けて、そこから反撃を叩き込む。


「ココロ、敵の攻撃を避けて一撃を叩き込むぞ。ココロ、さっきからどうした?」


「いや、うん。だいじょーぶだよ」


 さっきから、ココロの態度変だ。いつもの調子じゃないと言えばいいのだろうか、なんていうか勢いがない感じだ。だが、敵は迫ってきている。俺はまずは敵のパンチの攻撃を避ける。


「よぉし、今だココロ。ん、ココロ、どうした?」


 ココロがパンチをしない。仕方がないので俺の操作で無理矢理させようとしたのだが、完全に拒否されてしまっている。


どうやら、ココロの方が俺よりも操作権限が上なようだ。つまり、ココロが拒否したらどうする事もできねえようだ。


「おい、どうした。お前なんかおかしいぞ」


「僕もわからないんだ。急に相手の魔導ゴーレムから離れたくなっちゃって、近づきたくなくなっちゃったんだ」


 それって、怖いって感情なんじゃないか。生まれたばかりで、感情自体も元のコボの真似をしているにすぎなかったのが、自身の感情が出てきたのか。


『ふむ、それはバグだな。早急に取り除かなくてはいけないな』


 研究者には人間の心が備わってねえのか。ココロの心が成長してる証拠だよ。


「お前は黙ってろ、多分そんなんじゃねえよ。ココロ、それは恐怖という感情だ。間違えねえ、相手の方が強いってわかって恐れてんだよ」


「ど、どうすればいいの。これじゃあ、攻撃できないよー」


「恐怖なんて、心があれば誰でも持ってるもんだ。気にすんなよ」


「ロクデナシも?」


「ああ、俺も持ってるよ。そうだ、俺もお前に一つだけいい事を教えてやるよ。いいか、敵がいかに自分より強かろうが屈するな。途中はどんだけ負けてもいいだ、最後に俺達が勝てばな!!」


 特にああいう俺以下の存在に屈するなんざ、まっぴらごめんだ。戦争だの、平気だの俺は知らんが、一つだけわかる事がある。それは、ドアクダーをぶっ潰せば細かい事は解決だってことだ。


「それを勇気って呼ぶらしいぜ。さあ、勝ちに行くぜ」


「うん、アリマ!!」


「なんだよ、ちゃんと名前覚えてんじゃねえか」


 魔導ココロは立ち上がる。先程と性能差が埋まったわけじゃねえけど、さっきよりは多分強いさ。動きも心なしかスムーズな気がするしな。


「今更、やる気を出した所で遅いわ!!」


 ドアクダーのパンチをかわして、ココロが逆にパンチを叩き込んだ。


「なにぃ!!」


「ナイスだココロ。その調子だ」


 しかし、お互いに攻撃をしてわかった事がある。お互いに決定打がねえ。だって、パンチしかねえんだもん。地道にパンチする地味な絵面は勘弁だ。


 それに、パンチの威力負けしてんだ。このままだとココロの頑張りも虚しく押されてしまうだろう。


「おい、リューネ。何か特殊な武装は本当にねえのか」


『あるにはある。そこのピンクのボタンを押してみてくれ』


「あんのかよ!! なんだよ、早く言ってくれよな!!」


 俺は指示通り、ピンクのボタンを押した。するとココロの右腕がとれた。なるほど、右腕から何かビームやらミサイルやらの武装が出るわけだな。流石、天才魔導研究者だ。見直したぜ。


「覚悟しろよドアクダー!!」


「ドン=アクダーだ!! 何をする気だ!!」


 ポンと軽い音が響いた。出てきたのは花だった。比喩表現とか一切ねえから。大量の花が辺り一面に吹き荒れている。なんか、ファンシーな空間だ。


「おい、どうゆう事だ。リューネ、俺がキレる前に説明しろ」


『子供が泣いている時があるとするだろう。その時に一面が花で埋まったら泣き止んでくれるのではないかと思ってね。花を射出する機能をつけたわけだ。どうだい、中々イカしてるだろ』


「ぶっ殺すぞ!!」


 ふざけんな。こんなおもちゃでどう戦えばいいんだよ。しかもさ、落ちた右腕くっつかねえから戦力ダウンしたんだが、右腕でパンチできねえんだけど。


「クソ、なんだこの花は目眩しか」


 ただ、なんかちょっと効いてるのが複雑な気持ちになるな。


『アリマ!!』


「どうしたエクレア。俺は今機嫌悪いから、どうでもいい事言ったら、許さんからな。発言は考えろよ」


『怒りを抑えるには鉄分というのがいいと聞きました。そこで、ここにあるガラクタでサンドイッチを作ってみました、どうでしょうか』


 映像を見るとエクレアのゴリラみてえな腕力で無理矢理その変の鉄を圧縮して出来たサンドイッチ? のような何かを笑顔で見せてくる。ああ、なるほどね、鉄分を鉄を食べれば摂取できるものと勘違いしてるわけか。


「どうでしょうかじゃねえよ!! 鉄分の話は俺が教えてやった話だろうが、さも自分の知識ですみたいな顔しやがって!!」


 鉄分とかそういう知識は異世界にはまだないようだからな。案の定、どうでもいい話だったじゃねえか。時間を返せ、時間をさ。そうこうしてるうちに、ドンも花の目眩しから復帰してきやがった。


「リューネ、腕飛ばす攻撃とかビームとかないのか!?」


『君が何を言ってるのか私には理解できないが、腕を飛ばすのになんの意味があるのかい。非効率ではないか』


「ロケットパンチ馬鹿にすんじゃねえぞ。男の子はなロケットパンチが好きなんだよ」


『そんなに好きなら、そこに落ちてる右腕を投げつけて攻撃すればいいんじゃないか』


「それは、ロケットパンチじゃ……いや、待てよ」


 問題はリーチだ。リーチが伸びれば、相手に一方的に攻撃を仕掛けることが出来る。この右腕を使えば、一方的にこちらにリーチを伸ばす方法があるぞ。


「ココロ、落ちてる右腕を拾え」


「うん、わかった」


「持ったまま、殴り掛かれ。ココロパンチだ!!」


「うん、パーーーーーーンチ!!」


 最初の時と全く同じ構図。お互いの拳が同時に放たれた、違う点が一つだけある。それは、ココロが左腕が右腕分リーチが伸びているという事だ。


 必然的に、俺達の攻撃が一方的に当たった。今度は相手の魔導ゴーレムが吹き飛んだ。


「よし、これで一方的に攻撃できるぞ。後は、ココロ操縦席付近を重点的にパンチだ」


 ココロは俺の命令通り、リーチを生かした攻撃で同じ場所を諦めずに何度も攻撃をしつづけた。


「無駄だ。その程度の攻撃では、魔導ゴーレムには傷一つつかんと言っているだろうが!!」


「そうとも限らねえぜ。何度も同じ場所を攻撃すりゃそのうち壊れる。無限の耐久値を持つ物はこの世に存在しねえ!!」


 ココロは一心不乱に叩き続けた。その時はきた、ココロの諦めないパンチで操縦席の部分に穴があいた。ようやく、敵の親玉と久しぶりの再会だ。


「ココロ、体当たりだ。押し倒せ!!」


「うん、うぉぉぉぉぉ!!!!」


 相手の魔導ゴーレムを押し倒す形となった。俺はすぐさま操縦席を立ち。扉を開いて、相手の魔導ゴーレムの操縦席まで跳んだ。迷いはなかった。ようやく、小太りした顔面を近くで見る事ができた。


「ひぃ!!」


「俺はさ、スライムより弱いけどな。お前みたいな小太りのおっさんには負けねえ!!」


 勢いよく頭突きをかました。やった事もない頭突きを勢いでかましたので、俺も一瞬目の前が真っ白になった。視覚が戻って来た所で、上を見上げると奇麗な青空。


「あーあ、頭痛ってえ。二度としねえわ」


 目の前を見るとドンは操縦席で動かなくなった。まあ、勝利の決め手は若さって事で。

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