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ココロ大地に立つ

「思ったよりも価値が低かったな」


「いや、待って欲しい。私の研究成果がこの程度の金額になるのはおかしいのではないだろうか、どこに抗議すればいいんだい?」


「知るか!! 教会に行って、女神イリステラにでも抗議してくれ!!」


 不満そうなリューネだが、俺が金額を決めてるわけじゃねえから睨まれても困るわ。とにかく、俺は職業ガチャを起動する。さて、こっからも運なんだよなあ。


 そもそも、魔導ゴーレムの知識がある職業ってのは一体何なんだよ。出て来た職業によってはその時点でみんな仲良く終わりなんだよなあ。


「なあ、エクレア。俺の日頃の行いってどー思うよ」


「この世界で下から数えた方が早いんじゃないんですか」


「だよな、あーあちょっとはいい事しときゃよかったかもな」


「心にも思ってもない事を。でも、いいじゃありませんか。ドンさんの方が日頃悪い事をしてるでしょう。なら、二人を比べたらギリギリ勝ってますよ」


「相対的にってやつか、いいね。んじゃ、そういう事でよろしく!!!!」


 俺は職業ガチャのガチャボタンをタップした。いつもの演出だが、青色の背景。終わりかな、これ。素直にそう思った、だが出て来たカードの色を見てテンションが戻った。


「来た、来た、来てんだろ。青、金、青、青、金。金は虹色の下だろうけど、それなりってやつだろ!!」


 職業が俺の目の前に提示された。戦士、魔戦士、弓使い、弓使い、操縦士。戦士と弓使いは除外するとして、魔戦士と操縦士だが。職業は使ってみるまで、実際にどんなものかはわからない。


 名前から連想するしかねえんだ。だが、魔戦士は魔術と戦士のいいとこ取りみたいなやつだろう。魔導ゴーレムに乗り込むんだ。操縦士ってやつでいいんじゃないだろうか。俺は操縦士のカードに手を伸ばす。


「クラスチェンジ、操縦士!!」


 俺をいつもの光が包み込んだ。操縦士へとクラスチェンジした。さて、肝心の魔導ゴーレムの知識があるのかと言うとない。


 だが、仕組みはわからなくても魔導ゴーレムの操作の仕方はわかると言った感じだ、これならいけるんじゃないだろうか。


「リューネ、時間がねえから魔導ゴーレムに乗り込むぞ」


「ああ、待ってくれ。まだ、魔導回路を接続していて」


「そこらの扉の操作はこっちでやる」


 俺は感覚で何となく入り口の場所がわかるので、近づく。レバーがある、これを引けば扉が開く仕組みなんだろう。魔導回路というにはわかんねえが、前世の電気みてぇなもんだろ。


「こっちのレバー引いて、引き終わったらこっちのボタン押して。よし、開いたぞ!! もう中に行くからな!!」


「誰だいあれは、さっきまで話していた人物とは思えないんだが」


「通りすがりの救世主って事で」


 俺はココロ抱えて、中へと乗り込んだ。操縦できる所まではまあまあ遠い、普通入り口と近い場所に配置するよね!! 


 まあ、そこら辺はしゃあなしか。俺は操縦席まで移動して座り込む。まさか、異世界来てロボみてえなのに乗り込む事になるとは思わなかったぜ。ちょっと、ワクワクするわ。


『中にココロを設置できる枠があるんだろ。そこにココロを入れてくれたまえ』


 どこからか、リューネの声が聞こえてきた。どうやら、外と会話ができるような仕組みは用意してあったみたいだ。俺は言われた通りにココロをはめた。よーわからん画面が立ち上がって、前方の景色が見えるようになった。


「これで起動じゃねえよな」


『ああ、安全面から面倒な手順にしてあるはずだ。やり方は』


「いい、起動まではいけると思うから、お前は外でしかできない事に集中しててくれ。起動まで一気にいくぞ」


『ああ、わかった。怖いぐらい頼りになるな』


 一言余計ではありませんか、リューネ博士。ただ、起動して動かすまでしかいけねえからな。外の回路とかは全部リューネに任せるしかねえ。


『アリマ、私は何か出来る事はないでしょうか?』


「茶でもすすってろ!!」


『そんな!?!?』


「リューネに危険がないように見張ってろ」


『わかりました』


 ようし、後は何でこんなにスイッチとかレバーとかあるんだ。まあいい、順番通りにレバー入れて、真ん中のは緊急停止だからいらなくて。スイッチは。


「その赤いのはいらないよ。上のボタンだけで起動するよ」


「でかしたココロ!!」


 俺は言われた通りに押した。これで、魔導ゴーレムがこちらの操作を受け付ける状態になったはずだ。俺は操縦桿を持ち、操作する。


「アリマ、僕が補助するから一緒に頑張ろうね!!」


「おう、頼りにしてるぜ」


 敵が来るまでに何とか、立ち上がる事が出来た。


「こいつ、う、動くぞ!!」


「そりゃ、動くよ?」


「ココロ、言ってみたかっただけだから忘れてくれ」


 俺も男の子なんだよ。ロボに乗り込むのはいつだって、男の夢の一つなんじゃい。乗ったら、言いたくなるんや。俺の乗った魔導ゴーレム、いや魔導ココロはドンの乗った魔導ゴーレムと対峙する。


「まさか、そっちも魔導ゴーレムを用意していたとはな」


「へへっ、これで五分五分だな。年貢の納め時じゃねえかドアクダー!!」


「さっきから気になっていたが、俺の名前はドン=アクダーだ!!」


 俺とドンの乗った魔導ゴーレムは勢いよく走り出した。おお、揺れる揺れる。臨場感が伝わってくる。


 武装とかそういう気が聞いたやつはなさそうだから、パンチ攻撃しかできんが、それでも人間相手なら十分だろうな。俺の魔導ココロが負けるはずねえから。


「行け、ココロ!! パンチだ!!」


「うん、パーーーーーンチ!!」


 細かな操作もココロが魔導知能として、補助してくれる。お互いの拳が、ぶつかり合った。いけ、いけ、いける!!


 結果だが、一方的に俺の乗る魔導ゴーレムだけが吹き飛んだんじゃないかなって感じだ。いや、衝撃が強すぎて気がついたら、前の画面が青空だったから仰向けになってんじゃねえかなって思ったのよ。うん、つまり負けましたね。


「目が回るよーーーーーーー!!」


 ココロもこの調子である。いや、完全に勝つ流れだったじゃんか。もうこれ、誰もが勝ち確信したでしょ。俺してたもん。


『ああ、言い忘れてたんだが。ココロが人助け用に開発した魔導ゴーレムだから、出力をだいぶ抑えてあるんだ』


「そういうのは早く言えや!!!! え、なに、じゃあ、相手の方が基本性能は圧倒的に上だって事?」


『そりゃそうだろ。よく考えてくれたまえ、戦闘用に開発された魔導ゴーレムと救助などを目的とした魔導ゴーレムで戦闘力が同じなわけがないだろ』


「ほーん、なるほどね。とりあえずもし俺が生きて地面に降りたら、リューネの顔面に拳を叩き込んでやるからな」


 俺は男女平等に殴るからな。ぜってえ、許さねえぞ。これ、どうやって勝つんだよ。武装パンチしかねえんだけど。それよりもこれ救助用なの!? そこに驚きを隠せねえんだけど。


「救助用なのにこの大きさなのおかしくないか? 人を握り潰しちゃうだろ。救助用ならもう少し人と同じくらいのサイズにした方がいいだろ絶対!!」


『小さくする。なるほど、貴重な意見だ。早速取り入れてみよう思うよ』


 そうか、魔導ゴーレムはこの大きさだっていう固定概念があったのか。確かに、わざわざ小さくする発想にはならんな。俺も前世の記憶で人と同じサイズのロボが救助してるのを見たから、そう言っただけだしな。


『アリマ!!』


「何だエクレア」


『敵との戦いで大事なのは、気合、根性、そして気合です』


「すげえじゃん、気合が二回も入ってんじゃん。お前は自分が発言する前に少しだけ見直したらどうだ」


 とりあえず、仰向けのままではまずいので立ち上がらせなければならない。


「ココロ、立ち上がらせるぞ!!」


「う、うん」


「どうした、なんか問題があるのか?」


「ううん、大丈夫だよ」


 俺は再び、魔導ココロを立ち上がらせて、敵の魔導ゴーレムと対峙する。

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