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どっちが大事って話だよ

「もう駄目だ。私はもう走れそうにない、こんな事ならもっと運動しておくべきだった」


 リューネさん。まだ、走り出してから数十秒しかたってませんよ!! 幸い、魔導ゴーレムとやらは小回りが効かずにでかいため、研究所を破壊しながら移動をするので、移動に無駄に時間がかかっている。


「もう、いい。俺がおぶって行くから!! お前は背中から指示だけしていてくれ!!」


 エクレアはもしかしたら敵と会うかもしれないから先頭を走っていてもらわないと困る。なら、おぶるのは俺の役割だろう。ちきしょう、俺もそこまで体力があるわけじゃねえぞ。俺はリューネをおぶる。ココロが心配そうに見ている。


「男性に背負われたのは生まれて初めての経験だ。少し、恥ずかしくものだな。しかし、不思議と悪くは……」


「随分余裕そうじゃねえか。背中から叩き落としてやろうか」


「すまない、研究者なものでな。では、案内を開始する」


 リューネに従って俺らは数分走った。目の前には先程見た魔導ゴーレムと同じ大きさぐらいの扉が現れた。リューネが言うには、ここにあの後ろでドッカンドッカンしている魔導ゴーレムに対抗できる何かが置かれているようだが。


「ココロ、扉を開いてくれ」


「うん、わかったよ」


 リューネがそう言うと、ココロは扉にゆっくりと近づいて開いた。どうやら、ココロしか開けないようになっているらしい。ココロが近づくと扉が開いた。


 中は真っ暗であったが、俺達が中へと入るとどういう仕組みなのか知らねえが明かりがついた。そこにはなんと、魔導ゴーレムが置かれていた。色合いが多少違うが、大きさはほぼ同じとみていいだろう。


「こいつは、魔導ゴーレムか?」


「そうだ。えっと、あったあった」


 リューネは机の上に置かれた研究の資料を見せてくれた。そこには、魔導ゴーレム開発と書かれていた。


「見ての通りだ。魔導ゴーレムとは本来は我々が開発したものなんだよ。それを、ドンという男が勝手に自分の物のように使っているわけだ。嘆かわしいね、この資料には魔導ゴーレムの作り方を書いてある。そして、魔導ゴーレムと魔導知能を組み合わせた、自動で考え、行動する事が出来る魔導ゴーレムの作り方もね」


「つまり、ドンさんはそれを狙っているわけですね」


「そういうわけだ。そして、魔導ゴーレムに対抗できるのは魔導ゴーレムだけだろう。さあ、私が外で指示と操作を行うから、誰かココロと共に乗り込んでくれ」


 そう言われて、俺とエクレアは顔を見合わせた。誰かと言われてもさ、俺とエクレアしかこの場にはいないのだ。そして、何となくだがどちらが乗るのかはわかっている。


「私は辞退しますね。こういったものは疎いですから」


「だろうな、お前が乗ったらレバーとかスイッチとか壊れちゃいましたみたいに言い出しかねんもんな。それに、外でリューネを守れるのもエクレアしかいねえしな」


 俺が乗り込むことになった。俺とココロは魔導ゴーレム近づくのだが、入り口がどこかなのさえも分からない。てか、これって大丈夫なのかよ。


「そうだな、私一人で操作を行うから、後一時間ほどどうにか持ちこたえてもらえないだろうか?」


「できるかボケェ!! 耐えられないから、ここまで逃げて来たのに一時間も持たせられかってんだ!!」


 一時間なんて、俺達がドンの乗る魔導ゴーレムに踏みつぶされて死ぬ方が早いに決まっているだろうが。


「エクレア、魔導ゴーレムにパンチだ。どっかに穴開けてでも無理矢理侵入するしかねえだろ」


「ま、待ってくれ!!」


「了解です。私のセイクリッドパンチが火を噴きますよ!!」


 そのセイクリッドパンチとかいうダサいネーミングセンスについては今回は忙しいので、無視しといてやるよ。


 リューネの制止も聞かずにエクレアは力を込めて、足の部分に向けて魔力を貯めたパンチを放った。エクレアの拳は止まっている魔導ゴーレムに凄い衝撃の音を立てて当たった。


「いったーーーーーーーーーーー!!!! 私の拳がぁーーーーーーーーーーーー!!!!」


 よほど痛かったのだろうか、エクレアは拳を抑えながら地面を転げ回っている。エクレアが拳を当てた部分を見るが、かすり傷一つついていなかったのだ。


 驚異の防御力である。転げ回っているエクレアの横を遊んでいると勘違いしたココロが一緒に転げ回っていた。楽しそっすね。


「だから言ったんだ。そんな攻撃では傷一つ、つかないから待てってね」


「だとしてもだ。一時間は耐えられねえぞ、なんか早くする方法はないのか?」


「うーん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そうすりゃ、どんぐらい早くなるんだ」


「すぐにでも乗り込む事は可能になるだろう。ただ、私と同じくらい魔導ゴーレムにたけている者は研究者の中にもそうそういない。つまり、不可能というわけだな。ふっ、天才というのは罪深いものだな」


「どうでもいい自慢してんじゃねえよ!!」


 いねえならできない空想の理論ってやつじゃねえか。いや、待てよ。ようは、その研究者という職業か同等の知識を持った職業の人物がいればいいって事だよな。


 それなら、ワンチャンあるかもしんねえ。職業ガチャの時間だ、これで俺が魔導ゴーレムの知識を持った職業を引き当てればいいんだ。だが、いつものように金がねえ。


 最強の敵は何時だって、金欠だよ。スマホを見ると、一万エン分ぐらいしか貯まってない、どうにかして四万エン分のポイントを貯めなくてはならないだろう。何か、金目の物はねえのか。


「これって、まだ使うのか?」


 俺は先程、リューネが自慢げに見せていた魔導ゴーレムの研究資料を手に取る。これは、リューネが一生懸命作った大切な資料だ。金に変換したら、それなりのポイントになるはずだ。なってくれ、頼むよー。


「いや、これから水の大地で行われる学会に発表しようかなって思っていた所なんだ。使うも何も、バリバリ使うんだが……」


「今から、こいつを犠牲にすればみんなが助かるって言ったらどうだ」


「話を聞いてたかい!?!? これから、使うって言ってるんだけど!?!?」


「じゃあ、ココロがあのドアクダーにとられちまってもいいって事か!!」


「いや、それはだな。うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」


 おおよそ成人女性から聞いた事もないような唸り声が聞こえてきた。よっぽど、悩んでいるようだ。どうやら、リューネにとってはそれほど大事な物のようだ。


 だが、大事な物ほどポイントが高くなるのは、この前の子供達のガラクタで実証済みよ。もう無視して、変換するか。そう思っていると、エクレアがこちらを見た。


 エクレアは俺の職業ガチャの力を知っている唯一の人物だ。俺が何をしたいのかを察したのだろう。


「リューネさん。私はココロと短い間でしたが、一緒に行動していました。ココロは私に何度も人を助けたいと言っていました。それは、リューネさんがココロの起動前に何度も話しかけていたからだそうです。今度は人の役に立つ研究にしたいと、リューネさんの心はココロにきちんと伝わっていますよ」


 聖女らしい言葉使いで、リューネに話しかけるエクレア。最近はこいつって聖女って感じは全くしなかったんだが、そう言えば職業聖女でしたね。


「どうかアリマを信じてください。いつもちゃらんぽらんで、セクハラまがいの行動ばかり、基本自己中ですが、やる時はやる所を私は見てきました。今回もきっとどうにかしてくれるはずです」


「褒められていそうだと思ったが、貶されていないか。まあ、いいわ今回は許してやるよ。おいっ、リューネ!! お前が本当に大切にしてるもんはなんだ。その研究成果か?」


「わかった、私の研究成果はどうなっても構わない。ココロだけは助けてくれ!!」


 言えたじゃねえか。俺はすぐさまリューネの研究資料をポイントに変換した。ギリギリで、五万エンの到達した。思ったよりも、価値がなかった気がする。具体的言うなら、子供達のガラクタよりもな。

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